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海外大手と国内ベンダーの競争位置|世界の基地局市場と日本勢【2026年版】

世界の基地局市場では、Ericsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となっています。Ericssonの基地局を担うNetworks部門はグループ売上の約64%を占める主力事業です。各社は本国の通貨で、しかも事業区分の切り方も異なる形で売上を開示しており、横並びの単純な比較はできません。日本勢の世界シェアは限られていますが、基地局の機器を複数のメーカーで組み合わせられるようにするOpen RANが、海外大手の牙城に食い込む機会として注目されています。

海外大手と国内ベンダーの競争位置 — 世界の基地局市場

海外大手4社の通信機器事業と、国内勢・通信半導体の供給構造

世界の基地局市場を握る海外大手の通信機器事業を、下の表にまとめました。各社は本国の通貨(スウェーデン・クローナ、ユーロ、人民元)で、しかも事業区分の切り方も異なる形で開示しているため、数字を並べて単純に比較したり合算したりはできません。通貨をそろえたおおまかな目安として、為替を1ドル=約10.5クローナ・約0.92ユーロ・約7.2元と仮定すると、EricssonのNetworksは約140億ドル、NokiaのMobile Networksは約85億ドル、HuaweiのICT Infrastructureは約520億ドルの規模感です。ただしHuaweiのICT Infrastructureは通信網に加えて法人ITも含む広い区分で、基地局中心のEricsson Networksより対象範囲が広いため、基地局に近い事業だけで比べればこの差は縮まります。あくまで為替や区分の前提で変わる概算です。

なお、表に示した利益率は、EricssonがEBIT利益率、Nokiaが営業利益率と、各社の開示指標で定義が少し異なります。世界シェアの正確な順位は調査会社の有料データに依存するため、ここでは各社の開示値と位置づけを整理し、順位の断定はしていません。

Ericsson(スウェーデン)
通信機器の事業区分
Networks(基地局が主軸)
直近の売上(本国通貨)
1,510億クローナ(FY2025)
競争上の特徴
グループ売上の約64%、EBIT利益率19.7%
Nokia(フィンランド)
通信機器の事業区分
Mobile Networks(5G基地局)
直近の売上(本国通貨)
78億ユーロ(FY2025)
競争上の特徴
営業利益率2.8%、Ericssonと直接競合
Huawei(中国)
通信機器の事業区分
ICT Infrastructure(通信網+法人IT)
直近の売上(本国通貨)
3,750億元(FY2025)
競争上の特徴
米国の輸出規制対象、区分が広く単純比較は不可
Samsung(韓国)
通信機器の事業区分
Networks(基地局)
直近の売上(本国通貨)
単独非開示
競争上の特徴
スマホ事業に統合して開示、5G基地局を展開

Ericsson — 世界の基地局を担うNetworksが主力

Ericsson(スウェーデン)は、世界の基地局市場でリーダー格の一角を占めるメーカーです。基地局を担うNetworks部門の売上は1,510億クローナ(FY2025)で、グループ売上(2,476億クローナ)の約64%を占める主力事業です。通信機器(ネットワーク)を主軸に据えた、専業に近い体制が特徴です。

収益性も高く、NetworksのEBIT利益率は19.7%(FY2025)と前年から改善しています。前年比では売上が減少しており、世界的な通信設備投資の一巡を映していますが、北米市場の回復などが利益率を押し上げました。基地局のハードからソフトまでを一体で提供する統合型の強みを持ちます。

Ericssonは、Open RANにも対応を進めており、特定メーカーに依存しない構成を求めるキャリアの需要にも応えようとしています。日本勢のNECや富士通にとっては、最も意識すべき競合の一社です。

Nokia — Mobile NetworksでEricssonと直接競合

Nokia(フィンランド)は、5G基地局を担うMobile NetworksでEricssonと直接競合しています。Mobile Networksの売上は78億ユーロ(FY2025)で、前年から減少しました。光トランスポートや固定アクセスを担うNetwork Infrastructure、Cloud and Network Servicesなど複数の事業を持つ点はEricssonと異なります。

収益性には課題があり、Mobile Networksの営業利益率は2.8%(FY2025)と前年(5.5%)から低下しました。世界的な設備投資の一巡に加え、価格競争の影響を受けています。光通信のInfineraを買収するなど、ネットワーク基盤の領域を広げる動きも見せています。

NokiaもOpen RANへの対応を進めており、Ericssonとともに、統合型とオープン型の双方でキャリアの需要を取り込もうとしています。EricssonとNokiaは、欧州を地盤とする2大ベンダーとして、世界の基地局市場で長く競合してきました。

