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水処理業界の市場規模|受注額の推移と市場の見方【2026年版】

水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は、日本産業機械工業会によると2024年度に2,505億円 (前年度比▲3.3%) となりました。コロナ禍の2020年度の1,755億円を底に回復し、2023年度の2,592億円まで伸びた後、2024年度はやや減少しています。これは装置の受注額で、市場規模そのものとは集計の範囲が異なります。分離膜や薬品の市場は調査会社が別に推計しており、富士経済は水処理膜の世界市場が2030年に5,010億円規模へ拡大すると予測しています。受注額の推移と、市場規模を表す指標の違いを順に整理します。

装置の受注額 (2024年度)
2,505億円
前年度比▲3.3%。産業廃水処理装置と汚泥処理装置が対象
出典: 日本産業機械工業会 産業機械受注状況
コロナ禍の底 (2020年度)
1,755億円
ここを底に受注額は回復に向かった
出典: 日本産業機械工業会 産業機械受注状況
直近ピーク (2023年度)
2,592億円
産業廃水処理装置の伸びで直近のピークとなった
出典: 日本産業機械工業会 産業機械受注状況
装置の生産額 (2024年度)
3,346億円
実際に生産した金額 (前年度比+19.3%)。受注額とは別の集計で水準が異なる
出典: 日本産業機械工業会 産業機械生産実績

水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額の推移 (2018-2024年度、億円)

2020年度の1,755億円を底に回復し、2023年度に2,592億円まで伸びた後、2024年度は2,505億円
単位: 億円
07501,5002,2503,0002,182181,996191,755201,971212,118222,592232,50524
出典: 日本産業機械工業会 産業機械受注状況 (環境装置の装置別受注高、水質汚濁防止装置、年度)
年度2018201920202021202220232024
受注額億円2,1821,9961,7551,9712,1182,5922,505
前年比-8.5%-12.1%+12.3%+7.5%+22.3%-3.3%
読み解き

水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は、2018年度の2,182億円から、コロナ禍の2020年度に1,755億円まで落ち込みました。その後は製造業の設備投資や自治体の下水道事業の回復を背景に持ち直し、2023年度には2,592億円 (前年度比+22.3%) と直近のピークをつけました。2024年度は2,505億円で、前年度比▲3.3%とやや減少しています (前年比は、丸める前の元データをもとに算出しています)。

受注額が年ごとに動きやすいのは、大型の案件の有無に左右されやすいためです。工場の排水を処理する産業廃水処理装置は製造業の設備投資に、下水などの汚泥処理装置は自治体の下水道事業に需要が結びついており、民間と公共の両方の投資動向に左右されます。大型の案件が多いため、その受注のタイミング次第で年ごとの金額が動きます。

なお、この数字は受注額であり、市場規模そのものではありません。同じ装置でも、実際に生産した金額を表す生産額は2024年度に約3,346億円と、受注額を上回っています。受注はその年度に新たに受けた注文を表すのに対し、生産はその年度に実際につくった金額 (過去の受注残の消化を含む) を表すため、必ずしも一致しません。2023年度に受注がピークをつけた分が2024年度の生産に表れており、受注が生産を下回る年もあります。受注は将来につながる先行指標、生産は実績という違いがあり、指標ごとに分けて見る必要があります。

このグラフに関連するトピック

水処理の規模を表す指標の違い (集計範囲が異なり足し合わせられない)

装置の受注額 (JSIM、年度)
金額の目安
2,505億円 (2024年度)
何を表すか (集計の範囲)
受けた注文の金額。産業廃水処理装置と汚泥処理装置が対象
装置の生産額 (JSIM、年度)
金額の目安
3,346億円 (2024年度)
何を表すか (集計の範囲)
実際に生産した装置の金額。受注額とは別の集計
水処理膜の市場 (富士経済、予測)
金額の目安
5,010億円 (2030年予測)
何を表すか (集計の範囲)
調査会社の推計。膜のみ・世界ベース・将来予測で、装置の受注額とは別物
各社の連結売上
金額の目安
会社ごと
何を表すか (集計の範囲)
水処理以外の事業や海外も含む。市場規模そのものではない
読み解き

水処理の規模を表す数字には、いくつかの指標があります。装置の受注額は、装置メーカーが受けた注文の金額で、2024年度は2,505億円でした。装置の生産額は実際に生産した金額 (約3,346億円) で、受注額とは水準が異なります。水処理膜の市場は調査会社が推計する膜だけの市場で、しかも世界ベース・2030年予測 (5,010億円) です。

これらは調査の対象も、範囲も、時点も異なるため、単純に足し合わせることはできません。たとえば装置の受注額と膜の世界市場を合計しても、意味のある数字にはなりません。また、栗田工業やメタウォーターなどの各社の連結売上には水処理以外の事業や海外事業も含まれるため、各社の売上を足しても国内の水処理市場の規模にはなりません。市場は統計や調査会社の推計で捉え、各社の規模は事業セグメント (事業の区分) 単位で見る必要があります。まずは装置の受注額を出発点に、膜・薬品・サービスを別に見るのが分かりやすいでしょう。

主要論点

水処理の市場規模はどう捉えればよいのか?

水処理の規模を1つの数字で表すのは難しく、見る指標によって数字が変わります。日本産業機械工業会の統計では、水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は2024年度に2,505億円、生産額は約3,346億円です。受注は将来につながる注文、生産は実績という違いがあります。

さらに、装置以外にも分離膜・薬品・運転維持管理サービスといった要素があり、それぞれ別の調査で規模が推計されています。富士経済は水処理膜の世界市場を2030年に5,010億円規模と予測していますが、これは膜だけの、しかも世界ベースの予測です。

実務上の目安としては、まず装置の受注額 (2,505億円) を国内の装置市場の出発点に置き、膜・薬品・サービスや海外の市場を、それぞれ別の指標として横に並べて見るのが分かりやすいでしょう。1つの合計値を求めるよりも、どの指標がどの範囲を表しているかを押さえるほうが、業界の実態をつかめます。

2024年度の受注額はなぜ減ったのか?

