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固定通信の業界構造|回線設備を持つ事業者と小売の役割分担【2026年版】

固定通信の業界構造を、回線設備を持つ事業者と、その回線を借りて利用者に届ける小売の事業者という役割分担から整理します。NTT東日本・西日本の光ファイバ卸を中心に、自前で光回線を敷くKDDIやソニー、CATVのJCOM、光コラボのISP、法人向けの回線事業者まで、固定通信がどう組み立てられているかを順に見ていきます。

固定通信の業界構造

回線設備を持つ事業者と小売の事業者の役割分担

固定通信は、回線設備を持つ事業者と、その設備を借りて利用者にサービスを届ける小売の事業者に役割が分かれています。設備側にはNTT東西の光ファイバ卸、自前で光回線を敷く事業者、CATV事業者があり、小売側には光コラボのISPと法人向けの回線事業者が並びます。NTT東西は設備の中心であると同時に、ドコモ光などを通じて小売にも関わっています。

NTT東西の光ファイバ卸
役割・特徴
光ファイバ網を敷設し、光コラボ向けに卸売する。FTTHの卸シェアは57.8%
代表的なプレイヤー
NTT東日本・西日本
自設FTTHの事業者
役割・特徴
自前の光回線を敷設し、利用者まで一貫して提供する
代表的なプレイヤー
KDDI(auひかり)・ソニーネットワークコミュニケーションズ(NURO光)・アルテリアネットワークスなど
CATV事業者
役割・特徴
同軸ケーブルなどの自前網でインターネットと放送を提供する
代表的なプレイヤー
JCOMなど
光コラボのISP(小売)
役割・特徴
NTT東西の光回線を借り、自社ブランドで利用者にサービスを提供する
代表的なプレイヤー
NTTドコモ(ドコモ光)・ソフトバンク(ソフトバンク光)・楽天グループ(楽天ひかり)・ビッグローブなど
法人向け回線事業者
役割・特徴
IP-VPN・専用線・閉域網などを企業向けに提供する
代表的なプレイヤー
IIJ・NTTコミュニケーションズ・アルテリアネットワークスなど

設備を持つ事業者と小売の分業 — なぜ役割が分かれるのか

固定通信の中心にあるのは、家庭や企業まで光ファイバを引き込むアクセス回線です。この回線を全国に敷設するには大きな投資が必要で、最も広い網を持つのがNTT東日本・西日本です。NTT東西はこの光ファイバ網を自社で使うだけでなく、ほかの事業者にも貸し出す卸売を行っており、FTTHの卸シェアは57.8%(2,390万契約)にのぼります。

この卸売の仕組みにより、自前で回線を敷かない事業者でも、NTT東西の回線を借りて利用者にサービスを提供できます。回線を借りて自社ブランドで売る事業者が小売にあたり、設備を持つ事業者と小売の事業者という役割分担が生まれました。利用者から見ると、同じNTTの光回線でも、契約する相手はドコモやソフトバンクなど多様です。

NTT東西の光卸と光コラボの広がり

2015年に始まった光コラボレーション制度は、NTT東西の光回線を他の事業者が借りて、自社のブランドで提供できる仕組みです。これにより、ドコモ光・ソフトバンク光・楽天ひかりといったコラボ光が生まれました。コラボ光の契約数は1,771万契約で、FTTH全体の42.9%、NTTの光回線に占める割合は74.1%に達しています。

固定ブロードバンド全体での、利用者から見た提供主体(ISP)別シェアでは、NTTドコモが16.7%で首位、ソフトバンクが15.9%で続きます。設備はNTT東西に集中する一方、小売では携帯電話とのセット販売を武器に複数の事業者が競う形が定着しました。光コラボの詳しい仕組みは関連ページで扱います。

自設FTTHとCATV — 自前の回線を持つ事業者

NTT東西の回線を借りずに、自前で光回線を敷く事業者もあります。KDDIはauひかりを、ソニーネットワークコミュニケーションズはNURO光(FTTHシェア4.0%)を、アルテリアネットワークスは集合住宅向けの回線(同2.4%)を、それぞれ独自の設備で提供しています。自前の回線は、卸料金に縛られず、速度やサービスを差別化しやすい利点があります。

