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調剤薬局の業界構造|門前・面分業と経営主体、認定薬局の仕組み【2026年版】

調剤薬局の業界構造を、薬局がどこに立地するか(門前・面分業・敷地内・医療モール・ドラッグストア併設)、誰が経営するか(法人立と個人立、チェーンと単独)、どんな機能を認定されているか(地域連携薬局・専門医療機関連携薬局・健康サポート薬局)という3つの観点で整理します。医薬品を供給する卸と、電子処方箋などの医療DXも含めて、63,203施設の薬局がどう組み立てられているかを順に見ていきます。

調剤薬局の業界構造

立地の類型・経営主体・認定薬局・医薬品の供給・医療DXの5つの観点

薬局の構造は、立地(どの医療機関の処方箋を受けるか)・経営主体(法人か個人か、チェーンか単独か)・認定された機能(地域連携・専門・健康サポート)の3つの軸で捉えられます。立地を分ける指標は処方箋集中率(その薬局が受ける処方箋のうち特定の医療機関から発行された割合)で、95%以上を門前薬局、複数の医療機関から広く受ける形を面分業と呼びます。薬局は、処方箋集中率95%以上の門前型(届出薬局60,086の17.3%、2024年8月時点)から、地域の複数医療機関に対応する面分業型、ドラッグストアの併設薬局まで幅広く、同じ「薬局」でも処方箋の集め方と収益の構造は大きく異なります。これに、医薬品を供給する卸と、処方箋の電子化を進める医療DXが業界の土台として加わります。

門前薬局
特定の医療機関に依存
特徴
診療所や病院の隣接地に立地し、その医療機関の処方箋が大半を占める。処方箋を安定して確保できる反面、医療機関の動向に左右される
規模・数値の目安
処方箋集中率95%以上の薬局が17.3%、85%以上が39.3%(2024年8月、届出薬局60,086)
代表例
診療所前・病院前の薬局、大手チェーンの多くの店舗
面分業型の薬局
地域の複数医療機関に対応
特徴
住宅地や駅前などに立地し、複数の医療機関の処方箋を受ける。かかりつけ薬剤師・在宅対応など地域の機能を担う
規模・数値の目安
処方箋集中率85%未満の薬局が60.7%(同上)。85%以上95%未満の22.0%は両者の中間
代表例
地域の独立薬局、かかりつけ機能を持つチェーン店舗
敷地内薬局
病院の敷地内
特徴
病院の敷地内に開設された薬局。抗がん剤など専門的な薬剤や退院時の処方に対応する一方、医療機関との独立性が制度上の論点
規模・数値の目安
件数の公表統計なし。報酬上は専用の区分で評価
代表例
大病院の敷地内に開設された薬局
医療モール型
複数の診療所と一体
特徴
複数の診療所と薬局を一体で開発した施設。複数医療機関の処方箋を受けるが、開発主体が同じ場合は門前に近い
規模・数値の目安
件数の公表統計なし。2026年度改定で処方箋集中率の計算方法を見直し
代表例
医療モール併設の薬局
ドラッグストア併設
物販店舗内の調剤
特徴
ドラッグストアの店内に設けた調剤薬局。物販の集客力で処方箋を取り込み、薬局数の統計では1薬局として計上
規模・数値の目安
上場5社の連結売上(物販込み)は各社4,971億円〜1兆4,506億円の範囲(2026年2〜5月期、主要プレイヤーのページ)
代表例
スギ薬局・ツルハドラッグ・サンドラッグ など
法人立と個人立
経営主体
特徴
株式会社などの法人が開設する薬局と、薬剤師個人が開設する薬局。法人立にはチェーンから1店舗の会社まで含まれる
規模・数値の目安
1施設当たり収益 法人立1億7,973万円/個人立7,358万円、損益差額率4.9%/11.3%(2024年度、個人立は開設者報酬を含まず)
代表例
アインホールディングス等のチェーン / 個人経営の薬局

立地の類型 — 門前薬局は10年で減らず、むしろ増えた

薬局の立地を分ける指標が処方箋集中率で、その薬局が受ける処方箋のうち特定の医療機関から発行されたものの割合です。厚生労働省が届出をもとに集計したところ、集中率95%以上の薬局の割合は2015年7月の14.0%から2024年8月に17.3%へ、85%以上の薬局は32.5%から39.3%へ上がりました。届出薬局60,086のうち集中率95%以上は約10,395薬局にあたります(この届出数は2024年8月時点の集計で、衛生行政報告例の薬局数63,203は2025年3月末の値です)。2015年に国が示した「患者のための薬局ビジョン」は門前から地域へ移すことを目標に掲げましたが、この10年で門前薬局は減っていません。

