最終更新
STAT DETAIL · COST STRUCTURE

焼肉店の倒産とコスト構造|牛肉価格・人件費の上昇【2026年版】

焼肉店のコストは、原価の中心である牛肉に大きく左右されます。農畜産業振興機構の卸売価格をみると、国産牛は2026年に全ての規格で前年を上回り、なかでも多くのチェーンが使う交雑牛は前年同月比で約18%(2026年6月)と上げ幅が最も大きくなりました。円安で高止まりする輸入牛肉と合わせ、牛肉のコストは全面的に上昇しています。これに人件費・光熱費の上昇が重なり、値上げによる客離れもあって、焼肉店の倒産は2024年度に50件と過去最多、2025年も暦年で46件と年間最多を更新しました。コストの構造と倒産の動きを整理します。

焼肉店の倒産件数(2025年・暦年)
46
年間で最多を更新(2025-10-30時点の速報)。暦年(1-12月)ベース
出典: 東京商工リサーチ「焼肉店」倒産動向(2025年)
焼肉店の倒産件数(2024年度)
50
2009年度以降で過去最多、前年度比+61.2%。年度(4-3月)ベースで暦年とは集計範囲が異なる
出典: 東京商工リサーチ「焼肉店」倒産動向(2024年度)
交雑牛(去勢B3)の卸売価格(2026年6月)
1,838円/kg
前年同月比+18.0%と上げ幅が最大。多くの大衆向けチェーンが使う規格(消費税込)
出典: 農畜産業振興機構(alic)畜産物の卸売価格等
和牛(去勢A4)の卸売価格(2026年6月)
2,448円/kg
前年同月比+16.8%。高級店・専門店向けの規格(消費税込)
出典: 農畜産業振興機構(alic)畜産物の卸売価格等

焼肉店の倒産件数の推移(2023-2025年、件)

暦年(1-12月)ベースの焼肉店の倒産件数。2023年の27件から2024年に45件へ急増し、2025年は46件(2025-10-30時点の速報)と年間最多を更新
読み解き

焼肉店の倒産は、暦年でみて2023年の27件から2024年に45件へと急増し、2025年は2025-10-30時点ですでに46件と、年間で最も多い水準を更新しました。なお、年度(4-3月)ベースでは2024年度が50件で2009年度以降の過去最多となり、これは従来の最多だった2012年度の33件を大きく上回ります。暦年と年度は集計範囲が異なるため、件数は別の指標として読む必要があります。

倒産の多くは販売不振が原因で、2025年(暦年・速報)では46件のうち39件を占めます。また、従業員10人未満の零細・個人店が42件と大半です。牛肉をはじめとする原価、人件費、光熱費の上昇に対して、値上げを進めれば客離れを招き、据え置けば採算が悪化するという板挟みが、資金力の乏しい店を追い詰めています。倒産の増加は焼肉需要そのものの縮小ではなく、コスト構造の変化に対応できる事業者へ需要が集約されていく過程と見ることができます。

牛肉の規格別 枝肉卸売価格(2026年6月、円/kg)

東京・大阪の加重平均、消費税込。国産牛は全ての規格で前年を上回り、多くのチェーンが使う交雑牛の上げ幅が最も大きい
読み解き

焼肉店の原価の中心は牛肉です。国産牛の枝肉卸売価格をみると、2026年6月は全ての規格で前年同月を上回りました。なかでも、大衆向けの焼肉店や食べ放題チェーンが多く使う交雑牛(去勢B3)が+18.0%と上げ幅が最も大きく、高級店・専門店向けの和牛(去勢A4)も+16.8%、価格を抑えた乳用牛(去勢B2)も+8.5%上がっています。さらに、米国産・豪州産などの輸入牛肉も円安を背景に高止まりしており、焼肉店が使う牛肉のコストは国産・輸入を問わず全面的に上昇しています。

なお、表の前年同月比は出典(農畜産業振興機構)が公表している値で、前年同月を100とした比率です。表中の価格は1円単位に丸めて表示しているため、丸めた価格から計算した比率とは小幅に異なる場合があります。最高級のA5等級の和牛については供給増で軟調との報道もありますが、焼肉チェーンが実際に多く使うのは交雑牛や輸入牛で、業態の採算に効くのはこちらの上昇です。

主要論点

なぜ焼肉店の倒産は過去最多になっているのか?

