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通信インフラ・設備の市場規模|需要側と供給側で異なる見方【2026年版】

通信インフラ・設備の市場規模は、需要側と供給側、産業規模、世界規模でとらえ方が異なり、単一の数字では捉えにくい産業です。国内民間企業の電気通信機器投資は2023年に3.5兆円で、民間のICT投資16兆円の一部にあたります。供給側の通信機器の国内生産額は約6.5兆円、産業全体を示す情報通信産業の名目GDPは57.4兆円、世界のICT市場支出は2024年に5.02兆ドル規模です。さらに、通信機器ベンダーや通信工事会社の受注を左右するもうひとつの需要源として通信キャリアの設備投資があり、近年はデータセンター向けの光ファイバー需要も加わっています。本ページでは、これらの指標が測る対象を整理し、規模感のつかみ方を示します。

需要側|民間電気通信機器投資
3.5兆円
2023年。民間企業のICT投資16兆円の一部、設備投資全体の17.5%
出典: 総務省 情報通信白書 令和7年版
供給側|通信機器の国内生産額
約6.5兆円
2023年。通信機械器具・無線応用装置の国内生産額。調査品目の見直しで前年比較は不可
出典: 経済産業省 生産動態統計
世界|ICT市場支出
5.02兆ドル
2024年。IT・通信サービス、機器、ソフトウェア等を含む世界全体
出典: Canalys(情報通信白書経由)
産業規模|情報通信産業の名目GDP
57.4兆円
2023年。通信・放送・情報サービス等9部門、全産業の約10%
出典: 総務省 情報通信白書 令和7年版

市場規模の主なとらえ方

需要側・供給側・産業規模・世界で測る対象が異なる。単一の系列に連結・合算できない
需要側|民間電気通信機器投資
規模(直近値)
3.5兆円(2023年)
何を測るか
国内の民間企業が通信機器に投じた設備投資。民間のICT投資16兆円の一部
供給側|通信機器の国内生産額
規模(直近値)
約6.5兆円(2023年)
何を測るか
国内で生産された通信機械器具・無線応用装置の生産額。輸出やキャリア向けも含む。調査品目の見直しで前年との単純比較はできない
世界|ICT市場支出
規模(直近値)
5.02兆ドル(2024年)
何を測るか
IT・通信サービス、機器、ソフトウェアなどを含む世界全体のICT支出。設備市場より広いマクロ規模
産業規模|情報通信産業の名目GDP
規模(直近値)
57.4兆円(2023年)
何を測るか
通信・放送・情報サービスなど9部門が生む付加価値。機器・設備の市場規模より広い産業全体の概念
読み解き

通信インフラ・設備の市場規模のとらえ方は、需要側と供給側で異なります。需要側の民間電気通信機器投資は3.5兆円(2023年)で、国内の民間企業が機器に投じた設備投資を示します。一方、供給側の国内生産額は約6.5兆円(2023年)で、国内で生産された機器の生産額を示し、輸出やキャリア・政府向けの分も含むため需要側の民間投資より広い範囲をとらえます。両者は対象が異なるため、片方をもう片方の代わりに使ったり、足し合わせたりはできません。

これらの設備市場の指標に対し、情報通信産業の名目GDP57.4兆円は通信・放送・情報サービスなどを含む産業全体の付加価値、世界のICT市場支出5.02兆ドルは世界全体のサービス・機器・ソフトを含む支出で、いずれも設備市場そのものより広いマクロ規模です。また、供給側の国内生産には輸出が含まれますが、機器の国際取引全体で見ると、日本のICT財の貿易収支は2024年に約3.4兆円の赤字です。携帯電話機やパソコンの輸入が電子部品の輸出を上回っており、日本は通信関連の機器では純輸入国となっています。

世界のICT市場支出の推移(2017-2025年、兆ドル)

2024年は5.02兆ドル、2025年は予測値。通信インフラ設備単独ではなく業界を取り巻くマクロ規模
単位: 兆ドル
01.534.563.5173.7183.9193.9204.3214.5224.7235245.425
出典: Canalys(総務省 情報通信白書 令和7年版 経由)
年度201720182019202020212022202320242025
世界ICT市場支出兆ドル3.503.723.853.924.304.494.665.025.44
前年比+6.3%+3.5%+1.8%+9.7%+4.4%+3.8%+7.7%+8.4%
読み解き

世界のICT市場支出は、2017年の3.5兆ドルから2024年の5.02兆ドルへと、7年で約43%拡大しました。2025年は予測値で、引き続き拡大が見込まれています。この数値はIT・通信サービスにソフトウェア、インフラ、デバイス、サイバーセキュリティなどを加えた世界全体のICT支出で、通信インフラ・設備はその一部にあたります。

この世界ICT市場は、通信インフラ・設備そのものの市場規模ではなく、業界を取り巻くマクロの需要環境を示す参考指標です。サービス・ソフトウェアを含む広い裾野の需要が拡大していることが、国内の通信機器・光ファイバー・通信工事の供給を間接的に支えています。特に近年は、生成AIを背景としたデータセンター投資が世界のICT支出を押し上げ、光ファイバーなどの設備需要にもつながっています。