背景には処方箋の発行構造があります。厚生労働省の調剤医療費の統計では2024年度の処方箋枚数の79.4%が診療所発行で、診療所の隣に薬局を置けば処方箋を安定して確保できます。医療モールのように複数の診療所と薬局を一体で開発する形も広がり、見かけ上は複数の医療機関に対応していても、実態は門前に近い薬局が増えました。病院の敷地内に開設する敷地内薬局は、抗がん剤など専門的な薬剤への対応で役割を持つ一方、医療機関と薬局を経営上も場所も分けるという医薬分業の原則との関係が制度上の論点になっています。

面分業型の薬局は、住宅地や駅前で複数の医療機関の処方箋を受け、かかりつけ薬剤師や在宅医療への対応など地域の機能を担います。集中率85%未満の薬局は全体の60.7%で、85%以上95%未満の22.0%は門前と面分業の中間にあたります。2026年度の報酬改定では、集中率の高い薬局の調剤基本料(処方箋1枚ごとの基本点数で、薬局の区分ごとに点数が異なる)の評価が下がり、医療モールの集中率の計算方法も見直されます。立地でなく機能で報酬が決まる方向へ制度が動いており、その内容は報酬改定のページで扱います。

経営主体 — 法人立と個人立の損益構造

薬局の開設者は、株式会社などの法人と、薬剤師個人が開設する個人に分かれます。法人立には全国チェーンから1店舗だけの会社まで含まれ、個人立は多くが1店舗の薬局です。中央社会保険医療協議会の医療経済実態調査(第25回、2年ごと)は、両年度に回答した定点の薬局(法人立1,018施設、個人立39施設が調査対象)について1施設当たりの損益を公表しています。この施設数は調査の対象数で、全国の法人と個人の比率を示すものではなく、個人立は対象が39施設と少ないため値は参考程度にみる必要があります。全国の薬局を開設者別に数えた統計は本ページの一次資料にはありません。

2024年度の1施設当たり収益は、法人立が1億7,973万円、個人立が7,358万円で、約2.4倍の差があります。処方箋の枚数も法人立16,996枚に対し個人立9,858枚と約1.7倍です。収益のうち保険調剤が占める割合は個人立97.5%、法人立90.0%で、法人立は物販などその他の薬局事業収益が9.3%あります(構成比は介護収益を含む総収益に対する割合で、残りが介護収益です)。

費用の構造はどちらも医薬品等費が6割強(法人立63.2%、個人立62.4%)を占め、給与費は法人立18.2%、個人立12.2%です。収益に対する利益の割合である損益差額率は法人立4.9%、個人立11.3%ですが、個人立では開設者本人の報酬が費用に含まれないため、率が高く見えます。開設者の生活費を利益から差し引くと、個人立の実質的な余裕は数字ほど大きくありません。薬局の収益は薬価と仕入れ値の差(薬価差)と技術料で決まり、規模の小さい薬局ほど仕入れ条件と人員配置の両面で余裕が小さくなります。

認定薬局 — 地域連携・専門医療機関連携・健康サポート

2021年8月に施行された改正薬機法で、薬局の機能を都道府県知事が認定する制度が始まりました。入退院時の医療機関との情報連携や在宅医療への対応を要件とする地域連携薬局は2026年8月末に4,292件、がん治療などで専門的な薬学管理を行う専門医療機関連携薬局は225件です。これとは別に、健康相談や一般用医薬品の販売などの要件を満たして届け出る健康サポート薬局が3,592件(2026年3月末)あります。

薬局63,203施設(2025年3月末)に対し、地域連携薬局(2026年8月末)は6.8%、健康サポート薬局(2026年3月末)は5.7%にあたります(時点が異なる目安の値です)。都道府県別では地域連携薬局が東京632件、神奈川359件、大阪283件と都市部に多く、専門医療機関連携薬局が1件もない県が石川・福井・山梨・奈良・香川・高知の6県あります。認定には在宅対応の実績や医療機関との連携体制が求められるため、人員に余裕のある薬局に偏ります。

認定薬局は、門前かどうかという立地の分類とは別に、薬局の機能を外から見えるようにする仕組みです。報酬改定でも地域連携や在宅対応が評価の軸になっており、認定の広がりは「立地から機能へ」という政策転換が現場でどこまで進んだかを測る指標になります。

