水処理業界の市場規模・主要企業・動向
日本の水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は2024年度に2,505億円となり、分離膜の製造を世界で主導する技術集約型の業界です
水処理業界とは、上下水道や工場の排水・用水を、浄化したり再利用したりするための装置、分離膜、薬品、運転維持管理サービスを供給する産業です。日本産業機械工業会によると、水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は2024年度に2,505億円 (前年度比▲3.3%) となりました。逆浸透膜などの分離膜では、東レや日東電工などの日本メーカーが製造で世界を主導するとされています。栗田工業・メタウォーター・オルガノなどが、上下水道・工業用水・産業排水といった領域ごとに事業を展開しています。本ページでは、水処理業界を、市場規模、主要企業、分離膜技術、需要構造、脱炭素・国際展開の5軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
水処理業界とは、上下水道や工場の排水・用水を浄化・再利用する装置、分離膜、薬品、運転維持管理サービスを供給する産業です。装置の受注は自治体や製造業の投資に、膜や薬品は工業需要に左右されます。分離膜の製造では日本メーカーが世界を主導するとされ、技術集約型の色合いが濃い業界です。
- 水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は2024年度に2,505億円となりました。産業廃水処理装置と汚泥処理装置が対象で、製造業の設備投資と自治体の下水道事業に左右されます。
- 分離膜の製造で日本メーカーが世界を主導するとされます。逆浸透膜などで東レ・日東電工・旭化成などが競争力を持ち、海外の海水淡水化プラントを支えています。
- 上下水道は普及がほぼ行き渡り、更新の局面にあります。一方、半導体向けの超純水は電子産業の投資を背景に需要が伸びています。
市場動向
水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は2024年度に2,505億円 (前年度比▲3.3%) となりました。コロナ禍の2020年度 (1,755億円) を底に回復し、2023年度には2,592億円まで伸びた後、2024年度はやや減少しています。装置の受注額とは別に、水処理膜の市場は調査会社が世界規模での拡大を予測しています。
- 水処理装置の受注額は2024年度に2,505億円 (前年度比▲3.3%) です。2020年度の1,755億円を底に回復し、2023年度の2,592億円から2024年度はやや減少しました。
- 水処理膜の世界市場は2030年に5,010億円規模と予測されています (富士経済、2023年比+54.2%)。これは調査会社の推計で、装置の受注額とは集計の範囲が異なります。
- 上下水道は普及がほぼ行き渡っています。水道普及率98.3%、下水道処理人口普及率81.8%で、人口減のなか更新需要が中心となっています。
競争環境
水処理業界では、栗田工業・メタウォーター・オルガノなどの専業企業が中心的な担い手です。上下水道を得意とする企業、工業用水・超純水に強い企業、産業排水や薬品に強い企業といった具合に、領域ごとに強みが分かれています。ポンプや環境プラントを手がける荏原、膜を製造する化学メーカーなども関わります。
- 専業企業が領域ごとに供給を担っています。上下水道はメタウォーター・前澤工業・水道機工、工業用水・超純水は栗田工業・オルガノ・野村マイクロ・サイエンスなどが活動しています。
- 分離膜は化学メーカーが製造を主導しています。東レ・日東電工・旭化成・東洋紡が、海水淡水化や工業用の膜を供給しています。
- 各社の連結売上には水処理以外の事業も含まれます。そのため連結売上をそのまま水処理市場の規模とは見なせず、事業セグメント単位で捉える必要があります (連結≠市場)。
市場規模推移
2018-2024 · 受注額水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額の推移 (2018-2024年度、億円)
日本産業機械工業会の統計では、水処理装置 (水質汚濁防止装置) の受注額は2024年度に2,505億円 (前年度比▲3.3%) となりました。これは工場の排水を処理する産業廃水処理装置と、下水などの汚泥処理装置を対象とした受注額 (受けた注文の金額) で、市場規模そのものとは集計の範囲が異なります。
受注額は、コロナ禍の影響を受けた2020年度の1,755億円を底に回復し、2023年度には2,592億円まで伸びました。2024年度はそこからやや減少しています。産業廃水処理装置は製造業の設備投資に、汚泥処理装置は自治体の下水道事業に左右されるため、年ごとの案件の増減で受注額が動きやすい分野です。
装置の受注額とは別に、水処理に使う分離膜や薬品の市場を調査会社が推計しています。富士経済によると、水処理膜の世界市場は2030年に5,010億円規模 (2023年比+54.2%) に達すると予測され、日本市場は同年に3,012億円規模と見込まれています。これらは調査会社による推計値で、装置の受注額とは調査対象も集計範囲も異なります。
水処理膜には、精密ろ過 (MF)・限外ろ過 (UF) 膜、逆浸透 (RO)・ナノろ過 (NF) 膜、膜分離活性汚泥法 (MBR) 用膜などがあり、取り除きたい粒子の細かさや用途で使い分けます。半導体向けの需要や水の再利用ニーズを背景に、膜の市場は拡大が見込まれています。
