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STAT DETAIL · TRANSPORT DECARBONIZATION

運輸部門のCO2排出と自動車の脱炭素|セグメント別排出量と2030年46%削減目標との距離【2026年版】

日本の 運輸部門 (エネルギー使用に伴う直接排出のうち、自動車・鉄道・船舶・航空による輸送活動分) の CO2 排出量は 180.5 百万トン (2024 年、NIES = 国立環境研究所 GHG インベントリ ベース) で、日本の全 CO2 排出量 971.5 百万トンの 約 19% を占めます。そのうち 自動車 (旅客 + 貨物) が 160.2 百万トン (運輸部門の約 89%、全 CO2 の約 16%) で支配的シェア。2013 年 (政府 GHG 削減目標の基準年) の運輸部門 214.8 百万トンと比較すると -16% 削減 で、2030 年目標 (運輸部門 -34% 比 2013 年) に対し約半分の進捗。2001 年ピーク (256.7 百万トン) からは -30% 削減と長期で改善基調。乗用車 EV シフトの遅れ・商用車 (トラック) 電動化遅れ・電源構成依存の構造論点を整理します。

運輸部門 CO2 (2024年)
180.5百万t
全 CO2 971.5 百万トンの約 19%、自動車が 89% を占める
出典: NIES (国立環境研究所) GHG インベントリ
自動車 CO2 (2024年、合計)
160.2百万t
旅客 89.5 + 貨物 70.7 百万トン (運輸部門 89%)
出典: NIES GHG インベントリ 部門別
2013年比進捗
-16%
2013 年 214.8 → 2024 年 180.5 百万トン、2030 目標 -34% の約半分進捗
出典: NIES + 政府 GHG 削減目標
2001年ピーク比
-30%
ピーク 256.7 → 2024 180.5 百万トン、長期改善基調
出典: NIES GHG インベントリ

運輸部門 CO2 排出量の長期推移 (1990-2024年、35年)

単位: 百万t
0751502253009095000510152024
出典: NIES (国立環境研究所) GHG インベントリ 部門別 CO2 排出量 (1990-2024年)
年度19901991199219931994199519961997199819992000200120022003200420052006200720082009201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024
値(百万t202214220224233242249251249253253257253249243238235232224220221217218215210209207205203199176178184183180
前年比+5.9%+2.8%+1.8%+4.0%+3.9%+2.9%+0.8%-0.8%+1.6%+0.0%+1.6%-1.6%-1.6%-2.4%-2.1%-1.3%-1.3%-3.4%-1.8%+0.5%-1.8%+0.5%-1.4%-2.3%-0.5%-1.0%-1.0%-1.0%-2.0%-11.6%+1.1%+3.4%-0.5%-1.6%
読み解き

運輸部門 CO2 は 1990 年 201.8 百万トン → 2001 年ピーク 256.7 百万トン → 2024 年 180.5 百万トンへ推移。1990 年代の経済成長 + モータリゼーション拡大で 2001 年まで増加、その後は (1) 自動車燃費規制 (省エネ法・トップランナー方式)、(2) HEV (ハイブリッド) 普及、(3) 物流効率化、(4) 人口減 + 輸送量縮小、の 4 要因が並列して効き、緩やかな削減基調に転換しました。

コロナ底 (2020 年 176.4 百万トン) からの反動増は限定的 で、2024 年も低位安定。政府の 2030 年 46% 削減目標 (2013 年比、運輸部門は -34%) に対し、2024 年時点での 2013 年比進捗は -16% で 目標達成には更に -18pt 程度の削減が必要。残り 6 年の削減ペースは過去 11 年の約 1.5 倍の加速が要求される構造で、EV シフト本格化 + 電源脱炭素 + 商用車電動化の同時進行が不可欠です。

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運輸部門 CO2 の輸送機関別内訳 (2024年、自動車・鉄道・船舶・航空)

単位: 百万t4 カテゴリ・合計 180
025507510089.5自動車(旅客)70.7自動車(貨物)13.1鉄道・船舶・航空(旅客)7.2鉄道・船舶・航空(貨物)
出典: NIES GHG インベントリ 部門別 (2024年、直接排出ベース)
カテゴリ自動車(旅客)自動車(貨物)鉄道・船舶・航空(旅客)鉄道・船舶・航空(貨物)
値(百万t89.5070.7013.107.20
シェア49.6%39.2%7.3%4.0%
読み解き

