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ドラッグストアの調剤併設と医薬分業|調剤を取り込む成長の仕組み【2026年版】

ドラッグストアは、医薬分業の進展を受けて、店舗に調剤室を併設し処方薬を扱う「調剤併設店」を増やしてきました。ドラッグストアの調剤売上は2024年度に1兆5,205億円(前年比+8.4%)で、調剤に健康関連商品を加えた調剤・ヘルスケア区分は3兆3,318億円と、4区分で最も大きな区分になっています。背景には全国で8兆4,008億円に達する保険調剤の市場があり、ドラッグストアの調剤はその受け皿の一つとして、全国平均(+1.6%)を上回る速さで伸びています。医薬分業の仕組み・調剤の規模・成長の理由・調剤専業の薬局との違いまで順に整理します。

ドラッグストアの調剤売上
1.52兆円
15,205億円、2024年度。前年比+8.4%、業態全体の約15.2%
出典: 日本チェーンドラッグストア協会 第25回(2024年度)実態調査
調剤・ヘルスケア区分
3.33兆円
33,318億円、4区分で最大(構成比33.2%)
出典: 日本チェーンドラッグストア協会 第25回(2024年度)実態調査
全国の保険調剤医療費
8.40兆円
84,008億円、前年比+1.6%。ドラッグストアに限らない全国の薬局が対象
出典: 厚生労働省 調剤医療費の動向(令和6年度)
処方箋1枚あたり調剤医療費
9,387
令和6年度、前年比+0.3%。全国の保険調剤の1枚あたり単価
出典: 厚生労働省 調剤医療費の動向(令和6年度)

医薬分業とは何か、なぜドラッグストアが調剤を扱うのか

医薬分業は「処方」と「調剤」の分担

医薬分業とは、医師が診察して処方箋を出し、薬はその医療機関の外にある薬局で受け取る仕組みです。医療機関の中で薬を渡す「院内処方」に対し、処方箋を持って院外の薬局で薬を受け取るのが「院外処方」で、日本ではこの院外処方(医薬分業)が長年かけて広がってきました。

ドラッグストアが処方薬の受け取り先になる

医薬分業が進むと、処方箋を受け取って薬を渡す薬局の役割が大きくなります。ドラッグストアは、店舗に調剤室を併設して薬剤師を置き、処方薬を扱う「調剤併設店」を増やすことで、この処方薬の受け取り先になってきました。日用品や食品の買い物のついでに処方薬も受け取れる利便性が、来店動機につながっています。

高齢化が処方薬の需要を押し上げる

背景には、高齢化による処方薬の需要の高まりがあります。全国の保険調剤の医療費は2024年度(令和6年度)に8兆4,008億円に達し、処方箋1枚あたりの調剤医療費も9,387円と高水準です。慢性疾患を抱える高齢者が増えるなかで、処方薬を継続的に受け取る場として、調剤併設のドラッグストアの役割が広がっています。

ドラッグストアの調剤はどのくらいの規模なのか

調剤売上は業態の約15%、区分では最大

ドラッグストアの調剤売上は2024年度に1兆5,205億円で、業態全体の売上(約10兆円)の約15.2%を占めます。これに健康関連商品を加えた調剤・ヘルスケア区分は3兆3,318億円(構成比33.2%)と、ビューティ・ホーム・フーズを含む4区分のなかで最も大きな区分です。調剤は、ドラッグストアにとって規模・成長の両面で中心的な事業になっています。

「調剤」の3つの数字は対象範囲が違う

調剤に関わる数字を読むときは、対象とする範囲の違いに注意が必要です。下の表のとおり、ドラッグストアの調剤売上(1兆5,205億円)は調剤・ヘルスケア区分(3兆3,318億円)の一部で、いずれも全国すべての薬局を対象とする保険調剤の医療費(8兆4,008億円)とは集計の対象が異なります。3つは別々の数字であり、たとえば「全国の調剤医療費のうちドラッグストアが何割」といった単純な割り算は成り立ちません。

「調剤」に関わる3つの数字(対象範囲と前年比)