民間企業のICT投資の内訳(2023年、兆円)

ソフトウェア・電気通信機器・コンピュータの3区分。合計は民間情報化投資16兆円 (2015年価格)
項目投資額(兆円)構成比シェア
ソフトウェア9.861.3%
電気通信機器3.521.9%
コンピュータ・同付属装置2.716.9%
合計(民間情報化投資)16100.0%
読み解き

通信インフラ・設備の需要側を示す電気通信機器投資3.5兆円は、民間企業のICT投資16兆円の中に位置づけられます。内訳はソフトウェアが9.8兆円と最も大きく全体の約61%を占め、電気通信機器3.5兆円が約22%、コンピュータ・同付属装置2.7兆円が約17%です。企業のICT投資はソフトウェアが中心で、通信機器は2割前後を占める構図です。

この16兆円は民間企業の設備投資全体の17.5%にあたり、2015年の価格を基準に算出されています。利用料として支払うクラウドサービスの費用は、設備への投資ではないためこの内訳には含まれていません。通信機器投資はソフトウェアやコンピュータと並んで企業のデジタル投資を構成しており、5GやOpen RAN(基地局の機器を複数のメーカーで組み合わせられるようにする方式)といった新しい技術の普及が今後の投資額を左右していきます。

キャリアの設備投資(需要側)— 主要4社の直近実績

通信機器・設備のもうひとつの需要源。各社のIR開示定義が異なり単純な合算はできない
NTT(持株)
直近の設備投資
2兆3,260億円(FY2025)
集計範囲
連結全社(ドコモ含む)。FY2026は2兆4,300億円を予想
KDDI
直近の設備投資
6,790億円(FY2024)
集計範囲
連結キャッシュフローベース。FY2025は7,200億円を計画
SoftBank
直近の設備投資
3,412億円(FY2025)
集計範囲
コンシューマ・エンタープライズ事業区分(IFRS16の影響を除く)
楽天モバイル
直近の設備投資
262億円(FY2026 Q1)
集計範囲
ネットワーク関連設備投資、四半期のみ公表(通期は非公表)
読み解き

通信機器・設備の需要は、民間企業の設備投資だけでなく、通信キャリアの設備投資にも支えられています。キャリアが基地局やコアネットワークに投じる設備投資は、NEC・富士通などのベンダーや、コムシスHD・EXEOなどの通信工事会社の受注源となります。NTTは連結で2兆3,260億円(FY2025)、KDDIは連結キャッシュフローベースで6,790億円(FY2024)規模の設備投資を行っています。

ただし、各社が開示する設備投資は「連結全社」「事業区分」「ネットワーク関連」と集計の範囲が異なり、横並びの単純な比較や合算はできません。本表の数値は各社のIR開示(移動体通信業界ページと共通の決算資料)に基づき、設備の需要側という観点から整理したものです。キャリア各社の設備投資の詳細や5G・6G戦略は、移動体通信業界のページで扱っています。

業界の3大論点

通信インフラ・設備の市場規模は、結局いくつの数字で語るべきか?

通信インフラ・設備の市場規模を尋ねられたとき、ひとつの数字で答えることは適切ではありません。需要側の民間電気通信機器投資は3.5兆円、供給側の国内生産額は約6.5兆円、産業全体の情報通信産業の名目GDPは57.4兆円、世界のICT市場支出は5.02兆ドルと、測る対象によって規模は大きく変わります。

なぜこれだけ差が出るのかというと、それぞれが切り取る範囲が違うからです。民間電気通信機器投資は国内の民間企業が機器に投じた額に限られ、通信キャリアや政府の投資、輸出は含みません。国内生産額はこれに輸出やキャリア・政府向けの生産を加えるため大きくなります。情報通信産業の名目GDPは機器だけでなく通信・放送・情報サービスまで含む産業全体の付加価値です。

読者にとって大切なのは、知りたい問いに合った指標を選ぶことです。国内企業の機器需要を見たいなら民間投資、国内の生産力を見たいなら生産額、産業全体の経済規模を見たいなら名目GDPが適しています。本ページはこれらを併置し、ひとつの作られた市場規模で代用しない立場をとっています。

通信機器・設備の需要を動かす主役は、民間投資かキャリア投資か?

通信機器・設備の需要を測る代表的な指標は民間電気通信機器投資3.5兆円ですが、これは民間企業のICT投資16兆円の一部で、なかでもソフトウェアが9.8兆円と最も大きい構成です。企業のデジタル投資の中心はソフトウェアに移りつつあり、機器投資は約22%の位置にあります。

一方、通信機器ベンダーや通信工事会社にとって最大の需要源は通信キャリアの設備投資です。NTTは連結で2兆3,260億円、KDDIは6,790億円規模の設備投資を行っており、これが基地局やコアネットワークの機器・工事の受注につながります。民間企業のオフィス機器投資とは桁の異なる需要が、キャリア側から生まれています。

近年はここにデータセンター需要が加わりました。生成AIを背景としたデータセンターの拡大が、サーバー間やデータセンター間を結ぶ光ファイバーの需要を押し上げています。需要の主役は単一ではなく、民間投資・キャリア投資・データセンター需要の複数の流れが、それぞれ異なる設備分野を動かしている構図です。

国内の通信機器生産は縮小しているのか?

