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水処理薬品の市場|薬品の種類と消耗品としての安定需要【2026年版】

水処理薬品は、ボイラや冷却水の水質を保ったり、排水の汚れを固めて沈めたりするために使う薬剤です。装置や膜と違い、日々使い続ける消耗品のため、需要が安定しているのが特徴です。富士経済によると、国内の水処理薬品の市場規模は1,350億円規模 (2023年見込) で、大きくは伸びないものの底堅く推移すると見込まれています。栗田工業やオルガノが薬品を手がける代表的な企業です。薬品の種類と役割、市場の特徴、主要企業を整理します。

水処理薬品の種類と役割

富士経済の分類では、ボイラ・冷却水用薬品、無機凝集剤、高分子凝集剤、殺菌・消毒用薬品の4品目

水処理薬品は、用途によって大きく分かれます。工場のボイラや冷却水に使うボイラ・冷却水用薬品は、配管に付く水あか (スケール) や金属の腐食を防ぎ、設備を長く安全に使えるようにします。排水や上下水道の処理では、細かい汚れの粒子を薬品でくっつけて塊にする凝集剤が使われます。凝集剤には、粒子を電気的にまとめる無機凝集剤と、その塊をさらに大きくして沈めやすくする高分子凝集剤があり、順に組み合わせて使います。このほか、水の中の細菌やぬめりを抑える殺菌・消毒用薬品があります。いずれも、水を処理するたびに消費される消耗品です。

ボイラ・冷却水用薬品
何をする薬品か
配管や熱交換設備に付く水あか (スケール) や、金属の腐食、ぬめり (スライム) を防ぎ、設備を長持ちさせる
主な使用先
工場やビルのボイラ・冷却塔などの熱設備
無機凝集剤
何をする薬品か
水に溶けた汚れや細かい濁りの粒子を、薬品で電気的にくっつけて小さな塊にする (凝集)
主な使用先
上下水道の浄水、工場排水の処理の前段
高分子凝集剤
何をする薬品か
凝集でできた塊をさらに大きくまとめ、沈めやすく・脱水しやすくする
主な使用先
下水汚泥の脱水、工場排水の処理
殺菌・消毒用薬品
何をする薬品か
水の中の細菌やぬめりを抑え、水質を保つ
主な使用先
冷却水、飲料水、排水などの衛生管理

ボイラ・冷却水用薬品 — 設備を守り、長持ちさせる

ボイラ・冷却水用薬品は、工場やビルの熱設備を守るための薬品です。ボイラや冷却塔では、水を繰り返し循環させて使うため、水に溶けていた成分が濃くなり、配管に水あか (スケール) が付いたり、金属が腐食したり、ぬめり (スライム) が発生したりします。これらは、設備の効率を下げたり、故障や事故の原因になったりします。

そこで、スケールの付着を防ぐ薬品、腐食を抑える薬品、ぬめりを抑える薬品などを、水に少量ずつ加えて使います。設備を止めずに安全に長く使うために欠かせない薬品で、工場やビルが操業を続けるかぎり、継続的に消費されます。装置メーカーが、水処理装置とあわせてこうした薬品や、水質を管理するサービスを提供する形が一般的です。

凝集剤 — 汚れを固めて分離する

凝集剤は、水の中の細かい汚れを固めて取り除きやすくする薬品です。排水や川の水には、そのままでは沈まない細かい濁りの粒子が含まれています。これらは電気的に反発しあってばらばらに漂っているため、まず無機凝集剤を加えて電気の反発を打ち消し、小さな塊 (フロック) にします。

次に高分子凝集剤を加えると、小さな塊どうしが橋渡しされて大きな塊になり、沈めやすく、また脱水しやすくなります。この2種類を順に使うことで、汚れを効率よく分離できます。凝集剤は、上下水道の浄水処理や、工場排水の処理、下水汚泥の脱水など、幅広い場面で使われる基本的な薬品です。

殺菌・消毒用薬品 — 水の衛生を保つ

殺菌・消毒用薬品は、水の中の細菌やぬめりを抑え、衛生を保つための薬品です。冷却水では、ぬめりのもとになる微生物が増えると、設備の性能低下や、レジオネラ菌 (肺炎などの原因になることがある細菌) などの衛生上の問題につながります。飲料水や排水でも、用途に応じた殺菌・消毒が求められます。

