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通信インフラ・設備業界の構造|4分野のバリューチェーンと担い手【2026年版】

通信インフラ・設備業界は、通信機器・光ファイバー・通信半導体・通信工事の4分野が連なる産業で、部材から機器、現場の工事までを工程ごとに専門の企業が分担しています。世界の基地局を握る中流の機器は海外大手が中心ですが、上流の光ファイバーと下流の通信工事では国内勢が強みを持ち、需要の基盤は通信キャリア(NTT・KDDIなどの通信会社)の設備投資と政府の政策です。

通信インフラ・設備のバリューチェーン — 4分野の担い手

上流の部材から中流の機器、下流の工事、需要側のキャリアまでの構造

通信インフラ・設備のバリューチェーンは、光ファイバーや半導体などの部材を作る上流、基地局や伝送装置などの機器を作る中流、それを現場に据え付ける工事の下流という順に進みます。下の表のとおり、各工程を担うプレイヤーの顔ぶれは領域ごとに異なり、国内勢が強い領域と海外勢が中心の領域が分かれています。代表的な規模は工程ごとの目安で、集計の範囲が異なるため単純な比較や合算はできません。

上流|光ファイバー・ケーブル
分野・主な役割
光ファイバー・光ケーブルや光部品を製造し、機器メーカーやキャリアに供給
主なプレイヤー
住友電工・フジクラ・古河電工、海外はCorning・Prysmianなど
代表的な規模の目安
住友電工の情報通信は3,266億円(FY2025実績)
上流|通信半導体
分野・主な役割
基地局や機器に使う半導体(baseband・RFICなど)を供給
主なプレイヤー
Qualcomm・Broadcom・Marvell・MediaTekなど海外勢が中心、国内勢は周辺的
代表的な規模の目安
海外勢が主体(国内勢の存在感は限定的)
中流|通信機器
分野・主な役割
基地局・伝送装置などの通信機器を設計・製造
主なプレイヤー
国内はNEC・富士通など、世界の基地局はEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなど海外大手
代表的な規模の目安
富士通のネットワークプロダクトは1,936億円(FY2025)
下流|基地局施工・通信工事
分野・主な役割
基地局の建設や光ファイバー網の敷設などの現場工事
主なプレイヤー
コムシスHD・EXEO・ミライト・ワンなど
代表的な規模の目安
コムシスHDの連結売上は6,307億円(FY2025)

上流① 光ファイバー・ケーブル — 国内勢が強い領域

光ファイバー・ケーブルは、通信網のデータを光で運ぶ基幹の部材です。製造には長年の品質と量産の技術が必要で、国内では住友電工・フジクラ・古河電工が世界でも有数のメーカーとして事業を手がけています。海外ではCorning(米)やPrysmian(伊)が大手で、いずれも同じ需要を取り込もうと増産投資を進めています。

近年の追い風が、生成AIを背景としたデータセンター需要です。サーバー間やデータセンター間を結ぶ光ファイバー・光接続製品の需要が急速に拡大しています。住友電工の情報通信事業は3,266億円(FY2025実績)で、FY2026には5,000億円へ拡大する見通しを示しています。フジクラや古河電工もデータセンター向けの光関連を成長領域に位置づけています。

光ファイバーは国内勢が技術と量産の実績で地位を保つ領域ですが、需要の波に対して増産の投資判断を誤らないことが収益を左右します。光ファイバー各社の比較やデータセンター需要の詳細は、光ファイバー・ケーブルのページで扱います。

上流② 通信半導体 — 海外への依存が大きい領域

通信半導体は、基地局や機器の中で信号処理や無線通信を担う中核の部品です。携帯電話やスマートフォン向けのbaseband(通信処理を担う半導体)やRFIC(無線信号を扱う半導体)、基地局のネットワーク用半導体などがあり、機器の性能を大きく左右します。

この領域は、Qualcomm・Broadcom・Marvell(米)やMediaTek(台湾)といった海外勢が中心です。国内ではルネサスやソニーセミコンダクタが半導体を手がけていますが、こと通信半導体に関しては周辺的な位置にとどまります。つまり、日本勢は機器の組み立てでは存在感があっても、その中の半導体は海外に依存している構造です。

この「機器は作れても半導体は海外」という二重構造は、経済安全保障の観点からも論点になります。通信半導体の海外と国内の供給構造の詳細は、海外大手と国内ベンダーのページで扱います。

