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通信工事業界の構造|発注者・元請・下請の3層構造【2026年版】

通信工事(電気通信工事業)は、発注者・元請・下請の3層からなる重層構造です。最大の発注者はNTT東西・NTTドコモで、通信事業者(NCC)・電力・自治体が続きます。元請はNTT系の通信建設大手3社が主導しますが、実際の施工は全国1万6,523社(2025年3月末)の電気通信工事業者が下請や地域工事で担っています。2024年度の元請比率は59.8%で、これは元請と下請のどちらの受注が多いかを示す割合であって、大手の市場シェアではありません。発注者・元請・下請の構造と、業界の裾野を整理します。

通信工事業界の3層構造

発注者(需要側)・元請(NTT系大手3社)・下請/専門工事業者(全国16,523社)の役割と代表プレイヤー

通信工事業界は、通信インフラの設備投資を発注する発注者、その工事を一括で受注する元請、実際の施工を担う下請・専門工事業者の3層で捉えられます。上に行くほど少数(発注者はNTTを中心とする通信事業者、元請はNTT系の大手3社)、下に行くほど多数(全国1万6,523社の専門工事業者)という、裾野の広い構造です。大手が元請で受けた工事を、多数の専門工事業者が下請で支える点が、この業界の基本的な組み立てです。

発注者(需要側)
役割・特徴
通信インフラの設備投資を発注する。最大はNTTで、その投資計画が業界全体の受注量を左右する
代表的なプレイヤー
NTT東西・NTTドコモ、KDDI・ソフトバンク・楽天モバイル(NCC)、電力会社、ケーブルテレビ、自治体
元請(NTT系 通信建設大手3社)
役割・特徴
全国規模の工事を一括して受注し、品質を揃えて施工を管理する。地域の通信工事会社を統合して広域対応力を築いてきた
代表的なプレイヤー
コムシスホールディングス・エクシオグループ・ミライト・ワン
下請・専門工事業者
役割・特徴
実際の施工を担う。基地局・光ファイバ・構内LAN・放送/防災無線など分野ごとに専門化し、全国に広く分散する
代表的なプレイヤー
全国1万6,523社の電気通信工事業者(2025年3月末)

発注者 — NTTを最大とする通信インフラ投資

通信工事の需要は、発注者の設備投資に連動します。最大の発注者はNTT東西・NTTドコモで、その全国規模の設備投資が業界全体の受注量を大きく左右します。光ファイバ網や携帯基地局、局舎設備など、NTTグループの投資は通信工事の中核的な需要源です。

NTTに次ぐのが、KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルなどの通信事業者(NCC)で、移動体基地局や固定通信の設備を発注します。さらに、電力会社(電力系通信網)、ケーブルテレビ(放送・通信設備)、自治体・官公庁(防災行政無線・デジタル基盤)も発注者です。通信工事は、これら発注者の投資サイクルに需要が連動する点が特徴で、なかでもNTTの投資動向の影響が大きい業界です。

元請 — NTT系の大手3社が地域会社を統合

元請を主導するのは、コムシスホールディングス・エクシオグループ・ミライト・ワンのNTT系の通信建設大手3社です。全国規模のNTT発注案件を一括して受注し、品質を揃えて施工を管理するには、広域の拠点網・技術者・施工管理の体制が必要で、この体制を持つ大手に元請が集まります。

3社はいずれも、もともとNTTの通信建設を担ってきた会社を源流とし、地域の通信工事会社を統合して広域対応力を築いてきました。コムシスはNDS・SYSKEN・北陸電話工事などを、エクシオはシーキューブ・西部電気工業・日本電通などを、ミライト・ワンは大明・東電通・コミューチュアを統合しています。こうして築いた全国規模の元請体制が、少数の大手に元請が集まる構造を支えています。

下請・専門工事業者 — 全国16,523社の分散

実際の施工の多くは、全国1万6,523社(2025年3月末)の電気通信工事業者が、下請や地域工事として担っています。基地局・アンテナ工事、光ファイバ・通信線路工事、構内配線・LAN工事、放送・防災無線工事など、分野ごとに専門化した業者が広く分散しているのが、この業界の裾野です。