塩素系の薬品などを使い、水質や用途に合わせて微生物の繁殖を抑えます。これも、水を使い続けるかぎり継続的に必要となる消耗品で、水処理薬品を手がける各社が、用途ごとに製品を揃えています。

なぜ水処理薬品は装置と並ぶ事業の柱なのか

消耗品だから需要が続く

水処理薬品が事業として重要なのは、消耗品ならではの継続的な需要があるからです。装置は、一度納入すれば長く使われるため、売上は新しい案件の受注に左右されます。これに対し薬品は、水を処理するたびに消費され、なくなれば繰り返し供給されます。工場やビルが操業を続けるかぎり、薬品の需要は途切れません。

このため、装置の受注が景気や設備投資の波で年ごとに増減するのに対し、薬品の売上は安定して積み上がる性格を持ちます。企業にとっては、変動の大きい装置の受注を、安定した薬品の売上が下支えする関係になります。

装置とセットで顧客をつなぎとめる

もう一つの強みは、装置と薬品を組み合わせて提供できることです。水処理装置を納入した顧客に対し、その設備に合った薬品や、水質を管理する運転サービスを継続的に提供すれば、顧客との関係を長く保てます。装置を入り口に、薬品とサービスで継続的な収益を得るという事業の形です。

栗田工業やオルガノが薬品と装置の両方を手がけているのは、この相乗効果があるためです。薬品は単に売るものというより、装置・サービスと一体で、顧客の水処理を丸ごと支える手段として位置づけられています。水質の分析や、薬品の使い方の提案といったノウハウも、競争力の一部です。

国内市場は成熟し、横ばいで推移

水処理薬品の国内市場は、すでに成熟しています。富士経済によると、国内の水処理薬品の市場規模は1,350億円規模 (2023年見込) で、2030年も1,276億円規模と、ほぼ横ばいで推移すると見込まれています。世界で拡大が予測される分離膜とは対照的に、薬品は大きな成長が見込みにくい分野です。

背景には、国内の工場や上下水道といった需要先がすでに行き渡っていることに加え、水の使用量を減らす節水や、水を繰り返し使う再利用が進むと、処理する水そのものが減り、薬品の使用量も抑えられるという事情があります。一方で、設備を動かすかぎり薬品は必ず要るため、需要が大きく減ることもなく、底堅く推移する見通しです。

水処理薬品を手がける主要企業はどこか

栗田工業 — 薬品と装置の両輪を持つ最大手

水処理薬品の代表的な担い手が栗田工業です。栗田工業は、水処理薬品と水処理装置の両方を手がける水処理の専業最大手で、装置を納入した顧客に薬品や運転管理サービスを継続的に提供する形で、安定した収益基盤を築いています。ボイラ・冷却水用の薬品などで、国内で高い存在感を持つとされます。

なお、栗田工業の決算では、事業のセグメント (区分) が「一般水処理市場」と「電子市場」という顧客の市場ごとの区分で示されており、薬品と装置を分けた売上は開示されていません。薬品は、装置や運転サービスと一体で提供されるため、金額だけを切り出しにくいという事情もあります。

オルガノ — 電子産業向けに強く、薬品も一貫して提供

オルガノも、水処理薬品を手がける主要企業です。電子産業向けの超純水に強い専業企業で、東ソーグループに属します。オルガノの水処理事業には、逆浸透膜向けの薬品や、排水処理・冷却水処理の薬品、洗浄薬品、ボイラ用薬品といった薬品の製品群があり、装置やサービスと一体で提供しています。

装置を手がける企業が薬品も揃えるのは、顧客の水処理をまとめて引き受けられるからです。オルガノも栗田工業と同様に、装置と薬品、運転サービスを組み合わせることで、顧客との継続的な関係を築いています。

専門メーカーや化学メーカーも供給

栗田工業・オルガノのほかにも、水処理薬品を供給する企業はあります。凝集剤や殺菌剤といった特定の薬品を専門に手がけるメーカーや、素材となる化学品を製造する化学メーカーもこの分野に関わります。上下水道向けの凝集剤や、工場向けの各種薬品など、用途ごとに供給する企業が分かれています。