水処理業界で日本が強みを持つのが分離膜の製造技術です。海水を真水に変える海水淡水化や、工場排水の再利用に使う逆浸透膜などで、東レ・日東電工・東洋紡エムシー・旭化成といった日本メーカーが製造を主導するとされています。中東などの大型海水淡水化プラントでも、日本製の膜が採用されています。
国内では、淡水資源が比較的豊富なため海水淡水化の規模は限られますが、水処理膜は海外への輸出で存在感を示しています。運営ノウハウで先行する海外の水メジャーとは異なり、日本勢は膜や装置などの技術・製品で世界の水需要に応えている点が特徴です。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要水処理業界は、分離膜や水処理薬品などの素材を上流に、それらを組み込んだ装置やプラントを製造するメーカーを中核として、設計施工や運転維持管理 (O&M) を経て、自治体や製造業などの需要側へと連なる構造です。上下水道の処理施設や、工場の排水・用水の処理設備が、機器の製造から運転までを通じて供給されます。
装置メーカーには、栗田工業・メタウォーター・オルガノのように水処理を専門とする専業企業と、荏原やカナデビアのようにポンプや環境プラントの一部として水処理を手がける兼業企業があります。分離膜は、東レや日東電工などの化学メーカーが製造しています。
水処理の企業は、得意とする領域が分かれています。上下水道の設備や運転管理はメタウォーター・前澤工業・水道機工、電子産業向けの超純水は栗田工業・オルガノ・野村マイクロ・サイエンス、産業排水の処理や水処理薬品は栗田工業やオルガノといった具合です。
ただし、各社の連結売上には水処理以外の事業や海外事業も含まれます。荏原のようにポンプが主力で水処理・環境が一部の企業もあります。そのため連結売上をそのまま水処理市場の規模とは見なせず、事業セグメント単位で各社を捉える必要があります。
水処理の需要は、自治体の上下水道、製造業の工業用水・排水、電子産業の超純水などに支えられています。上下水道は普及が一巡し、老朽化した施設の更新や広域化が中心です。一方、半導体向けの超純水は電子産業の投資を背景に伸びています。
近年は脱炭素・資源利用が新たなテーマです。下水処理で発生する汚泥からバイオガス発電を行ったり、リンを回収して肥料原料に活用したりする取り組みが広がっています。海外では水不足を背景に海水淡水化の需要が拡大し、日本メーカーの膜が採用されています。
業界の3大論点
国内の水処理需要はどこにあるのか?
国内の水処理需要は、大きく2つの方向に分かれています。1つは上下水道の更新需要です。水道普及率は98.3%、下水道処理人口普及率は81.8%と普及がほぼ行き渡り、新しく整備する需要は一巡しました。今後は、高度成長期に整備した施設の老朽化に伴う更新や、人口減のなかで事業を効率化する広域化・再構築が中心となります。
もう1つは工業用水・超純水の需要です。半導体をはじめとする電子産業では、製造工程で大量の超純水を使います。半導体の生産設備の投資が続くなか、超純水装置や水の再利用の需要は伸びています。国内の水処理は、成熟した上下水道と、成長する工業用水という異なる需要を併せ持っています。
この2つは需要の性格が異なります。上下水道は自治体の財政や更新計画に、工業用水は製造業の設備投資に左右されるため、業界を捉えるには両方の動きを分けて見る必要があります。
日本の水処理業界の強みはどこにあるのか?
日本の水処理業界の強みは、分離膜をはじめとする技術・製品にあります。海水を真水に変える海水淡水化や、工場排水の再利用に使う逆浸透 (RO) 膜などで、東レ・日東電工・東洋紡エムシー・旭化成といった日本メーカーが製造を主導するとされています。中東などの大型海水淡水化プラントでも日本製の膜が採用されており、膜は日本が世界で存在感を示す分野です。
一方で、水事業の運営 (オペレーション) では、フランスのヴェオリアやスエズといった水メジャーが世界で先行しています。上下水道の運営を長期で受託するコンセッションなどの分野では、日本勢は海外大手に対して規模で見劣りします。
日本勢は、水事業の運営で世界を取るのではなく、膜・装置・薬品といった技術・製品で世界の水需要に応えるという役割で強みを発揮しています。国内で培った技術を、海外のプラントや製品の形で展開する構図です。
脱炭素や人口減は水処理にとって機会か逆風か?
脱炭素や人口減は、水処理業界にとって機会と逆風の両面を持ちます。逆風となるのは、人口減による水需要の減少です。給水人口は減少に転じており、上下水道の料金収入が細るなかで、施設の更新費用をどう賄うかが自治体の課題となっています。水道事業の経営環境は厳しさを増しています。
一方で、新たな機会も生まれています。下水処理の過程で発生する汚泥をエネルギーに変える取り組みです。汚泥から出るバイオガスで発電したり、汚泥に含まれるリンを肥料原料として回収したりする動きが広がっています。下水道は、処理するだけの施設から、エネルギーや資源を生み出す施設へと位置づけが変わりつつあります。
さらに、水不足に悩む海外では水処理の需要が拡大しており、日本勢にとっては海水淡水化や膜の輸出が成長機会となります。国内の成熟と海外・脱炭素の成長が同時に進むなか、各社は事業の重心をどう移すかが問われています。
よくある質問 (FAQ)
水処理業界の市場規模はどれくらいですか?
水処理装置の受注額はなぜ減少したのですか?
水処理業界の主な企業はどこですか?
日本の水処理膜 (RO膜) は世界でどのくらいの地位にありますか?
国内の上下水道の普及率はどれくらいですか?
各社の連結売上と水処理市場の規模は違うのですか?
半導体向けの超純水とは何ですか?
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