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公共土木工事の発注構造|誰が発注し、どの分野に予算が向かうか【2026年版】

公共土木工事は、発注の多くを国や地方自治体が担う公共主導の市場です。公共工事の請負額(前払金保証ベース)は2024年度で15兆2,054億円にのぼり、発注者別では市区町村36.3%・都道府県28.5%と地方自治体が6割を超え、国は16%にとどまります。一方、国の公共事業予算(国費)は分野別に配分され、道路整備が最大です。発注者別の内訳と、国費予算の分野別配分を、それぞれの基準で整理します。

公共工事の請負額(2024年度)
15.2兆円
15兆2,054億円、217,163件(前払金保証ベース)
出典: 東日本建設業保証 公共工事前払金保証統計
市区町村(2024年度)
5.5兆円
請負額の36.3%。最も大きい発注者
出典: 東日本建設業保証 公共工事前払金保証統計
都道府県(2024年度)
4.3兆円
請負額の28.5%。市区町村と合わせ地方で64.8%
出典: 東日本建設業保証 公共工事前払金保証統計
国(2024年度)
2.4兆円
請負額の16%。直轄は大規模な幹線に集中
出典: 東日本建設業保証 公共工事前払金保証統計

公共工事の発注者別の内訳(2024年度、億円)

前払金保証ベースの請負額。市区町村・都道府県で6割を超える。合計が公共工事の請負額(15兆2,054億円)にあたる
項目請負額(億円)構成比シェア
市区町村55,22536.3%
都道府県43,27928.5%
24,30816.0%
独立行政法人等16,97711.2%
その他9,7696.4%
地方公社2,4961.6%
公共工事の請負額152,054100.0%
読み解き

2024年度の公共工事の請負額15兆2,054億円を発注者別にみると、最も大きいのは市区町村の5兆5,225億円(構成比36.3%)、次いで都道府県の4兆3,279億円(同28.5%)です。市区町村と都道府県を合わせた地方自治体だけで64.8%を占めます。生活道路・上下水道・河川・公園など、住民の生活に直結するインフラの多くを、地方自治体が発注・管理しているためです。

国は2兆4,308億円(同16%)で、幹線道路・大河川・港湾などの大規模な直轄事業に集中しています。独立行政法人等1兆6,977億円(同11.2%)には、高速道路会社(NEXCO)や鉄道・水資源関係の機構などが含まれます。土木・インフラ工事の需要が、国よりもむしろ多数の地方自治体に分散しているのが、公共土木の発注構造の特徴です。この数字は、公共工事の代金の一部を前払いする保証制度の実績に基づくもので、公共工事の請負額の動向をとらえる代表的な統計として使われています。

国の公共事業関係費の分野別内訳(2025年度、国費・億円)

国の予算(国費)でみた分野別の配分。国土交通省の公共事業関係費(国費)5兆2,753億円の内訳で、発注者別(保証ベース)とは別の切り口
単位: 億円8 カテゴリ・合計 52,753
05,00010,00015,00020,00016,721道路整備13,344社会資本総合整備8,922治山治水7,302住宅都市環境整備4,136港湾空港鉄道等1,708公園水道廃棄物処理等416災害復旧等204推進費等
出典: 国土交通省 令和7年度予算概要(国土交通省関係予算総括表、国費)
カテゴリ道路整備社会資本総合整備治山治水住宅都市環境整備港湾空港鉄道等公園水道廃棄物処理等災害復旧等推進費等
国費予算額億円16,72113,3448,9227,3024,1361,708416204
シェア31.7%25.3%16.9%13.8%7.8%3.2%0.8%0.4%
読み解き

発注者とは別に、国の予算がどの分野に向かうかをみると、2025年度の公共事業関係費(国費)は5兆2,753億円(国土交通省分)です。分野別では道路整備が1兆6,721億円(31.7%)と最も大きく、幹線道路の整備・修繕や交通安全対策が含まれます。次いで、地方自治体が地域の実情に応じて道路・治水・住宅都市・公園下水道などに自由に配分できる社会資本総合整備(交付金)が1兆3,344億円(25.3%)、堤防・ダム・砂防・海岸などの治山治水が8,922億円(16.9%)と続きます。

