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リース会社の多角化|金融から航空機・海外・環境エネルギーへ【2026年版】

国内のリース市場が成熟するなか、総合リース大手は、物件のリースを土台に、航空機・海外・環境エネルギー・事業投資へと事業を広げています。2025年3月期は航空機リースの回復が大手各社の最高益を牽引しましたが、一過性の要因も含まれます。なぜ多角化するのか、どの領域へ向かうのか、日本のリース会社の戦略とリスクを整理します。

なぜリース会社は多角化を進めるのか

成熟する国内のリース市場

多角化の最大の背景は、国内のリース市場の成熟です。リース取扱高は、バブル期の約8.8兆円(1991年度)をピークに長期的に縮小し、近年は約5兆円規模で推移しています。設備投資に占めるリースの割合(リース比率)も、かつての8%台から4.34%(2024年度)へと半分以下に下がりました。物件を貸して金利を得る従来の事業は、市場の伸びが期待しにくく、調達金利の上昇局面では利ざや(調達コストと運用利回りの差)の確保も難しくなります。

金融から事業投資・成長領域へ

そこで大手各社は、物件のリースで培った与信・資産評価・資金調達の力を生かし、より高い収益が見込める領域へ事業を広げてきました。航空機のように世界規模で需要が伸びる資産、海外の成長市場、脱炭素で投資が増える環境・エネルギーなどです。リースという枠を超え、事業に投資して育てる事業投資へと軸足を移す動きも、オリックスを筆頭に進んでいます。

出自によって向かう領域が異なる

多角化の方向は、リース会社の出自によっても異なります。独立系のオリックスは金融・不動産・保険・事業投資まで最も幅広く展開し、銀行系・商社系は親会社のネットワークを生かして航空機・海外・環境エネルギーを伸ばしています。各社が、自社の強みに合わせて成長領域を選び取っているのが現状です。それぞれの主な領域と担い手は、下の表のとおりです。

多角化の主な領域と担い手

航空機・海外・環境エネルギー・事業投資の4領域と、それぞれに注力する主なプレイヤー
航空機リース
領域の内容
航空会社に機体・エンジンを賃貸。世界的な航空需要を取り込む、リース大手の主力の成長領域
主な担い手(例)
オリックス・三菱HCキャピタル・東京センチュリー・三井住友ファイナンス&リースなど
海外事業
領域の内容
海外企業の買収(M&A)や現地でのリース・ファイナンス、インフラ・再エネのプロジェクト投資
主な担い手(例)
オリックス・三菱HCキャピタル・東京センチュリーなど
環境・エネルギー
領域の内容
太陽光・風力などの再生可能エネルギー発電、脱炭素に向けた設備・事業への投資
主な担い手(例)
各社が注力(芙蓉総合リース・みずほリース・オリックス・三菱HCキャピタルなど)
事業投資・その他金融
領域の内容
不動産・保険・銀行・投資など、リースの枠を超えた事業の保有・運営
主な担い手(例)
オリックス(多角化が最も進む)など
読み解き

これらの領域は、いずれも物件のリースで培った資産評価や資金調達の力を生かせる事業です。ただし、海外資産や航空機は世界経済や航空需要の影響を受けやすく、業績の変動(ボラティリティ)が大きくなる面があります。各社は、成長を取り込みつつ、リスクが偏りすぎないよう事業のバランスをとることを課題としています。

航空機リース — 回復と、その中身

世界需要を取り込む主力領域

航空機リースは、リース会社が航空機の機体やエンジンを保有し、世界中の航空会社に賃貸する事業です。航空会社にとっては、高額な機体を自社で購入せず、需要に応じて柔軟に調達できる利点があります。世界的な航空需要の拡大を背景に、日本のリース大手にとって主力の成長領域となっており、オリックス、三菱HCキャピタル、東京センチュリー、三井住友ファイナンス&リースなどが、世界規模のネットワークで展開しています。

