通信インフラ・設備業界の市場規模・主要企業・動向
日本の通信機器・設備市場は民間投資3.5兆円規模で、世界の基地局は海外大手が主要な供給者となり、Open RANと光ファイバー需要が国内勢の機会となっています
通信インフラ・設備業界とは、通信機器・光ファイバー・通信半導体・通信工事の4分野で構成される、製造業を主体とした産業です。2023年の民間電気通信機器投資は3.5兆円、情報通信産業の名目GDPは57.4兆円に達しています。世界の基地局市場ではEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となり、国内勢はOpen RANとデータセンター向け光ファイバー需要を機会として競争位置を探っています。本ページでは、日本の通信インフラ・設備業界を、市場規模、国内ベンダー競争、海外と国内の競争、バリューチェーン、Open RAN・経済安保の5軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
通信インフラ・設備業界とは、通信機器・光ファイバー・通信半導体・通信工事の4分野で構成される、製造業を主体とした産業です。基地局や伝送装置などの機器に加え、それらを支える光ファイバーや半導体、現場の施工までを含むバリューチェーン分割型の構造を持っています。
- 4分野のバリューチェーンで構成されています。通信機器メーカー、光ファイバーメーカー、通信半導体、通信工事会社がそれぞれの工程を担い、需要側の通信キャリアと政府の政策がこれを動かしています。
- 世界の基地局市場では海外大手が主要な供給者となっています。Ericsson・Nokia・Huawei・Samsungなどが世界に機器を供給する一方、日本勢は機器の一部と上流の部材で存在感を持っています。
- Open RANとデータセンター需要が国内勢の機会となっています。基地局の機能を分離するOpen RANで日本勢が参入を進め、データセンター向けの光ファイバー需要も国内メーカーの追い風になっています。
市場動向
需要の基盤となる民間電気通信機器投資は2023年に3.5兆円、産業全体を示す情報通信産業の名目GDPは57.4兆円に達しています。世界のICT市場も2024年に5.02兆ドル規模で、機器・サービス・ソフトウェアを含む需要が拡大しています。データセンター向けの光ファイバー需要が国内メーカーの成長を牽引しています。
- 国内の設備投資は通信機器・光ファイバー・工事に分かれています。民間電気通信機器投資3.5兆円が需要源となり、経産省の生産動態統計でも通信機械器具と光ファイバ製品の出荷が継続して計上されています。
- データセンター需要で光ファイバーが拡大しています。住友電工の情報通信事業はFY2025の3,266億円からFY2026に5,000億円へ伸びる見通しで、フジクラや古河電工も光関連の中期計画を引き上げています。
- 世界の基地局市場は海外大手が中心となっています。Ericsson・Nokia・Huawei・Samsungなどが世界に供給し、Ericssonの基地局を担うNetworks部門はグループ売上の約64%を占めています。
競争環境
通信インフラ・設備業界では、国内の機器ベンダー、海外の基地局大手、光ファイバーメーカー、通信工事会社、通信半導体(海外主体)など多様なプレイヤーが活動しています。国内ベンダーの競争、海外と国内の競争位置、Open RAN戦略の3つが業界共通の論点となっています。
- 国内ではNECや富士通が通信機器を手がけ、日立や沖電気も関連事業を持っています。それぞれが5GやOpen RANへの取り組み方で差別化を進めており、海外契約の獲得を競っています。
- 世界の基地局市場ではEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となっています。これに対し、基地局の機能を分離するOpen RANでは、NEC・富士通・楽天Symphonyなどが新規参入の機会を探っています。
- 上流と下流では国内勢が強みを持っています。光ファイバーは住友電工・フジクラ・古河電工などが、通信工事はコムシスHD・EXEO・ミライト・ワンなどが担い、データセンター需要やキャリア投資が追い風になっています。
【参考】世界ICT市場支出の推移 (2017-2025年、10億ドル) ※通信インフラ設備単独の市場規模ではなく、業界を取り巻くマクロ規模
| 年度 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 世界ICT市場 (参考)(10億ドル) | 3,500 | 3,720 | 3,850 | 3,920 | 4,300 | 4,490 | 4,660 | 5,020 | 5,440 |
通信インフラ・設備業界は、通信機器・光ファイバー・通信半導体・通信工事の4分野で構成される製造業を主体とした産業です。需要の基盤となる民間電気通信機器投資は2023年に3.5兆円で、民間のICT投資16.0兆円の一部を占めています。
産業全体の規模を示す情報通信産業の名目GDPは2023年に57.4兆円で、全産業の約1割にあたります。世界のICT市場も2024年に5.02兆ドル規模に達し、通信サービスや機器・ソフトウェアを含む裾野の広い需要が、国内の通信機器・設備の供給を支えています。
世界の基地局市場ではEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となり、ZTEを含む少数の大手に世界シェアが集中しています。Ericssonの基地局を担うNetworks部門は、グループ売上の約64%を占める主力事業となっています。
一方で、上流の光ファイバーでは住友電工・フジクラ・古河電工などの国内勢が事業を伸ばしており、データセンター向けの需要拡大が追い風となっています。住友電工の情報通信事業はFY2025の3,266億円からFY2026に5,000億円へ拡大する見通しで、下流の通信工事はコムシスHD・EXEOなどが担っています。
通信インフラの政策は、技術振興と経済安全保障の両面で整備が進んでいます。総務省はBeyond 5G(6G)推進戦略で次世代技術の研究開発を後押しし、米国もOpen RANの普及を支援する基金を設けるなど、各国政府の政策がベンダーの受注機会を左右しています。