経済産業省の生産動態統計を見ると、通信機械器具の国内生産額は2021年の約8.7兆円から2023年の約6.5兆円へと縮小しているように見えます。しかし、この数字をそのまま長期トレンドとして読むことには注意が必要です。

経済産業省は調査する品目を毎年見直しており、対象品目が年々絞り込まれています。特に2024年は調査品目が大きく削減され、生産額は前年の約1割の水準まで落ち込みましたが、これは実際の生産の急減ではなく、統計がとらえる範囲の不連続によるものです。このため、年次間の単純な比較や、多年の連続したトレンドとしての解釈はできません。

国内生産の実態をとらえるには、生産動態統計を最新の比較可能年(2023年の約6.5兆円)のある時点の値として使いつつ、需要側の民間投資やキャリア設備投資、上場メーカー各社の事業別売上といった複数の指標を併せて見る必要があります。単一の統計に依存せず、複数の角度から規模感をつかむことが、この業界では特に重要です。

中期見通し

近未来1-2年

データセンター向けの光ファイバー需要と、通信キャリアの5G設備投資が需要を支える局面が続きます。NTTは連結で2兆4,300億円(FY2026予想)規模の設備投資を計画しており、ベンダーや通信工事会社の受注環境は底堅く推移する見通しです。民間企業のICT投資ではソフトウェアの比重が高い状態が続きます。

中期3-5年

5Gの高度化(5G-Advanced)やOpen RANの採用が進むなかで、通信機器投資の中身が変わっていきます。民間のICT投資全体ではソフトウェアやクラウド利用が拡大する一方、機器投資は5GやOpen RANの普及度合いに左右されます。供給側では、国内生産統計の不連続を補うため、上場メーカーの事業別売上を併せて規模を把握する必要性が高まります。

長期5-10年

6Gの実用化が想定される2030年ごろに向けて、次世代の通信機器・設備への投資が新たな需要を生む可能性があります。同時に、経済安全保障の観点から通信機器の供給網の見直しが進めば、国内生産や国内調達の位置づけが変わることも考えられます。市場規模のとらえ方自体も、産業構造の変化に合わせて見直しが必要になっていく局面です。

よくある質問

通信インフラ・設備業界の市場規模はどれくらいですか?
測る対象によって規模は異なります。需要側を示す民間電気通信機器投資は2023年に3.5兆円、供給側を示す通信機器の国内生産額は約6.5兆円、産業全体を示す情報通信産業の名目GDPは57.4兆円です。世界のICT市場支出は2024年に5.02兆ドル規模に達しています。これらは測る対象が異なる別の数字であり、ひとつの数字に連結したり合算したりはできません。
なぜ通信インフラ・設備の市場規模はひとつの数字で示されないのですか?
通信インフラ・設備はバリューチェーンが通信機器・光ファイバー・通信半導体・通信工事の4分野に分かれ、それぞれの統計が測る範囲が異なるためです。民間企業の設備投資、国内の生産額、産業全体の付加価値、世界のICT支出はいずれも切り取る範囲が違い、単一の市場規模で代用すると実態を見誤ります。知りたい問いに合った指標を選ぶことが大切です。
国内の通信機器の生産額はどれくらいですか?
経済産業省の生産動態統計によると、通信機械器具・無線応用装置の国内生産額は2023年に約6.5兆円です。ただし、経済産業省は調査する品目を毎年見直しており、特に2024年は調査品目が大きく削減されたため前年との単純な比較ができません。長期のトレンドとしてではなく、最新の比較可能年(2023年)のある時点の値として見る必要があります。
通信キャリアの設備投資はどれくらいの規模ですか?
通信キャリアの設備投資は、通信機器ベンダーや通信工事会社の主要な需要源です。NTTは連結で2兆3,260億円(FY2025)、KDDIは連結キャッシュフローベースで6,790億円(FY2024)、SoftBankはコンシューマ・エンタープライズ事業区分で3,412億円(FY2025)規模です。各社の開示定義が異なるため単純な比較はできません。詳細は移動体通信業界のページで扱っています。
世界のICT市場規模はどれくらいですか?
世界のICT市場支出は2024年に5.02兆ドル規模に達しています。これはIT・通信サービスにソフトウェア、インフラ、デバイス、サイバーセキュリティなどを加えた世界全体のICT支出で、通信インフラ・設備そのものの市場ではなく業界を取り巻くマクロ規模を示す参考指標です。生成AIを背景としたデータセンター投資の拡大が、この支出を押し上げています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    総務省 令和7年版 情報通信白書(第1章「ICT産業の動向」)
  2. 2.
    経済産業省 生産動態統計調査(通信機械器具及び無線応用装置)
  3. 3.
    NTT・KDDI・SoftBank・楽天グループ 各社IR(2026年5月発表)
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