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食品スーパーの収益構造|営業利益率1〜3%の薄利と物価高【2026年版】

食品スーパーは、粗利率(売上高総利益率)が約26.46%と一定の利幅を確保する一方、本業のもうけを示す営業利益率は全業界平均で約1.38%と薄い業態です。利益率は売上規模で大きく差がつき、年商30億円未満では0.18%、1000億円以上では3.09%まで開きます。薄利の主因は、粗利のおよそ半分が人件費に回る労働集約型の構造(労働分配率約47.64%)で、規模が大きいほど人件費の効率が高く収益性も上がります。物価高で客単価は上昇していますが、仕入原価・人件費・エネルギー費の上昇も重なるため、薄い利益が圧迫されやすい状況です。関東地盤の大手U.S.M.Hのように、増収でも特別損失で赤字になる例もありますが、上場各社の多くは増益を確保しています。年次統計の経営指標をもとに、食品スーパーの収益構造とその背景を整理します。

売上高営業利益率(2025年)
1.38%
全業界平均。売上1000億円以上は3.09%、30億円未満は0.18%と規模で差
出典: スーパーマーケット年次統計調査2025(3協会)経営指標レポート(帝国データバンクCOSMOS1、約300社)
売上高総利益率(粗利率)
26.46%
全業界平均。規模間で26%台と比較的安定。粗利は確保できている
出典: スーパーマーケット年次統計調査2025(3協会)経営指標レポート(帝国データバンクCOSMOS1、約300社)
労働分配率(2025年)
47.64%
粗利の約半分が人件費。大手ほど低い(1000億円以上37.30%)
出典: スーパーマーケット年次統計調査2025(3協会)経営指標レポート(帝国データバンクCOSMOS1、約300社)
平均客単価(平日・2025年)
2,219.5
土日祝は2,565.7円。「2000円超」の割合が上昇(物価高)
出典: スーパーマーケット年次統計調査2025(3協会)アンケート調査

売上規模別の営業利益率と労働分配率(2025年、%)

売上規模が大きいほど営業利益率は高く、労働分配率(人件費の割合)は低い。規模の経済が収益性に表れる
読み解き

売上規模別に見ると、営業利益率は年商30億円未満の0.18%から1000億円以上の3.09%まで、規模が大きいほど高くなります。逆に労働分配率は、30億円未満の52.09%から1000億円以上の37.30%へと、規模が大きいほど低くなります。

粗利率は規模が違っても26%台で大きく変わらないため、収益性の差は主に人件費の効率から生まれます。規模の大きい企業ほど、調達・物流・システムへの投資や本部機能の共同化によって、売上に対する人件費の負担を抑えられます。これが営業利益率の差につながっており、食品スーパーで規模の経済が働く中心的な経路です。

なお全業界平均(約1.38%)は約300社の単純平均で、数の多い中小企業に引き下げられた値です。市場の販売額の多くを占める大手層の営業利益率は2〜3%台にあり、見出しの「1〜3%」はこの中小から大手までの幅を示しています。上場大手のアークスも決算短信で営業利益率2.8%を開示しており、年次統計の大手層(1000億円以上3.09%)と近い水準です。

主要な経営指標の推移(全業界平均、2023〜2025年、%)

粗利率は26%台で安定、営業利益率は1%前後〜1.4%で推移。経常利益率は営業外収益を加えやや高い
読み解き

主要な経営指標を3年でみると、粗利率(売上高総利益率)は26%台で安定しています。一方、営業利益率は2023年の0.99%から2025年は1.38%へと持ち直したものの、依然として1〜2%台の薄い水準です。経常利益率(1.81%)が営業利益率を上回るのは、不動産賃貸料や受取配当など本業以外の収益を加えるためです。

労働分配率は46〜48%台で推移しており、粗利のおよそ半分を人件費が占める構造は大きく変わっていません。最低賃金の引き上げや採用難が続くなか、人件費をどう吸収するかが各社の利益を左右します。

主要論点

食品スーパーの利益率はなぜ低いのですか?

粗利の段階では一定の利幅があるのに、本業の利益が薄いためです。年次統計(約300社の財務集計)では、2025年の粗利率(売上高総利益率)は約26.46%ですが、営業利益率は全業界平均で約1.38%にとどまります。

差を生む最大の要因は人件費です。労働分配率(粗利に占める人件費の割合)は約47.64%で、粗利のおよそ半分が人件費に充てられます。食品スーパーは、生鮮食品の加工や品出し、対面の接客に人手がかかる労働集約型の業態です。この人件費に、物流費・エネルギー費・地代家賃などの経費が加わるため、粗利は確保できても営業利益は薄く残ります。

つまり食品スーパーの薄利は、売価の安さだけでなく、人手を要する売場運営のコスト構造から生まれています。生鮮・惣菜の鮮度や品ぞろえという価値を、人件費をかけて支えている業態だといえます。

規模が大きいと利益率は高いのですか?