2024年度の水質汚濁防止装置の受注額は2,505億円で、前年度比▲3.3%となりました。前年の2023年度が2,592億円と直近のピークだったことの反動もあります。

水処理装置の受注は、製造業の設備投資と自治体の下水道事業に左右されます。工場の排水を処理する産業廃水処理装置は、製造業の設備投資の動向で需要が動きます。汚泥処理装置は自治体の下水道事業に結びつき、官公需 (自治体向け) の比重が高い分野です。これらの投資は大型の案件が多く、案件の有無で年ごとの金額が動きやすい構造です。

このため、単年の増減だけで需要の強弱を判断するのは適切ではありません。2020年度の1,755億円を底とした回復基調のなかでの一時的な減少とみることもでき、中期的には上下水道の更新需要や半導体向けの投資が受注を支えると考えられます。

水処理膜の市場はなぜ拡大が見込まれるのか?

富士経済は、水処理膜の世界市場が2030年に5,010億円規模 (2023年比+54.2%) へ拡大すると予測しています。拡大が見込まれる背景には、いくつかの需要があります。

1つは水の再利用です。世界的な水不足を背景に、工場排水や生活排水を処理して再び使う動きが広がっており、逆浸透 (RO) 膜などの需要が伸びています。もう1つは半導体などのエレクトロニクス産業です。製造工程で使う超純水をつくるのに膜が不可欠で、半導体の生産設備の投資が膜の需要を押し上げています。

さらに、中東などでの海水淡水化の需要もあります。海水を真水に変えるプラントで日本メーカーの膜が採用されており、海外市場での成長が期待されています。ただし、これらは調査会社による予測値であり、実際の市場の伸びは水関連の投資や技術の動向に左右される点には留意が必要です。

中期見通し

近未来1-2年

装置の受注額は、大型案件の有無に左右されやすい局面が続きます。製造業の設備投資や自治体の下水道事業の動向で年ごとの金額が動く一方、上下水道の更新需要や半導体向けの超純水の投資が下支えとなります。膜や薬品の市場は、調査会社が水の再利用や半導体を背景に拡大を見込んでいます。

中期3-5年

国内では、上下水道の老朽化した施設の更新が受注を支える方向です。人口減で新規の整備は一巡していますが、高度成長期に整備した施設の更新や広域化・再構築が需要となります。同時に、半導体向けの超純水や工場排水の再利用など、工業用水の分野が成長を担います。市場の重心は新設から更新・再利用へと移っていきます。

長期5-10年

長期では、膜をはじめとする技術・製品の海外展開が成長機会となります。世界的な水不足を背景に、海水淡水化や水の再利用の需要が拡大し、日本メーカーの膜が採用される余地があります。国内市場が成熟するなかで、各社が海外や脱炭素・資源利用といった新しい分野へどれだけ重心を移せるかが、中長期の規模を左右します。

よくある質問

水処理業界の市場規模はどれくらいですか?
見る指標によって数字が異なります。日本産業機械工業会によると、水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は2024年度に2,505億円 (前年度比▲3.3%) です。これは装置の受注額で、市場規模そのものとは集計の範囲が異なります。別に、分離膜や薬品の市場は調査会社が推計しており、富士経済は水処理膜の世界市場を2030年に5,010億円規模と予測しています。装置・膜・薬品・サービスは、それぞれ集計の対象が異なる点に注意が必要です。
受注額と市場規模は何が違うのですか?
受注額は、装置メーカーが受けた注文の金額です。将来の売上につながる先行指標で、2024年度の水質汚濁防止装置の受注額は2,505億円でした。一方、市場規模は業界全体の取引の規模を指し、装置だけでなく膜・薬品・サービスなどを含みます。また各社の連結売上には水処理以外の事業も含まれるため、受注額や各社の売上をそのまま市場規模と見なすことはできません。
水処理装置の受注額はなぜ減少したのですか?
2024年度の水質汚濁防止装置の受注額は2,505億円で、前年度比▲3.3%となりました。前年の2023年度が2,592億円と直近のピークだった反動もあります。受注は、製造業の設備投資や自治体の下水道事業に左右され、大型の案件が多いため年ごとに金額が動きやすい分野です。2020年度の1,755億円を底とした回復基調のなかでの一時的な減少とみることもできます。
水処理膜の市場規模はどれくらいですか?
富士経済によると、水処理膜の世界市場は2030年に5,010億円規模 (2023年比+54.2%) に達すると予測されています。これは調査会社による推計・予測値で、装置の受注額とは調査対象も集計範囲も異なります。しかも世界市場の数字であり、日本市場と取り違えないよう注意が必要です。逆浸透 (RO) 膜などの膜の種類ごとの市場や、海水淡水化での日本メーカーの位置づけには、それぞれ固有の動向があります。
各社の連結売上を足せば市場規模になりますか?
なりません。栗田工業やメタウォーターなどの連結売上には、水処理以外の事業や海外事業も含まれます。また荏原のような企業では、水処理・環境は事業セグメントの一部です。そのため各社の連結売上を足し合わせても、国内の水処理市場の規模にはなりません。市場は統計や調査会社の推計で捉え、各社の規模は事業セグメント単位で見る必要があります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    日本産業機械工業会「産業機械受注状況」
  2. 2.
    日本産業機械工業会「産業機械生産実績」
  3. 3.
    富士経済「高機能分離膜/フィルター関連技術・市場の全貌と将来予測」
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