コロナの打撃から回復へ

航空機リースは、新型コロナで航空需要が急減した際に大きな打撃を受けました。その後、航空需要の回復とともに業績も持ち直し、2025年3月期(2024年度)は航空機リースの回復が大手各社の最高益を牽引しました。各社は、保有する機体を増やす計画を進めており、回復した需要を取り込む姿勢を強めています。

「最高益」の中身 — 一過性と構造を分ける

ただし、最高益の中身は慎重に見る必要があります。2024年度の利益には、ロシア向けにリースしていた航空機をめぐる保険金の受領や、保有機体の売却益といった一過性の要因が含まれます。これらは、その期だけの特別な利益で、継続的に生まれる構造的な収益とは性質が異なります。航空機リースが成長領域であることは確かですが、最高益という数字をそのまま将来の実力と見るのではなく、一過性の要因を除いた継続的な収益力を見極めることが重要です。

海外展開と環境エネルギー — 成長とリスクの両面

海外で広げる事業と、変動への備え

海外事業では、各社が海外企業の買収(M&A)や、現地でのリース・ファイナンス、インフラや再生可能エネルギーのプロジェクト投資で事業を広げています。成長市場を取り込む狙いがある一方、海外資産は世界経済や為替の影響を受けやすく、業績の変動を大きくする要因にもなります。大手のなかには、海外資産を増やしすぎると変動が大きくなるとして、極端に海外へ偏らないようバランスをとる方針を示す会社もあります。日本のリース会社にとって、海外の成長とリスクをどう両立させるかが課題です。

脱炭素を追い風にする環境・エネルギー

環境・エネルギーは、各社が共通して注力する領域です。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電事業、脱炭素に向けた設備や事業への投資が広がっています。設備を保有して長期で運用するリース会社の事業は、初期投資が大きく回収が長期にわたる再エネ事業と相性がよく、脱炭素(GX=グリーントランスフォーメーション)の流れが追い風になっています。芙蓉総合リース、みずほリース、オリックス、三菱HCキャピタルなどが、再エネ・環境分野の事業を伸ばしています。

日本のリース会社の立ち位置

日本のリース会社は、成熟した国内市場を土台に、航空機・海外・環境エネルギーといった成長領域を組み合わせて収益源を多様化しています。世界の航空機リースや再エネ投資では、海外の大手金融機関や専業会社と競合します。為替の動きや世界経済の変動が業績に影響するなかで、日本企業としての与信や資産管理の強みを生かし、リスクを抑えながら成長領域を育てられるかが問われています。

主要論点

なぜリース会社は航空機や海外へ多角化するのか?

背景には、国内のリース市場の成熟があります。リース取扱高はバブル期をピークに縮小し、設備投資に占めるリースの割合も低下してきました。物件を貸して金利を得る従来の事業は伸びが期待しにくく、調達金利の上昇局面では利ざやの確保も難しくなります。

そこで大手各社は、物件のリースで培った与信・資産評価・資金調達の力を生かし、より高い収益が見込める領域へ事業を広げてきました。世界的に需要が伸びる航空機、成長する海外市場、脱炭素で投資が増える環境・エネルギーなどです。リースという枠を超え、事業に投資して育てる事業投資へ軸足を移す動きも、オリックスを筆頭に進んでいます。

多角化の方向は出自によって異なり、独立系・銀行系・商社系がそれぞれの強みに合わせて成長領域を選んでいます。

航空機リースの「最高益」はそのまま実力と見てよいのか?

2025年3月期(2024年度)は、新型コロナから回復した航空機リースが大手各社の最高益を牽引しました。航空機リースが日本のリース大手の主力の成長領域であることは確かです。

ただし、最高益の中身は慎重に見る必要があります。2024年度の利益には、ロシア向けにリースしていた航空機をめぐる保険金の受領や、保有機体の売却益といった一過性の要因が含まれます。これらはその期だけの特別な利益で、継続的に生まれる構造的な収益とは性質が異なります。

したがって、最高益という数字をそのまま将来の実力と見るのではなく、一過性の要因を除いた継続的な収益力を見極めることが重要です。航空需要の回復という構造的な追い風と、特別な利益を分けて捉える必要があります。

海外への多角化にはどんなリスクがあるのか?

