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インフラ老朽化と維持管理|建設後50年の進行と点検・修繕の実態【2026年版】

日本のインフラは、高度経済成長期に集中して整備した施設が一斉に建設後50年を迎え、老朽化が加速します。道路橋は2040年に約75%が建設後50年以上になる見通しです。一方、5年に1度の定期点検では、実際に早期・緊急の措置が必要と判定された施設の割合が施設ごとにわかり、トンネルでは約29%が早期措置段階です。年齢でみた老朽化と、点検でわかる現況の損傷、そして修繕が追いつかない実態を順に整理します。

道路橋の建設後50年以上(2040年)
75%
見通し。2025年は約42%、2030年は約54%
出典: 国土交通省 社会資本の老朽化の現状と将来
トンネルの早期措置段階(Ⅲ)
29%
2巡目点検(2019-2023)。橋梁は8%・道路附属物等は12%
出典: 国土交通省 道路メンテナンス年報(2巡目)
措置が必要なⅢ・Ⅳの橋梁数
約5.6万橋
2巡目点検。1巡目の約6.9万橋から減少
出典: 国土交通省 道路メンテナンス年報(2巡目)
Ⅲ・Ⅳ橋梁の措置着手率(地方)
83%
1巡目点検分。国・高速道路は100%、地方は約2割が5年超経過も未着手
出典: 国土交通省 道路メンテナンス年報(2巡目)

建設後50年以上を経過する社会資本の割合(施設別、%)

各年3月時点。2025年は現況、2030・2040年は現在の施設数を基にした推計。高度経済成長期の集中整備による一斉老朽化を示す
道路橋
約73万橋
2025年
42%
2030年
54%
2040年
75%
トンネル
約1万2千本
2025年
28%
2030年
35%
2040年
52%
河川管理施設
約2万8千施設
2025年
26%
2030年
41%
2040年
64%
港湾岸壁
約5千施設
2025年
29%
2030年
40%
2040年
64%
水道管路
約74万km
2025年
10%
2030年
20%
2040年
40%
下水道管渠
約49万km
2025年
7%
2030年
15%
2040年
34%
読み解き

建設後50年以上を経過する施設の割合は、いずれのインフラでも今後20年で大きく上昇します。道路橋は2025年の約42%から2040年には約75%へと、施設の4分の3が建設後50年以上になります。河川管理施設と港湾岸壁は2040年に約64%、トンネルは約52%に達します。

上水道の管路や下水道の管渠は現時点の割合は低いものの、2040年にかけて水道管路が約40%、下水道管渠が約34%へと急速に上昇します。これは、高度経済成長期に集中的に整備したインフラが、耐用年数の目安とされる50年を一斉に迎えるためです。ここで示す割合は建設からの経過年数(年齢)に基づくもので、実際の傷み具合は次の定期点検の判定で確認します。

定期点検で早期に措置が必要な施設の割合(判定区分Ⅲ、%)

2巡目点検(2019-2023年度)で「早期に措置を講ずべき状態」と判定された割合。年齢ではなく点検でわかった現況の損傷。各施設の独立した割合で、足し合わせない
単位: %上位 3
0.07.515.022.530.029.0トンネル12.0道路附属物等8.0橋梁
出典: 国土交通省 道路メンテナンス年報(2巡目、判定区分Ⅲの割合)
カテゴリトンネル道路附属物等橋梁
早期措置段階(Ⅲ)の割合%29128
読み解き

5年に1度の定期点検では、施設の傷み具合を健全(Ⅰ)から緊急措置段階(Ⅳ)までの4区分で診断します。2巡目(2019-2023年度)の点検で、早期に措置を講ずべき判定区分Ⅲの割合は、トンネルが29%と最も高く、道路附属物等が12%、橋梁が8%でした。トンネルは覆工コンクリートのひび割れや漏水など、時間の経過とともに損傷が進みやすく、要措置と判定される割合が相対的に高くなります。

なお、緊急に措置を講ずべき判定区分Ⅳは、橋梁で0.1%、トンネルで0.2%とごく僅かです。点検で早期・緊急の措置が必要と判定された施設は、次回点検までの5年以内に修繕することが求められます。ここで示すのは施設ごとに独立した割合で、施設間で足し合わせる性質のものではありません。

このグラフに関連するトピック

定期点検の判定区分の内訳(施設別、%)