ドラッグストアの調剤・調剤を含む区分・全国の保険調剤は、いずれも集計の対象が異なる。連結せず別々に読む
ドラッグストアの調剤売上
業態全体の約15.2%
最新の値
1兆5,205億円(2024年度)
前年比
+8.4%
対象とする範囲
ドラッグストアチェーンが調剤併設店で扱う処方薬の売上
調剤・ヘルスケア区分
4区分で最大、業態の33.2%
最新の値
3兆3,318億円(2024年度)
前年比
+8%台
対象とする範囲
上の調剤売上に健康関連商品を加えた4区分の1つ
全国の保険調剤の医療費
ドラッグストアに限らない別母集団
最新の値
8兆4,008億円(令和6年度)
前年比
+1.6%
対象とする範囲
全国すべての薬局の保険調剤にかかる費用(保険点数ベース)
読み解き

3つの数字は、ドラッグストアの調剤売上が調剤・ヘルスケア区分の一部に含まれる関係にあり、全国の保険調剤医療費はこれらとは別の集計(全国すべての薬局、保険点数ベース)です。前年比を並べると、ドラッグストアの調剤売上(+8.4%)が全国の保険調剤医療費(+1.6%)を上回っています。ただしこの2つは出典も対象範囲も異なる統計のため、伸び率を厳密に比較できるわけではなく、処方薬の受け取り先がドラッグストアへ広がっていることを示す方向性の傍証として読むのが適切です。集計範囲の全体像(事業所ベースの統計などとの違い)は市場規模のページで整理しています。

なぜドラッグストアの調剤は全国平均より速く伸びているのか

伸びの差が示す調剤の受け皿シフト

ドラッグストアの調剤売上は前年比+8.4%と、全国の保険調剤医療費の伸び(+1.6%)を上回っています。この2つは出典の異なる統計(業界団体の調査と厚生労働省の統計)で対象範囲も違うため、厳密な比較ではなく方向性をとらえるものですが、全国の調剤市場が緩やかな伸びにとどまるなかでドラッグストアの調剤が速く伸びていることは、処方薬の受け取り先がドラッグストアの調剤併設店へとシフトしていることを示しています。

調剤併設店の拡大と「面分業」

ドラッグストアは、新規出店や既存店の改装にあわせて調剤併設店を増やし、住宅地や郊外を含む幅広い立地で処方箋を受け付けています。特定の医療機関の前に立地する「門前薬局」に対し、地域のどこでも処方箋を受け取れる形は「面分業」と呼ばれ、ドラッグストアの店舗網はこの面分業の受け皿として機能しています。

調剤専業の薬局との競合と棲み分け

処方薬を扱う相手は、ドラッグストアだけではありません。日本調剤・アインホールディングス・クオールホールディングスといった調剤を専門とする薬局チェーン(調剤専業)も存在します。調剤専業は医療機関との連携や専門性で強みを持ち、ドラッグストアは買い物のついでの利便性と店舗網で強みを持ちます。両者は、処方薬の受け取り先として競合しつつ、立地や患者層で棲み分けが進んでいます。調剤専業の薬局は、本サイトでは別の業界(調剤薬局)として扱います。

主要論点

医薬分業の進展はドラッグストアにとって追い風なのか?

医薬分業(院外処方)の進展は、ドラッグストアにとって追い風になってきました。処方薬を院外の薬局で受け取る人が増えるほど、調剤併設のドラッグストアが処方薬の受け取り先になる機会が広がるためです。ドラッグストアの調剤売上は2024年度に1兆5,205億円(前年比+8.4%)と、全国の保険調剤医療費の伸び(+1.6%)を上回って拡大しています。

調剤は、日用品や食品に比べて利幅が大きく、継続的な来店にもつながるため、ドラッグストアの収益と差別化の柱になっています。買い物のついでに処方薬を受け取れる利便性が、来店動機を強めています。

ただし、調剤報酬は国の制度で決まり、改定のたびに収益が左右される点には注意が必要です。医薬分業の追い風を受けつつも、制度の動向と薬剤師の確保が、調剤事業の継続的な成長の前提となります。

ドラッグストアの調剤と調剤専業の薬局はどう棲み分けるのか?