ここで示す国費は、発注者別の内訳でみた「国」(2兆4,308億円)とは意味が違います。発注者別の「国」は、国が自ら発注する直轄事業の請負額です。これに対し公共事業関係費(国費)には、直轄事業だけでなく、地方自治体が行う事業への国の補助金・交付金も含まれます。そのため国費の一部は、実際には地方自治体が発注する工事(発注者別では地方の分)として使われます。発注者別(前払金保証ベースの15兆2,054億円)と国費(5兆2,753億円)は、同じ公共工事を「誰が発注するか」と「誰の予算か」という別の角度から数えたもので、範囲も重なるため単純に足し合わせることはできません。なお、治水・防災関連の予算は、能登半島地震などを受けた国土強靱化の推進で近年重点的に確保されています。

主要論点

なぜ公共土木の発注は「国」より「地方」が多いのか?

公共工事の請負額を発注者別にみると、2024年度は市区町村が36.3%・都道府県が28.5%と、地方自治体だけで64.8%を占め、国は16%にとどまります。土木・インフラ工事というと国の大型プロジェクトを思い浮かべがちですが、実際の発注は多数の地方自治体に広く分散しています。

理由は、私たちの生活に身近なインフラの多くを地方自治体が管理しているからです。生活道路や市町村道、上下水道、中小河川、都市公園、学校・庁舎などの公共施設は、市区町村や都道府県が整備・維持の責任を負います。国が直轄で担うのは、幹線道路や一級河川、重要港湾など、広域性・重要性の高い大規模なインフラに集中しています。

この構造は、地域の建設業者にとって地方自治体が主要な取引先であることを意味します。同時に、多数の自治体に発注が分散するため、1件あたりの工事規模は小さくなりがちで、土木技術職員が不足する自治体では発注・監督の体制づくりが課題になっています。

国の公共事業予算はどの分野に配分されているのか?

国の公共事業関係費(国費)は2025年度で5兆2,753億円(国土交通省分)です。分野別では、道路整備が1兆6,721億円(31.7%)と最も大きく、次いで地方の事業を支える社会資本総合整備の交付金1兆3,344億円(25.3%)、堤防・ダム・砂防・海岸などの治山治水8,922億円(16.9%)が続きます。港湾・空港・鉄道、住宅・都市環境、上下水道・公園がこれに連なります。

分野別の配分には政策の重点が表れます。近年は、東日本大震災や令和6年能登半島地震、相次ぐ豪雨を受けて、防災・減災を進める国土強靱化の観点から、治水(流域治水)・砂防やインフラの老朽化対策、上下水道の耐震化に予算が重点配分される傾向にあります。

なお、公共事業関係費(国費)には、地方自治体が行う事業への補助金・交付金も含まれます。社会資本総合整備の交付金がその代表で、国の予算でありながら、実際の工事は地方自治体が発注します。このため国費(5兆2,753億円)と、発注者別の請負額(前払金保証ベースの15兆2,054億円)は、数える範囲が重なり、単純に足し合わせることはできません。

公共依存の発注構造は業界にどんな影響を与えるか?

