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Open RANと経済安全保障|次世代通信と供給網をめぐる動き【2026年版】

Open RANは、基地局の機器を複数のメーカーで組み合わせられるようにする方式で、特定の海外大手に依存しない通信網を築く技術として注目されています。日本企業の5G基地局の世界シェアは約2%にとどまり、Open RANは国内勢の数少ない機会です。背景には、通信機器の供給網を経済安全保障の観点から見直す各国の政策があり、Huawei製機器の排除や、Beyond 5G(6G)への投資、経済安全保障推進法による規律が進んでいます。

Open RANはなぜ注目されるのか

基地局の機能を分離して組み合わせる

Open RAN(Open Radio Access Network)は、基地局を構成する機器の間のインタフェースをオープンな仕様にし、複数のメーカーの機器を組み合わせて基地局を構築できるようにする方式です。従来は、基地局のハードウェアとソフトウェアを1社が一体で提供する統合型が主流で、いったん導入すると同じメーカーの機器で揃えるのが一般的でした。Open RANは、この「1社にまとまる」構造を分解しようとする技術です。

特定ベンダーへの依存を避ける

Open RANの狙いは、特定の海外大手への依存を避け、ベンダーを多様化することにあります。機器を組み合わせられれば、新規のメーカーが一部の機器だけで参入でき、供給網の選択肢が広がります。総務省は、ベンダーの多様化、供給網の強靱化、セキュリティ面を含むイノベーションの創出、競争の促進、ネットワークの透明性の確保といった点を、Open RANのメリットとして挙げています。

日本勢にとっての数少ない機会

日本企業の5G基地局の世界シェアは、総務省の資料によると約2%(2024年・出荷額)にとどまり、市場は海外企業が支配しています。統合型の基地局で海外大手と真正面から競うのは容易ではないなか、機器を組み合わせるOpen RANは、日本勢が一部の機器や得意な領域で食い込める数少ない機会として位置づけられています。

日本勢はOpen RANにどう取り組んでいるか

キャリアとベンダーの取り組み

国内では、楽天モバイルが商用開始時からネットワークを仮想化し、Open RANを全面的に採用しています。機器ベンダーでは、NECがVodafone(英)やBT(英)など海外の大手キャリアとの契約を主導し、富士通も富士通Symphonyを通じてOpen RANに取り組んでいます。NTTドコモやKDDI、ソフトバンクも一部で導入や試験を進めており、国内は楽天モバイルが先行し他社が部分的に続く構図です。

標準化を進めるO-RAN Alliance

Open RANの仕様の標準化は、O-RAN Alliance(基地局の機能分離の仕様を策定する業界団体)が中心となって進めています。世界の通信事業者や機器メーカーなど約226社が参加し、機器同士をつなぐインタフェースの共通化を進めています。仕様が共通化されるほど、複数メーカーの機器を組み合わせやすくなり、新規参入の余地が広がります。

国による海外展開の後押し

日本政府も、Open RANの海外展開を後押ししています。総務省は、デジタル海外展開支援事業による実証や事業活動の支援を行い、日米比首脳会談で合意したフィリピン・マニラでの実証や、アジアオープンRANアカデミーへの支援、国際的なシンポジウムの開催などを通じて、同志国との協力プロジェクトの形成を進めています。日本勢の機器の海外への売り込みと、供給網の多様化を一体で進める狙いです。

なぜ通信機器が経済安全保障の対象になるのか

通信網は重要なインフラ

通信網は、国民生活や経済活動を支える重要なデジタルインフラです。その機器が特定の国・企業に依存していると、供給が止まったり、安全性に懸念が生じたりしたときに、社会全体が影響を受けます。総務省は、通信網が特定の機器に依存することが、経済的な威圧に直面するリスクやサプライチェーンのリスクを高めると指摘しています。

Huawei製機器の排除という動き

この懸念が具体的に表れたのが、Huaweiをめぐる動きです。米国は2019年にHuaweiをEntity List(安全保障上の懸念から取引を制限する企業リスト)に加え、米国製の半導体やソフトの調達を制限しました。米国・日本・欧州の一部では、5Gの通信網からHuawei製の機器を排除する動きが進みました。通信機器が、純粋な性能や価格だけでなく、安全保障の観点から選ばれるようになったことを示す出来事です。