Huawei — 世界最大級だが米国の輸出規制下

Huawei(中国)は、通信機器で世界最大級の規模を持つメーカーです。通信網と法人ITを合わせたICT Infrastructure事業の売上は3,750億元(FY2025)で、前年から増加しました。ただしこの区分は、基地局などの通信網(旧Carrier business)に加えて法人向けIT(旧Enterprise business)も含む広い区分で、基地局中心のEricssonやNokiaと対象範囲が異なる点に注意が必要です。

Huaweiは、2019年に米国のEntity List(米政府が安全保障上の懸念から取引を制限する企業リスト)に加えられ、米国製の半導体やソフトの調達が制限されました。この輸出規制は同社の事業に大きな打撃を与えましたが、近年は中国国内の需要や自社開発で回復の過程にあります。米国や日本、欧州の一部では、5G網からHuawei製機器を排除する動きも進みました。

Huaweiをめぐる動きは、通信機器が経済安全保障と密接に結びつくことを示しています。経済安全保障と各国の規制の詳細は、Open RANと経済安保のページで扱います。

Samsung — スマホ事業に統合された基地局

Samsung(韓国)は、5G基地局を手がけるメーカーですが、基地局事業(Networks)をスマートフォンなどのモバイル事業(MX)に統合して開示しており、四半期の決算資料では基地局単独の売上は分かりません。半導体やスマートフォンを主力とする巨大企業の中で、基地局は一事業という位置づけです。

それでもSamsungは、米国や韓国、日本の一部キャリアに5G基地局を供給し、Open RANにも対応を進めています。Huawei製機器を排除する動きの中で、その代替の供給元として存在感を高めた面もあります。基地局を専業に近い形で手がけるEricsson・Nokiaとは、事業構造が大きく異なるプレイヤーです。

通信半導体の上流競争層 — 機器は作れても半導体は海外

海外大手も国内ベンダーも、基地局や機器を作るうえで欠かせないのが通信半導体です。携帯通信を処理するbaseband(通信処理を担う半導体)や、無線信号を扱うRFIC、基地局のネットワーク用半導体などがあり、機器の性能を大きく左右します。

この通信半導体は、Qualcomm・Broadcom・Marvell(米)やMediaTek(台湾)といった海外勢が中心です。国内ではルネサスやソニーセミコンダクタが半導体を手がけていますが、こと通信半導体に関しては周辺的な位置にとどまります。世界シェアの正確な数値は調査会社の有料データに依存するため本ページでは示しませんが、主役が海外勢であることは各社の事業構造から確認できます。

つまり、日本勢が機器の組み立てで存在感を出しても、その中の半導体は海外に依存するという二重構造があります。これは経済安全保障の観点でも論点で、機器の供給網全体を見たときに、どこで海外に依存しているかを把握することが重要になります。

国内勢の競争位置 — Open RANという食い込みの機会

世界の基地局市場でのNEC・富士通の世界シェアは、海外大手と比べると限られています。統合型の機器を一体で提供する海外大手に対し、経営資源の集中度でも差があります。日本勢が真正面から世界シェアを争うのは容易ではありません。

その中で機会となるのがOpen RANです。基地局の機能を分離し、複数のメーカーの機器を組み合わせられるようにすることで、海外大手の統合型機器に依存せずに基地局を構築できます。NECはVodafone(英)やBT(英)など海外キャリアとの契約を主導し、富士通も富士通Symphonyで取り組んでいます。経済安全保障の観点から特定メーカーへの依存を避けたいキャリアの需要も、国内勢の追い風です。

ただし、Open RANはまだ採用が広がる途上で、性能や運用で統合型機器と競う必要があります。国内ベンダー同士の事業構造の違いは国内ベンダー比較のページ、Open RANと政策の詳細はOpen RANと経済安保のページで扱います。

業界の3大論点

海外大手による基地局の供給は、Open RANで崩れるか?

世界の基地局市場は、長くEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となってきました。これらの大手は、基地局のハードとソフトを一体で提供する統合型の機器で世界に展開しており、ZTEを含む少数の大手に世界シェアが集中しています。

この構造に変化をもたらしうるのがOpen RANです。基地局の機能を分離して複数メーカーの機器を組み合わせられるようにすることで、特定の大手に依存しない構成が可能になります。NEC・富士通・楽天Symphonyなどが海外キャリアとの契約を進めており、Huawei製機器の排除や供給網の多様化を求める流れも、新規参入の追い風になっています。

ただし、Open RANはまだ採用が広がる途上です。統合型の機器に比べて、性能や運用、機器同士の相性の検証といった課題があり、海外大手自身もOpen RANに対応を進めています。構造が実際に変わるかは、今後の採用の広がりと国内勢の製品の成熟度次第です。

日本勢は基地局機器に食い込むべきか、上流・下流に注力すべきか?