ここで注意したいのが、元請比率59.8%(2024年度)の読み方です。これは業界全体で元請と下請のどちらの受注が多いかを示す割合であって、大手3社が市場の約6割を占めるという意味ではありません。元請として受注された工事も、その施工の多くは全国の専門工事業者が下請で担います。少数の大手による元請と、多数の専門工事業者による施工が、重層的につながっているのが通信工事業の実態です。

制度上の位置づけ — 建設業許可29業種の一つ

電気通信工事業は、建設業の許可29業種の一つです。光ファイバ網・携帯基地局・構内LAN・データセンター・放送設備などの情報通信インフラを「施工する」業種で、施工を営むには建設業の許可が必要です。全国の許可業者は1万6,523社(2025年3月末)です。

混同しやすいのが、似た名前の制度・業種との違いです。まず、通信サービスそのものを提供するNTTやKDDIなどの電気通信事業(通信キャリア)は、電気通信事業法に基づく別の事業で、工事を施工する電気通信工事業とは異なります。また、屋内配線・受変電など電力(強電)を扱う電気工事業も、建設業許可の別の業種です。電気通信工事業は、通信・弱電の設備を「施工する」建設業種、という位置づけです。

電気通信工事業の許可業者数の推移(2011-2025年、社)

各年3月末時点。2025年は1万6,523社で、ゆるやかな増加が続く(2000年3月末は1万847社)
単位:
05,00010,00015,00020,00013,4581113,57813,57013,72513,9341514,08614,24314,48414,77915,0072015,34515,73015,97316,24716,52325
出典: 国土交通省 建設業許可業者数調査(電気通信工事業、各年3月末)
201120122013201420152016201720182019202020212022202320242025
許可業者数13,45813,57813,57013,72513,93414,08614,24314,48414,77915,00715,34515,73015,97316,24716,523
前年比
読み解き

電気通信工事業の許可業者数は、長期でゆるやかに増え続けています。2000年3月末の約1万847社から、2011年の1万3,458社を経て、2025年3月末には1万6,523社に達しました。直近の2025年は前年から1.7%増です。

業者数が増え続けている背景には、通信インフラの拡大があります。携帯電話網の高度化(3G・4G・5G)、光ファイバ網の普及、構内LANやデータセンターの増加など、施工の対象が広がるにつれ、それを担う専門工事業者の裾野も広がってきました。参入の余地が比較的大きく、地域や分野ごとに多数の業者が併存する分散構造が、業者数の増加に表れています。

なお、これは建設業の許可を持つ電気通信工事業者の数で、1業者が複数の業種の許可を保有する場合もあります。大手3社の元請の下に、これら多数の専門工事業者が下請・地域工事で連なるのが、通信工事業の裾野です。

主要論点

なぜ元請は大手3社に集まり、施工は多数に分散するのか?

通信工事では、元請が少数の大手3社に集まる一方、実際の施工は全国1万6,523社の専門工事業者に分散しています。この一見対照的な構造は、発注者と施工の性質の違いから生まれます。

元請が大手に集まるのは、最大の発注者であるNTTが全国規模で設備投資を行うためです。全国の工事を一括して受注し、品質を揃えて施工を管理するには、広域の拠点網・技術者・施工管理体制が必要で、地域会社を統合してきた大手3社がこれを担います。

一方、実際の施工は、基地局・光ファイバ・構内LAN・防災無線など分野ごとに専門化しており、地域に密着した多数の専門工事業者が下請や地域工事で担います。参入の余地が比較的大きく、業者数は増え続けています。元請の集約と施工の分散が両立しているのが、通信工事業の構造の特徴です。

元請比率59.8%は、大手の市場シェアを意味するのか?

いいえ、意味しません。2024年度の元請比率59.8%(直請比率)は、業界全体の完成工事高のうち、発注者から直接請け負った元請分と、ゼネコンなど他社の工事を下請で請け負った分の比率を示すものです。つまり、業界全体で発注者直請と下請受けのどちらが多いかを表す割合であって、特定の大手企業が市場の約6割を占めるという意味ではありません。

実際、大手が元請として発注者から直接受注した工事も、その施工の相当部分は全国の専門工事業者が下請で担っています。発注者から直接受注することと、その施工を自社だけで行うことは別で、元請比率と大手のシェアは別の概念です。

通信工事の分散度は、業者数(1万6,523社)で捉えるのが適切です。大手3社という少数の元請と、多数の専門工事業者という広い裾野が併存する構造を、元請比率という1つの割合だけで読むことはできません。

なぜ電気通信工事業の許可業者は増え続けているのか?