運輸部門 180.5 百万トンの内訳は、自動車 (旅客 89.5 + 貨物 70.7 = 160.2 百万トン、89%) が圧倒的支配的。鉄道・国内船舶・国内航空の合計は 20.3 百万トン (運輸部門の約 11%) で、自動車に比べ排出効率が高い (= 単位輸送量あたりの CO2 が低い) ことを反映しています。

旅客輸送 (自動車 + 鉄道 + 船舶 + 航空) = 102.6 百万トン、貨物輸送 (自動車 + 鉄道 + 船舶 + 航空) = 77.9 百万トン の構造。旅客は乗用車中心、貨物はトラック中心という構成で、それぞれの脱炭素戦略は異なります。旅客 → 乗用車 EV シフト + 公共交通シフト、貨物 → トラック EV/FCV + モーダルシフト (鉄道・船舶への輸送転換) + 物流効率化、が中期 5-10 年の方向感です。

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自動車CO2のセグメント別内訳 (2024年、Allocated = 電気熱配分後ベース)

単位: 百万t5 カテゴリ・合計 160
025507510083.7乗用車(自家用)70.7貨物自動車・トラック3.7バス1.3乗用車(営業用・タクシー)0.8二輪車
出典: NIES GHG インベントリ Allocated (電気熱配分後最終需要部門別、2024年)
カテゴリ乗用車(自家用)貨物自動車・トラックバス乗用車(営業用・タクシー)二輪車
値(百万t83.7070.703.701.300.80
シェア52.2%44.1%2.3%0.8%0.5%
読み解き

Allocated (= 電気・熱を最終需要部門に配分した後の排出量) ベースで、自動車セグメント別 CO2 は乗用車 85 百万トン (自家用 83.7 + 営業用 1.3 = タクシー等) + 貨物自動車/トラック 70.7 百万トン + バス 3.7 百万トン + 二輪車 0.8 百万トン乗用車 自家用 83.7 百万トンが自動車排出の最大セグメント で、個人消費としての自動車利用が脱炭素の中核ターゲット。

貨物自動車 70.7 百万トン (=自動車排出の約 44%) も支配的シェア。乗用車は HEV (HEV+PHEV 計 48%、新車生産ベース) + 純 EV (2.4%) の電動化が進行する一方、商用車 (トラック + バス) の電動化は乗用車比で大きく遅れ、大型トラック・長距離輸送向けは技術課題 (航続距離 + 充電時間 + 重量) が大きい構造。FCV (燃料電池車) + 合成燃料 (e-fuel) + バイオ燃料の選択肢も含めた多面的アプローチが必要です。

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主要論点

2030 年 46% 削減目標 (運輸 -34%) を達成できるか?

政府目標: 2030 年の温室効果ガス排出量を 2013 年比 -46% (国全体)、うち運輸部門は -34% (= 2013 年 214.8 百万トン × 0.66 = 2030 年目標 141.8 百万トン)。2024 年時点の運輸部門は 180.5 百万トンで 2013 年比 -16% の進捗、残り 6 年で更に約 18pt の削減 (= 38.7 百万トン分) が必要です。

達成シナリオ・リスク要因の整理: (1) 新車販売の電動化率引き上げ — 政府方針は乗用車 2035 年に新車販売 100% 電動車 (HEV + PHEV + BEV + FCV 含む、ただし HEV は将来見直し含み)、2024 年実績は HEV+PHEV 48% + BEV+FCV 2.4% で HEV 中心の電動化 が進行中、(2) 保有 (ストック) ベースでの EV 比率は新車ベースより低位 で、車齢 8,200 万台 + 平均車齢 9 年超の保有から実質排出削減への効果は時間差あり、(3) 電源構成の脱炭素 — 火力 7 割の現状で EV の上流排出を加味すると CO2 削減効果は限定的 (電源構成が再エネ + 原子力にシフトしないと EV シフトの効果が薄まる)、(4) 商用車 (トラック + バス) の電動化遅れ — 大型・長距離輸送の技術課題、の 4 要因が論点。民間試算: 多くのシンクタンクが 2030 年運輸部門目標達成は 可能だが楽観でない (進捗加速が必要) との見方を提示しており、政策側の追加対策 (補助金拡充 + 充電インフラ整備加速 + 商用車電動化義務化検討) が中期論点です。

商用車 (トラック・バス) の電動化は進むか?

