通信工事業界の市場規模・主要企業・動向
日本の通信工事(電気通信工事業)は完成工事高3.51兆円規模で、NTT系の大手3社を中心に全国約1万6,500社の専門工事業者が支え、5G・データセンター・光ファイバ更新が需要を牽引しています。
通信工事(電気通信工事業)とは、光ファイバ網・携帯基地局・構内LAN・データセンター・放送設備などの情報通信インフラを施工する建設業の一業種です。2024年度の完成工事高は3.51兆円(うち元請2.10兆円・元請比率59.8%)で、全国約1万6,500社が担います。NTT系の通信建設大手3社(コムシスホールディングス・エクシオグループ・ミライト・ワン)が元請を主導する一方、多数の専門工事業者が下請や地域工事を支えます。通信工事業を、市場規模、主要企業、業界構造、需要ドライバーの4軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
通信工事(電気通信工事業)とは、光ファイバ網・携帯基地局・構内LAN・データセンター・放送設備などの情報通信インフラを施工する、建設業の許可業種の一つです。2024年度の完成工事高は3.51兆円(元請2.10兆円・元請比率59.8%)で、全国の許可業者は1万6,523社(2025年3月末)と裾野が広い分散構造です。元請はNTT系の通信建設大手3社(コムシスホールディングス・エクシオグループ・ミライト・ワン)が主導しますが、実際の施工は多数の専門工事業者が下請や地域工事で支えています。
- 電気通信工事業は建設業の許可29業種の一つで、光ファイバ網・携帯基地局・構内LAN・データセンター・放送設備などの情報通信インフラを施工します。強電(電力)中心の電気工事業とは別の業種です。
- 2024年度の完成工事高は3.51兆円(元請2.10兆円)で、全国の許可業者は1万6,523社(2025年3月末、前年比1.7%増)です。5G・データセンター・光ファイバ更新が需要の中心にあります。
- 元請はNTT系の通信建設大手3社が主導しますが、各社の通信工事は連結売上の概ね2.5〜4割で、IT・都市インフラ・環境へ多角化しています。連結売上をそのまま通信工事市場とは見なせません。
市場動向
電気通信工事業の完成工事高は、統計の推計方法改定後の新系列(2020年度以降)で3.4〜3.6兆円規模で推移し、2024年度は3.51兆円(元請2.10兆円・元請比率59.8%)です。元請比率は2022年度に51.8%まで下がった後、直近は約60%へ戻っています。需要面では5G・Beyond 5Gの基地局、データセンター、光ファイバ更新、防災行政無線が中心で、最大の発注者であるNTTの設備投資動向が業界全体の受注量を左右します。
- 完成工事高は新系列で3.4〜3.6兆円規模(2020年度の3.52兆円から2024年度は3.51兆円)。2020年度の推計方法改定で、それ以前の旧系列(1.8〜2.6兆円規模)とは水準が直接つながりません。
- 元請比率は概ね5〜6割で、2022年度の51.8%から2024年度は59.8%へ戻りました。大手が元請で受け、施工の一部を全国の専門工事業者が下請で担う重層構造です。
- 需要は5G・データセンター・光ファイバ更新・防災無線が牽引し、NTT・通信事業者(NCC)・電力・自治体の情報インフラ投資に連動します。生成AIによるデータセンター需要が中期の底流です。
競争環境
通信工事の元請は、NTT系の通信建設大手3社(コムシスホールディングス・エクシオグループ・ミライト・ワン)を中心に動いています。3社はいずれもNTT東西・NTTドコモを源流・主要顧客とし、地域の通信工事会社を統合して規模を広げてきました。ただし各社の通信工事(NTT設備・通信キャリア・通信インフラ)は連結売上の概ね2.5〜4割にとどまり、IT・都市インフラ・環境分野へ多角化が進んでいます。元請の下では、全国約1万6,500社の電気通信工事業者が下請や地域工事を担い、裾野は広く分散しています。
- 元請を主導するのはNTT系の大手3社です。連結売上はエクシオグループ6,708億円、コムシスホールディングス6,146億円、ミライト・ワン5,786億円(いずれも2025年3月期)で、NDS・SYSKEN・シーキューブ・西部電気工業などの地域通信工事会社を統合してきました。
- 連結売上は通信工事だけではありません。通信工事コアの比率はコムシス(NTT設備事業)38.5%、エクシオ(通信キャリア)37.6%、ミライト・ワン(通信インフラ)24.8%で、各社ともIT・都市インフラ・環境へ多角化しています。3社の連結を足しても通信工事市場の規模にはなりません。