中流 通信機器 — 世界は海外大手、国内は多角化の一部

中流の通信機器は、基地局や伝送装置といった通信網の心臓部を設計・製造する工程です。世界の基地局市場ではEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となっており、日本勢の世界シェアは限られています。

国内ではNECと富士通が通信機器を手がけていますが、いずれも通信機器は多角化した事業の一部です。富士通のネットワークプロダクト(基地局・光通信機器)は1,936億円(FY2025)、NECの社会インフラ事業は9,353億円(FY2025)ですが、後者は防衛や海洋システムなども含む広い区分です。日立や沖電気も関連する事業を持っています。

海外大手が握ってきた基地局市場に変化をもたらしうるのが、基地局の機器を複数のメーカーで組み合わせられるようにするOpen RAN(オープンな無線アクセス方式)です。NEC・富士通・楽天Symphonyなどが海外のキャリアとの契約を進めています。国内ベンダー同士の比較は国内ベンダー比較のページ、海外大手との競争は海外vs国内のページで扱います。

下流 基地局施工・通信工事 — 国内勢が担う現場

下流の通信工事は、基地局の建設や光ファイバー網の敷設、伝送設備の据え付けといった現場の工事を担う工程です。通信キャリアの設備投資を実際の設備に変える役割で、国内ではコムシスHD・EXEO・ミライト・ワンなどの通信建設会社が担っています。

コムシスHDの連結売上は6,307億円(FY2025)で、NTTグループ向けの設備工事を主軸に、ITソリューションやデータセンター関連も手がけています。EXEOも通信キャリア・都市インフラ・システムソリューションの3事業を展開し、近年はデータセンター構築や再生可能エネルギー関連の工事が伸びています。

通信工事は、NTTをはじめとするキャリアの発注構造と密接に結びついており、5Gの基地局整備やデータセンターの建設が受注を支えています。通信工事会社の比較は基地局施工・通信工事のページで扱います。

需要側 通信キャリア・政府 — 業界を動かす発注と政策

バリューチェーンの各工程を動かす需要の源が、通信キャリアの設備投資と政府の政策です。NTT・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルなどのキャリアが基地局やコアネットワークに投じる設備投資が、機器メーカーや通信工事会社の受注につながります。キャリアの設備投資の規模は市場規模のページで扱っています。

政府の政策も構造を左右します。総務省は次世代通信のBeyond 5G(6G)推進戦略で研究開発を後押しし、経済安全保障の面では経済安全保障推進法(令和4年法律第43号)が電気通信を重要なインフラに位置づけ、機器調達の安全性を求めています。米国による特定企業への輸出規制も、世界の通信機器の調達構造に影響を与えています。

こうした政策は、特定メーカーへの依存を避ける供給網の多様化や、Open RANの普及を後押しする方向に働いています。政策と経済安全保障の詳細は、Open RANと経済安保のページで扱います。

業界の3大論点

製造業hybridの4分野で、日本勢はどこに強くどこで海外に依存しているか?

通信インフラ・設備の4分野では、日本勢の競争力が領域ごとに大きく異なります。光ファイバーと通信工事は、国内勢が技術と現場の体制を持つ強い領域です。光ファイバーは住友電工・フジクラ・古河電工がデータセンター需要を追い風に事業を伸ばし、通信工事はコムシスHD・EXEOなどが国内のキャリア投資を受注しています。

一方、中流の通信機器と通信半導体は海外勢が中心です。世界の基地局はEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が握り、機器に使う半導体はQualcommやBroadcomなどの海外メーカーが中心で、国内勢は周辺的な位置にとどまります。日本勢は機器の組み立てでは存在感があっても、その中の半導体は海外に依存する構造です。

この強弱を踏まえると、強みのある光ファイバーと通信工事で安定した収益を確保しつつ、機器ではOpen RANで段階的に食い込む戦略が現実的です。4分野の選択と集中が、日本勢全体の競争力を左右していきます。

中流の機器を海外大手が握る構造は、Open RANで変わるか?

世界の基地局市場は、長くEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となってきました。これらの大手は、基地局のハードウェアとソフトウェアを一体で提供する統合型の機器で世界に展開しています。日本勢の世界シェアは限られ、中流の機器はこの構造の中にあります。

この構造に変化をもたらしうるのがOpen RANです。基地局の機能を分離し、複数のメーカーの機器を組み合わせられるようにする方式で、特定の大手に依存せずに基地局を構築できます。NEC・富士通・楽天SymphonyなどがVodafoneやBTといった海外のキャリアとの契約を進めており、海外大手が独占してきた市場に参入する入口になっています。

ただし、Open RANはまだ採用が広がる途上で、性能や運用の面で統合型の機器と競う必要があります。経済安全保障の観点から供給網の多様化が求められる流れは追い風ですが、構造が実際に変わるかは今後の採用の広がり次第です。

需要側のキャリア投資と政府政策は、業界構造をどう動かすか?

