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太陽光発電の次世代技術|ペロブスカイトの実力と実用化の課題【2026年版】

ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽く曲げられる「フィルム型」の次世代太陽電池です。日本企業が強みを持つ印刷・塗布技術を生かせるため、シリコン系で失った製造の主導権を取り戻せるかが注目されています。積水化学工業が2027年度の量産開始を掲げ、政府も2040年に国内で約20GWの導入を目標に掲げるなど、官民で開発が加速しています。一方、量産時のコストや屋外での耐久性は途上で、中国勢も巨額投資で量産を急いでいます。ペロブスカイトの仕組みと実力、そして実用化までの距離を、誇張せず整理します。

政府の導入目標(2040年)
約20GW
次世代型太陽電池の国内導入目標。累積導入量(約75.6GW)の一部を担う想定
出典: 経済産業省 次世代型太陽電池戦略
積水化学の量産規模
100MW/年
2027年度〜、堺市の旧シャープ工場。投資約900億円、2030年度にGW規模へ
出典: 積水化学工業(IR)
タンデム型のセル変換効率
約32%
カネカのペロブスカイト/結晶シリコン(研究段階、面積1cm²)。40%以上を目標
出典: カネカ(IR)
フィルム型のコスト目標
14円/kWh以下
2030年度の政府目標。実現しても当面はシリコン系より高い水準の見通し
出典: 経済産業省

ペロブスカイト太陽電池とは何か — 「塗って作る」薄型・軽量の太陽電池

仕組みと特徴

ペロブスカイトとは、特定の結晶構造を持つ材料の総称です。この材料を溶液にして基板に塗布・印刷することで、薄いフィルム状の太陽電池を作れます。シリコン系のように高温で結晶を成長させる大規模な設備を必要とせず、印刷に近い工程で製造できるのが大きな特徴です。厚さは1mm以下、重さもシリコン系パネルの10分の1程度に抑えられ、曲げることもできます。

なぜ「新しい設置場所」を開くのか

シリコン系の太陽電池は重くて硬いため、耐荷重の小さい工場や倉庫の屋根、ビルの壁面、曲面には設置が困難でした。軽くて曲がるペロブスカイトは、こうした「これまで置けなかった場所」に設置できます。日本は平地が少なく、大規模な地上設置(メガソーラー)の適地が減っているため、建物の壁面や屋根を活用できるペロブスカイトは、導入余地を広げる技術として期待されています。

効率はシリコンに及ばないが、使い方が違う

変換効率とは、太陽光のエネルギーのうち電気に変換できる割合です。1つの層で発電する単接合のフィルム型ペロブスカイトの変換効率は、現状ではシリコン系(量産品で20%前後)に及びません。ただしフィルム型は、効率で正面から競うのではなく、軽さを生かしてシリコンを置けない場所を埋める「新しい市場」を開くことに価値があるため、効率がやや低くても役割を果たせます。一方、効率そのものを高める方向が、ペロブスカイトをシリコンなどと重ねる「タンデム型」で、研究段階では30%を超える効率が報告されています。

主な企業のペロブスカイト太陽電池への取り組み

フィルム型(軽量・設置場所拡大)とタンデム型(高効率)で方向性が分かれる。各社IR・公表資料に基づく
積水化学工業
方式
フィルム型(単接合、ブランド「SOLAFIL」)
状況・変換効率
堺市の旧シャープ工場で年産100MW規模の量産へ。投資約900億円。2025年の仕様は変換効率15%・耐久10年・幅30cmのロール・ツー・ロール
量産・製品化の時期
2027年度に量産開始、2030年度にGW(ギガワット)規模へ
カネカ
方式
タンデム型(ペロブスカイト/結晶シリコン)
状況・変換効率
セル変換効率で約32.6%を達成(研究段階、面積1cm²)。将来は40%以上を目標
量産・製品化の時期
2028年度に製品販売を計画
東芝(東芝エネルギーシステムズ)
方式
フィルム型・タンデム型
状況・変換効率
2020年から開発。ペロブスカイト/シリコンの2端子タンデムで変換効率31.3%(研究段階)
量産・製品化の時期
実証・研究段階
パナソニック
方式
タンデム型(ガラス基板、ペロブスカイト同士を重ねる方式)
状況・変換効率
建材一体型(窓・外壁など)での活用を想定した研究開発
量産・製品化の時期
研究段階
長州産業
方式
タンデム型(住宅用途を想定)
状況・変換効率
カネカとともに量産化に向け政府の支援を受ける(2社計 約94億円)
量産・製品化の時期
量産化に向けた開発段階