電気通信工事業の許可業者数は、2000年3月末の約1万847社から2025年3月末の1万6,523社へと、長期でゆるやかに増え続けています。背景には、通信インフラの拡大と多様化があります。

携帯電話網は3Gから4G、5Gへと高度化し、基地局の数が増えました。光ファイバ網(FTTH)は全国に普及し、構内LANやデータセンターの通信配線も増えています。施工の対象が広がるにつれ、それを担う専門工事業者の裾野も広がってきました。

加えて、電気通信工事業は、大規模な設備がなくても専門技術と施工体制があれば参入しやすく、地域や分野ごとに多数の業者が併存できる構造です。5G・データセンター・光ファイバ更新といった需要の広がりが続くなか、施工の担い手としての専門工事業者の役割は、今後も重要であり続けます。

中期見通し

近未来1-2年

3層構造は当面続きます。NTTの設備投資が受注量を左右し、元請の大手3社がそれを一括受注し、施工の多くを全国の専門工事業者が下請で担う構図です。5G基地局やデータセンターの工事が、元請・下請の双方の受注を支えます。

中期3-5年

中期では、担い手の確保が構造上の論点になります。有資格者の高齢化や人手不足が進むなか、多数の専門工事業者の裾野をどう維持するかが問われます。施工の省人化・効率化や、業者間の連携・再編が、施工体制を保つ鍵となります。

長期5-10年

長期では、通信インフラの世代交代(Beyond 5G等)と、データセンター需要の拡大が、施工の担い手への需要を支えます。元請の大手が事業を多角化する一方、施工を担う専門工事業者の裾野をどう維持・更新するかが、業界構造の持続性を左右します。

よくある質問

通信工事業界はどんな構造になっていますか?
発注者・元請・下請の3層からなる重層構造です。最大の発注者はNTT東西・NTTドコモで、通信事業者(NCC)・電力・自治体が続きます。元請はNTT系の通信建設大手3社(コムシス・エクシオ・ミライト・ワン)が主導し、実際の施工は全国1万6,523社(2025年3月末)の電気通信工事業者が下請や地域工事として担います。
通信工事業者は全国に何社ありますか?
電気通信工事業の許可業者は、2025年3月末時点で1万6,523社です(国交省 建設業許可業者数調査)。2000年3月末の約1万847社から長期でゆるやかに増え続けており、直近は前年比1.7%増です。基地局・光ファイバ・構内LANなどを担う裾野の広い業種で、大手3社の元請の下に多数の専門工事業者が連なる分散構造です。
元請比率59.8%は大手のシェアという意味ですか?
いいえ。元請比率59.8%(2024年度)は、業界全体の完成工事高のうち元請として受注した分と下請として受注した分の比率で、元請と下請のどちらの受注が多いかを示す割合です。特定の大手企業が市場の約6割を占めるという意味ではありません。元請として受注された工事も、施工の多くは全国の専門工事業者が下請で担っています。
通信工事の元請はなぜNTT系の大手に集まるのですか?
最大の発注者であるNTT東西・NTTドコモが全国規模で設備投資を行うためです。全国の工事を一括受注し品質を揃えて施工を管理するには、広域の拠点網・技術者・施工管理体制が必要で、地域の通信工事会社を統合してきた大手3社がこれを担います。ただし施工の多くは、その下で全国の専門工事業者が下請として受け持ちます。
電気通信工事業と電気通信事業(通信キャリア)はどう違いますか?
電気通信工事業は、光ファイバ網・基地局・構内LANなどの情報通信インフラを「施工する」建設業の許可業種です。一方、電気通信事業は、NTTやKDDIなどが通信サービスそのものを提供する事業で、電気通信事業法に基づく別のものです。また、電力(強電)を扱う電気工事業も、建設業許可の別の業種です。電気通信工事業は、通信・弱電の設備を施工する建設業種にあたります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    国土交通省 建設業許可業者数調査(令和7年3月末)
  2. 2.
    国土交通省 建設工事施工統計調査 第2表(電気通信工事業)
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