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太陽光発電の系統制約と出力制御|主力電源化を左右する送電網の課題【2026年版】

太陽光発電が発電電力量の約9.8%(2023年度)を担う主力級の電源に成長する一方、その電力を送配電網(系統)がどこまで受け入れられるかが、さらなる拡大の壁になっています。晴れた日の昼間に発電が集中し、供給が需要を上回ると、発電を一時的に止める「出力制御」が一部地域で拡大しています。導入が最も進んだ九州では2024年度の出力制御率が4.8%に達しました。設備を増やすだけでは比率は上がらず、系統の増強・蓄電池・制度の三つ巴で受け入れ余力を広げられるかが、太陽光の主力電源化を左右します。

九州の出力制御率(2024年度)
4.8%
発電できたはずの電力量に占める、出力制御した割合。導入が最も進んだ地域
出典: 資源エネルギー庁
全国の出力制御量(2022年度)
約6億kWh
2018年度は九州のみで約1億kWh。全国に拡大し増加傾向
出典: 資源エネルギー庁
系統用蓄電池の契約申込
約2,400万kW
2025年9月末、全国(沖縄除く)。前年比 約3.9倍と急増
出典: 資源エネルギー庁
太陽光の発電比率(2023年度)
9.8%
主力電源化と系統制約は表裏一体。比率を高めるほど制約が課題に
出典: 資源エネルギー庁 電源構成

なぜ出力制御が必要なのか — 需給バランスと「優先給電ルール」

電気は「ためられない」から、瞬間ごとに合わせる

電力系統では、電気を使う量(需要)と作る量(供給)を常に一致させる必要があります。このバランスが崩れると電気の周波数が乱れ、最悪の場合は大規模停電が起きます。太陽光発電は天候と時間帯に左右され、よく晴れた休日の昼間などは、地域の需要を上回るほど発電することがあります。この「作りすぎ」を放置できないため、発電を一時的に絞る調整が必要になります。

太陽光は「最後に」制御される

余った電力の調整には、国の「優先給電ルール」で決められた順番があります。まず火力発電の出力を下げ、揚水発電(水をくみ上げて電気をためる)で吸収し、地域間をつなぐ送電線(連系線)で他地域へ送る、といった対策を最大限に行います。それでもなお電気が余る場合に限り、最後の手段として太陽光・風力の出力を制御します。つまり出力制御は、あらゆる手を尽くした後の「最終手段」として発動される仕組みです。

オンライン化で「必要な分だけ」に

以前は、制御が必要になると対象の発電所を一律・長時間止める運用でしたが、遠隔でこまめに制御できる「オンライン化」が進み、必要な量だけを短時間止める運用に移りつつあります。旧ルールの太陽光でも、2023年9月末時点で対象の約8割がオンライン化され、九州では発電事業者に代わって送配電会社が制御する「オンライン代理制御」も導入されています。制御の無駄を減らす工夫が、発電の取りこぼしを抑えています。

地域別の出力制御率(直近の公表値)

導入量が需要に対して大きい地域ほど制御が多い。地域・年度で最新の公表値が異なるため年度を併記
九州
出力制御率
4.8%
年度
2024年度
状況
導入が早く進み、出力制御が最も多い地域。2023年度の8.4%から低下
中国
出力制御率
3.6%
年度
2023年度
状況
需要の減少も一因
四国
出力制御率
1.8%
年度
2023年度
状況
東北
出力制御率
1.3%
年度
2024年度
状況
需要地から離れた地域で導入が拡大
北海道
出力制御率
0.04%
年度
2024年度
状況

出力制御を抑え、主力電源化を進めるには — 系統・蓄電池・制度

送電網を増強し、地域をつなぐ

出力制御が起きる根本には、送電網の容量の限界があります。太陽光の適地(日照が良く用地が確保できる場所)と、電気を多く使う大都市は離れていることが多く、発電した電力を運ぶ送電線が足りない地域では、制御が起きやすくなります。対策として、地域間をつなぐ送電線(連系線)を増強するほか、既存の送電網を賢く使う工夫も進んでいます。混雑する時間帯だけ制御を受け入れることを条件に、送電線を増やさずに新しい発電所の接続を認める仕組み(「ノンファーム型接続」。既存設備を最大限に使うこうした取り組みは「日本版コネクト&マネージ」と呼ばれます)で、受け入れられる量を広げています。

