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太陽光発電の制度(FIT・FIP)|買取価格の低下と2032年問題【2026年版】

太陽光発電の普及を支えてきたのが、電力を一定価格で買い取る固定価格買取制度(FIT)です。2012年の開始時に事業用で1kWあたり40円だった買取価格は、発電コストの低下を反映して下がり続け、2025年度には住宅用で15円、低圧の事業用で9.9円まで低下しました。大規模な設備は、市場価格に連動するFIPへの移行が進んでいます。一方、2012年に始まったFITの買取期間が2032年から順次終了する「2032年問題」や、新築住宅への設置義務化など、制度は次の局面に入りつつあります。買取制度の仕組みと、その先にある課題を整理します。

住宅用の買取価格(2025年度上期)
15円/kWh
10年間の固定買取。下期は初期投資支援型に移行。2012年度の事業用40円から大きく低下
出典: 資源エネルギー庁 / 調達価格等算定委員会
低圧事業用の買取価格(2025年度)
9.9円/kWh
10〜50kW未満の地上設置。20年間の固定買取
出典: 資源エネルギー庁
FIT/FIP認定に占める太陽光
約73%
2024年12月。全認定容量に占める割合。認定は運転開始とは別
出典: 資源エネルギー庁
2032〜36年に買取終了する事業用
約29GW
2012〜16年度に導入された約47万件。順次「卒FIT」を迎える
出典: 資源エネルギー庁 政策資料

FITとFIPはどう違うのか — 「固定価格」から「市場連動」へ

FIT — 一定価格で買い取り、導入を後押しした制度

FIT(固定価格買取制度)は、太陽光などで発電した電力を、国が定めた価格で一定期間、電力会社が買い取ることを保証する制度です。2012年7月に始まり、住宅用は10年、事業用は20年の買取期間が設定されています。発電した電力が必ず決まった価格で売れるため、事業の採算を見通しやすく、太陽光の急拡大を支えました。買い取りの原資は、電気を使う全員が電気料金に上乗せして負担する「再エネ賦課金」でまかなわれています。

FIP — 市場価格に連動し、需給に応じた発電を促す

FIP(フィード・イン・プレミアム)は、2022年度に導入された新しい仕組みです。固定価格ではなく、電力を卸電力市場で売り、その市場価格に一定のプレミアム(補助額)を上乗せして受け取ります。市場価格は電気が余る昼間は下がり、足りない時間帯は上がるため、蓄電池と組み合わせて「高い時間に売る」動機が生まれます。現在、住宅用を含む小規模な設備は引き続きFITを使え、大規模な設備(250kW以上など)はFIPが基本です。固定価格で「作れば買ってもらえる」段階から、市場を意識して「賢く売る」段階への移行を促す制度です。

なぜ買取価格は下がり続けるのか

買取価格は、太陽光発電にかかるコストの低下を反映して決められます。設備の価格が下がれば、少ない収入でも採算が取れるため、買取価格も引き下げられます。2012年度に事業用で40円だった価格が2025年度に一桁台まで下がったのは、この10年余りで太陽光発電のコストが大きく下がったことの裏返しです。価格の低下は「支援の縮小」であると同時に、太陽光が補助に頼らずとも成り立つ電源に近づいていることも意味します。

2025年度の買取価格(区分別)

規模・設置形態で価格と制度(FIT/FIP)が分かれる。年度で価格は改定される(資源エネルギー庁 / 調達価格等算定委員会)
住宅用(10kW未満、上期)
2025年度の買取価格
15円/kWh
制度
FIT
特徴
10年間の固定買取。2024年度の16円から1円低下。2025年度上期(4〜9月認定)が対象
住宅用(10kW未満、下期の初期投資支援)
2025年度の買取価格
24円/kWh
制度
FIT
特徴
2025年度下期(10月〜)は屋根設置を加速する初期投資支援型に移行。当初4年間は24円、その後は8.3円
事業用(10〜50kW未満・低圧)
2025年度の買取価格
9.9円/kWh
制度
FIT
特徴
地上設置。2025年度に0.1円低下
事業用(50〜250kW未満)
2025年度の買取価格
8.6円/kWh
制度
FIT
特徴
20年間の固定買取。2024年度の8.9円から0.3円低下
大規模(250kW以上)
2025年度の買取価格
入札等で決定
制度
FIP
特徴
市場価格に連動するプレミアムを上乗せ。FITの対象外