同軸ケーブルなどの自前網を使うCATV事業者も、固定通信の一角を担います。最大手のJCOMは、サービス提供が可能なホームパスが2,208万世帯、いずれかのサービスに加入する世帯が562万世帯で、KDDI 株式会社 + 住友商事株式会社の合弁 (50:50)です。CATVは放送と通信を兼ね、地域に密着したサービスが特徴ですが、近年は自らも光回線サービスへ移行しています。JCOMの詳細は関連ページで扱います。

法人向け回線と政策上の論点

企業向けの固定通信では、拠点間を安全につなぐIP-VPNや、専用の回線を貸し切る専用線、それらを柔軟に運用するSD-WANなどが提供されます。IIJやNTTコミュニケーションズ、アルテリアネットワークスなどが、データセンター接続や閉域網を含む企業ネットワークの需要を支えています。家庭向けとは異なり、品質や可用性が重視される領域です。

固定通信全体を貫く論点が、回線設備の集中です。アクセス回線の多くをNTT東西が握るため、その卸料金の水準やNTT法の在り方が、競争環境を左右する政策テーマとして議論されています。光コラボ制度は小売の選択肢を広げましたが、設備を持つ事業者と回線を借りる事業者の関係をどう整えるかは、引き続き検討が続いています。

主要論点

なぜ設備を持つ事業者と小売の事業者に分かれているのか?

固定通信では、光ファイバ網などの設備を持つ事業者と、その回線を借りて利用者に売る小売の事業者が役割を分けています。背景には、アクセス回線の敷設に大きな投資が必要なことがあります。家庭や企業まで光ファイバを引き込む網を全国に整えるのは容易ではなく、最も広い網を持つNTT東西がその回線を卸売することで、ほかの事業者も参入できるようになりました。

この分業により、自前で回線を敷かない事業者でも、NTT東西の回線を借りて自社ブランドで提供できます。2015年の光コラボレーション制度がこの流れを後押しし、コラボ光は1,771万契約まで広がりました。設備の保有と小売の提供を分けることで、利用者の選択肢が増え、携帯電話とのセット販売など多様な売り方が生まれています。

一方、自前で光回線を敷く事業者(KDDI・ソニー・アルテリアなど)やCATV事業者も併存します。これらは卸料金に縛られず差別化しやすい反面、設備投資の負担を負います。設備を持つか借りるかは、各社の戦略によって分かれており、固定通信は設備と小売が層をなす構造になっています。

NTT東西の光卸への集中は競争にどう影響するのか?

固定通信の回線設備は、NTT東西に大きく集中しています。FTTHの卸シェアは57.8%(2,390万契約)で、コラボ光を含めると多くの利用者がNTTの光回線を使っています。小売では複数の事業者が競っていても、その土台となる回線の多くを1社グループが握っている構造です。

このため、NTT東西が設定する卸料金の水準は、光コラボの事業者にとって仕入れ値にあたり、小売価格や競争に直接影響します。卸料金が下がれば小売の競争が活発になり、上がれば各社の収益が圧迫されます。NTT東西の卸が公正に行われているかは、総務省が継続的に注視する政策テーマです。

さらに、NTT法の在り方も論点です。NTTグループの事業範囲や規律をどう定めるかは、設備を持つ事業者と借りる事業者の関係に関わります。光コラボ制度は小売の選択肢を広げましたが、設備の集中をどう扱うかは、固定通信の競争環境を左右し続ける課題として残っています。

自設FTTH・CATV・光コラボはどうすみ分けているのか?