処方薬を扱うのは、ドラッグストアの調剤併設店だけではなく、調剤を専門とする薬局チェーン(調剤専業)も担っています。日本調剤・アインホールディングス・クオールホールディングスなどが代表的で、医療機関との連携や専門性を強みとしています。

ドラッグストアの強みは、店舗網の広さと、買い物のついでに処方薬を受け取れる利便性です。住宅地や郊外を含む幅広い立地で処方箋を受け付ける「面分業」の受け皿として機能しています。一方、調剤専業は、大病院の前(門前)や医療機関の近くで、専門性の高い調剤や在宅医療への対応で強みを発揮します。

両者は、処方薬の受け取り先として競合しつつ、立地・患者層・専門性で棲み分けが進んでいます。今後は、かかりつけ薬局としての機能や、オンライン服薬指導などの新しいサービスで、どちらがどの患者層を取り込むかが論点になります。

調剤併設は今後も差別化の軸として有効なのか?

調剤・ヘルスケア区分は3兆3,318億円と業態の4区分で最大であり、調剤併設はドラッグストアの差別化の軸であり続けています。食品やディスカウントだけでは価格競争に陥りやすいなかで、調剤は処方薬という継続的な需要を取り込み、利幅と来店頻度の両面で収益を支えます。

有効性を左右するのは、第1に薬剤師の確保です。調剤併設を増やすには薬剤師の採用・配置が前提で、人材の確保が出店の制約になります。第2に調剤報酬の制度改定で、報酬が抑制されれば収益性が下がります。第3に、調剤専業やオンライン薬局との競合です。

それでも、高齢化による処方薬需要の高まりという基調は変わりません。調剤併設を軸に、ヘルスケア商品や健康相談を組み合わせて「健康の入り口」としての役割を強められるかが、中期の差別化の鍵となります。

よくある質問

ドラッグストアの調剤売上はどのくらいですか?
2024年度のドラッグストアの調剤売上は1兆5,205億円(前年比+8.4%)で、業態全体の売上の約15.2%にあたります。これに健康関連商品を加えた調剤・ヘルスケア区分は3兆3,318億円と、4区分のなかで最も大きな区分です。
医薬分業とは何ですか?
医薬分業とは、医師が処方箋を出し、薬はその医療機関の外にある薬局で受け取る仕組みです。医療機関の中で薬を渡す院内処方に対し、処方箋を持って院外の薬局で受け取るのが院外処方(医薬分業)です。日本では院外処方が長年かけて広がり、ドラッグストアはこの処方薬の受け取り先の一つになっています。
ドラッグストアの調剤と調剤薬局は何が違うのですか?
ドラッグストアの調剤は、日用品や食品を扱う店舗に調剤室を併設し、買い物のついでに処方薬を受け取れる利便性が強みです。一方、日本調剤・アインホールディングス・クオールホールディングスなどの調剤専業の薬局チェーンは、医療機関との連携や専門性を強みとします。両者は処方薬の受け取り先として競合しつつ、立地や患者層で棲み分けています。
ドラッグストアの調剤はなぜ伸びているのですか?
医薬分業の進展で処方薬を院外の薬局で受け取る人が増え、その受け取り先としてドラッグストアの調剤併設店が広がっているためです。ドラッグストアの調剤売上は前年比+8.4%と、全国の保険調剤医療費の伸び(+1.6%)を上回って拡大しています。高齢化による処方薬需要の高まりも背景にあります。
「全国の調剤医療費8.4兆円」はドラッグストアの売上ですか?
いいえ。8兆4,008億円は全国すべての薬局を対象とする保険調剤の医療費で、保険点数をもとにした金額です。ドラッグストアの調剤売上(1兆5,205億円)とは集計の対象が異なる別の数字で、ドラッグストアの調剤はその一部を担っています。3つの調剤の数字は足し合わせたり割り算で結んだりはできません。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    日本チェーンドラッグストア協会 第25回(2024年度)日本のドラッグストア実態調査
  2. 2.
    厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」令和6年度版
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