供給網の強靱化という課題

こうしたなかで各国が共通して重視するのが、供給網(サプライチェーン)の強靱化です。重要な物資や機器を特定の供給元に頼りすぎないよう、調達先を多様化し、安定供給を確保することが求められています。Open RANによるベンダーの多様化も、この供給網の強靱化という大きな流れの一部に位置づけられます。

政策はどう動いているか

次世代通信への投資(Beyond 5G)

総務省は、次世代の通信技術であるBeyond 5G(6G)の研究開発と国際標準化を、基金を通じて支援しています。2021年にNICT(情報通信研究機構)に設置した時限の基金を後継の基金へと引き継ぎ、民間事業者などの研究開発を後押ししています。6Gの実用化は2030年ごろが目標とされ、次世代の主導権をめぐる国際競争のなかで、日本の技術と標準化の取り組みを支える狙いです。

同志国との連携と米国の動き

Open RANの普及は、一国だけでは進みません。日本を含む同志国(米英豪印加など)が連携し、ベンダーの多様化と供給網の強靱化を進めています。米国も、Open RANの普及を支援する基金を設けるなど、官民で取り組みを後押ししています。基地局市場の競争を促し、特定の海外大手に依存しない構造をつくることが、各国に共通する政策の方向です。

供給網を規律する経済安全保障推進法

日本の供給網の規律の柱が、経済安全保障推進法(令和4年法律第43号、正式名「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」)です。この法律は、電気通信や放送などを国民生活に不可欠な「特定社会基盤役務」と位置づけ、その重要な設備の導入や維持管理について、安全性の観点から事前の審査などの規律を設けています。通信機器の調達が、経済安全保障の枠組みの中で扱われるようになっています。

Open RANと経済安全保障をめぐる主な政策・制度

技術の推進と供給網の規律が、技術・政策の両面で進んでいる
Open RANの推進
内容
基地局の機器を複数メーカーで組み合わせ、ベンダーの多様化と供給網の強靱化を図る
主体
総務省・同志国(米英豪印加など)
Beyond 5G(6G)基金
内容
次世代通信の研究開発と国際標準化を支援(NICTの時限基金の後継)
主体
総務省
経済安全保障推進法
内容
電気通信などの重要なインフラの設備導入・維持管理を事前審査で規律
主体
内閣府(令和4年法律第43号)
特定企業への輸出規制
内容
安全保障上の懸念から特定企業の機器を排除・取引を制限(5G網からの排除)
主体
米国(Entity List、2019年)など
読み解き

Open RANと経済安全保障をめぐる動きは、技術の推進供給網の規律の両面で進んでいます。技術の面では、Open RANの推進やBeyond 5G(6G)への投資が、特定の海外大手に依存しない通信網と次世代技術の主導権を狙います。供給網の面では、経済安全保障推進法が電気通信を重要なインフラとして規律し、米国などの輸出規制が特定企業の機器を排除します。これらが一体となって、通信機器の調達構造を動かしています。

業界の3大論点

Open RANは、海外大手の牙城を本当に崩せるのか?

Open RANは、基地局の機器を複数メーカーで組み合わせられるようにすることで、海外大手が統合型の機器で握ってきた基地局市場に、新規メーカーが参入できる入口とされています。経済安全保障の観点から供給網の多様化が求められる流れも、特定の海外大手への依存を避けたいキャリアにとって追い風です。

一方で、Open RANはまだ採用が広がる途上です。統合型の機器に比べて、性能や運用、機器同士の相性の検証といった課題があり、海外大手自身もOpen RANへの対応を進めています。組み合わせの自由度と引き換えに、複数メーカーの機器をまとめて運用する難しさもあります。

構造が実際に変わるかは、今後の採用の広がりと、国内勢を含む新規メーカーの製品の成熟度次第です。日本企業の5G基地局シェアが約2%にとどまる現状を、Open RANがどこまで動かせるかが問われています。

経済安全保障で、通信機器の供給網はどう再編されるのか?

