最終更新
PLAYERS DETAIL · VALUE CHAIN

風力発電の主要企業とバリューチェーン|日本企業が担う役割【2026年版】

日本の風力発電では、風車本体を海外メーカーが供給する一方、日本企業はその周辺の領域で存在感を持っています。基礎工事や据付などの建設(設計・調達・建設をまとめて担うEPC)、大型風車を海上で据え付ける専用作業船(SEP船)、基礎・部材・海底ケーブルの供給、そして運転後の保守(O&M)です。発電事業そのものは、公募を通じて商社や電力会社が担っています。風車を作らなくても、建設・部材・運営の各段階で日本企業が関わる構造です。

洋上風力を支える日本企業の役割

風車本体は海外メーカーが供給し、日本企業は基礎・据付・部材・発電事業で関わる(各社IR・業界報道に基づく)

日本の風力発電は、風車本体こそ海外メーカーに依存しますが、建設・部材・運営の各段階で日本企業が関わる構造になっています。ゼネコンが基礎・据付を、五洋建設や清水建設が専用作業船を、日鉄エンジニアリングや住友電工が基礎・ケーブルを、商社・電力が発電事業を担います。風車を国産できなくても、洋上風力の拡大を国内の産業・雇用につなげられるかが、日本にとっての焦点です。

基礎工事・据付(EPC)
主な日本企業
鹿島・大林組・清水建設・大成建設・戸田建設・五洋建設 など
担う内容
海底の基礎の施工から風車の据付まで、洋上の建設工事を担う
専用作業船(SEP船)
主な日本企業
五洋建設・清水建設・鹿島 など
担う内容
大型風車を海上で据え付ける自己昇降式の作業船を建造・運用
基礎・下部構造の製造
主な日本企業
日鉄エンジニアリング・JFEエンジニアリング など
担う内容
モノパイルやジャケットなどの鋼製の基礎を製造(JFEエンジはモノパイル、日鉄エンジはジャケット・浮体基礎に強み)
部材・海底ケーブル
主な日本企業
住友電工・日本製鋼所 など
担う内容
送電用の海底ケーブルや、風車の部材を供給
発電事業者
主な日本企業
JERA・三井物産・住友商事・伊藤忠・J-POWER・丸紅 など
担う内容
公募を通じて発電事業を開発・運営(商社・電力が中心)
運転・保守(O&M)
主な日本企業
発電事業者・専門の保守会社 など
担う内容
稼働後の運転監視・定期点検・部品交換など、長期の維持管理を担う

基礎工事・据付を担うゼネコン

大手ゼネコンが洋上の建設を担う

洋上風力の建設は、海底の地盤に基礎を築き、その上に大型の風車を据え付ける大規模な土木・据付工事です。この分野は、鹿島・大林組・清水建設・大成建設・戸田建設・五洋建設などの大手ゼネコンが担います。いずれも陸上の大型土木・建築で培った技術を、洋上風力の建設に展開しています。

海洋土木に強い五洋建設

なかでも五洋建設は、港湾や海洋の土木工事(マリンコンストラクション)を主力とし、洋上風力の基礎・据付を担う中心的な存在です。専用作業船の保有でも先行しており、洋上風力を成長領域と位置づけています。戸田建設は、長崎県五島市沖で日本初の商用の浮体式洋上風力に関わるなど、浮体式でも実績を持ちます。

陸上から洋上へ広がる建設需要

これまでの風力発電の多くは陸上で、道路や基礎の造成が中心でした。洋上風力が本格化すると、海底の基礎工事や海上での据付という、より大規模で専門性の高い建設需要が生まれます。ゼネコン各社にとって、洋上風力は長期にわたる新たな建設市場であり、技術と設備への投資を進めています。

据付の要となるSEP船

SEP船とは何か

SEP船(自己昇降式作業台船)は、海上で脚を海底に下ろして船体を持ち上げ、波の影響を受けずに安定した足場をつくる作業船です。大型の風車を海上で据え付けるには不可欠で、洋上風力の建設のボトルネックにもなります。大型化する風車に対応した専用船の確保が、各社の競争力を左右します。

五洋建設・清水建設が大型船を建造

五洋建設は大型のSEP船を保有・運用し、洋上風力の据付を担っています。清水建設は、自ら航行できる自航式のSEP船「BLUE WIND」を建造しました。世界最大級の吊り上げ能力を持ち、大型風車の据付に対応します。鹿島も他社と共同でSEP船を運用しており、専用船の確保が各社の受注力につながっています。