通信インフラ・設備は、需要側の通信キャリアと政府の政策に強く方向づけられる産業です。NTT・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルなどのキャリアが基地局やコアネットワークに投じる設備投資が、機器メーカーや通信工事会社の受注を直接左右します。キャリアの投資の波が、そのまま業界各社の業績の波になります。

政府の政策も構造を動かします。総務省のBeyond 5G(6G)推進戦略は次世代技術の研究開発を後押しし、経済安全保障推進法は機器調達の安全性を求めて供給網の見直しを促しています。米国の輸出規制も、世界の通信機器の調達構造を変えてきました。

こうした需要と政策は、特定メーカーへの依存を避ける供給網の多様化や、データセンター・5Gといった新しい需要への対応を各社に求めています。誰がどの工程に投資するかという判断が、業界の構造を少しずつ変えていきます。

中期見通し

近未来1-2年

データセンター向けの光ファイバー需要と、通信キャリアの5G設備投資が、上流と下流の受注を支える局面が続きます。中流の通信機器では、NEC・富士通のOpen RAN海外契約の進展が注目され、通信半導体の海外依存は構造として残ります。

中期3-5年

5Gの高度化やOpen RANの採用が進むなかで、中流の通信機器の構造が少しずつ変わる可能性があります。供給網の多様化を求める政策が、特定メーカーへの依存を避ける動きを後押しし、国内勢の参入機会につながるかが論点です。光ファイバーは増産投資の競争が続きます。

長期5-10年

6Gの実用化が想定される2030年ごろに向けて、次世代の通信機器・設備への投資が新たな需要を生む可能性があります。経済安全保障の観点から通信半導体を含む供給網の見直しが進めば、国内生産や国内調達の位置づけが変わり、バリューチェーンの構造そのものが再編されることも考えられます。

よくある質問

通信インフラ・設備業界はどんな構造ですか?
通信インフラ・設備業界は、通信機器・光ファイバー・通信半導体・通信工事の4分野が連なるバリューチェーン分割型の産業です。光ファイバーや半導体などの部材を作る上流、基地局や伝送装置などの機器を作る中流、それを現場に据え付ける工事の下流という流れでつながり、通信キャリアの設備投資と政府の政策が需要を支えています。
通信機器のメーカーは誰ですか?
世界の基地局市場では、Ericsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者です。国内ではNECと富士通が通信機器を手がけ、日立や沖電気も関連事業を持っています。国内勢にとって通信機器は多角化した事業の一部で、富士通のネットワークプロダクトは1,936億円(FY2025)規模です。
なぜ世界の基地局は海外大手が握っているのですか?
Ericsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手は、基地局のハードウェアとソフトウェアを一体で提供する統合型の機器で長く世界に展開してきました。日本勢の世界シェアは限られています。基地局の機能を分離して複数メーカーの機器を組み合わせられるOpen RANが、この構造を変えうる参入の入口として注目されています。
光ファイバーで日本が強いのはなぜですか?
光ファイバーの製造には長年の品質と量産の技術が必要で、住友電工・フジクラ・古河電工が世界でも有数のメーカーとして地位を保っています。近年は生成AIを背景としたデータセンター需要が追い風で、住友電工の情報通信事業は3,266億円(FY2025実績)からFY2026に5,000億円へ拡大する見通しです。
通信工事は誰が担っているのですか?
国内の通信工事は、コムシスHD・EXEO・ミライト・ワンなどの通信建設会社が担っています。コムシスHDの連結売上は6,307億円(FY2025)で、NTTグループ向けの設備工事が主軸です。基地局の建設や光ファイバー網の敷設など、キャリアの設備投資を現場で設備に変える役割を持っています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    住友電気工業 (5802) Fact Book / 古河電気工業 (5801) 経営方針説明会 / フジクラ (5803) IR
  2. 2.
    NEC (6701) FY2025決算 / 富士通 (6702) FY2025決算プレゼンテーション
  3. 3.
    コムシスホールディングス (1721) / EXEO Group (1951) FY2025決算短信
  4. 4.
    総務省Beyond 5G推進戦略 / 内閣府 経済安全保障推進法 (令和4年法律第43号)
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