制度の次の局面 — 2032年問題と、導入拡大の政策

2032年問題 — 買取期間の終了が始まる

2012年に始まったFITは、事業用で20年の買取期間です。つまり、2012〜16年度に運転を開始した事業用太陽光(約29GW・約47万件)は、2032〜36年にかけて順次、固定価格での買い取りを終えます。これが「2032年問題」です。買取終了後の設備は、電力を市場やFIP、企業と1対1で結ぶ相対(あいたい)契約で売るか、自社で使う自家消費に切り替える必要があり、収入が下がる設備も出てきます。住宅用(10年)の買取終了「卒FIT」は2019年から既に始まっており、事業用でその大規模版が2032年から訪れる、という構図です。

認定と運転開始は別 — 「認定されたら発電している」ではない

FIT/FIPの容量を語るとき、「認定容量」と「運転開始(運開)容量」を区別することが重要です。認定は制度の適用を受ける権利を得た段階で、実際に発電所が建って運転を始めるまでには時間差があり、途中で失効・撤回される案件もあります。太陽光はFIT/FIP認定容量の約73%(2024年12月)を占めますが、これはあくまで認定ベースで、実際に発電している量とは異なります。過去には、認定だけ取って運転しない案件(未稼働案件)が問題となり、制度の見直しが行われました。

導入拡大の政策 — 屋根・新築義務化・営農型

大規模な地上設置の適地が減るなか、政府・自治体は新しい設置場所を広げる政策を進めています。象徴的なのが新築住宅への設置義務化で、東京都は2025年度から、大手住宅メーカーなどが新築する延床2,000平方メートル未満の建物に太陽光などの設置を義務づけました(既存の建物は対象外)。このほか、農地の上に設置して営農と発電を両立する営農型(ソーラーシェアリング)、駐車場に設置するソーラーカーポートなど、屋根・空間を活用する導入が後押しされています。買取価格でも、2025年度下半期から屋根設置向けに手厚い初期投資支援(当初4年間24円など)が導入されました。

主要論点

FITとFIPは何が違い、これからどちらが主流になるのか?

FIT(固定価格買取制度)は、発電した電力を国が定めた固定価格で一定期間買い取る制度です。価格が保証されるため事業の採算を見通しやすく、太陽光の急拡大を支えました。一方、FIP(フィード・イン・プレミアム)は、電力を市場価格で売り、それにプレミアムを上乗せする仕組みで、市場の需給に応じた発電を促します。

住宅用を含む小規模な設備は引き続きFITを使えますが、大規模な設備はFIPが基本です。今後は、太陽光が主力電源へと成長するにつれ、市場を意識して発電・売電するFIPの比重が高まる方向です。固定価格で「作れば買ってもらえる」段階から、蓄電池と組み合わせて「高い時間に売る」段階へと、事業のあり方が変わっていきます。

ただし、FIPは市場価格の変動リスクを事業者が負うため、蓄電池や需給予測などの体制が必要です。すべてが一気にFIPに移るのではなく、規模や事業者の体力に応じて、FITとFIPが当面併存すると見られます。制度は、太陽光を「補助で支える電源」から「市場で戦う電源」へと促す方向に動いています。

買取価格が下がり続けるのは、太陽光にとって逆風なのか?

買取価格は、2012年度の事業用40円から2025年度に一桁台まで下がりました。一見すると事業者への支援が細っているように見えますが、これは太陽光発電のコストが下がったことの反映でもあります。設備が安くなれば、低い買取価格でも採算が取れるため、価格が引き下げられるのです。価格の低下は、太陽光が補助に頼らずとも成り立つ電源に近づいていることを意味します。

もっとも、買取価格の低下は、新規の大規模案件の採算を厳しくする面もあります。かつてのような高い固定価格を前提とした「売電で稼ぐ」ビジネスは成立しにくくなり、自家消費や、企業と直接契約するコーポレートPPAなど、売電に頼らないモデルへの転換が進んでいます。

つまり、価格低下は逆風というより、太陽光の位置づけの変化を促す力です。補助で導入量を増やす段階から、電力として自立し、需要家に選ばれる段階へ。買取価格の水準は、太陽光がその移行のどこにいるかを映す指標とも言えます。

2032年問題に、太陽光業界はどう備えるのか?