大型化への対応が課題

洋上風車は10MW超から15MW級へと大型化が進み、部材も重く大きくなっています。既存のSEP船では対応できない場合があり、より大型の船への更新・新造が必要です。据付能力の確保は、日本の洋上風力の建設ペースを左右する要素で、各社が設備投資を続けています。

基礎・部材・海底ケーブルの供給

鋼製の基礎を製造

洋上風車を海底に固定する基礎は、大型の鋼構造物です。海底に1本の太い鋼管を打ち込むモノパイルや、鋼材を組んだやぐら状のジャケットなどの方式があります。JFEエンジニアリング(JFEグループ)は国内初のモノパイル専用工場を設け、日鉄エンジニアリング(日本製鉄グループ)はジャケットや浮体式の基礎に強みを持つなど、国内企業が製造・施工を担います。国内での基礎の量産体制を整えられるかが、国内調達比率の目標にも関わります。

海底ケーブルと風車部材

洋上で発電した電力を陸へ送るには、海底ケーブルが必要です。住友電工は、送電用の海底ケーブルを供給する主要企業です。また、風車の部材では、かつて風車本体も手がけた日本製鋼所などが、部材の分野で関わっています。これらの部材は、洋上風力のコストと信頼性を支える要素です。

国内調達の鍵を握る部材

風車本体を海外に依存する日本にとって、基礎・部材・ケーブルの国内供給は、国内調達比率を高める要になります。国内に部材工場や基地港湾を整備する動きも進んでおり、洋上風力を「輸入する電源」から「国内の産業」へと広げられるかが問われています。

発電事業者としての商社・電力

公募で選ばれる企業連合

発電事業そのものを担うのは、再エネ海域利用法の公募で選ばれる企業連合です。中心となるのは、JERA(東京電力ホールディングスと中部電力の合弁)・三井物産・住友商事・伊藤忠・J-POWER・丸紅などの商社・電力会社です。海外の再エネ事業者(RWE、BPなど)や地元の電力会社と組んで応札します。

商社・電力が担う理由

洋上風力の発電事業は、数千億円規模の長期投資で、金融・海外の知見・電力事業の運営力が求められます。商社は海外の再エネ事業やプロジェクトファイナンス(事業自体が生む収益を返済の原資とする資金調達)の経験を、電力会社は発電・売電の運営力を持ち込みます。両者が組むことで、大規模で長期の事業を成立させています。

三菱商事は発電事業者(三菱重工とは別)

第1ラウンドを総取り後に撤退した三菱商事も、発電事業者としての参入でした。発電事業者の三菱商事と、風車メーカーから撤退した三菱重工は別の会社です。商社・電力にとって洋上風力は成長投資の一つですが、三菱商事の撤退が示すように、資材高騰などで採算が悪化するリスクもあり、事業者の見極めが続いています。

主要論点

風車を作れない日本企業は、どこで稼ぐのか?

風車本体の供給は海外メーカーが担いますが、風力発電のバリューチェーンは風車だけではありません。日本企業は、基礎工事・据付などの建設(EPC)、専用作業船(SEP船)、基礎・部材・海底ケーブルの供給、運転後の保守(O&M)で存在感を持っています。

特に洋上風力では、海底の基礎工事や海上での据付という大規模で専門性の高い工事が必要で、大手ゼネコンの技術が生きます。据付に使うSEP船は、五洋建設や清水建設が世界最大級の船を建造しました。基礎・部材・ケーブルでも、日鉄エンジニアリングや住友電工などが供給を担います。

風車という「製品」では海外に負けても、洋上風力という「プロジェクト」を成立させる建設・部材・運営の力は日本企業が持っています。洋上風力の拡大は、これらの企業にとって長期の事業機会になります。

国内調達比率60%の目標は、達成できるのか?

政府と産業界は、2040年までに洋上風力の国内調達比率を60%へ高める目標を掲げています。風車本体は海外依存が続く見通しですが、基礎・部材・据付・保守などで国内企業の関与を増やせば、達成に近づきます。

実際に、ゼネコンの基礎工事・据付、五洋建設・清水建設のSEP船、日鉄エンジニアリングの基礎、住友電工の海底ケーブルなど、国内のバリューチェーンは形になりつつあります。国内に部材工場や基地港湾を整備する動きも進んでいます。

ただし、国内調達を進めるには、コストと品質、量産体制の確保が前提です。海外から安く調達できる部材を国内で作る場合、コスト増をどう吸収するかが課題になります。国内産業の育成と、洋上風力のコスト低減をどう両立させるかが、目標達成の鍵です。

発電事業者にとって、洋上風力はどんな事業か?