もっとも、水処理薬品の市場では、装置と薬品を一体で提供できる栗田工業・オルガノのような総合的な水処理企業の存在感が大きいとされます。薬品単体の性能に加えて、顧客の設備や水質に合わせた提案力や、運転を支えるサービスが、この分野の競争を左右しています。

薬品に近い消耗品 — イオン交換樹脂

イオンを取り除く消耗品

薬品と並んで、水処理で使われる消耗品にイオン交換樹脂があります。これは、水に溶けたイオン (電気を帯びた微小な成分) を取り除く小さな粒状の樹脂で、超純水や純水をつくるとき、水の硬さを下げる軟水化、排水中の重金属の除去などに使われます。薬品そのものではなく、水処理の部材に分類されますが、使い続けて性能が落ちると交換する消耗品という点で、薬品と似た性格を持ちます。

とくに、半導体づくりに使う超純水の製造では、逆浸透 (RO) 膜とイオン交換樹脂を組み合わせて、水を極限まで磨き上げます。イオン交換樹脂は、その仕上げの工程で欠かせない部材です。

世界市場は超純水向けを中心に拡大予測

イオン交換樹脂 (水処理用) の市場は、拡大が予測されています。富士経済によると、その世界市場は2030年に2,158億円規模 (2022年比+44.2%) に達すると見込まれています。半導体などのエレクトロニクスや、製薬・医薬、エネルギーといった、高い純度の水を求める分野の設備投資が需要をけん引するとされます。

これは調査会社による世界ベースの予測値で、成熟した国内の薬品市場とは、地域も対象も異なります。イオン交換樹脂の主な用途は、半導体づくりに使う超純水など、高い純度が求められる水の製造です。

主要論点

水処理薬品は、装置とどう違うのか?

水処理薬品と装置の最大の違いは、消耗品か、設備かという点です。装置は、浄水場や工場に設置される設備で、一度納入すれば長く使われます。その売上は、新しい案件をどれだけ受注できるかに左右され、年ごとの増減が大きくなります。

一方、薬品は、水を処理するたびに消費される消耗品です。ボイラや冷却水、排水処理の現場で、設備を動かすかぎり繰り返し使われるため、需要が途切れにくく、売上が安定して積み上がります。この違いから、変動の大きい装置の受注を、安定した薬品の売上が下支えするという関係が生まれます。

また、集計のうえでも両者は別物です。装置の受注額 (日本産業機械工業会の統計) と、薬品の市場規模 (調査会社の推計) は、調査の対象も範囲も異なるため、足し合わせて「水処理の市場規模」とすることはできません。

水処理薬品の市場は、なぜ大きく伸びないのか?

水処理薬品の国内市場が大きく伸びにくいのは、市場が成熟しているからです。富士経済の推計では、国内の水処理薬品の市場は1,350億円規模 (2023年見込) から、2030年も1,276億円規模とほぼ横ばいで、世界で拡大が予測される分離膜とは対照的です。

理由の一つは、国内の工場や上下水道といった需要先が、すでに行き渡っていることです。もう一つは、水を大切に使う流れです。節水や、水を繰り返し使う再利用が進むと、処理する水そのものが減り、薬品の使用量も抑えられます。効率のよい薬品や設備が普及すれば、少ない量で同じ効果が得られるため、量としての需要は伸びにくくなります。

ただし、設備を動かすかぎり薬品は必ず必要です。景気に大きく左右されず、需要が急に落ち込むこともないため、底堅く推移する安定した市場だと言えます。企業にとっては、派手な成長分野ではないものの、収益の土台を支える重要な事業です。

なぜ薬品と装置を両方手がける企業が強いのか?

