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土木業界の構造|元請・下請の重層と業態の類型【2026年版】

土木・インフラ工事を含む建設業は、許可業者が全国で約48万3,700社にのぼる、裾野の広い分散構造の業界です。うち土木工事業の許可を持つのは13万1,889社です。発注者から工事を直接請け負う元請には、大型土木の総合ゼネコン、海洋土木のマリコン、道路舗装の3類型があり、その下で、とび・土工や舗装などの専門工事業者が工種ごとに施工を分担します。許可業者数からみた業界の姿、元請と下請の重層構造、業態の類型、そして担い手の実態まで、土木の業界構造を順に整理します。

土木業界の構造 — 業者の分散・元請下請・業態の類型

許可業者数からみた分散構造・元請と下請の重層・業態の類型・担い手の4つの観点

土木の業界構造は、業者の分散・元請と下請の重層・業態の類型・担い手という観点で捉えられます。元請は総合ゼネコン・マリコン・道路舗装の3類型に分かれ、その下で、とび・土工や舗装などの専門工事業者が工種ごとに施工を分担します。建設業の許可業者は全国で約48万3,700社にのぼり、その大多数は中小・地場の業者です。少数の大手が市場を占める寡占ではなく、大手から地域の中小まで多層のプレイヤーが役割を分担して併存しているのが特徴です。下の表は各類型の特徴・役割と代表的なプレイヤーを整理したもので、財務や規模の比較ではありません。

総合ゼネコン
特徴・役割
ダム・トンネル・橋梁など高難度の大型土木を、発注者から一式で請け負う元請
代表的なプレイヤー
鹿島建設・大林組・大成建設・清水建設 など
マリコン(海洋土木)
特徴・役割
港湾・浚渫(しゅんせつ)・地盤改良など海のインフラを専門に手がける元請
代表的なプレイヤー
五洋建設・東亜建設工業・東洋建設・若築建設 など
道路舗装
特徴・役割
アスファルト合材の製造から舗装施工までを一貫して手がける
代表的なプレイヤー
NIPPO・前田道路・日本道路 など
専門工事業(職別)
特徴・役割
元請の下で、とび・土工・舗装・しゅんせつ・法面など工種ごとに施工を分担する下請中心の業種
代表的なプレイヤー
全国に数十万の中小事業者
地域建設業
特徴・役割
地方に根ざし、公共土木の施工に加え災害対応・除雪など地域のインフラを支える中小
代表的なプレイヤー
各地域の建設会社

業者の分散 ── 約48万社の裾野の広い構造

土木・インフラ工事を含む建設業は、許可を受けた業者が全国で約48万3,700社(令和7年3月末)にのぼる、裾野の広い業界です。建設業の許可は工事の種類ごとに29の業種に分かれており、1つの業者が複数の業種の許可を持つこともあります。土木工事業の許可を持つのは13万1,889社(全業者の27.3%)、掘削・盛土・基礎などを担うとび・土工工事業は18万3,700社(38.0%)と、土木に関わる業種には多くの業者が登録しています。

業者数は、公共投資がピークだった平成12年(2000年)3月末の約60万980社から、公共事業の抑制を経て約19.5%減少しました。それでもなお約48万3,700社という多さは、地域に密着した中小・地場の建設業者が全国に広く分布していることを表します。許可には、下請に一定額以上の工事を出す元請に必要な特定建設業許可(4万9,739社)と、それ以外の一般建設業許可(45万8,055社)があり、大半の業者は一般許可で、規模の大きい元請が特定許可を持つ構造になっています。両許可は業種ごとに区分されるため、同じ業者が業種によって使い分けることもあり、単純な合計は総数と一致しません。

元請と下請の重層 ── 誰が直接受注し、誰が下で施工するか

土木の工事は、発注者から工事を直接請け負う元請と、その元請の下で工種ごとに施工を担う下請が、何層にも連なる重層構造で進みます。建設業者の完成工事高(施工した工事の売上高)を集計した施工統計でみると、建設業全体では、施主から直接受注した元請が60.9%、元請や上位の下請から請け負った下請が39.1%を占めます。下請の多くは、ゼネコンなどの元請が受注した工事を専門分野で分担するもので、実際の施工の相当部分を専門工事業者が担っていることを示します。

この重層構造は、業種によって役割がはっきり分かれます。ゼネコンなどの総合工事業は元請が中心で、完成工事高に占める元請の割合(元請比率)は75.4%です。工事一式を発注者から直接請け負い、各工種を専門工事業者に発注する立場です。一方、とび・土工や舗装などの専門工事業(職別工事業)は下請が中心で、元請比率は22.8%にとどまります。専門工事業者は、元請が受注した工事の中で、自らの専門とする工種を請け負う立場にあります。電気・管などの設備工事業は、元請・下請の双方で施工します。