2巡目点検(2019-2023年度)の判定結果。Ⅰ健全/Ⅱ予防保全段階/Ⅲ早期措置段階/Ⅳ緊急措置段階。四捨五入で合計が100%にならない場合がある
橋梁
点検719,864施設
Ⅰ 健全
42%
Ⅱ 予防保全
50%
Ⅲ 早期措置
8%
Ⅳ 緊急措置
0.1%
トンネル
点検11,094施設
Ⅰ 健全
3%
Ⅱ 予防保全
68%
Ⅲ 早期措置
29%
Ⅳ 緊急措置
0.2%
道路附属物等
点検41,208施設
Ⅰ 健全
35%
Ⅱ 予防保全
53%
Ⅲ 早期措置
12%
Ⅳ 緊急措置
0.04%
読み解き

定期点検の判定区分は、Ⅰ健全(機能に支障なし)、Ⅱ予防保全段階(支障はないが予防的に措置が望ましい)、Ⅲ早期措置段階(早期に措置を講ずべき)、Ⅳ緊急措置段階(緊急に措置を講ずべき)の4区分です。橋梁はⅠ・Ⅱが大半(合わせて9割超)で、早期・緊急の措置が必要なⅢ・Ⅳは1割弱にとどまります。

一方、トンネルはⅡ予防保全段階が68%と多く、Ⅲ早期措置段階も29%と、他の施設より損傷が進んだ状態の割合が高いのが特徴です。この判定区分は建設後の年数(年齢)ではなく、点検で確認した現況の傷みに基づくもので、古い施設でも適切に管理されていればⅠ・Ⅱと判定されます。老朽化への対応では、年齢と現況の両面から優先順位をつけて計画的に修繕することが重要になります。

主要論点

インフラの「一斉老朽化」はなぜ起きるのか?

日本の社会インフラの多くは、高度経済成長期(1960-70年代)に集中して整備されました。道路・橋・トンネル・上下水道・港湾などが、この時期に一気に造られたため、耐用年数の目安とされる建設後50年を一斉に迎えます。道路橋は2025年に約42%が建設後50年以上で、2040年には約75%へと、わずか15年で施設の4分の3が高齢化します。

この「一斉老朽化」が土木・インフラ工事の需要を質的に変えています。新たに造る新設中心の時代から、既存のインフラを点検し、傷んだ部分を補修・更新する維持管理中心の時代へと移りつつあります。維持管理は新設に比べて1件あたりの規模が小さく、多数の現場に分散するため、効率化が課題です。

もっとも、建設後50年という年齢はあくまで目安です。適切に管理されていれば50年を超えても健全な施設は多く、逆に厳しい環境にあれば早く傷みます。実際の優先順位づけには、年齢だけでなく点検でわかる現況の損傷を組み合わせる必要があります。

定期点検で何がわかるのか?

2012年の中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故を受けて、2014年度から、すべての橋梁・トンネル・道路附属物について5年に1度の近接目視による定期点検が義務づけられました。点検では、施設の傷み具合を健全(Ⅰ)・予防保全段階(Ⅱ)・早期措置段階(Ⅲ)・緊急措置段階(Ⅳ)の4区分で診断します。

2巡目(2019-2023年度)の点検では、橋梁・トンネル・道路附属物等のいずれもほぼ全数(99%前後)で点検が実施されました。その結果、早期に措置が必要な判定区分Ⅲの割合は、トンネルが29%、道路附属物等が12%、橋梁が8%でした。トンネルは覆工コンクリートの劣化などから、要措置の割合が高くなっています。

点検の意義は、限られた予算と人手を、本当に傷んでいる施設に優先的に振り向けられることにあります。年齢だけで一律に更新するのではなく、点検結果に基づいて予防保全的に手を打つことで、大規模な損傷や事故を防ぎ、維持管理のコストを長期的に抑えることが期待されています。

なぜ修繕(措置)が追いつかないのか?