海外事業は、成長市場を取り込める一方で、業績の変動を大きくする要因にもなります。海外資産は、世界経済の動きや為替の変動の影響を受けやすく、地政学的なリスク(紛争や制裁など)にもさらされます。ロシア向けの航空機が制裁の影響を受けた事例は、海外資産が抱えるリスクを示しています。

このため、大手のなかには、海外資産を増やしすぎると業績の変動が大きくなるとして、極端に海外へ偏らないようバランスをとる方針を示す会社もあります。成長を求めて海外を広げることと、変動を抑えて経営を安定させることの両立が、各社の課題です。

日本のリース会社にとっては、与信や資産管理の強みを生かし、リスクを見極めながら成長領域を育てられるかが、多角化を成功させる鍵になります。

中期見通し

近未来1-2年

航空需要の回復を背景に、航空機リースが大手各社の業績を支える基調が続く見通しです。各社は保有機体を増やす計画を進めます。一方、為替や世界経済の変動、地政学的なリスクが、海外資産を多く持つ会社の業績を左右します。

中期3-5年

中期では、脱炭素(GX)を追い風に、再生可能エネルギーや環境関連の事業がさらに広がる見通しです。リース会社は、設備を保有して長期で運用する強みを生かし、再エネ・インフラへの投資を伸ばします。海外では、成長の取り込みとリスク管理のバランスをとる経営が続きます。

長期

長期では、物件を貸す金融業から、航空機・海外・環境エネルギー・事業投資を組み合わせた総合的な金融・事業会社へと、リース大手の姿が変わっていく見通しです。国内のリースを土台にしつつ、成長領域をどう育て、変動のリスクをどう抑えるかが、各社の競争力を左右します。

よくある質問

なぜリース会社は多角化を進めているのですか?
国内のリース市場が成熟し、物件のリース単体では伸びが期待しにくく、利ざやの確保も難しくなっているためです。大手各社は、物件のリースで培った与信・資産評価・資金調達の力を生かし、航空機・海外・環境エネルギー・事業投資など、より高い収益が見込める領域へ事業を広げています。
航空機リースとは何ですか? なぜ好調なのですか?
リース会社が航空機の機体やエンジンを保有し、世界中の航空会社に賃貸する事業です。航空会社は高額な機体を購入せず柔軟に調達できます。新型コロナで打撃を受けた後、航空需要の回復とともに業績が持ち直し、2025年3月期は航空機リースの回復が大手各社の最高益を牽引しました。ただし保険金の受領や機体の売却益など一過性の要因も含まれ、継続的な収益力とは分けて見る必要があります。
リース大手の最高益はそのまま実力と考えてよいですか?
そのまま将来の実力と見るのは慎重さが必要です。2024年度の最高益には、ロシア向け航空機をめぐる保険金の受領や保有機体の売却益といった、その期だけの一過性の利益が含まれます。航空機リースが成長領域であることは確かですが、一過性の要因を除いた継続的な収益力を見極めることが重要です。
リース会社の海外事業にはどんなリスクがありますか?
海外資産は、世界経済や為替の変動、紛争や制裁などの地政学的なリスクの影響を受けやすく、業績の変動を大きくします。ロシア向けの航空機が制裁の影響を受けた事例はその一例です。このため、海外資産を増やしすぎず、変動を抑えるためにバランスをとる方針を示す会社もあります。
リース会社は環境・エネルギー分野で何をしていますか?
太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電事業や、脱炭素に向けた設備・事業への投資を広げています。設備を保有して長期で運用するリース会社の事業は、初期投資が大きく回収が長期にわたる再エネ事業と相性がよく、脱炭素(GX)の流れが追い風になっています。芙蓉総合リース、みずほリース、オリックス、三菱HCキャピタルなどが注力しています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    各社 有価証券報告書・決算説明資料(多角化・セグメントの事業構造)
  2. 2.
    業界各社の2025年3月期決算・業界報道(航空機リースの回復)
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