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区分所有法改正とマンション建替え円滑化|管理計画認定と老朽化ストック対応の制度整備【2025年版】

分譲マンションのストックは2024年末に713.1万戸、うち築40年以上が約148万戸に達しており、20年後には482.9万戸に増える見込みです(国土交通省)。老朽化ストックへの対応に向け、2024年1月に区分所有法の見直し答申が示され、建替えや区分所有解消の合意形成要件を緩和する方向で制度整備が進んでいます。並行して、マンション管理の質を第三者が認定する「マンション管理計画認定制度」が2022年4月に施行され、管理水準の見える化が市場で評価され始めています。本ページでは、老朽化マンションに関わる区分所有法・建替え円滑化法・管理適正化法の概要と課題を整理します。

老朽化対応に関わる主な3法の概要

分譲マンションの老朽化・建替え・管理に関係する主な法律(制定・改正年と主な目的)
区分所有法
制定・主な改正
1962年制定・2024年改正答申
主な目的・制度
区分所有者間のルール整備。建替え決議(区分所有者・議決権の各4/5以上)
マンション建替え 円滑化法
制定・主な改正
2002年制定・2014年・2021年改正
主な目的・制度
建替え手続きの円滑化。容積率緩和特例・除却認定制度
マンション管理 適正化法
制定・主な改正
2000年制定・2020年改正
主な目的・制度
管理業者の規制・管理組合への指導助言。管理計画認定制度(2022年施行)
読み解き

3法は相互に補完する関係にあります。区分所有法が区分所有者間のルールの基盤を定め、建替え円滑化法が建替え・解体の手続きを整え、管理適正化法が管理水準の維持・向上を促します。2024年の区分所有法改正答申・管理計画認定制度の普及を通じて、制度間の連携が強化される方向です。

区分所有法の改正では何が変わるのか

現行の建替え決議は4/5以上が要件

区分所有法(1962年制定、1983年全面改正)は、マンションの区分所有者間のルールを定める基本法です。建替えの決議には区分所有者と議決権の各4/5以上の賛成が必要です。戸数が多く区分所有者が分散したマンションでは、高い賛成割合の合意をまとめることが現実的に難しく、老朽化した建物でも建替えが進まないケースが生じています。

2024年答申の主な内容

2024年1月、法務省法制審議会の区分所有法制部会は見直し答申を公表しました。主な論点は3点です。第1に、区分所有関係の解消(敷地売却・建物の解体・非区分所有化)について、4/5以上の多数決で決定できる新類型を設けること。第2に、建替え・解消に反対する少数の区分所有者に対する売渡し請求制度の整備。第3に、集会の招集・決議に電磁的方法(メール・電子投票等)を活用できるようにすることです。

少数者保護と制度実効性の論点

制度の整備にあたっては、少数の区分所有者の権利保護とのバランスをどう確保するかが立法上の論点です。多数決で解消が進む仕組みは合意形成のハードルを下げる一方で、反対した少数者が居住継続できなくなるケースへの対応が求められます。また、制度が整っても管理組合の合意形成の実務は容易でなく、区分所有者への情報提供や外部専門家(マンション管理士・弁護士等)の関与が現場では不可欠です。

マンション建替え円滑化法と建替えの実態はどうなっているか

2002年制定と2度の主要改正

「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(建替え円滑化法)は2002年に制定され、2014年と2021年に改正されました。2014年改正では、老朽化マンションの建替え時に容積率の緩和特例が設けられ、建替え後に床面積を増やして工事費を賄いやすくする仕組みが導入されました。2021年改正では、耐震性の不足など特定の要件を満たすマンションを「要除却認定」として、建物の解体・敷地売却を多数決で進められる制度が整備されました。

建替えの実績は限定的

建替え円滑化法の施行以降、竣工または着工まで至った建替えの累積件数は全国で限られた水準にとどまっています。建替えが進まない主な要因として、区分所有者の高い合意要件(4/5以上)、建替え期間中の仮住まいの手配、建替え後の費用負担増などが挙げられます。都市部では容積率緩和による床面積増が見込める場合も多いですが、郊外・地方では経済的なメリットを出しにくい物件も少なくありません。

除却認定制度の活用

2021年改正で整備された要除却認定制度は、耐震性の不足・火災安全性の不足・外壁剥落の危険性など、特定の要件を満たすマンションに対して、建替え・解体・敷地売却を通常より柔軟な手続きで進められる経路を開きました。認定を受けるには自治体への申請が必要で、行政との連携や専門家の関与が求められます。2024年の区分所有法改正答申とあわせて、除却認定の活用場面が広がることが期待されています。

マンション管理計画認定制度は何を変えるのか

2022年4月施行の認定制度

「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)の2020年改正を受けて、マンション管理計画認定制度が2022年4月に施行されました。管理組合が作成した管理計画を自治体またはマンション管理センターに提出し、審査を経て認定を受けることができます。認定の有効期間は5年で更新が必要です。

認定の要件とインセンティブ

認定の主な要件は、管理規約の整備・修繕積立金の適切な積立・長期修繕計画の策定(30年以上)・管理組合の会計の透明性などです。インセンティブとして、認定を受けたマンションは住宅金融支援機構の「フラット35」の金利優遇対象になるほか、不動産流通市場での情報開示に活用できます。管理水準が低いマンションとの差別化が市場価値に反映されることを通じて、管理への投資を促す設計です。

普及状況と課題

制度開始から数年が経過し、認定取得マンションは増加傾向にありますが、全国のマンションストックに占める割合は依然として限られています。管理組合の担い手不足や、認定申請に向けた書類作成の手間が普及のボトルネックです。国土交通省は「マンションみらいネット」(管理情報の公開システム)と連携し、認定・登録情報を流通市場で活用できる環境を整えています。

主要論点

区分所有法の改正で、老朽化マンションの建替えは進むのか?