日本は「先行」しているのか — 中国勢の量産投資という現実

日本が強みを持つ領域

日本企業は、発電層を外気から守る封止技術や、フィルムを大面積で安定して作る製造技術で、一定の強みを持つとされます。積水化学は幅30cmのロール・ツー・ロール(フィルムを巻き取りながら連続生産する方式)で量産に踏み出し、政府もGXサプライチェーン構築支援などで積水化学の1GW体制づくり(総事業費約3,145億円、うち補助最大約1,572.5億円)を後押ししています。シリコン系の製造では中国に大きく後れを取った日本にとって、ペロブスカイトは製造の一部を国内に取り戻せる可能性のある数少ない領域です。

中国も巨額投資で量産を急ぐ

ただし、ペロブスカイトを日本が独占しているわけではありません。中国ではGCLが1GW級の生産ラインを立ち上げ、装置メーカーの邁為科技(マイウェイ)が約800億円を投じるなど、量産競争で先行する動きもあります。GCL系の企業は、シリコンとのタンデム型を日本市場でも販売する計画を示しています。シリコン系で世界を席巻した中国の量産力が、次世代でも発揮される可能性は高く、日本の「先行」は限定的・流動的と見るのが実態に近いと言えます。

「確立した主力技術」ではまだない

こうした状況を踏まえると、ペロブスカイトを「日本が主導権を握った確立技術」と語るのは時期尚早です。日本勢が世界に先行できる可能性のある領域であることは確かですが、実用化と量産化はこれからで、中国をはじめ各国との競争も激しくなります。過度な期待でも悲観でもなく、官民の開発がどこまで実を結ぶかを見極める段階にあります。

主要論点

ペロブスカイトは、日本勢の製造での巻き返しになるのか?

ペロブスカイト太陽電池は、日本企業が強みを持つ印刷・塗布・封止の技術を生かせるため、シリコン系で失った製造の主導権を次世代で取り戻せるかが注目されています。積水化学がフィルム型の量産で先行し、政府も国産化を後押ししているのは、この期待の表れです。国内で生産できれば、発電設備の約95%を海外に依存する現状の供給網リスクを和らげる効果も見込まれます。

もっとも、巻き返しを確実視するのは早計です。中国ではGCLなどが1GW級のラインを立ち上げ、量産競争で先行する動きもあります。シリコン系で世界を席巻した中国の量産力が次世代でも発揮されれば、日本の技術的な先行が価格競争で相殺される展開もあり得ます。

鍵は、量産時のコストと耐久性で優位を保てるか、そして「シリコンを置けない場所」という新しい市場を早期に押さえられるかにあります。日本勢が世界に先行できる数少ない領域であることは確かですが、巻き返せるかどうかはこれからの実行力次第です(技術動向はNEDO・経済産業省などの整理に基づきます)。

フィルム型とタンデム型は、何が違い、どう使い分けられるのか?

ペロブスカイト太陽電池の開発は、大きく「フィルム型(単接合)」と「タンデム型」の2つの方向に分かれます。フィルム型は、軽くて曲がる特性を生かし、シリコンを置けない壁面や耐荷重の小さい屋根などの新しい設置場所を開くことを狙います。積水化学が量産で先行しているのがこの方式で、効率よりも「置ける場所の広さ」で価値を出します。

タンデム型は、ペロブスカイトをシリコンなどと重ねることで、光をより効率よく電気に変える方式です。研究段階ではセル変換効率30%超が報告され、カネカは40%以上を目標に掲げています。既存のシリコン系を置き換え、限られた面積でより多く発電する用途を狙います。

つまり、フィルム型は「新しい場所」を、タンデム型は「高い効率」を狙う技術で、競合というより役割分担に近い関係です。どちらが主流になるかは、それぞれのコスト低減と耐久性の確保がどこまで進むかによります。

実用化はいつ頃で、何が障壁になるのか?