世界の基地局市場で日本勢の世界シェアは限られており、統合型の機器を一体で提供する海外大手とは経営資源の集中度でも差があります。一方、日本勢は上流の光ファイバーや下流の通信工事といった領域で確かな地位を持っています。どこに経営資源を集中すべきかは、戦略的な論点です。

基地局機器への食い込みでは、Open RANが現実的な入口です。NECは海外キャリアとの契約で実績を積み、富士通は光通信の伝送装置に強みを持ちます。全方位で海外大手と争うのではなく、Open RANや光通信といった特定の領域に絞って存在感を出す戦略です。

現実的には、追い風のある光ファイバーや通信工事で安定した収益を確保しつつ、Open RANで基地局機器に段階的に食い込む二段構えが選択肢になります。経済安全保障の観点から供給網の多様化が求められる流れも、この戦略を後押ししています。

機器は作れても半導体は海外依存という構造をどう見るべきか?

通信機器は、海外大手であれ国内ベンダーであれ、その中核に通信半導体を必要とします。そして、基地局や機器に使うbasebandやRFICといった通信半導体は、Qualcomm・Broadcom・Marvellなどの海外メーカーが中心で、国内勢は周辺的な位置にとどまります。

この「機器は作れても半導体は海外」という二重構造は、日本勢に限った話ではありません。Ericsson・Nokia・Samsungなども、通信半導体の多くを海外の専門メーカーから調達しています。半導体の設計・製造には巨額の投資と専門性が必要で、機器メーカーが自前で抱えることは容易ではないためです。

この構造は、経済安全保障の観点で論点になります。機器の供給網を多様化しても、その中の半導体が特定の国・企業に集中していれば、供給網全体の安定は確保しきれません。機器だけでなく半導体まで含めて供給構造を捉えることが、産業政策にも企業戦略にも求められています。

中期見通し

近未来1-2年

世界的な通信設備投資の一巡で、海外大手の通信機器事業は売上の伸び悩みが続く局面です。その中でNEC・富士通のOpen RAN海外契約の進展が、日本勢の存在感を測る指標になります。Huaweiをめぐる各国の規制と、その代替供給の動きも続きます。

中期3-5年

5Gの高度化やOpen RANの採用が広がるなかで、統合型とオープン型の競争が本格化します。供給網の多様化を求める政策が、特定メーカーへの依存を避ける動きを後押しし、日本勢を含む新規参入の機会につながるかが論点です。通信半導体の海外依存は構造として残ります。

長期5-10年

6Gの実用化が想定される2030年ごろに向けて、海外大手と国内勢の競争の構図が変わる可能性があります。経済安全保障の観点から、機器だけでなく通信半導体まで含めた供給網の見直しが進めば、調達構造や各社の競争位置が変わることも考えられます。

よくある質問

5G基地局は誰が作っているのですか?
世界の5G基地局市場では、Ericsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者で、ZTEを含む少数の大手に世界シェアが集中しています。Ericssonの基地局を担うNetworks部門はグループ売上の約64%を占める主力事業です。日本勢のNEC・富士通はOpen RANを通じた参入の機会を探っています。
海外大手の通信機器事業はどれくらいの規模ですか?
各社は本国の通貨で、しかも事業区分の切り方も異なる形で開示しているため、単純な比較はできません。Ericssonの基地局中心のNetworksは1,510億クローナ(FY2025)、Nokiaの5G基地局のMobile Networksは78億ユーロ(FY2025)、Huaweiの通信網と法人ITを含むICT Infrastructureは3,750億元(FY2025)です。Huaweiの区分は対象範囲が広い点に注意が必要です。
なぜHuaweiは規制の対象になっているのですか?
Huaweiは2019年に米国のEntity List(米政府が安全保障上の懸念から取引を制限する企業リスト)に加えられ、米国製の半導体やソフトの調達が制限されました。米国や日本、欧州の一部では5G網からHuawei製機器を排除する動きも進みました。通信機器が経済安全保障と密接に結びつくことを示す例で、詳細はOpen RANと経済安保のページで扱います。
日本の通信機器メーカーは世界で戦えていますか?
世界の基地局市場でのNEC・富士通の世界シェアは、海外大手と比べると限られています。統合型の機器を一体で提供する海外大手に対し、経営資源の集中度でも差があります。一方で、基地局の機能を分離するOpen RANが参入の機会で、NECはVodafoneやBTなど海外キャリアとの契約を主導しています。
通信半導体は誰が作っているのですか?
基地局や機器に使う通信半導体(baseband・RFICなど)は、Qualcomm・Broadcom・Marvell(米)やMediaTek(台湾)といった海外勢が中心です。国内ではルネサスやソニーセミコンダクタが半導体を手がけていますが、こと通信半導体では周辺的な位置にとどまります。機器は作れても中の半導体は海外に依存する構造があります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    Ericsson Annual Report 2025 (p.21)
  2. 2.
    Nokia Annual Report 2025 (p.76)
  3. 3.
    Huawei Annual Report 2025 (p.23)
  4. 4.
    Samsung Electronics(005930)四半期決算説明会資料
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