蓄電池で「昼の余りを夜に回す」

昼間に余る電力を蓄え、需要が高まる夕方以降に放電する系統用蓄電池は、出力制御を減らす切り札として注目されています。全国(沖縄を除く)の系統用蓄電池の系統接続の契約申込みは、2025年9月末時点で約2,400万kWと、前年の約3.9倍に達しました。ただしこれは接続の「申込み」の量で、実際に稼働するのはこれからです。蓄電池が普及すれば、太陽光の「作りすぎ」を捨てずに活用でき、昼夜の需給ギャップを埋められます。太陽光と蓄電池の組み合わせは、変動する電源を「使える電源」に変える要になります。

市場と連動する制度へ — FIPと主力電源化

一定期間を固定価格で買い取るFIT(固定価格買取制度)から、市場価格に連動するFIP(フィード・イン・プレミアム)への移行も、需給に応じた発電を促す仕組みです。電気が余る昼間は価格が下がり、足りない時間帯は上がるため、蓄電池と組み合わせて「高い時間に売る」動きが生まれます。太陽光が発電比率9.8%からさらに主力電源へと進むには、設備を増やすことと、系統・蓄電池・制度でその電力を使い切ることが「両輪」です。どちらか一方だけでは、出力制御が増えて比率は頭打ちになります。

主要論点

なぜ太陽光は「作れるのに止める」ことになるのか?

太陽光の出力制御は、一見すると「せっかく発電できるのに止めるのはもったいない」と映ります。しかし、電力は使う量と作る量を常に一致させないと、周波数が乱れて大規模停電を招きます。太陽光は天候と時間帯に左右され、晴れた休日の昼間などは地域の需要を大きく上回って発電するため、余った分をどこかで吸収するか、発電を絞るしかありません。

国の優先給電ルールでは、まず火力を下げ、揚水でため、地域間の送電線で他地域へ送る、といった対策を尽くします。それでも余る場合の最後の手段が、太陽光・風力の出力制御です。制御された分の電力は、発電事業者にとっては売電収入にならず(原則として補償はありません)、事業者にとっても制御を減らすことは切実な課題です。つまり出力制御は「太陽光を増やしすぎた失敗」ではなく、送電網や蓄電の整備が導入のスピードに追いついていないことの表れです。

本質的な解決は、余った電力を捨てずに使えるようにすることです。蓄電池でためる、送電網を増強して他地域や大都市へ送る、需要側で昼間に電気を使う(電気自動車の充電など)といった取り組みが進めば、制御は減らせます。出力制御の量は、太陽光の主力電源化がどこまで「使いこなす」段階に進んだかを測る指標とも言えます。

出力制御は、これからも増え続けるのか?

出力制御は、太陽光の導入が増えるほど起きやすくなる一方、対策次第で抑えられます。実際、導入が最も進んだ九州の出力制御率は、2023年度の8.4%から2024年度は4.8%へと低下しました。オンライン化による無駄の少ない制御や、蓄電池・連系線の整備が効き始めています。

ただし、太陽光の導入は今後も続き、政府は2030年度に発電シェア14〜16%、2040年度に23〜29%への拡大を見込んでいます。導入が進めば余剰の発生は増える方向で、対策が追いつかなければ制御はさらに拡大しかねません。系統用蓄電池の契約申込みが前年比約3.9倍に急増しているのは、この課題への備えが動き始めた表れです。

増え続けるかどうかは、「導入のペース」と「受け入れ余力を広げるペース」のどちらが速いかで決まります。蓄電池・送電網・制度の整備が導入に追いつけば、出力制御は一定の範囲に抑えられ、むしろ余剰を活用する新しい事業(蓄電・水素・データセンター誘致など)の機会になります。

系統制約は、太陽光の主力電源化をどこまで縛るのか?