通信機器は、純粋な性能や価格だけでなく、経済安全保障の観点から選ばれるようになりました。米国による2019年のHuaweiの輸出規制と、各国の5G網からの排除は、その象徴的な動きです。重要なインフラである通信網が、特定の国・企業の機器に依存するリスクを避ける流れが強まっています。

日本では、経済安全保障推進法が電気通信を特定社会基盤役務に位置づけ、重要な設備の導入を規律しています。同志国との連携によるベンダーの多様化も進み、調達先を特定の供給元に集中させない方向が共通の政策となっています。

この再編は、日本勢にとって機会でもあります。供給網の多様化が求められるほど、特定の海外大手に代わる選択肢としての国内勢やOpen RANの価値が高まります。ただし、機器に使う半導体の海外依存など、供給網全体で見たときの課題は残ります。

シェア約2%の日本勢は、Open RANで巻き返せるのか?

日本企業の5G基地局の世界シェアは約2%(2024年・出荷額)にとどまります。統合型の基地局で海外大手と真正面から競うのは難しく、Open RANは数少ない巻き返しの機会と位置づけられています。NECは海外キャリアとの契約で実績を積み、富士通や楽天Symphonyも取り組みを進めています。

ただし、巻き返しには条件があります。Open RANの採用が世界で広がること、国内勢の機器が性能と運用の面で統合型に対抗できること、そして政府の海外展開支援が具体的な受注に結びつくことが必要です。O-RAN Allianceでの標準化や、同志国との協力プロジェクトは、その土台づくりにあたります。

現実的には、Open RAN単独で一気にシェアを取り戻すのは難しく、光ファイバーや通信工事といった日本勢が強い領域と組み合わせながら、段階的に存在感を高める戦略になります。Open RANは、その中核の一つです。

よくある質問

Open RANとは何ですか?
Open RAN(Open Radio Access Network)は、基地局を構成する機器の間のインタフェースをオープンな仕様にし、複数のメーカーの機器を組み合わせて基地局を構築できるようにする方式です。従来は1社が一体で提供する統合型が主流でしたが、Open RANは機能を分離して機器の組み合わせを可能にし、特定の海外大手に依存しない通信網を築く技術として注目されています。
日本企業はOpen RANで強いのですか?
日本企業の5G基地局の世界シェアは、総務省の資料によると約2%(2024年・出荷額)にとどまり、市場は海外企業が支配しています。統合型の基地局で海外大手と競うのは難しいなか、機器を組み合わせるOpen RANは日本勢の数少ない機会です。楽天モバイルが全面的に採用し、NEC・富士通が海外キャリアとの契約を進めていますが、採用はまだ広がる途上です。
なぜHuaweiは規制の対象になったのですか?
通信網は重要なインフラで、その機器が特定の国・企業に依存すると安全保障上のリスクが生じるためです。米国は2019年にHuaweiをEntity List(取引を制限する企業リスト)に加え、米国・日本・欧州の一部では5G網からHuawei製機器を排除する動きが進みました。通信機器が、性能や価格だけでなく安全保障の観点から選ばれるようになったことを示しています。
経済安全保障推進法は通信機器に何を求めていますか?
経済安全保障推進法(令和4年法律第43号)は、電気通信や放送などを国民生活に不可欠な「特定社会基盤役務」と位置づけ、その重要な設備の導入や維持管理について、安全性の観点から事前の審査などの規律を設けています。通信機器の調達が、経済安全保障の枠組みの中で扱われるようになっています。
6Gはいつ実用化されますか?
次世代のBeyond 5G(6G)は、2030年ごろの実用化が目標とされています。総務省は、NICT(情報通信研究機構)に設けた基金を通じて、民間事業者などのBeyond 5Gの研究開発と国際標準化の活動を支援しています。次世代の通信技術をめぐる国際競争のなかで、日本の技術と標準化の取り組みを後押しする狙いです。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    総務省 令和7年版 情報通信白書(グローバルな経済安全保障の確保に向けて)
  2. 2.
    総務省 令和7年版 情報通信白書(ICT技術動向 / Beyond 5G推進戦略)
  3. 3.
    O-RAN Alliance(オープンRAN標準化団体)公式
  4. 4.
    内閣府 経済安全保障推進法(令和4年法律第43号)
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