医薬品の供給 — 卸を通じた仕入れと薬価差

薬局が扱う医薬品は、製薬会社から医薬品卸を経て仕入れます。2024年度の調剤医療費(電算処理分)のうち薬剤料は6兆592億円で、その大半が卸を通じて流通する医薬品の代金です。卸はメディパルホールディングス、アルフレッサホールディングス、スズケン、東邦ホールディングスといった大手が全国に配送網を持ち、薬局への安定供給と在庫を担っています。

薬局にとって卸との交渉で決まる仕入れ値は、収益に直結します。医薬品の公定価格である薬価と実際の仕入れ値の差が薬価差で、技術料と並ぶ薬局の利益の源泉です。大手チェーンは購入量を背景に仕入れ条件で有利になりやすく、メディカルシステムネットワークのように共同購入で中小薬局の仕入れを支援する事業も成り立っています。近年は後発医薬品の供給不安や薬価の引き下げで薬価差が縮小しており、薬局の収益構造は技術料への依存を強めています。

医療DX — 電子処方箋と薬局のシステム

処方箋を紙でなく電子的にやり取りする電子処方箋は、2025年9月時点でオンライン資格確認を導入した病院・診療所・歯科・薬局を合わせた施設のうち75,332施設(35.3%)が運用を始めています。種別ごとにみると薬局は85.5%が運用を開始した一方、処方箋を発行する病院・医科診療所は21.5%にとどまり(全体の35.3%は施設数の多い医療機関側の低さを反映)、薬局が受け入れ体制を整えても電子処方箋が届かない状態が続いています。

薬局の業務は、レセプトコンピュータ(調剤報酬の請求システム)、薬歴システム、調剤ロボットなどのシステムと機器で支えられています。電子処方箋とオンライン資格確認が普及すれば、複数の医療機関の処方情報を薬局で一元的に確認できるようになり、面分業型の薬局が担う重複投薬の防止や服薬管理の機能が発揮しやすくなります。医療DXは、立地でなく機能で薬局が選ばれる構造への転換を支える土台です。

主要論点

立地で処方箋を集める構造は変わるのか?

門前薬局の割合は2015年7月の14.0%から2024年8月の17.3%へ増えました。国は2015年から「門前から地域へ」を掲げ、かかりつけ薬剤師への報酬などで誘導してきましたが、処方箋枚数の79.4%が診療所から出る以上、診療所の隣に出店する経済合理性は変わりませんでした。医療モールの開発も、複数の医療機関と薬局を一体で建てることで、門前と同じ安定した処方箋の確保を可能にしました。

2026年度の報酬改定は、この構図に制度の側から手を入れます。処方箋の集中率が高い薬局の調剤基本料の評価を下げ、医療モールの集中率の計算方法を見直し、同一グループの店舗数による区分も改めます。立地の優位が報酬上の不利に転じれば、大手チェーンは門前店舗の収益をどう保つかを迫られます。

ただし、立地の構造が短期に変わるとは考えにくい面もあります。診療所の隣にある薬局が場所を移すわけではなく、患者にとっても診察の直後に薬を受け取れる利便性は残ります。変わるのは薬局の収益配分であって、立地そのものではありません。門前薬局が地域の機能(在宅対応や複数医療機関の処方の一元管理)をどこまで取り込めるかが、構造変化の実質です。

個人立の薬局は成り立つのか?

医療経済実態調査によると、個人立の薬局は1施設当たり収益7,358万円、処方箋9,858枚で、法人立の半分程度の規模です。損益差額率は11.3%と法人立の4.9%より高く見えますが、開設者本人の報酬が費用に入っていないため、そこから生活費を引いた実質的な余裕は法人立と大きく変わりません。

規模が小さいことは、仕入れ条件と人員配置の両面で不利に働きます。薬価差は購入量に左右され、かかりつけ薬剤師や在宅対応の要件を満たすには薬剤師の人数と時間が必要です。給与費の比率が個人立で12.2%と低いのは、開設者自身が調剤を担っているためで、人を雇って機能を広げる余裕は限られます。

一方で、個人立や単独の薬局には、地域の医療機関や患者との距離の近さという強みがあります。面分業型の薬局として複数の医療機関の処方箋を受け、在宅医療に対応する薬局は、制度が評価しようとしている機能そのものです。事業承継や後継者の確保は業界共通の課題で、大手チェーンによる買収の受け皿にもなっていますが、その実態を示す全国統計は本ページの一次資料にはありません。

認定薬局は広がるのか?