太陽光の発電比率は2023年度で約9.8%ですが、政府はこれを2030年度に14〜16%へ高める目標を掲げています。この比率は、設備(容量)を増やせば自動的に上がるわけではありません。系統がその電力を受け入れ、運び、必要な時間に届けられなければ、増えた発電は出力制御で捨てられ、比率は頭打ちになります。

つまり、系統制約は主力電源化の「律速段階(ボトルネック)」です。発電設備の導入は比較的速く進みますが、送電網の増強には時間と費用がかかり、蓄電池の普及もこれからです。設備の量と、それを活かす系統・調整力の整備のスピード差が、主力電源化の実現時期を左右します。

この制約をどう乗り越えるかが、日本のエネルギー政策の焦点です。送電網の計画的な増強、系統用蓄電池の大量導入、需要側での柔軟な電力利用(デマンドレスポンス)、そして市場と連動するFIP制度の活用を組み合わせ、「作った電力を使い切る」体制を築けるかが、太陽光を真の主力電源にできるかの分かれ目になります。

中期見通し

近未来1-2年

導入が進んだ地域では出力制御が続く一方、オンライン化と系統用蓄電池の稼働で、制御の量を抑える動きが本格化します。急増する系統用蓄電池の契約申込みが実際の設備として立ち上がり、昼の余剰を吸収し始める段階です。

中期3-5年

2030年度の発電シェア14〜16%に向け、送電網の増強と地域間連系線の整備、ノンファーム型接続の拡大が進みます。FIP制度と蓄電池を組み合わせ、余剰時にためて需要期に売る事業モデルが広がり、太陽光を「調整できる電源」に近づける取り組みが本格化します。

長期5-10年

2040年度の23〜29%という高い比率に向け、系統制約の克服が最大の課題として残ります。余剰電力を水素製造やデータセンターの需要創出につなげる動きも視野に入り、太陽光の余剰を「捨てるもの」から「新たな価値」に変えられるかが問われます。

よくある質問

太陽光発電の出力制御(出力抑制)とは何ですか?
需給バランスを保つため、発電を一時的に止める調整のことです。電力は使う量と作る量を常に一致させないと周波数が乱れて停電を招くため、供給が需要を上回る時間帯に、国の優先給電ルールに沿って発電を絞ります。太陽光・風力は、火力の抑制や揚水・地域間送電などの対策を尽くしてもなお電気が余る場合に、最後の手段として制御されます。
なぜ太陽光発電で出力制御が増えているのですか?
太陽光の導入が進み、晴れた日の昼間に発電が地域の需要を上回ることが増えたためです。特に導入が早く進んだ九州では2024年度の出力制御率が4.8%に達しました。送電網の容量や蓄電池の整備が導入のペースに追いついていないことが背景で、太陽光を増やしすぎた失敗ではなく、主力電源化に伴う成長痛と言えます。
出力制御を減らすにはどうすればよいのですか?
送電網(系統)の増強、系統用蓄電池による昼の余剰の蓄積、市場と連動するFIP制度の活用が柱です。特に系統用蓄電池は、昼間の余りを夕方以降に回すことで制御を減らす切り札として急拡大しており、全国の契約申込みは2025年9月末で約2,400万kW(前年比約3.9倍)に達しています。送電網を賢く使うノンファーム型接続も広がっています。
系統用蓄電池とは何ですか?
送配電網につないで、電力が余る時間帯に電気をため、足りない時間帯に放電する大型の蓄電池です。太陽光が余る昼間にためて夕方以降に使うことで、出力制御で捨てられていた電力を活用できます。国の後押しもあり導入が急拡大しており、太陽光など変動する電源を「使える電源」に変える役割を担います。
系統制約は太陽光発電の拡大をどこまで妨げますか?
発電比率は設備を増やすだけでは上がらず、系統がその電力を受け入れ・運べるかに左右されます。この意味で系統制約は主力電源化のボトルネックです。政府は2030年度に発電シェア14〜16%を目指していますが、送電網の増強や蓄電池の普及が伴わなければ、増えた発電は出力制御で捨てられ比率は頭打ちになります。設備と系統整備の「両輪」が鍵です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    資源エネルギー庁 系統WG / スマートパワーグリッドWG
  2. 2.
    資源エネルギー庁「なるほど!グリッド」出力制御
  3. 3.
    OCCTO(電力広域的運営推進機関)
  4. 4.
    資源エネルギー庁 電源構成
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