固定通信には、回線の作り方が異なる事業者が併存しています。光コラボのISPはNTT東西の回線を借りて売る形で、ドコモ光・ソフトバンク光・楽天ひかりなどがあります。携帯電話とのセット販売で利用者を囲い込みやすく、ISP別シェアではドコモが16.7%、ソフトバンクが15.9%を占めます。

自設FTTHの事業者は、自前の光回線で差別化します。KDDIのauひかりや、ソニーのNURO光(FTTHシェア4.0%)は、卸回線に縛られない速度やサービスを訴求し、アルテリアネットワークス(同2.4%)は集合住宅向けの一括導入に強みを持ちます。CATVのJCOMは、放送と通信を兼ね、加入562万世帯の地域基盤を生かしています。

これらは、価格やセット販売を軸にする光コラボ、速度や独自サービスを軸にする自設FTTH、放送と地域密着を軸にするCATVというように、強みの置き方ですみ分けています。利用者は、料金・速度・付帯サービスのどれを重視するかで選ぶことになり、領域ごとに主要なプレイヤーが分かれているのが固定通信の実態です。

中期見通し

近未来1-2年

光コラボを軸にした小売の競争が続くとみられます。市場が成熟するなか、各社は携帯電話とのセット販売や、10ギガなどの高速サービスで利用者の囲い込みを進めます。NTT東西の卸料金の動向や、NTT法をめぐる議論が、競争環境を左右する要素になります。

中期3-5年

回線設備の構成は、光回線を中心に収れんしていく見通しです。CATVやメタル回線からFTTHへの移行が進み、CATV事業者も光回線サービスへ広げています。設備を持つ事業者と小売の事業者の分業はおおむね維持される一方、固定と移動を一体で売る動きが強まります。

長期

人口・世帯数の減少を背景に、固定回線の総需要は頭打ちに向かう可能性があります。回線設備の維持・更新の負担をどう分担するか、また固定電話網のIP化と合わせて、設備を持つ事業者の役割をどう位置づけるかが、長期の論点になります。

よくある質問

固定通信にはどんな種類の事業者がいますか?
回線設備を持つ事業者と、その回線を借りて利用者に売る小売の事業者に分かれます。設備側にはNTT東西の光ファイバ卸、自前で光回線を敷くKDDI・ソニー・アルテリアなど、CATVのJCOMがあります。小売側には光コラボのISP(ドコモ・ソフトバンク・楽天など)と、法人向けの回線事業者(IIJ・NTTコミュニケーションズなど)がいます。
光コラボとNTT東西の卸はどういう関係ですか?
NTT東日本・西日本は光ファイバ網を敷設し、その回線を他の事業者に卸売しています。FTTHの卸シェアは57.8%です。2015年に始まった光コラボレーション制度では、この回線を借りた事業者が自社ブランドで提供でき、ドコモ光・ソフトバンク光などのコラボ光(計1,771万契約)が生まれました。
自前で回線を持つ事業者はどこですか?
KDDIがauひかり、ソニーネットワークコミュニケーションズがNURO光(FTTHシェア4.0%)、アルテリアネットワークスが集合住宅向けの回線(同2.4%)を、それぞれ自前の光回線で提供しています。CATVではJCOMが同軸ケーブルなどの自前網を持ち、加入562万世帯の地域基盤を築いています。
なぜNTT東西の卸料金やNTT法が論点になるのですか?
固定通信の回線設備はNTT東西に集中しており、FTTHの卸シェアは57.8%です。NTT東西が設定する卸料金は光コラボ事業者の仕入れ値にあたり、小売価格や競争に直接影響します。このため卸が公正かどうか、またNTTグループの事業範囲を定めるNTT法の在り方が、競争環境に関わる政策テーマとして議論されています。
法人向けの固定通信は家庭向けと何が違いますか?
法人向けでは、拠点間を安全につなぐIP-VPNや、回線を貸し切る専用線、SD-WANなどが中心です。品質や可用性、セキュリティが重視され、IIJやNTTコミュニケーションズ、アルテリアネットワークスなどがデータセンター接続や閉域網を含む企業ネットワークを支えています。家庭向けの量販とは異なる、個別の要件に応じたサービスが特徴です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    MM総研「固定ブロードバンド市場、緩やかな成長続く」
  2. 2.
    JCOM株式会社 会社データ
  3. 3.
    総務省「NTT東日本・西日本における光回線の卸売サービスの提供」
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