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土木のICT施工とBIM/CIM|直轄で広がる普及と担い手対策【2026年版】

ICT施工は、測量から設計・施工・検査までのデジタルデータを使い、土木工事の生産性を高める取り組みです。国が直接発注する直轄の土木工事では、ICT施工の実施率が87%(2023年度)に達し、地方自治体でも広がり始めています。土木がICT施工の主戦場となる理由、直轄と自治体の普及の差、3次元データを設計から施工まで一貫して使うBIM/CIM、そして担い手不足を背景にした省人化まで、施工現場の実装という視点で整理します。

直轄のICT施工実施率(2023年度)
87%
国が直接発注する土木工事のうちICT施工が実施された件数割合(現場ベース)
出典: 国土交通省ICT施工に関する状況報告
都道府県・政令市(2023年度)
23%
土工での実施率。前年度は21%で上昇中だが直轄との差が大きい
出典: 国土交通省ICT施工に関する状況報告
直轄の実施率(2018年度)
約50%
数年で87%(2023年度)へ定着。普及の速さを示す起点
出典: 国土交通省ICT施工に関する状況報告
省人化目標(2040年度)
3
生産性1.5倍以上(2023年度比)。i-Construction 2.0が掲げる施工現場の目標
出典: 国土交通省i-Construction 2.0

ICT施工とは、どんな取り組みなのか

デジタルデータで工事をつなぐ

ICT施工は、測量・設計・施工・検査という土木工事の各段階を、デジタルデータでつないで進める施工方法です。まず、ドローン(UAV)やレーザースキャナーで現況の地形を面的に測る起工測量(工事に着手する前の3次元測量)を行い、地形を細かな点の集まり(点群データ)として取得します。この測量データをもとに、完成形の地形や構造物を3次元設計データとして作成します。

建機が設計データどおりに動く

作成した3次元設計データは、ICT建設機械に読み込ませます。ICT建機は、設計データに沿って刃先を自動制御するマシンコントロール(MC)や、運転手に位置を示すマシンガイダンス(MG)を備えたブルドーザーやバックホウ(油圧ショベル)で、従来必要だった丁張り(施工の目印となる杭や板)に頼らず、設計どおりに掘削・盛土を進められます。施工後は、再びドローンやレーザーで形状を計測し、設計との差を面的に確認する出来形管理(仕上がりの寸法・形状の管理)を行います。

「面」で測り、「面」で管理する

従来の土木工事は、一定間隔の断面(点)で測量・管理していました。ICT施工では、地形や構造物を「面」として3次元で捉えるため、測量・丁張り・検査にかかる人手と時間を大きく減らせます。土量の計算や進捗管理もデータで一元化でき、経験の浅い技術者でも一定の精度で施工を進めやすくなる点が特徴です。

なぜ土木がICT施工の主戦場で、直轄と自治体で差があるのか

土工が多い土木は効果が出やすい

ICT施工は、掘削・盛土といった土を動かす土工の規模が大きいほど効果が出やすく、道路・河川・造成などの土工を多く含む土木工事が主戦場になります。国土交通省は2016年度からi-Constructionを進め、まず自らが発注する直轄工事でICT施工を標準化してきました。その結果、直轄の土木工事の実施率は2018年度の約50%から2023年度には87%へと定着しています。

普及を左右するのは自治体への広がり

一方、都道府県・政令市の実施率は2023年度で23%(前年度21%)にとどまります。上昇傾向にはありますが、直轄との差は依然として大きいのが実態です。背景には、自治体の工事は1件あたりの規模が小さく土工量が限られること、ICT建機や3次元データを扱える人材・体制が中小の受注業者・発注者側の双方で不足していることがあります。工事件数の多くを担うのは地方自治体であり、ここへの普及が、ICT施工が全国の現場に広がるかどうかを左右します。

発注者側の後押しと小規模工事への対応

国は、自治体が発注する工事でもICT施工を選びやすくするため、簡易な機器や小規模な土工に対応した基準づくり、ICT建機のレンタル活用、技術者向けの研修などを後押ししています。ICT建機そのものは購入せずレンタルで使うことも多く、初期投資を抑えて導入できる環境が整いつつあります。導入のハードルを下げ、小規模工事でも使える形に広げられるかが、普及拡大の焦点です。