業態の類型 ── ゼネコン・マリコン・道路舗装・専門工事業

元請は、担う工事の性格によって3つの類型に分かれます。第1は総合ゼネコンで、ダム・トンネル・シールド(トンネルを掘り進む工法)・橋梁といった高難度で大規模な土木を、発注者から一式で請け負います。鹿島建設・大林組・大成建設・清水建設などが代表的です。第2はマリコン(海洋土木)で、港湾・浚渫(しゅんせつ=水底の土砂をさらう工事)・地盤改良など海のインフラを専門に手がけ、五洋建設・東亜建設工業・東洋建設・若築建設などが担い手です。第3は道路舗装で、アスファルト合材(舗装に使う砕石とアスファルトを混ぜた材料)の製造から舗装施工までを一貫して行い、NIPPO・前田道路・日本道路などが手がけます。

これら元請の下で施工を分担するのが、工種別の専門工事業です。掘削・盛土・型枠・鉄筋などを担うとび・土工・コンクリート、道路の舗装、港湾・河川のしゅんせつ、斜面を保護する法面、地盤を締め固める地盤改良、杭を打つ基礎など、専門ごとに多数の事業者が存在します。とくにとび・土工は土木の基礎的な作業を広く担うため、最も多くの業者が登録しています。総合ゼネコンやマリコンが工事全体をまとめ、専門工事業者が各工種を施工する分業が、土木の施工体制の基本です。

担い手 ── 中小・地場業者と地域建設業

約48万3,700社という業者数の大多数は、中小・地場の建設業者です。全国的に事業を展開する大手ゼネコンやマリコンは一握りで、業者数のうえでは、地域に根ざした中小の建設会社が大多数を占めます。これらの地域建設業は、地方の公共土木の施工を担うと同時に、災害時の応急復旧や、豪雪地帯での除雪など、地域のインフラを支える役割も果たしています。

一方で、土木の担い手は高齢化と若手の入職減で先細りが懸念されています。業者数がピークから約19.5%減ったのは、公共投資の縮小に加え、後継者不在による廃業も背景にあります。少ない担い手で全国のインフラを整備・維持していくため、中小業者でも生産性を高められるICT施工の普及や、週休2日の確保、技能の継承が、業界共通の課題になっています。大手・専門工事業・地域の中小がそれぞれの役割で分業する多層構造を、どう維持していくかが問われています。

主要論点

なぜ土木業界は約48万社もの分散構造なのか?

建設業の許可業者は全国で約48万3,700社にのぼり、その大多数は中小・地場の業者です。土木・インフラ工事が、少数の大手が市場を占める寡占ではなく、多数の業者が併存する分散構造になっているのには理由があります。

第一に、工事が全国各地の現場で発生することです。道路・河川・上下水道といったインフラは全国に張り巡らされ、その整備・維持は地域ごとの現場で行われます。地域の実情に精通し、災害時にすぐ動ける地元業者の存在が不可欠で、これが地域建設業の裾野を広げています。第二に、工事が多くの工種に分かれ、専門工事業者による分業で成り立っていることです。とび・土工、舗装、しゅんせつ、法面など、工種ごとに専門の事業者が必要になります。

もっとも、業者数はピークの平成12年(2000年)から約19.5%減りました。公共投資の縮小に加え、経営者の高齢化と後継者不在による廃業が進んだためです。分散構造を支えてきた地域の中小業者をどう維持するかが、インフラの担い手確保という観点から重要になっています。

元請と下請はどのように役割を分担しているのか?

土木の工事は、発注者から工事を直接請け負う元請と、その下で工種ごとに施工を担う下請が、何層にも連なる重層構造で進みます。建設業者の完成工事高(施工した工事の売上高)でみると、建設業全体では元請が60.9%、下請が39.1%を占めます。下請の多くは、ゼネコンなどの元請が受注した工事を専門分野で分担するもので、実際の施工の相当部分を専門工事業者が担っています。

役割は業種によってはっきり分かれます。ゼネコンなどの総合工事業は、工事一式を発注者から直接請け負う元請が中心で、元請比率は75.4%です。各工種を専門工事業者に発注し、工程・品質・安全を統括する立場です。一方、とび・土工や舗装などの専門工事業(職別工事業)は、元請の下で自らの専門とする工種を請け負う下請が中心で、元請比率は22.8%にとどまります。

この重層構造は、多様な工種を組み合わせて大規模なインフラを造るうえで合理的な仕組みですが、下請の多層化が進むと、末端の業者にしわ寄せが生じやすいという課題もあります。適正な価格・工期での契約や、技能労働者の処遇改善が、重層下請構造をめぐる論点になっています。

元請の3類型(ゼネコン・マリコン・道路舗装)はどう違うのか?