- 裾野は全国1万6,523社の分散構造です。大手が元請で受けた工事の施工の一部を、多数の専門工事業者が下請や地域工事で担います。最大の発注者はNTT東西・NTTドコモで、その設備投資が受注量を左右します。
市場規模推移
2020-2024 · 元請 + 下請電気通信工事業の2024年度の完成工事高(その年に施工した工事の金額)は3兆5,099億円です。このうち、発注者から直接受注した元請が2兆1,007億円、他社の工事を下請で請け負った分が1兆4,093億円で、元請比率は59.8%です。完成工事高(計)は電気通信工事の施工規模を示す主な指標で、このうち発注者から直接請け負った元請(施主直請)が約2.1兆円(直請比率59.8%)、残りはゼネコンなど他社の工事を下請で請け負った分です。
元請比率は2022年度に51.8%まで下がった後、2024年度は約60%へ戻り、直近は概ね5〜6割で推移しています。これは業界全体で元請と下請のどちらの受注が多いかを示す割合で、特定の大手企業の市場シェアを表すものではありません。大規模な案件を大手が元請で受け、その施工の一部を全国の専門工事業者が下請で担う、重層的な構造が続いています。
電気通信工事業の完成工事高は、2020年度に統計の推計方法が改定されており、時系列を読むときは注意が必要です。改定前の旧系列(2003〜2019年度)では1.8〜2.6兆円規模で推移し、2009年度の1.82兆円を底に、2013年度の2.62兆円が山でした。
改定後の新系列(2020年度以降)は3.4〜3.6兆円規模で、2020年度の3.52兆円から2024年度は3.51兆円です。旧系列の2.33兆円(2019年度)から新系列の3.52兆円(2020年度)への段差は、実際の需要増ではなく推計方法の違いによるものです。両者を1本の連続した推移として読むことはできません。
通信工事の需要は、通信事業者や公共の情報インフラ投資に連動します。中心にあるのは、5G・Beyond 5Gの携帯基地局、データセンターの新設・増設、光ファイバ(FTTH)網の更新、そして防災行政無線や自治体のデジタル基盤です。
とりわけ最大の発注者はNTT東西・NTTドコモで、その全国規模の設備投資が業界全体の受注量を左右します。KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルなどの通信事業者(NCC)や、電力会社、ケーブルテレビ、自治体も発注者です。生成AIの普及によるデータセンター需要、災害対応のインフラ強化が、中期的な需要の底流となっています。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要通信工事(電気通信工事業)は、発注者 → 元請 → 下請の重層構造です。最大の発注者はNTT東西・NTTドコモで、KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルなどの通信事業者(NCC)、電力会社、ケーブルテレビ、自治体が続きます。元請は、NTT系の通信建設大手3社(コムシスホールディングス・エクシオグループ・ミライト・ワン)が主導します。
ただし、実際の施工は大手だけで行われるわけではありません。全国1万6,523社(2025年3月末)の電気通信工事業者が、下請や地域工事として施工を担っています。2024年度の元請比率は59.8%で、残る約4割は下請が受け持つ分散構造です。
元請を主導する3社は、いずれもNTTの通信建設を担ってきた会社を源流とし、地域の通信工事会社を統合して規模を広げてきました。コムシスホールディングスはNDS・SYSKEN・北陸電話工事などを、エクシオグループはシーキューブ・西部電気工業・日本電通などを傘下に収めています。
もっとも、各社の連結売上は通信工事だけではありません。通信工事コアの比率は、コムシス(NTT設備事業)38.5%、エクシオ(通信キャリア)37.6%、ミライト・ワン(通信インフラ)24.8%で、IT・都市インフラ・環境などへ多角化しています。3社の連結を足しても通信工事市場の規模にはならない点に注意が必要です。
通信工事の受注量は、発注者の設備投資に連動します。とりわけNTT東西・NTTドコモの全国規模の設備投資が、業界全体の需要を大きく左右します。ミライト・ワンでは単一最大顧客のNTT東日本が売上の一部を占めるなど、大手各社にとってNTTグループは中核の発注者です。
需要の中心は、5G・Beyond 5Gの基地局、データセンター、光ファイバ網の更新、防災行政無線です。生成AIの普及によるデータセンター需要が、中期的な受注の底流となっています。
業界の3大論点
通信工事の市場規模は、大手各社の連結売上を足せばわかるのか?