焼肉店の倒産は、2024年度に50件と過去最多、2025年も暦年で46件と年間最多を更新しました。背景には、コストの三重の上昇があります。原価の中心である牛肉は、国産牛が2026年に全ての規格で前年を上回り、円安で輸入牛肉も高止まりしています。これに人件費(最低賃金の引き上げが続く)と光熱費(エネルギー価格の上昇)が重なり、焼肉店の費用は広範に膨らんでいます。

こうしたコスト上昇を、焼肉店は価格転嫁で吸収しようとしますが、ここに板挟みがあります。値上げを進めれば客離れを招き、据え置けば採算が悪化するという構図です。倒産の多くは販売不振が原因で、2025年(速報)では46件のうち39件を占めます。

特に追い詰められやすいのが、資金力の乏しい零細・個人店です。倒産の42件(2025年・速報)が従業員10人未満で、コスト高を価格や規模で吸収しにくい事業者ほど、収益が圧迫されやすい構造になっています。

牛肉の価格は上がっているのか、下がっているのか?

焼肉店が使う牛肉のコストは、全体として上がっています。農畜産業振興機構の卸売価格をみると、国産牛は2026年に全ての規格で前年を上回って推移しています。なかでも、多くの大衆向け焼肉店が使う交雑牛(去勢B3)は前年同月比+18.0%(2026年6月)と上げ幅が最も大きく、和牛(去勢A4)も+16.8%、乳用牛も+8.5%上がりました。

「和牛が安い」という話を聞くこともありますが、これは主に最高級のA5等級についての報道で、供給増を背景としたものです。焼肉チェーンが実際に多く使うのは交雑牛や輸入牛で、これらはむしろ値上がりしており、業態の採算に効くのはこの部分です。

さらに、米国産・豪州産などの輸入牛肉は、円安を背景に高止まりが続いています。輸入や交雑牛を多く使う大衆向けの焼肉店ほど、為替と相場の両面から原材料高の影響を受けます。国産・輸入を問わず牛肉のコストが上がっていることが、焼肉店の収益を圧迫する直接の要因です。

値上げと低価格競争の板挟みをどう乗り越えるのか?

焼肉店の課題は、上昇するコストを、価格転嫁とメニュー構成、仕入れの工夫でどこまで吸収できるかにあります。原価率の高さは焼肉業態に共通する特徴で、相場の変動を価格に反映しにくい店ほど、収益が圧迫されやすい構造です。

ここで明暗を分けるのが規模です。規模を生かした仕入れ力を持つ大手チェーンは、価格を抑えた食べ放題というわかりやすい価値を維持しながら、コスト高を一定程度吸収できます。一方、零細・個人店は、仕入れ価格を下げる交渉力に乏しく、値上げによる客離れの影響も受けやすいため、コスト上昇を吸収しきれずに淘汰されやすくなります。

この結果、規模と低価格、仕入れ力で伸びるチェーンと、コスト高を吸収しきれない零細個人店との間で、業界の二極化が進んでいます。倒産が増えても焼肉需要そのものが縮んでいるわけではなく、コスト構造の変化に対応できる事業者へと需要が集約されていく過程と見ることができます。

中期見通し

近未来1-2年

牛肉は国産・輸入とも高止まりが続く見通しで、人件費・光熱費の上昇も当面続くとみられます。コスト圧力が和らぎにくいなか、価格転嫁を進めながら客離れを抑えられるかが、各社の収益を左右します。規模と仕入れ力で吸収できるチェーンと、零細店との二極化は当面続く構図です。倒産件数も高い水準で推移する可能性があります。