洋上風力の発電事業は、数千億円規模の長期投資です。公募で選ばれた事業者は、最長30年にわたって海域を使い、風車の建設から運営までを担います。商社は海外の再エネ事業やプロジェクトファイナンスの経験を、電力会社は発電・売電の運営力を持ち込み、企業連合を組んで参入しています。

一方で、事業のリスクも大きいことが表面化しました。第1ラウンドを低い価格で総取りした三菱商事は、資材高騰で採算が悪化し、全案件から撤退しました。長期の大型プロジェクトでは、資材価格や金利の変動が事業の成否を左右します。

発電事業者にとって、洋上風力は脱炭素の流れに沿った成長投資である一方、コスト変動をどう管理するかが問われる事業です。公募制度の見直しや、価格の設計が、事業者が安心して投資できるかを左右します。

中期見通し

近未来1-2年

第2・第3ラウンドで選ばれた案件が設計・準備の段階に入り、ゼネコンやSEP船、部材メーカーへの発注が具体化していきます。大型化する風車に対応した専用作業船の確保が、建設ペースを左右します。

中期3-5年

選ばれた案件が建設・稼働に向かい、国内のバリューチェーンが本格的に動き出します。基礎・部材の国内工場や基地港湾の整備が進み、国内調達比率を高める取り組みが具体化します。一方、資材価格の動向が各社の採算を左右します。

長期5-10年

浮体式の実用化が進めば、係留や特殊な基礎など、新たな技術・部材の需要が生まれます。風車本体は海外依存が続く見通しですが、建設・部材・運営の各段階で日本企業がどこまで関与を広げられるかが、洋上風力を国内産業に育てられるかを決めます。

よくある質問

日本の風力発電で活躍している企業はどこですか?
風車本体は海外メーカーが供給しますが、日本企業は周辺の領域で活躍しています。基礎工事・据付は鹿島・大林組・清水建設・五洋建設などのゼネコン、専用作業船(SEP船)は五洋建設・清水建設、基礎・部材・海底ケーブルは日鉄エンジニアリング・住友電工などが担います。発電事業はJERA・三井物産・住友商事・J-POWERなどの商社・電力が担っています。
SEP船とは何ですか?
SEP船(自己昇降式作業台船)は、海上で脚を海底に下ろして船体を持ち上げ、安定した足場をつくる作業船です。大型の風車を海上で据え付けるのに不可欠で、五洋建設が大型船を保有・運用し、清水建設は自航式の「BLUE WIND」を建造しました。据付能力の確保が、洋上風力の建設ペースを左右します。
洋上風力の基礎や海底ケーブルはどこが作っていますか?
洋上風車を海底に固定する鋼製の基礎(モノパイルなど)は、日鉄エンジニアリングやJFEエンジニアリングなどが製造・施工します。発電した電力を陸へ送る海底ケーブルは、住友電工などが供給します。これらの部材の国内供給は、国内調達比率を高める鍵になります。
洋上風力の発電事業者はどんな会社ですか?
再エネ海域利用法の公募で選ばれる企業連合で、JERA(東京電力ホールディングスと中部電力の合弁)・三井物産・住友商事・伊藤忠・J-POWER・丸紅などの商社・電力会社が中心です。海外の再エネ事業者や地元企業と組んで応札します。数千億円規模の長期投資のため、金融・海外・電力運営の知見を持つ企業が担います。
三菱商事と三菱重工は同じ会社ですか?
別の会社です。第1ラウンドの公募を落札後に撤退した三菱商事は、発電事業者として参入していました。一方、風車の製造から撤退したのは三菱重工業で、こちらは風車メーカーです。同じ「三菱」でも、洋上風力での役割は異なります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    各社IR・プレスリリース(五洋建設・清水建設・鹿島・大林組・日本製鋼所・住友電工・J-POWER・三井物産・住友商事 等)
  2. 2.
    洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会「洋上風力産業ビジョン(第1次)」(2020年)
📄 資料DL💬 無料相談