2012〜16年度に導入された事業用太陽光(約29GW・約47万件)は、2032〜36年にかけて20年の買取期間を終えます。固定価格での買い取りが終わると、これらの設備は電力を市場やFIP、企業との相対契約で売るか、自家消費に切り替えるかを迫られ、収入が下がる設備も出てきます。まとまった量の電源が固定価格から離れるため、電力の売り先や価格に影響が及ぶ可能性があります。

備えとして重要なのが、買取終了後も設備を使い続けられるようにすることです。パワーコンディショナの更新や保守(O&M)で発電所の寿命を延ばし、蓄電池を組み合わせて電力を有効活用し、FIPやコーポレートPPAで新たな売り先を確保する、といった取り組みが求められます。買取後の電力を束ねて需要家に届ける新しいビジネスも生まれつつあります。電力を使う企業の側から見れば、固定価格を離れた「卒FIT電源」は、再生可能エネルギーを比較的安く調達する新たな選択肢にもなり得ます。

さらに、20年前後で寿命を迎える設備が増えることは、使用済みパネルの廃棄・リサイクルという別の課題にもつながります。廃棄のピークは2030年代半ば以降に見込まれ、適正なリサイクル体制の整備が急がれています。2032年問題は、太陽光が「導入する産業」から「使い続け、循環させる産業」へと成熟する入り口でもあります。

中期見通し

近未来1-2年

買取価格の緩やかな低下が続く一方、屋根設置向けの初期投資支援など、設置場所を屋根・自家消費へ誘導する制度が強化されます。東京都に続き、新築住宅への設置義務化を導入する自治体が広がる可能性もあります。

中期3-5年

大規模設備を中心にFIPへの移行が進み、蓄電池と組み合わせて市場で売る事業モデルが広がります。2032年の買取期間終了を見据え、既設設備の長期運転や、買取後の電力の売り先を確保する取り組みが本格化します。

長期5-10年

2032年以降、固定価格の買い取りを終えた設備が大量に生まれ、FIP・自家消費・相対契約が主流になります。同時に、使用済みパネルの廃棄・リサイクル体制の整備が、制度・産業の両面で重要な課題となります。

よくある質問

FIT(固定価格買取制度)とは何ですか?
太陽光などで発電した電力を、国が定めた価格で一定期間、電力会社が買い取ることを保証する制度です。2012年7月に始まり、住宅用は10年、事業用は20年の買取期間があります。価格が保証されるため事業の採算を見通しやすく、太陽光の急拡大を支えました。買い取りの費用は、電気料金に上乗せされる再エネ賦課金でまかなわれています。
FITとFIPは何が違いますか?
FITは固定価格で買い取る制度、FIP(2022年度導入)は電力を市場価格で売り、それにプレミアムを上乗せする制度です。FIPは市場の需給に応じた発電を促し、蓄電池と組み合わせて「高い時間に売る」動機が生まれます。住宅用を含む小規模な設備は引き続きFITを使え、大規模な設備(250kW以上など)はFIPが基本です。
2025年度の太陽光の買取価格はいくらですか?
2025年度は、住宅用(10kW未満、上期)で15円/kWh、低圧の事業用(10〜50kW未満)で9.9円/kWh、50〜250kW未満で8.6円/kWhです。250kW以上はFIPが基本で、価格は入札などで決まります。2012年度の事業用40円から、発電コストの低下を反映して大きく下がりました。住宅用は2025年度下期(10月〜)から、屋根設置を加速する初期投資支援型(当初4年間24円、その後8.3円)に移行します。
太陽光発電の「2032年問題」とは何ですか?
2012年に始まったFITは事業用で20年の買取期間のため、2012〜16年度に導入された事業用太陽光(約29GW・約47万件)が2032〜36年に順次、固定価格での買い取りを終えることを指します。買取終了後は電力を市場やFIP、相対契約で売るか自家消費に切り替える必要があり、収入が下がる設備も出てきます。使用済みパネルの廃棄・リサイクルの課題にもつながります。
新築住宅に太陽光パネルの設置が義務化されるのですか?
東京都は2025年度から、大手の住宅メーカーなどが新築する延床2,000平方メートル未満の建物に、太陽光などの設置を義務づけました(既存の建物は対象外で、施主でなく事業者に課される仕組みです)。適地の減る地上設置に代わり、屋根の活用で導入を広げる狙いです。国も新築住宅への設置拡大を政策に掲げており、同様の制度が他の自治体に広がる可能性があります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」FIT・FIP制度
  2. 2.
    調達価格等算定委員会
  3. 3.
    資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの長期安定的な大量導入と事業継続に向けて」(2024年5月)
  4. 4.
    資源エネルギー庁「太陽光発電について」(2024年12月)
  5. 5.
    東京都 建築物環境報告書制度
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