供給網の面では、経済安全保障推進法(令和4年法律第43号)が電気通信を特定社会基盤役務に位置づけ、機器調達の安全性を求めています。米国による特定企業への輸出規制も、世界の通信機器の調達構造に影響を与えています。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要通信インフラ・設備業界は、通信機器・光ファイバー・通信半導体・通信工事の4分野で構成される製造業を主体とした産業です。上流の光ファイバーや半導体といった部材から、中流の通信機器、下流の基地局施工までが連なるバリューチェーン分割型の構造を持っています。
需要の基盤は、NTTやKDDIなどの通信キャリアの設備投資と、政府の通信政策です。基地局や伝送装置などの機器に加え、それらを支える光ファイバーや現場の工事まで、各工程を専門の企業が担っています。
中流の通信機器では、国内のNECや富士通が事業を手がける一方、世界の基地局市場ではEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となっています。上流の光ファイバーは住友電工・フジクラ・古河電工など、下流の通信工事はコムシスHD・EXEO・ミライト・ワンなどが担い、領域ごとに強い企業がそろっています。
基地局そのものは海外大手が中心ですが、機能を分離するOpen RANではNEC・富士通・楽天Symphonyなどが新規参入を進めています。通信半導体は海外メーカーへの依存が大きく、データセンター需要は光ファイバーの追い風になっています。
通信インフラの今後を左右するのが、次世代技術と経済安全保障です。総務省はBeyond 5G(6G)推進戦略で次世代通信の研究開発を後押しし、米国はOpen RANの普及に基金を設けるなど、各国の政策がベンダーの受注機会を動かしています。Open RANは特定メーカーへの依存を避ける手段でもあり、供給網の多様化と一体で進んでいます。
供給網の面では、経済安全保障推進法(令和4年法律第43号)が電気通信を特定社会基盤役務に位置づけ、機器調達の安全性を求めています。米国による特定企業への輸出規制も、世界の通信機器の調達構造に影響を与えています。
業界の3大論点
データセンター需要の拡大で、光ファイバーの国内メーカーはどこまで事業を伸ばせるか?
生成AIの普及を背景にデータセンターの建設が世界で加速し、サーバー間やデータセンター間を結ぶ光ファイバー・光ケーブルの需要が急速に拡大しています。日本では住友電工・フジクラ・古河電工などが光ファイバーを手がけ、いずれもデータセンター向けを成長領域に位置づけています。
住友電工の情報通信事業はFY2025の3,266億円からFY2026に5,000億円へ拡大する見通しで、古河電工も光ソリューション事業の中期目標を引き上げています。光ファイバーは製造に技術の蓄積が必要で、国内メーカーは長年の品質と量産の実績を強みとしています。一方で、世界市場ではCorningやPrysmianなどの海外大手も同じ需要を取り込もうとしており、増産投資の競争が続いています。
中期的には、データセンター向けの特殊な光ファイバーや、伝送容量を高める製品で付加価値を確保できるかが鍵となります。需要の波に対して増産のタイミングを誤らない設備投資の判断が、国内メーカーの収益を左右していく見通しです。
日本勢は基地局機器に食い込むべきか、光ファイバー・通信工事に軸足を残すべきか?
世界の基地局市場ではEricsson・Nokia・Huawei・Samsungなどの海外大手が主要な供給者となっており、日本勢の世界シェアは限られています。一方で、光ファイバーや通信工事といった上流・下流の領域では、国内勢が確かな地位を持っています。日本勢がどこに経営資源を集中すべきかは、業界の戦略的な論点です。
基地局機器への参入では、機能を分離して複数のメーカーの機器を組み合わせられるOpen RANが入口になります。NEC・富士通・楽天Symphonyなどが海外のキャリアとの契約を進めており、海外大手が独占してきた基地局市場に変化をもたらす可能性があります。ただし、Open RANはまだ採用が広がる途上で、性能や運用の面で海外大手の統合型の機器と競う必要があります。
現実的には、追い風のある光ファイバーと通信工事で安定した収益を確保しつつ、Open RANで基地局機器に段階的に食い込む二段構えの戦略が選択肢となります。経済安全保障の観点から供給網の多様化が求められる流れも、日本勢の機会を後押ししています。
製造業hybridの4分野のうち、日本勢はどの領域で競争力を保てるか?
通信インフラ・設備業界は、通信機器・光ファイバー・通信半導体・通信工事の4分野で構成され、それぞれで日本勢の競争力は異なります。どの領域に強みがあり、どこで海外勢に依存しているかを見極めることが、産業全体の方向性を考えるうえで重要です。
光ファイバーと通信工事は、国内勢が技術と現場の体制を持つ領域です。光ファイバーはデータセンター需要で追い風があり、通信工事はコムシスHD・EXEO・ミライト・ワンなどが国内のキャリア投資を受注しています。一方、通信半導体は海外への依存が大きく、基地局向けの半導体ではQualcommやBroadcomなどの海外メーカーが中心で、国内勢は周辺的な位置にとどまっています。基地局機器そのものも海外大手が主要な供給者です。
中期的には、強みのある光ファイバーと通信工事を軸に収益を確保しつつ、Open RANで機器に食い込む戦略が現実的です。通信半導体の海外依存は、経済安全保障の観点から供給網の安定が課題として残ります。4分野の強弱を踏まえた選択と集中が、日本勢の競争力を左右していきます。
よくある質問 (FAQ)
通信インフラ・設備業界の市場規模はどれくらいですか?
主要な通信機器メーカーはどこですか?
光ファイバーは誰が作っているのですか?
Open RANとは何ですか / 日本勢は強いですか?
5G基地局は誰が作っているのですか?
通信工事はどの会社が担っているのですか?
6Gはいつ実用化されますか / 経済安保政策は通信機器に何を求めていますか?
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