はい、食品スーパーでは売上規模が大きいほど営業利益率が高くなる傾向が明確です。年次統計の規模別データでは、営業利益率は年商30億円未満の0.18%から、1000億円以上では3.09%まで高まります。

理由は人件費の効率です。労働分配率は規模が大きいほど低く(30億円未満52.09%から1000億円以上37.30%へ)、規模の大きい企業ほど売上に対する人件費の負担を抑えられています。調達・物流・システムへの投資や本部機能の共同化によって、1店舗・1人あたりの効率を高められるためです。粗利率は規模が違っても26%台で大きく変わらないため、収益性の差はこの人件費効率=規模の経済から生まれます。

この構造が、食品スーパーで経営統合や地域連合が進む背景にもなっています。地盤を持つ企業どうしが調達・物流を共同化して規模の効率を追う動きは、薄利を乗り越える有力な手段だからです。

物価高で食品スーパーの利益はどうなっていますか?

物価高は売上とコストの両方を押し上げます。食品の値上げで客単価は上昇しており、平日の平均客単価は2,219.5円、土日祝は2,565.7円で、「2000円超」の買い物の割合も平日で前年の51.4%から62.9%へ増えています。客単価の上昇は増収につながります。

一方で、仕入原価・人件費・エネルギー費も同時に上昇します。薄い営業利益のもとでは、こうしたコスト増を売価へ完全には転嫁しきれず、利益が圧迫されやすくなります。各社は、粗利率の高い惣菜(目標粗利益率は38.7%と商品カテゴリーで最も高い)やプライベートブランドの強化で粗利を底上げし、照明のLED化(年次統計の回答企業の81.5%が実施)など省エネ・省コストで対応しています。

増収が必ずしも増益を意味しない点には注意が必要です。U.S.M.Hのように、増収でも不採算店の特別損失で最終赤字になる例もあります。ただしこれは業界の既定路線ではなく、上場各社の多くは増益を確保しており、薄利のもとでコスト増をどう抑えるかが各社の収益を分けています。

中期見通し

近未来1-2年

物価高のもとで客単価の上昇が増収を支える一方、最低賃金の引き上げと採用難による人件費の上昇が薄い利益を圧迫し続けるとみられます。労働分配率が約47.64%と高い構造のもとでは、人件費をどこまで吸収できるかが各社の営業利益を左右します。値上げに対する客数の反応も収益を分ける要素です。

中期3-5年

規模の経済を取りにいく動きが中心テーマになります。営業利益率が規模で大きく差がつく構造(30億円未満0.18%から1000億円以上3.09%へ)のもとでは、調達・物流・システムの共同化による人件費・コスト効率の改善が収益力の鍵です。経営統合や地域連合に加え、店舗の省人化(セルフレジ・需要予測発注)や、粗利率の高い惣菜・PBの強化による粗利の底上げが進む見通しです。

長期

人口減少と高齢化のもとで客数の大幅な増加は見込みにくく、1店舗・1人あたりの収益力をどう高めるかが長期の焦点です。薄利を前提に、規模の効率と商品の付加価値(生鮮・惣菜の鮮度や品ぞろえ)を両立できる企業が優位に立つと考えられます。生活インフラとしての役割を保ちながら収益性を確保する経営が、長期の課題となります。

よくある質問

食品スーパーの営業利益率はどのくらいですか?
スーパーマーケット3協会の年次統計(約300社の財務集計)では、2025年の売上高営業利益率は全業界平均で約1.38%です。ただし売上規模で差が大きく、年商30億円未満は0.18%、1000億円以上は3.09%です。粗利率(売上高総利益率)は約26.46%を確保していますが、人件費などを差し引いた本業の利益は1〜3%台と薄い水準です。
なぜ食品スーパーは薄利なのですか?
最大の要因は人件費です。労働分配率(粗利に占める人件費の割合)は約47.64%で、粗利のおよそ半分が人件費に充てられます。生鮮食品の加工や売場づくり、接客に人手がかかる労働集約型の業態であるためです。ここに物流費・エネルギー費・地代家賃などの経費が加わるため、粗利は確保できても営業利益は薄く残ります。
規模が大きいスーパーほど利益率が高いのはなぜですか?
人件費の効率が規模で違うためです。労働分配率は年商30億円未満の52.09%から1000億円以上の37.30%まで、規模が大きいほど低くなります。調達・物流・システムへの投資や本部機能の共同化で、売上に対する人件費の負担を抑えられるためです。粗利率は規模が違っても26%台で変わらないため、収益性の差は人件費効率=規模の経済から生まれます。
物価高は食品スーパーの利益にプラスですか、マイナスですか?
両面があります。食品の値上げで客単価は上昇し(平日2,219.5円・土日祝2,565.7円)、増収につながります。一方で仕入原価・人件費・エネルギー費も上昇するため、薄い利益のもとではコスト増を吸収しきれず利益が圧迫される場面もあります。増収が必ずしも増益を意味しない点に注意が必要です。
食品スーパーで増収でも赤字になることがあるのはなぜですか?
本業の不振ではなく、店舗整理に伴う特別損失が主因です。U.S.M.Hは2026年2月期に増収でしたが、不採算店の閉店に伴う損失(減損など)を特別損失として計上し、最終赤字となりました。営業利益は黒字で、本業の店舗運営が赤字なのではありません。これは業界共通の現象ではなく、上場各社の多くは増益を確保しており、薄利ゆえコスト増を吸収しにくい構造のもとで起きた例外的なケースです。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    スーパーマーケット年次統計調査2025(全国・日本・オール日本スーパーマーケット協会)
  2. 2.
    スーパーマーケット年次統計調査2025(アンケート調査、3協会)
  3. 3.
    アークス(9948)2026年2月期 決算短信(参考)
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