実用化のスケジュールは、フィルム型で先行する積水化学が2027年度に量産を始め、2030年度にGW規模を目指す、というのが一つの目安です。タンデム型はカネカが2028年度の製品販売を計画しています。政府は2040年に国内で約20GWの導入という目標を掲げています。

最大の障壁は、コストと耐久性です。政府はフィルム型の発電コストを2030年度に14円/kWh以下とする目標を掲げていますが、シリコン系(2023年度で約9〜14円/kWh)と比べるとなお高く、ある試算では2040年時点でもコストはシリコンの2〜3倍、稼働年数は約3分の2にとどまるとの見方もあります。屋外での耐久性(水分や熱による劣化)と、大面積で品質を保つ量産技術の確立が、普及のペースを左右します。

したがって、ペロブスカイトは「まもなくシリコンを置き換える」というより、シリコンを置けない場所から段階的に普及し、コストと耐久性の改善に伴って用途を広げていく技術と捉えるのが現実的です(見通しは各社・政府の公表に基づき、断定はできません)。

中期見通し

近未来1-2年

積水化学が2027年度の量産開始に向けて設備を整え、公共施設やビルの壁面などでの実証・先行導入が広がります。政府の率先導入(庁舎などへの設置)も進み、フィルム型が「置けなかった場所」から実装され始める段階です。

中期3-5年

積水化学のGW規模への拡大や、カネカのタンデム型の製品化が進むかが焦点です。同時に、コスト低減と耐久性の実証データが蓄積され、シリコン系との使い分けが明確になります。中国勢の量産も本格化し、価格競争が国内メーカーの収益を左右します。

長期5-10年

政府目標の2040年 約20GWに向け、ペロブスカイトが太陽光の導入余地を広げる主要技術になれるかが問われます。国産化が供給網の安定に寄与する一方、量産力で勝る中国との競争をどう戦うかが、日本のエネルギー・産業戦略上の課題として残ります。

よくある質問

ペロブスカイト太陽電池とは何ですか?
結晶を溶液にして基板に塗布して作る、薄型・軽量のフィルム型太陽電池です。厚さ1mm以下・重さはシリコン系の10分の1程度で、曲げることもできます。建物の壁面や耐荷重の小さい屋根など、従来のシリコン系では設置が難しかった場所にも置けるため、太陽光の新しい設置場所を開く技術として期待されています。日本企業が強みを持つ印刷・塗布技術を生かせる点も注目されています。
ペロブスカイト太陽電池はいつ実用化されますか?
フィルム型で先行する積水化学工業が2027年度に量産を開始し、2030年度にGW規模を目指しています。タンデム型ではカネカが2028年度の製品販売を計画しています。政府は2040年に国内で約20GWの導入を目標に掲げています。ただし量産時のコストや屋外での耐久性はこれからの課題で、シリコン系をすぐに置き換えるものではなく、置けない場所から段階的に普及すると見られます。
ペロブスカイトで日本は世界をリードしているのですか?
発電層を守る封止技術や、フィルムを大面積で作る製造技術で日本企業は強みを持つとされ、世界に先行できる可能性のある領域です。ただし、中国でもGCLが1GW級のラインを立ち上げ、装置メーカーが巨額投資で量産を急ぐなど、競争は激しくなっています。シリコン系で世界を席巻した中国の量産力は次世代でも侮れず、「日本が主導権を確立した」と断定できる段階ではありません。
フィルム型とタンデム型は何が違うのですか?
フィルム型(単接合)は軽くて曲がる特性を生かし、壁面や耐荷重の小さい屋根など新しい設置場所を開く方式で、積水化学が量産で先行しています。タンデム型はペロブスカイトをシリコンなどと重ねて効率を高める方式で、研究段階では30%超の変換効率が報告され、カネカが40%以上を目標にしています。フィルム型は「置ける場所」、タンデム型は「高い効率」を狙う、役割分担に近い関係です。
ペロブスカイト太陽電池の課題は何ですか?
最大の課題はコストと耐久性です。政府はフィルム型の発電コストを2030年度に14円/kWh以下とする目標を掲げていますが、シリコン系と比べるとなお高く、2040年時点でもコストはシリコンの2〜3倍、稼働年数は約3分の2にとどまるとの試算もあります。屋外での水分・熱による劣化を抑える耐久性の確保と、大面積で品質を保つ量産技術の確立が、普及のペースを左右します。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    NEDO太陽光発電開発戦略2025(PV Challenges 2025)
  2. 2.
    経済産業省 次世代型太陽電池戦略(2024年11月)
  3. 3.
    各社IR・公表資料
  4. 4.
    業界報道
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