薬品と装置を両方手がける企業が強いのは、顧客の水処理を丸ごと引き受けられるからです。水処理装置を納入した顧客に、その設備に合った薬品や、水質を管理する運転サービスを継続的に提供すれば、装置を入り口にした長い取引関係を築けます。

顧客にとっても、装置・薬品・運転管理を別々の会社に頼むより、一社にまとめて任せるほうが、水質の管理がしやすく、手間も減ります。栗田工業やオルガノが薬品と装置の両方を持つのは、この相乗効果を生かすためです。

この構図では、薬品単体の性能だけでなく、顧客の設備や水質に合わせた提案力や、運転を支えるサービスが競争力を左右します。薬品は、単なる製品というより、顧客との継続的な関係を支える手段として位置づけられており、総合的な水処理企業の存在感が大きい分野です。

中期見通し

近未来1-2年

水処理薬品の国内需要は、安定して推移するとみられます。工場やビル、上下水道の設備が動くかぎり、ボイラ・冷却水用薬品や凝集剤などの消耗品の需要は続きます。原材料費の上昇分を価格へ反映する動きが、金額としての市場を下支えする面もあります。装置の受注が景気で振れるなかでも、薬品は各社の収益の安定した土台であり続けます。

中期3-5年

中期では、節水・水の再利用と、薬品需要のせめぎ合いが続きます。水を繰り返し使う動きが広がると、処理する水が減り薬品の使用量は抑えられますが、一方で再利用のための処理そのものには薬品や部材が要ります。半導体などの電子産業向けでは、超純水づくりに使うイオン交換樹脂の需要が、世界的に伸びると予測されています。全体としては、大きな成長はないものの底堅い市場が見込まれます。

長期5-10年

長期では、薬品と、データ・サービスの融合が進む可能性があります。水質をセンサーで測り、必要な量の薬品を最適に投入する、といった効率化が広がれば、薬品の売り方も、量を売る形から、水質管理のサービスとあわせて提供する形へと重心が移るかもしれません。国内市場が成熟するなか、各社は、海外展開や、環境・脱炭素に関わる新しい薬品・サービスに活路を求めていくとみられます。

よくある質問

水処理薬品とは何ですか?
水処理薬品は、水処理の現場で使う薬剤です。工場のボイラや冷却水で水あか (スケール) や腐食を防ぐボイラ・冷却水用薬品、排水などの細かい汚れを固めて沈めやすくする凝集剤 (無機凝集剤・高分子凝集剤)、水の細菌やぬめりを抑える殺菌・消毒用薬品などがあります。いずれも、水を処理するたびに消費される消耗品です。
水処理薬品の市場規模はどれくらいですか?
富士経済によると、国内の水処理薬品の市場規模は1,350億円規模 (2023年見込) で、2030年も1,276億円規模とほぼ横ばいで推移すると見込まれています。これは調査会社による推計値で、装置の受注額 (日本産業機械工業会の統計) とは集計の対象が異なります。国内市場は成熟しており、世界で拡大が予測される分離膜とは対照的に、薬品は大きな成長が見込みにくい分野です。
水処理薬品はなぜ需要が安定しているのですか?
薬品が消耗品だからです。装置は一度納入すれば長く使われますが、薬品は水を処理するたびに消費され、繰り返し供給されます。工場やビル、上下水道の設備が動くかぎり薬品の需要は途切れないため、装置の受注のように年ごとに大きく増減することが少なく、安定して積み上がります。このため、変動の大きい装置の受注を、安定した薬品の売上が下支えする関係になります。
水処理薬品を手がける主な企業はどこですか?
代表的な企業は、栗田工業とオルガノです。両社とも水処理の装置と薬品の両方を手がけ、装置を納入した顧客に薬品や運転管理サービスを継続的に提供しています。栗田工業はボイラ・冷却水用薬品などで存在感を持つ専業最大手、オルガノは電子産業向けに強い専業企業です。このほか、凝集剤などを専門に手がけるメーカーや、素材を製造する化学メーカーも供給に関わっています。
イオン交換樹脂は水処理薬品ですか?
イオン交換樹脂は、薬品ではなく水処理の部材に分類されますが、使い続けて交換する消耗品という点で薬品と似ています。水に溶けたイオンを取り除く粒状の樹脂で、超純水や純水の製造、軟水化、排水中の重金属の除去などに使われます。富士経済によると、その世界市場は2030年に2,158億円規模と予測されています。これは世界ベースの予測値で、成熟した国内の薬品市場とは地域も対象も異なります。主な用途は、半導体づくりに使う超純水などの製造です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    富士経済「2023年版 水資源関連市場の現状と将来展望」(press)
  2. 2.
    栗田工業 有価証券報告書 (EDINET)
  3. 3.
    オルガノ 有価証券報告書 (EDINET)
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