再エネ(風力)業界の市場規模・主要企業・動向
日本の風力発電は累積6,434MW(2025年末)まで導入が進む一方、新規の風車は海外メーカーが独占し、成長の主役は洋上風力へ移りつつあります
風力発電業界とは、風の運動エネルギーで風車を回して発電する設備の建設・運転・保守と、それを支える風車・部材・工事の産業領域を指します。日本の風力発電は2025年末で累積6,434.2MW(2,866基)まで導入が進みましたが、その約96%は陸上で、洋上はまだ約253MW(約4%)です。新規に導入される風車はシーメンスガメサ・GE・エネルコンなど海外メーカーが占め、三菱重工や日立など国内の重工メーカーは大型風車から撤退しています。2030年・2040年の導入目標の柱は洋上風力ですが、第1ラウンドを総取りした三菱商事の撤退(2025年8月)に象徴される事業環境の逆風に直面しています。本ページでは、日本の風力発電業界を、導入量、メーカー構造、洋上風力、政策・経済性、日本企業の役割の5軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
風力発電業界とは、風車による発電設備の建設・運転・保守と、それを支える風車・部材・工事の産業領域です。日本では脱炭素の流れを背景に導入が進み、累積6,434.2MW(2025年末)に達しましたが、その大半は陸上で、洋上はこれからの段階にあります。
- 累積導入量は6,434MWまで拡大しています。2010年代を通じて着実に増え、2024年には新規導入が過去最高を記録しましたが、2025年は減速しており、増加ペースの鈍化が論点となっています。
- 風車メーカーは海外勢が独占しています。新規導入される風車は実質100%がシーメンスガメサ・GE・エネルコンなどの欧米メーカーで、三菱重工や日立など日本の重工メーカーは大型風車から撤退しています。
- 洋上風力が政策の柱に据えられています。2030年・2040年の導入目標の中心は洋上ですが、累積はまだ約253MWで、第1ラウンド公募の三菱商事撤退など事業環境の逆風に直面しています。
市場動向
累積導入量は2025年末に6,434.2MW(2,866基)へ達し、2024年末(5,840.4MW)から前年比+10.2%増えました。ただし新規導入は2024年の703MWをピークに2025年は625MWへ減速し、陸上中心の成長が一巡しつつあります。
- 累積導入量は2025年末に6,434.2MW(2,866基) に到達しました。2010年の約2,338MWから着実に拡大し、2020年に加速、2023〜2024年に再加速しましたが、2025年の新規は625MW(正味595MW)へ減速しています。
- 導入量の約96%は陸上(約6,181MW)、洋上は約4%(253MW) です。立地は風況の良い北海道(約1,281MW)・青森(約962MW)・秋田(約913MW)など北日本に偏在し、2025年は福島が最大の新規導入地でした。
- 新規導入の風車メーカー別シェアは海外勢が独占しています。2025年はシーメンスガメサ41%(255.6MW)・GE38%(234.4MW)・エネルコン20%(126.6MW)で、上位3社で約99%を占めました。
競争環境
日本の風力発電のプレイヤーは、海外の風車メーカー・発電事業者(商社/電力)・工事や保守を担う日本のゼネコンや部材メーカーの3層に整理できます。風車本体は海外勢が独占する一方、洋上風力の建設・基礎・SEP船・部材では日本企業が存在感を持ち、商社・電力は公募を通じて発電事業者として参入しています。
- 風車メーカーは海外勢の寡占です。シーメンスガメサ・GE・ヴェスタス・エネルコンが新規導入を占め、日本の重工メーカーは大型風車から撤退しました。
- 発電事業者は商社・電力が中心です。洋上風力の公募では、JERA・三井物産・住友商事・伊藤忠・J-POWERなどが企業連合を組んで参入しています。
- 工事・基礎・SEP船・部材は日本企業の主戦場です。鹿島・大林組・清水建設・五洋建設などのゼネコン、SEP船(洋上で風車を据え付ける自己昇降式の作業船)を運用する五洋建設・清水建設、海底ケーブルの住友電工などが支えています。
市場規模推移
2010-2025 · 累積導入量 / 単年導入量(正味)風力発電の累積導入量の推移 (2010-2025年、MW、JWPA)
風力発電の単年導入量の推移 (2010-2025年、正味、MW、JWPA)
日本の風力発電は2025年末で累積6,434.2MW(2,866基)まで導入が進みました。2010年の約2,338MWから着実に増え、2020年に加速、新規導入が2024年に703MWで過去最高を記録しました。
ただし2025年の新規は625MW(正味595MW)に減速し、増加ペースの鈍化が懸念されています。累積の約96%は陸上で、洋上は約4%(253MW)にとどまります。立地は風況の良い北海道・青森・秋田など北日本に偏り、1基あたりの平均出力も2010年頃の約2.0MWから約3.5MWへと大型化が進んでいます。
新規に導入される風車は、実質100%が海外メーカーです。2025年の新規導入はシーメンスガメサ(スペイン)41%、GE(米国)38%、エネルコン(ドイツ)20%で、上位3社で約99%を占めました。順位は年によって変動しますが、上位は常に欧米勢です。
三菱重工はデンマークのヴェスタスとの合弁を2020年に解消し、日立も2019年に風車製造から撤退しました。一方、太陽光と異なり中国製風車の国内シェアは現状わずかです。累積ベースでは日本の重工メーカーの設備も残りますが、いずれも本体供給からは退いています。
洋上風力は脱炭素の柱と位置づけられ、2030年に1,000万kW、2040年に3,000〜4,500万kWの案件形成目標が掲げられています。ただしこれは運転開始量ではなく、国の認定を受けた案件形成の目標で、現実の洋上累積は約253MW(その大半が海底に基礎を固定する着床式で、風車を海に浮かべる浮体式は実証段階)です。