ICT施工の一連の工程

起工測量から出来形管理まで、デジタルデータでつなぐ4つの工程。③のICT建設機械による施工が中核
① 起工測量(3次元測量)
工程の内容
ドローン(UAV)やレーザースキャナーで現況の地形を面的に測る
従来との違い
従来の丁張り(測量の目印)に頼らず、地形を3次元の点群データとして取得する
② 3次元設計データの作成
工程の内容
測量データをもとに、完成形の地形・構造物を3次元データで設計する
従来との違い
施工に必要な土量の計算や、次工程のICT建機への指示データの基礎になる
③ ICT建設機械による施工
工程の内容
3次元設計データを読み込んだブルドーザー・バックホウで掘削・盛土する
従来との違い
マシンコントロール(MC=自動制御)/マシンガイダンス(MG=運転支援)で丁張りなしに施工
④ 出来形管理・検査
工程の内容
ドローンやレーザーで施工後の形状を計測し、設計との差を確認する
従来との違い
書類と現場立会中心の検査を、3次元データによる面的な出来形管理に置き換える
読み解き

ICT施工は、起工測量から3次元設計、ICT建機による施工、出来形管理・検査へと進む一連の工程を、3次元データでつないで進めます。とくに③のICT建設機械による施工が中核で、設計データどおりに機械が動くことで、丁張りの設置や熟練の重機オペレーターへの依存を減らせます。各工程が個別に効率化されるのではなく、測量から検査までがデータで一気通貫することに、生産性向上の本質があります。

BIM/CIMと省人化目標は、土木の現場をどう変えるのか

BIM/CIM ── 3次元データを一貫して使う

BIM/CIM(ビム・シム)は、橋やトンネルなどの構造物や地形を3次元のモデルで表し、調査・設計から施工、維持管理までの各段階で同じデータを引き継いで使う考え方です。施工段階のICT施工が「工事の効率化」であるのに対し、BIM/CIMは「事業全体を通じたデータ活用」を指します。国土交通省は、小規模なものや災害復旧などを除く直轄の公共事業で、2023年度からBIM/CIMを原則適用としました。設計の可視化による関係者間の合意形成や、施工・維持管理での手戻り防止が期待されています。

省人化 ── 担い手不足に備える国の目標

ICT施工やBIM/CIMを推し進める最大の理由は、深刻化する担い手不足です。建設業の就業者は高齢化が進み、2040年には生産年齢人口が現在から大きく減ると見込まれます。国土交通省は、これまでのi-Constructionを発展させたi-Construction 2.0として、施工現場のオートメーション化を進め、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割(生産性1.5倍以上、2023年度比)とする目標を掲げています。これは施工現場の省人化を示す国の目標で、少ない人数でも社会インフラの整備・維持を続けられる体制づくりを狙うものです。

週休2日と2024年問題

2024年4月からは、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました(いわゆる建設業の2024年問題)。長時間労働に頼らずに工事を進めるには、現場の生産性を上げて週休2日を確保することが欠かせません。ICT施工による省人化は、働き方改革と担い手確保の両面から、土木の現場に求められています。技術と働き方をあわせて変えていくことが、これからの施工現場の課題です。

主要論点

なぜ直轄と自治体でICT施工の普及に差があるのか?

国が直接発注する直轄の土木工事では、ICT施工の実施率が2023年度に87%に達した一方、都道府県・政令市は23%にとどまります。この差の背景には、いくつかの構造的な要因があります。

第一に、工事の規模です。直轄工事は大規模な土工を含むものが多く、ICT施工の効果が出やすいのに対し、自治体の工事は生活道路や小規模な河川など、1件あたりの規模が小さく土工量が限られるものが中心です。第二に、人材と体制です。ICT建機を扱う受注業者、3次元データを発注・検査できる自治体職員の双方が、地方では不足しています。土木技術職員が少ない小規模自治体では、ICT施工を前提とした発注・監督の体制づくりが追いつきません。

工事件数の多くを担うのは地方自治体であり、ここへの普及なくして全国的な生産性向上は実現しません。国は、小規模工事に対応した簡易な基準づくりやICT建機のレンタル活用、研修による人材育成を後押ししており、自治体への普及をどこまで広げられるかが、ICT施工全体の成否を左右します。

ICT施工は担い手不足にどこまで効くのか?

土木・インフラ工事は、就業者の高齢化と若手の入職減で担い手不足が深刻化しています。2040年には生産年齢人口が大きく減る見通しで、限られた人手で膨大なインフラを整備・維持しなければなりません。ICT施工は、測量・丁張り・検査にかかる人手と時間を減らし、経験の浅い技術者でも一定の精度で施工できるようにすることで、この課題に応える手立てです。

国土交通省はi-Construction 2.0として、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割(生産性1.5倍以上、2023年度比)とする目標を掲げています。施工の自動化を進め、少ない人数で安全に、できる限り快適な環境で働ける現場を目指すものです。省人化は、2024年4月から適用された時間外労働の上限規制への対応や、週休2日の確保にも直結します。

ただし、ICT施工の効果は土工中心の工事で大きく、維持修繕や小規模な工事では省人化に時間がかかる分野もあります。技術の導入だけでなく、発注の仕組みや人材育成、中小業者への普及を組み合わせて初めて、担い手不足への備えとして機能します。

BIM/CIMの原則適用は、土木の仕事をどう変えるのか?