2024年の法制審議会答申は、区分所有関係の解消要件を緩和する方向性を示しました。現行の建替え決議要件(4/5以上)が高すぎて合意形成が難しいという課題に対し、多数決で解消を進められる新類型の整備は制度上の前進です。

ただし、制度の整備と実際の建替え件数の増加は別問題です。建替えが進まない要因には、合意形成の難しさのほかに、仮住まいの確保、建替え後の費用負担、区分所有者の高齢化・相続による権利の細分化なども含まれます。制度改正で対応できる部分は限られており、管理組合への専門家支援なしには、実際の建替えが大幅に増える見通しは立てにくい状況です。

管理計画認定制度は、マンションの市場価値を変えるのか?

管理計画認定制度の設計意図は、管理水準の高いマンションが不動産市場で評価され、それが管理への投資を促す好循環です。住宅ローン金利優遇などのインセンティブも用意されており、制度の方向性はある程度の合理性があります。

ただし、現状では認定取得率がまだ低く、不動産流通市場での認知も普及途上です。買い手が管理計画認定の有無を物件選択の判断基準にするかどうかは、認定情報の使いやすさや、不動産仲介による説明の浸透度にかかっています。築古ストックが急増する2040年代に向けて制度の認知が広がれば、管理水準の差が中古マンションの資産価値に反映される度合いが高まる可能性があります。

マンションの老朽化問題は、誰がどう解決すべきなのか?

老朽化マンションの建替えや解消の主体は管理組合(区分所有者全員)ですが、管理組合には法人格がなく、専門知識も限られています。国土交通省や自治体による支援(マンション管理士の派遣・相談窓口)は整備されつつありますが、現場の管理組合が自力で合意形成を進めるのはなお困難です。

制度面では区分所有法・建替え円滑化法・管理適正化法がそれぞれの役割を持ちますが、利用はいずれも任意であり、老朽化が深刻なマンションほど管理組合の機能が弱いという逆説があります。問題の規模(築40年超が2044年に482.9万戸)に対して、制度の処理能力は現状限られており、中長期的に老朽化ストックが都市のどこに集積するかが課題となっています。

よくある質問

区分所有法とは何ですか?
区分所有法(「建物の区分所有等に関する法律」)は、マンションのように1棟の建物が複数の区分所有者に属している場合のルールを定めた法律です。1962年に制定され、1983年に全面改正されました。区分所有者の権利と義務、管理組合の運営、集会の決議要件、建替えの手続きなどを規定しています。建替えには区分所有者と議決権の各4/5以上の賛成が必要で、2024年に合意形成要件を緩和する方向での改正答申が示されました。
マンション建替え円滑化法とは何ですか?
「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(2002年制定)は、老朽化マンションの建替えを進めやすくするための手続きを定めた法律です。建替え後に床面積を増やして工事費を賄う容積率緩和特例(2014年改正)や、耐震性不足などの特定要件を満たすマンションの解体・敷地売却を多数決で進める除却認定制度(2021年改正)が整備されています。
マンション管理計画認定制度とは何ですか?
マンションの管理組合が作成した管理計画を自治体またはマンション管理センターが審査し、管理規約の整備・修繕積立金の積立・長期修繕計画の策定などの要件を満たすマンションを認定する制度です。2022年4月に施行されました。認定を受けたマンションは住宅金融支援機構のフラット35の金利優遇対象となるほか、不動産市場での情報開示に活用できます。
老朽化マンションの建替えはどれくらい進んでいますか?
マンション建替え円滑化法が施行された2002年以降、竣工または着工まで至った建替えの累積件数は全国で限られた水準にとどまっています。建替えが進まない理由として、区分所有者の4/5以上という高い合意要件、建替え期間中の仮住まいの手配、建替え後の費用負担が挙げられます。2024年の区分所有法改正答申は合意形成要件の緩和を提案しており、今後の動向が注目されます。
マンションの老朽化は今後どのような規模になりますか?
分譲マンションのストックは2024年末に713.1万戸で、このうち築40年以上が約148万戸です。築40年以上のストックは10年後に約2.0倍、20年後には482.9万戸に増える見込みです(国土交通省)。老朽化が進むマンションでは修繕積立金の不足(計画値未満が36.6%)や管理組合の機能低下も課題となっており、区分所有法改正・建替え円滑化法・管理計画認定制度が連携して対応していく方向性が示されています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    法務省 法制審議会 区分所有法制部会「区分所有法制の改正に関する要綱案」(2024年1月)
  2. 2.
    国土交通省 マンション管理計画認定制度(2022年4月施行)
  3. 3.
    国土交通省「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(2002年制定・2014年・2021年改正)
  4. 4.
    国土交通省 マンション総合調査 令和5年度(2024年)
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