中期3-5年

中期では、メニュー構成や仕入れの多様化によるコスト吸収の工夫が焦点です。交雑牛や輸入牛を中心としつつ、部位や産地の組み合わせ、食べ放題の価格設計で原価率を管理する動きが続くとみられます。為替と牛肉相場の動向次第では、コストの前提が変わる可能性もあり、相場への対応力が事業者間の体力差をさらに広げる要因となります。

長期

長期では、人口減少と高齢化が国内の外食需要の基調を決めるなかで、コスト構造に対応できる事業者へ需要が集約されていく流れが続くとみられます。原価率の高い焼肉業態では、仕入れ・規模・ブランドの力が収益を左右し続けます。牛肉価格や倒産の数字を読む際は、規格や集計範囲(暦年か年度か)の違いを踏まえることが前提となります。

よくある質問

焼肉店の倒産が増えているのはなぜですか?
焼肉店の倒産は、2024年度に50件と過去最多となり、2025年も暦年で46件と年間最多を更新しました。背景には、原価の中心である牛肉、人件費、光熱費の上昇があります。これらのコスト上昇に対し、値上げを進めれば客離れを招き、据え置けば採算が悪化するという板挟みが、特に資金力の乏しい零細・個人店を追い詰めています。倒産の多くは販売不振が原因で、従業員10人未満の小規模な店が大半を占めています。
焼肉に使う牛肉の値段は上がっているのですか?
全体として上がっています。農畜産業振興機構の卸売価格では、国産牛は2026年に全ての規格で前年を上回りました。多くの大衆向け焼肉店が使う交雑牛(去勢B3)は前年同月比+18.0%(2026年6月)と上げ幅が最も大きく、和牛(去勢A4)も+16.8%、乳用牛も+8.5%上がっています。さらに、米国産・豪州産などの輸入牛肉も円安で高止まりしています。「和牛が安い」という話は主に最高級のA5等級についての報道で、焼肉チェーンが実際に使う交雑牛や輸入牛のコストはむしろ上がっています。
焼肉店が値上げされるのはなぜですか?
牛肉などの原価、人件費、光熱費がそろって上昇しているためです。原価の中心である牛肉は、国産牛が2026年に全ての規格で前年を上回り、円安で輸入牛肉も高止まりしています。焼肉は原価率の高い業態で、コストの上昇を価格に反映しないと採算が悪化します。一方で、値上げは客離れを招くおそれもあるため、各社は食べ放題の価格設計やメニュー構成を工夫しながら、コストの吸収と来店の維持の両立を図っています。
倒産件数が暦年と年度で違うのはなぜですか?
集計の対象期間が異なるためです。暦年は1月から12月まで、年度は4月から翌年3月までを集計します。焼肉店の倒産は、暦年では2025年が46件(2025年10月時点の速報)、年度では2024年度が50件で過去最多となっています。期間の取り方が違うため、暦年と年度の数字は単純に比較せず、別の指標として読む必要があります。本ページでは、推移を暦年で示し、過去最多の記録は年度の値として併記しています。
このページの数字の出典は何ですか?
焼肉店の倒産件数は東京商工リサーチ「焼肉店」倒産動向(暦年2023-2025年・2024年度)、牛肉の規格別卸売価格は独立行政法人 農畜産業振興機構(alic)の畜産物の卸売価格等(東京・大阪の加重平均、消費税込)が出典です。倒産件数の暦年と年度は集計範囲が異なるため、別の指標として整理しています。牛肉価格の前年同月比は出典が公表している値です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    東京商工リサーチ「焼肉店」倒産動向(2024年度・2025年)
  2. 2.
    独立行政法人 農畜産業振興機構(alic)畜産物の卸売価格等(総括表)
📄 資料DL💬 無料相談