BIM/CIMは、構造物や地形を3次元モデルで表し、調査・設計から施工、維持管理までの各段階で同じデータを引き継いで使う取り組みです。施工の効率化にとどまるICT施工に対し、BIM/CIMは事業全体を通じたデータ活用を目指します。国土交通省は、小規模なものや災害復旧などを除く直轄の公共事業で、2023年度からBIM/CIMを原則適用としました。

原則適用がもたらす変化は、まず設計段階の可視化です。3次元モデルで完成形を関係者が共有することで、発注者・設計者・施工者の合意形成が進み、設計の不整合による手戻りを減らせます。施工段階ではICT施工のデータと連携し、維持管理段階では点検・補修の記録を同じモデルに蓄積することで、インフラの長寿命化にもつながります。

一方で、3次元データを扱える人材の育成や、データの作成・管理にかかる負担、中小業者の対応など、定着には課題も残ります。BIM/CIMは、土木の仕事を「図面をやりとりする仕事」から「データを共有・蓄積する仕事」へと変えていく取り組みで、その浸透には時間を要します。

中期見通し

近未来1-2年

直轄工事ではICT施工が標準化として定着し、対象工種の拡大が進みます。焦点は自治体への普及で、小規模工事に対応した簡易な基準やICT建機のレンタル活用、発注者・受注者向けの研修が広がります。BIM/CIMの原則適用も、直轄から自治体へと段階的に広がっていきます。

中期3-5年

測量から施工・検査までのデータ連携が進み、施工の自動化・遠隔化の実装が本格化します。i-Construction 2.0が掲げる施工現場のオートメーション化に向けて、複数の建機を1人で操作する取り組みや、現場条件の異なる工事への展開が課題となります。担い手不足のもと、省人化と週休2日の両立が現場の共通目標になります。

長期

建設現場の省人化を2040年度までに少なくとも3割(生産性1.5倍以上)とする目標に向け、施工の自動化とデータ活用が土木の標準になっていきます。人口減少下でも社会インフラの整備・維持を続けるため、技術・人材・発注の仕組みを一体で変えていくことが、長期の課題です。

よくある質問

ICT施工とは何ですか?
ICT施工は、ドローンによる3次元測量、3次元設計データ、ICT建設機械による施工、電子データを使った検査までを一連でつなぎ、土木工事の生産性を高める施工方法です。測量・丁張り・検査にかかる人手と時間を減らせるのが特徴で、国土交通省が2016年度から進めるi-Constructionの中核です。国が直接発注する直轄の土木工事では、実施率が87%(2023年度)に達しています。
ICT施工の実施率はどれくらいですか?
国が直接発注する直轄の土木工事では、2023年度のICT施工実施率が87%です。これは、その年度に発注された直轄の土木工事(土工など)のうち、ICT施工が実施された工事の件数割合(現場ベース)を示します。都道府県・政令市では2023年度で23%(前年度21%)で、上昇傾向にはありますが直轄との差が大きいのが実態です。
BIM/CIMとICT施工は何が違いますか?
ICT施工は、測量から施工・検査までをデジタルデータでつなぐ「施工段階の効率化」です。BIM/CIMは、構造物や地形を3次元モデルで表し、調査・設計から施工、維持管理までの各段階で同じデータを引き継いで使う「事業全体を通じたデータ活用」を指します。国土交通省は、小規模なものや災害復旧などを除く直轄の公共事業で、2023年度からBIM/CIMを原則適用としています。
ICT建設機械とは何ですか?
ICT建設機械は、3次元設計データを読み込み、設計どおりに施工できるブルドーザーやバックホウ(油圧ショベル)などです。刃先を自動制御するマシンコントロール(MC)や、運転手に位置を示すマシンガイダンス(MG)を備え、従来必要だった丁張り(施工の目印)に頼らず掘削・盛土を進められます。購入せずレンタルで使うことも多く、初期投資を抑えて導入できます。
なぜ土木でICT施工や省人化が進められているのですか?
最大の理由は、担い手不足です。建設業の就業者は高齢化が進み、2040年には生産年齢人口が大きく減る見通しです。少ない人手で膨大なインフラを整備・維持するため、国土交通省はi-Construction 2.0として、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割(生産性1.5倍以上、2023年度比)とする目標を掲げています。2024年4月からの時間外労働の上限規制への対応や、週休2日の確保にもつながります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    国土交通省ICT施工に関する状況報告(i-Construction推進)
  2. 2.
    国土交通省i-Construction 2.0(令和6年4月)
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