地域連携薬局は制度開始から5年で4,292件、薬局全体の6.8%です。専門医療機関連携薬局は225件で、1件もない県が6県あります。認定の要件には、医療機関との入退院時の情報連携、在宅医療への対応、麻薬の調剤や無菌製剤の体制などが含まれ、薬剤師の人数と設備に余裕のある薬局でなければ満たせません。

認定が広がるかどうかは、報酬との結びつきで決まります。認定そのものに点数が付くわけではありませんが、在宅対応や地域連携の実績は報酬改定で評価される方向にあり、2026年度改定でも在宅医療への対応体制を評価する在宅薬学総合体制加算の要件が強められています。認定薬局の要件と報酬の評価軸が重なるほど、認定を取る動機は強まります。

都市部に認定が集中している現状は、認定が「機能の証明」であると同時に「人員の余裕の証明」でもあることを示しています。地方の薬局が認定を取れるかどうかは、薬剤師の確保と結びついた問題で、薬局数と薬剤師数のページで扱う地域差と重なります。

中期見通し

近未来1-2年

2026年度の報酬改定で、処方箋の集中率が高い薬局と大手グループの調剤基本料の評価が下がります。門前薬局の数がすぐに減るわけではありませんが、門前店舗の収益は圧縮され、大手チェーンは在宅対応やかかりつけ機能で補う動きを強めます。電子処方箋は医療機関側の普及が進むかどうかが焦点です。

中期3-5年

地域連携薬局の認定は都市部を中心に増え、認定の有無が薬局の機能を示す標準的な指標になります。個人立や単独の薬局は事業承継の局面を迎え、大手チェーンやドラッグストアへの譲渡が続く見通しです。医療モールや敷地内薬局の扱いは改定のたびに見直され、立地による優位は制度の側から縮められていきます。

長期5-10年

電子処方箋と処方情報の共有が普及すれば、どの薬局でも複数医療機関の処方を一元管理できるようになり、門前と面分業の境界は薄れます。薬局の構造は「どこにあるか」から「何ができるか」で語られるようになり、在宅医療や健康相談を担う薬局と、調剤を効率的にこなす薬局への分化が進みます。

よくある質問

門前薬局とは何ですか?
特定の診療所や病院の隣接地に立地し、その医療機関の処方箋が大半を占める薬局です。厚生労働省の集計では、処方箋集中率(特定の医療機関からの処方箋が占める割合)が95%以上の薬局は2024年8月時点で全体の17.3%、85%以上は39.3%で、2015年7月(14.0%、32.5%)より増えています。
面分業とは何ですか?
患者が特定の医療機関の前の薬局ではなく、地域の薬局で複数の医療機関の処方箋をまとめて受け取る形の医薬分業です。門前薬局に対する概念で、かかりつけ薬剤師による服薬管理や在宅対応など、地域の機能を担う薬局の形として国が推進しています。処方箋集中率85%未満の薬局は全体の60.7%です(85%以上95%未満の22.0%は門前と面分業の中間で、本ページでは面分業型に含めていません)。
地域連携薬局は何件ありますか?
2026年8月末時点で4,292件、薬局全体の6.8%です。専門医療機関連携薬局は225件、健康サポート薬局は3,592件(2026年3月末)です。地域連携薬局と専門医療機関連携薬局は2021年8月施行の改正薬機法に基づく都道府県知事の認定、健康サポート薬局は届出制です。
個人経営の薬局と法人の薬局では収益がどう違いますか?
医療経済実態調査(2024年度)では、1施設当たり収益が法人立1億7,973万円、個人立7,358万円、損益差額率が法人立4.9%、個人立11.3%です。個人立の率が高いのは開設者本人の報酬が費用に含まれないためで、生活費を差し引いた実質的な余裕は数字ほど大きくありません。
薬局は医薬品をどこから仕入れていますか?
製薬会社から医薬品卸を経て仕入れます。メディパルホールディングス、アルフレッサホールディングス、スズケン、東邦ホールディングスなどの卸が全国に配送網を持ち、2024年度の薬剤料6兆592億円(電算処理分)の大半が卸を通じて流通する医薬品の代金です。薬価と仕入れ値の差(薬価差)は技術料と並ぶ薬局の利益の源泉で、購入量の多い大手チェーンほど仕入れ条件で有利になりやすい構造です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】
  2. 2.
    中央社会保険医療協議会 第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)
  3. 3.
    厚生労働省 医薬局 地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の認定件数、健康サポート薬局の届出件数
  4. 4.
    厚生労働省 電子処方箋の導入状況
  5. 5.
    厚生労働省 衛生行政報告例 / 調剤医療費(電算処理分)の動向
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