点検はほぼ全数で実施されている一方、点検で見つかった傷みの修繕(措置)は追いついていません。特に地方自治体で遅れが目立ちます。1巡目(2014-2018年度)の点検で早期・緊急の措置が必要(判定区分Ⅲ・Ⅳ)と判定された橋梁のうち、2023年度末時点で修繕に着手した割合は、国土交通省と高速道路会社が100%だったのに対し、地方公共団体は83%で、約2割が5年以上経過しても未着手でした。完了率でみると地方公共団体は66%にとどまります。

背景には、地方自治体の財源と担い手の不足があります。市区町村では土木技術職員が少なく、点検・診断・修繕の一連の業務を担う体制が十分でない自治体も多くあります。膨大な施設を抱える一方で、修繕予算や発注・監督の体制が追いつかないのが実情です。

こうしたなか、判定区分Ⅲ・Ⅳの橋梁数そのものは、点検と修繕の進展で1巡目の約6.9万橋から2巡目の約5.6万橋へと減少しました。国は、複数の施設をまとめて発注する包括的な維持管理契約や、新技術(ドローン・センサー・AIによる点検)の活用、広域での発注事務の共同化などを進め、限られた体制でインフラを維持する仕組みづくりを急いでいます。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年度は、3巡目(2024年度〜)の定期点検が進むとともに、インフラ老朽化対策への予算が重点的に確保されます。上下水道の耐震化や、判定区分Ⅲ・Ⅳと診断された施設の修繕が優先的に進められ、点検・診断・修繕のメンテナンスサイクルが定着していきます。

中期3-5年

中期では、事後保全から予防保全への転換が本格化します。ドローンやセンサー、AIを使った点検の効率化、複数施設をまとめて発注する包括的維持管理契約が広がり、技術職員が少ない小規模自治体でも維持管理を続けられる仕組みが整っていきます。維持管理は土木の安定した需要領域として定着します。

長期

長期では、建設後50年以上のインフラが大半を占めるなか、すべてを同じ水準で維持するのは財政的に難しくなります。利用状況を踏まえた施設の集約・撤去(賢く縮む)や、更新時の機能見直しも選択肢となり、限られた資源で必要なインフラを選択的に維持する時代に移っていきます。

よくある質問

インフラの老朽化はどの程度進んでいますか?
高度経済成長期に集中して整備したインフラが、建設後50年を一斉に迎えます。道路橋は2025年時点で約42%が建設後50年以上で、この割合は2030年に約54%、2040年に約75%へ上昇する見通しです。トンネルは約52%、河川管理施設と港湾岸壁は約64%、水道管路は約40%が2040年に建設後50年以上になります。
「建設後50年」と「点検の判定区分」は何が違うのですか?
建設後50年は建てた年からの経過年数(年齢)で、古さの目安です。一方、判定区分は5年に1度の定期点検で確認した現況の傷み具合を、健全(Ⅰ)・予防保全段階(Ⅱ)・早期措置段階(Ⅲ)・緊急措置段階(Ⅳ)の4区分で診断したものです。古い施設でも適切に管理されていれば健全(Ⅰ・Ⅱ)と判定されることが多く、年齢と現況の損傷は別の指標です。
定期点検の判定区分Ⅲ・Ⅳとは何ですか?
判定区分Ⅲは「早期に措置を講ずべき状態」、Ⅳは「緊急に措置を講ずべき状態」です。2巡目(2019-2023年度)の点検では、早期措置が必要なⅢの割合が橋梁で8%・トンネルで29%・道路附属物等で12%でした。緊急措置のⅣは橋梁で0.1%、トンネルで0.2%とごく僅かです。Ⅲ・Ⅳと判定された施設は、次回点検までの5年以内に修繕することが求められます。
インフラの修繕は進んでいるのですか?
点検はほぼ全数で実施されている一方、修繕(措置)は特に地方自治体で遅れがみられます。1巡目点検で早期・緊急の措置が必要(Ⅲ・Ⅳ)と判定された橋梁の修繕着手率は、2023年度末時点で国・高速道路会社が100%、地方公共団体が83%で、約2割が5年以上経過しても未着手でした。財源と土木技術職員の不足が背景にあります。
予防保全とは何ですか?
予防保全は、施設が大きく傷んでから直す「事後保全」ではなく、傷みが小さいうちに計画的に手を打つ考え方です。早期に軽微な補修を行うことで、大規模な損傷や事故を防ぎ、維持管理にかかる費用を長期的に抑えることができます。国はインフラ長寿命化計画のもとで、定期点検の結果に基づく予防保全への転換を進めています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    国土交通省 社会資本の老朽化の現状と将来
  2. 2.
    国土交通省 道路メンテナンス年報(2巡目、2024年8月)
  3. 3.
    国土交通省 インフラ長寿命化計画(行動計画)
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