商用車 (トラック + バス) の CO2 は 自動車排出 160.2 百万トンの約 46% を占める が、電動化進度は乗用車比で大きく遅れています。商用車生産における xEV (HEV + PHEV + BEV + FCV) 比率は 2024 年で 4-5% 程度 (経産省 機械統計) で、乗用車の HEV+PHEV 48% に比べ低位。

技術課題と各社動向: 大型・長距離トラックは (1) 航続距離 (1 回充電で 400-500km、長距離輸送に不足)、(2) 充電時間 (急速充電でも 30-60 分、運行効率に影響)、(3) 車両重量と積載量 (電池の重量で積載量が減少)、(4) 充電インフラ (運送事業者の営業所・幹線道路 SA への急速充電器整備が必要)、の 4 課題が技術的・経済的ハードル。小型・中型トラック (3.5t 以下、配送用) は EV シフトが先行 (いすゞ EV Charge / 三菱 FUSO eCanter / BYD T6 等)。大型・長距離はディーゼル HV + FCV (燃料電池車) + 合成燃料 (e-fuel) + バイオ燃料 の多面的アプローチが現実解で、トヨタ + いすゞ + 日野 + 三菱 FUSO のアライアンスや、政府の 2030 年小型商用車 EV 化目標 (新車 50%+ EV) が中期の方向感です。商用車電動化の進捗が 2030 年運輸部門目標達成の最大の鍵となる構造です。

電源構成依存で EV の脱炭素効果はどこまで担保されるか?

EV (バッテリー EV) は走行段階での CO2 排出ゼロ だが、電力消費分の上流排出 (発電所での化石燃料燃焼に伴う CO2) がライフサイクル排出として加算されます。日本の電源構成は 2023 年度時点で火力 約 70% (LNG + 石炭 + 石油) + 原子力 約 9% + 再エネ 約 22% (出典: 資源エネルギー庁) で、火力依存が残存。

EV vs HEV のライフサイクル比較: 国土交通省・経産省試算では、現状の電源構成下では 小型 EV の Well-to-Wheel CO2 (= 燃料製造 + 走行) は HEV と同等またはやや優位、大型 EV では火力電源の構成比次第で HEV を上回る場合もあるという結果。EV の CO2 削減効果を最大化するには電源脱炭素 (再エネ + 原子力比率の引き上げ) が必要条件 で、自動車 OEM の戦略 (電動化投資) と電力産業の戦略 (脱炭素電源拡大) は表裏一体の関係です。

論点: (1) 再エネ比率の引き上げペース — 政府目標 2030 年 36-38% (太陽光 + 風力中心)、達成度次第で EV の CO2 削減効果が大きく変動、(2) 原子力再稼働と新増設 — エネルギー基本計画で重要な低炭素電源と位置づけ、原子力再稼働の進捗が EV シフトの効果を左右、(3) EV ライフサイクル評価の国際標準化 — 欧州 (EU バッテリー規則) + 米国 IRA + 中国 NEV クレジットが各々の電源構成を反映、(4) トヨタが主張する「マルチパスウェイ」(HEV + PHEV + BEV + FCV を並列推進) の妥当性は電源脱炭素ペースに依存、の 4 軸が中期 5-10 年の論点です。

中期見通し

近未来 1-2 年

2026-2027 年は運輸部門 CO2 が 180.5 百万トン前後で推移する見通しで、緩やかな減少基調が続く可能性。乗用車 HEV 普及拡大 + 純 EV 比率 2-4% へ漸増、商用車 EV/FCV は配送用小型を中心に普及開始の方向感。2013 年比進捗 -16% → 2027 年に -20% 前後までは現状ペース継続シナリオ (単純外挿) での試算で、政策強化 + EV シフト加速・電源脱炭素ペースによっては上振れ・下振れの両方向の幅があります。電源構成の脱炭素ペース (再エネ + 原子力再稼働) が EV の CO2 削減効果に影響する構造は変わらず。