土木の元請は、担う工事の性格によって3つの類型に分かれます。総合ゼネコンは、ダム・トンネル・シールド・橋梁といった高難度で大規模な土木を、発注者から一式で請け負います。豊富な技術力と施工実績を背景に、公共の大型工事を担い、各工種を専門工事業者に発注して工事全体を統括します。

マリコン(海洋土木)は、港湾・浚渫・地盤改良など海のインフラに特化した専業の元請です。専用の作業船や海上施工の技術を持ち、近年は洋上風力の基礎工事という成長領域でも存在感を高めています。道路舗装は、アスファルト合材の製造から舗装施工までを一貫して手がけ、全国の合材プラント網と、道路の維持・修繕の安定需要を基盤とします。

3類型に共通するのは、発注の多くを公共が占める点です。いずれも、国土強靱化や防災・減災、インフラの老朽化対策が需要を下支えしています。そして、これら元請の下で、とび・土工や舗装、しゅんせつといった専門工事業者が各工種を施工することで、多様なインフラの工事が成り立っています。

中期見通し

近未来1-2年

担い手不足を背景に、業界構造の維持が課題となります。経営者の高齢化による廃業が続く一方、法人化の進展や、労働環境の改善による若手確保の取り組みが進みます。適正な価格・工期での契約や、下請を含めた処遇改善が、重層下請構造のもとで重視されます。

中期3-5年

中小業者の再編・集約が緩やかに進む可能性があります。後継者不在の地域業者が事業を譲渡・統合する動きや、ICT施工など生産性向上への対応力の差が、業者間の淘汰につながることも考えられます。地域のインフラを担う地場業者をどう維持するかが、発注者側の課題にもなります。

長期

人口減少と担い手不足のもとで、少ない業者・技能者で全国のインフラを維持する仕組みづくりが進みます。専門工事業の技能継承、地域建設業の維持、施工の省人化を組み合わせ、多層の分業構造をどう次代につなぐかが、長期の課題となります。

よくある質問

建設業の許可業者は何社ありますか?
建設業の許可業者は、全国で約48万3,700社(令和7年3月末)です。このうち土木工事業の許可を持つのは13万1,889社(27.3%)、掘削・盛土などを担うとび・土工工事業は18万3,700社(38.0%)と、土木に関わる業種には多くの業者が登録しています。業者数は公共投資がピークだった平成12年(2000年)の約60万980社から約19.5%減りましたが、なお多数の中小・地場業者が全国のインフラを支えています。
土木の元請にはどんな類型がありますか?
発注者から工事を直接請け負う元請は、3つの類型に分かれます。ダム・トンネル・橋梁などの大型土木を担う総合ゼネコン(鹿島建設・大林組・大成建設・清水建設など)、港湾・海洋土木のマリコン(五洋建設・東亜建設工業・東洋建設・若築建設など)、合材製造から舗装までを一貫する道路舗装(NIPPO・前田道路・日本道路など)です。その下で、とび・土工や舗装などの専門工事業者が工種ごとに施工を分担します。
元請と下請はどう違いますか?
元請は、発注者(施主)から工事を直接請け負う立場、下請は、その元請や上位の下請から工事を請け負う立場です。建設業者の完成工事高(施工した工事の売上高)でみると、建設業全体では元請が60.9%、下請が39.1%を占めます。ゼネコンなどの総合工事業は元請が中心(元請比率75.4%)で工事全体を統括し、とび・土工や舗装などの専門工事業(職別工事業)は下請が中心(元請比率22.8%)で、元請の下で専門工種を施工します。
専門工事業とは何ですか?
専門工事業(職別工事業)は、元請の下で、とび・土工、舗装、しゅんせつ、法面、地盤改良、基礎など、特定の工種を専門に施工する業者です。多様な工種を組み合わせて大規模なインフラを造る土木では、工種ごとの専門業者による分業が欠かせません。掘削・盛土・基礎などを広く担うとび・土工工事業には、最も多くの業者が登録しています。専門工事業は下請が中心で、実際の施工の相当部分を担っています。
マリコンとゼネコンは何が違いますか?
総合ゼネコンは、ダム・トンネル・橋梁など陸上を含む高難度の大型土木を幅広く手がける元請です。マリコン(海洋土木)は、港湾・浚渫・地盤改良といった海のインフラに特化した専業の元請で、専用の作業船と海上施工の技術を持ちます。マリコンは近年、洋上風力の基礎工事でも中心的な役割を担っています。いずれも発注者から工事を直接請け負う元請ですが、得意とする工事の領域が異なります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    国土交通省 建設業許可業者数調査(令和7年3月末時点)
  2. 2.
    国土交通省 建設工事施工統計調査報告(令和4年度)
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