再エネ海域利用法に基づく公募では、第1ラウンド(2021年)を三菱商事グループが3海域すべて落札しましたが、資材高騰などを受けて2025年8月に全案件の撤退を表明しました。第2ラウンド以降は事業者を分散させ、実施時期を重視する方式に見直されています。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要日本の風力発電は、風車を供給する海外メーカー、発電事業を担う商社・電力、建設や保守を担う日本のゼネコン・部材メーカーの3層で構成されます。風車本体はシーメンスガメサ・GE・エネルコンなど海外勢が独占し、日本の重工メーカーは大型風車から撤退しました。
発電事業者は、洋上風力の公募を通じて参入する商社や電力会社が中心です。建設段階では、基礎工事・据付を担うゼネコンや、専用作業船(SEP船)・基礎・海底ケーブルを供給する日本企業が支えています。
日本企業の主戦場は風車本体ではなく、その周辺領域です。洋上風力の建設では、鹿島・大林組・清水建設・大成建設・戸田建設・五洋建設などの大手ゼネコンが基礎工事や据付を担います。
据付の要となるSEP船(自己昇降式作業台船)は、五洋建設や清水建設(自航式の「BLUE WIND」)が大型風車に対応する船を建造しました。基礎・下部構造の製造では日鉄エンジニアリング、海底ケーブルでは住友電工などが供給を担い、運転後の保守(O&M)も国内企業の事業領域です。
業界の共通課題は、系統(送電網)の制約・環境アセスメント・コスト・地域との共生です。風況の良い北海道や東北は需要地から遠く、発電した電力を送る送電網の整備が前提になります。
洋上風力では建設コストの高さに加え、資材高騰が採算を圧迫しています。第1ラウンドの公募を総取りした三菱商事グループが2025年に全案件の撤退を表明するなど、事業環境は厳しさを増しています。着床式に続く浮体式の実用化と、政策の後押しによるコスト低減が今後の焦点です。
業界の3大論点
なぜ日本に風車メーカーが残らなかったのか?
日本の新規導入の風車は、いまや実質100%が海外メーカーです。2025年はシーメンスガメサ・GE・エネルコンの3社で約99%を占めました。かつては三菱重工・日立・日本製鋼所などが風車を手がけていましたが、いずれも大型風車から撤退しています。
背景には複数の要因があります。第1に国内市場の小ささで、固定価格買取制度(FIT)が始まる2012年以前は導入が伸びず、量産による規模の経済が働きにくい状況が続きました。第2に欧米メーカーの規模とコストの優位で、ヴェスタスやシーメンスガメサは世界市場での量産を背景に、大型化と低コスト化で先行しました。三菱重工は2014年にヴェスタスと洋上風力の合弁(MHIヴェスタス)を設立しましたが2020年に解消し、日立も2019年に風車の自社生産から撤退しています。
結果として、日本勢は風車本体での競争から退き、基礎工事・据付・部材・運転保守といった周辺領域に軸足を移しました。風車の調達は海外メーカーに依存する構造が当面続く見通しです。
洋上風力は日本のエネルギーの柱になれるのか?
政府は洋上風力を脱炭素の柱と位置づけ、2030年に1,000万kW、2040年に3,000〜4,500万kWの案件形成目標を掲げています。ただしこれは国の認定を受けた案件形成の目標で、実際の運転開始量とは異なります。現実の洋上累積は約253MWにとどまり、目標との間には大きな開きがあります。
事業環境は厳しさを増しています。再エネ海域利用法の第1ラウンドを総取りした三菱商事グループは、資材高騰やインフレで採算が悪化し、2025年8月に全3案件の撤退を表明しました。低い応札価格で落札したことが、コスト上昇局面で重荷になったとされています。第2ラウンド以降は、価格だけでなく事業の実施時期を重視し、事業者を分散させる方式に見直されました。
洋上風力には系統(送電網)の制約・環境アセスメント・コストという共通の課題があり、北海道など適地と需要地を結ぶ送電網の整備が前提になります。着床式に続いて浮体式の実用化も模索されており、政策の後押しと事業採算の両立が今後の焦点です。
風車本体で勝てない日本企業はどこで価値を出すのか?
風車本体の供給は海外メーカーが担いますが、風力発電のバリューチェーンは風車だけではありません。日本企業は基礎・据付などの工事(EPC)、専用作業船、部材、運転保守(O&M)で存在感を持っています。
洋上風力の建設では、鹿島・大林組・清水建設・大成建設・戸田建設・五洋建設などの大手ゼネコンが基礎工事や据付を担います。とくにSEP船(自己昇降式作業台船)は据付の要で、五洋建設や清水建設(自航式の「BLUE WIND」)が大型風車に対応する船を建造しました。基礎・下部構造の製造では日鉄エンジニアリング、海底ケーブルでは住友電工などが供給を担っています。
発電事業者の立場では、商社や電力会社が公募を通じて参入しています。JERA・三井物産・住友商事・伊藤忠・J-POWERなどが企業連合を組み、開発・運営に関わっています。風車を作らなくても、建設・部材・運営の各段階で日本企業が関与できる構造で、国内調達比率を高める政策目標とも整合します。
よくある質問 (FAQ)
日本の風力発電の導入量はどれくらいですか?
風力発電は陸上と洋上でどう違いますか? 日本の内訳は?
日本の風車メーカーはどこですか? なぜ海外メーカーばかりなのですか?
洋上風力の導入目標はどうなっていますか?
三菱商事の洋上風力撤退とは何ですか?
風力発電のコストや買取制度(FIT/FIP)はどうなっていますか?
風力発電の主な課題は何ですか?
日本企業は風力発電でどんな役割を担っていますか?
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