中長期 3-5 年

2028-2030 年の運輸部門 -34% 目標 (= 141.8 百万トン) の達成は可能だが楽観できない状況。達成シナリオは (1) 新車販売の EV/FCV 比率引き上げ加速 (政府方針: 乗用車 2035 年 100% 電動車)、(2) 商用車電動化義務化 (新車 50%+ EV target)、(3) 電源構成の脱炭素加速 (再エネ 36-38%、原子力再稼働)、(4) 物流効率化 + モーダルシフト (鉄道・船舶への輸送転換) の 4 軸の並行進行が条件。1 つでも遅延すると目標未達のリスクが高まる構造で、2030 年は中間ゴール、2050 年 CN (カーボンニュートラル) が長期ゴールという位置づけです。

関連業界への波及

運輸部門 CO2 180.5 百万トン削減には、自動車 OEM (HEV + EV + FCV 投資) + 部品サプライヤー (Tier1 電池 + e-Axle + パワー半導体) + 電力産業 (再エネ + 原子力 + 電力グリッド) + 物流業界 (運送事業者の車両電動化 + モーダルシフト) + 政策 (補助金 + 充電インフラ + 規制) の業界横断連携が不可欠。日本の対 GDP 比 5%+ を占める自動車産業の脱炭素戦略は、エネルギー + 物流 + 政策の各産業と表裏一体で、業界単独では完結しない構造が中長期の最大の特徴です。

よくある質問

日本の運輸部門 CO2 排出量はどれくらいですか?
2024 年は 180.5 百万トン (NIES GHG インベントリ ベース)、日本の全 CO2 排出 971.5 百万トンの約 19% を占めます。自動車 (旅客 + 貨物) が運輸部門の 89% で支配的シェア。
自動車の CO2 排出量はどれくらいですか?
2024 年の自動車 (旅客 + 貨物) CO2 は 160.2 百万トン、内訳は旅客 89.5 百万トン (乗用車中心) + 貨物 70.7 百万トン (トラック中心)。Allocated (電気熱配分後) では乗用車自家用 83.7 百万トンが最大セグメント。
2030 年 46% 削減目標 (運輸 -34%) は達成可能ですか?
2013 年比進捗は 2024 年時点で -16%、目標 -34% に対し約半分の進捗。残り 6 年で更に約 18pt の削減が必要で、EV シフト加速 + 電源脱炭素 + 商用車電動化 + 物流効率化の同時進行が条件。民間試算では「可能だが楽観できない」との見方。
商用車 (トラック) の電動化は進んでいますか?
商用車生産における xEV 比率は 4-5% 程度 (経産省 機械統計)、乗用車の HEV+PHEV 48% + BEV+FCV 2.4% に比べ大きく遅れています。小型・中型は EV 化が進行 (いすゞ・三菱 FUSO・BYD T6 等)、大型・長距離はディーゼル HV + FCV + 合成燃料の多面的アプローチ が現実解。
EV シフトで CO2 はどれだけ削減されますか?
EV の CO2 削減効果は電源構成に依存、日本の電源は火力 70% + 原子力 9% + 再エネ 22% (2023 年度) で、現状の Well-to-Wheel 比較では小型 EV は HEV と同等またはやや優位。電源脱炭素 (再エネ + 原子力比率引き上げ) が EV の CO2 削減効果を最大化する条件
2050 年カーボンニュートラル (CN) 目標との関係は?
2030 年 -46% は CN への中間ゴール、2050 年が長期ゴール。CN 達成には自動車 + 電力 + 物流 + 政策の業界横断連携が必要で、EV/FCV + 電源脱炭素 + 合成燃料 + バイオ燃料の組み合わせ が現実解。トヨタの「マルチパスウェイ」戦略はこの方向性に整合する構造です。
データ出典
出典: 国立環境研究所 (NIES) 日本国温室効果ガスインベントリ 部門別 CO2 (1990-2024) / 同 電気熱配分後最終需要部門別 CO2 / 政府 GHG 削減目標 2030 (国全体 -46% / 運輸 -34%、2013 年比) / 資源エネルギー庁 電源構成 / 経済産業省 機械統計 (xEV 生産)
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