公共土木は発注の多くを公共が占めるため、市場の規模は国と自治体の予算編成に強く左右されます。景気変動よりも、財政方針や災害の発生、国土強靱化のような政策の枠組みが需要を動かします。1990年代後半以降の公共投資の抑制で土木の市場が大きく縮小し、近年は国土強靱化で持ち直したのは、この公共依存の表れです。

受注の仕組みも民間工事とは異なります。公共工事は競争入札が原則で、価格だけでなく企業の施工実績や技術提案を総合的に評価する総合評価方式が広く使われます。大規模工事では複数社が共同企業体(JV)を組み、地方では地域の建設業者が災害対応や除雪も担う「地域の守り手」として位置づけられています。

課題は、資材価格・労務費の上昇への対応と、担い手の確保です。国は、適正な価格・工期での契約や、工事が特定の時期に集中しないようにする施工時期の平準化(2か年にまたがる国庫債務負担行為の活用など)を進めています。限られた予算と担い手で、老朽化していくインフラの整備・維持をどう続けるかが、公共土木の発注構造が抱える中長期の論点です。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年度は、国土強靱化の実施中期計画に基づく防災・減災投資が公共土木の需要を下支えします。治水・砂防、インフラ老朽化対策、上下水道の耐震化などに予算が重点配分される見通しです。地方自治体では、当初予算に加えて国の補正予算を活用した発注が需要を押し上げる年もあります。

中期3-5年

中期では、発注の平準化と入札の効率化が進みます。施工時期の平準化やICTを使った電子入札・電子納品が広がり、担い手不足のもとでも発注・監督の体制を維持する取り組みが求められます。技術職員が少ない小規模自治体では、発注事務を広域で共同化する動きも出てきます。

長期

長期では、人口減少と財政制約のもとで、公共土木の発注は新設から維持・更新へと重心を移します。地方の膨大なインフラを限られた予算で維持するため、予防保全への転換と、複数施設をまとめて発注する包括的な維持管理契約などの仕組みづくりが、発注構造の課題となります。

よくある質問

公共工事は誰が発注しているのですか?
公共土木工事の発注は、国よりも地方自治体の比重が高いのが特徴です。前払金保証統計でみると、2024年度の公共工事の請負額15兆2,054億円のうち、市区町村が36.3%・都道府県が28.5%と地方自治体で64.8%を占め、国は16%、独立行政法人等が11.2%です。生活道路や上下水道など地域に密着したインフラの多くを、市区町村や都道府県が発注・管理しています。
公共工事の請負額はどれくらいの規模ですか?
東日本建設業保証の前払金保証統計によると、2024年度の公共工事の請負額は15兆2,054億円(217,163件)です。これは公共工事の代金の一部を前払いする保証制度の実績に基づく数字で、公共工事の請負額の動向をとらえる代表的な統計として使われています。市場規模を示す建設投資(需要側)とは集計の立場が異なる指標です。
国の公共事業予算はどの分野に多く使われていますか?
2025年度の国の公共事業関係費(国費、国土交通省分)は5兆2,753億円で、分野別では道路整備が1兆6,721億円(31.7%)と最も大きく、地方の事業を支える社会資本総合整備の交付金1兆3,344億円(25.3%)、治山治水8,922億円(16.9%)が続きます。近年は国土強靱化を背景に、治水・防災関連や老朽化対策に予算が重点配分される傾向にあります。
発注者別の請負額と、国費予算の分野別はなぜ金額が違うのですか?
測っている対象が異なるためです。発注者別の請負額(前払金保証ベースの15兆2,054億円)は、国だけでなく地方自治体が単独で発注する事業も含む公共工事全体の請負実績です。一方、公共事業関係費(国費、5兆2,753億円)は国の予算だけを対象としています。数える範囲が違うため金額の水準も異なり、単純に比較したり足し合わせたりはできません。
公共工事の入札はどのように行われますか?
公共工事は競争入札が原則です。価格だけで決めるのではなく、企業の施工実績や技術提案、地域貢献などを点数化して価格と合わせて評価する総合評価方式が広く使われます。大規模工事では複数の会社が共同企業体(JV)を組んで受注することもあります。近年は電子入札が一般化し、工事が特定の時期に集中しないようにする発注の平準化も進められています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    東日本建設業保証 公共工事前払金保証統計(令和7年3月、FY2024年度計)
  2. 2.
    国土交通省 令和7年度予算概要(国土交通省関係予算総括表)
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