いいえ、足しても通信工事の市場規模にはなりません。NTT系の大手3社(コムシスホールディングス・エクシオグループ・ミライト・ワン)の連結売上を合算すると約1.86兆円(2025年3月期)ですが、この数字には海外事業・ITソリューション・都市インフラ・環境など、通信工事以外の売上が広く含まれています。しかも1万6,523社ある電気通信工事業者のうち、わずか3社分にすぎません。実際、各社の通信工事に当たる事業は連結売上の2.5〜4割にとどまり、3社を合わせても業界全体のごく一部です。
電気通信工事の施工規模は、国交省の建設工事施工統計の完成工事高(2024年度で計3.51兆円)で見るのが基本です。この計が施工規模を示す主な指標で、このうち発注者から直接請け負った元請(施主直請)は2.10兆円(直請比率59.8%)です。
あわせて注意したいのは、元請比率59.8%は業界全体で元請と下請のどちらの受注が多いかを示す割合であって、大手3社が市場の約6割を占めるという意味ではないことです。元請として受注された工事も、その施工の多くは全国の専門工事業者が下請で担っています。連結売上や社数の合算を、通信工事市場の規模の代わりに使わない、というのが基本の見方です。
なぜNTT系の大手3社に元請が集まるのか?
通信工事の元請が大手3社に集まる背景には、発注者の構造があります。最大の発注者であるNTT東西・NTTドコモは、全国規模で設備投資を行います。この全国規模の工事を一括して受注し、品質を揃えて施工を管理するには、広域の拠点網と技術者、そして施工管理の体制が必要です。
大手3社は、もともとNTTの通信建設を担ってきた会社を源流とし、そこに地域の通信工事会社を統合することで広域対応力を蓄えてきました。コムシスホールディングスはNDS・SYSKEN・北陸電話工事などを、エクシオグループはシーキューブ・西部電気工業・日本電通などを傘下に収めています。こうした統合により、全国のNTT発注案件に対応できる体制が整いました。
ただし、元請に工事が集まることと、施工を大手だけで行うことは別です。実際の施工の多くは、全国1万6,523社の電気通信工事業者が下請や地域工事として担っています。2024年度の元請比率は59.8%で、残る約4割は下請が受け持つ、重層的な業界構造です。
通信工事の需要はこれからどこで伸びるのか?
通信工事の需要は、通信事業者や公共の情報インフラ投資に連動します。中期的に需要が期待される分野は、大きく4つに整理できます。
第一に、5G・Beyond 5Gの携帯基地局です。都市部の高密度化に加え、地方や屋内のカバレッジ拡充が続きます。第二に、データセンターです。生成AIの普及で計算資源の需要が急増し、大規模データセンターの新設・増設に伴う電源・空調・通信配線工事が増えています。第三に、光ファイバ(FTTH)網の更新で、初期に敷設した設備の老朽化更新が本格化します。第四に、防災行政無線や自治体のデジタル基盤で、災害対応と行政のデジタル化が公共側の需要を支えます。
いずれも、最大の発注者であるNTTや通信事業者(NCC)の設備投資計画に左右されます。通信インフラは景気変動の影響を受けにくい一方、発注者の投資サイクルに需要が連動する点が、通信工事業の特徴です。
よくある質問 (FAQ)
通信工事(電気通信工事業)とは何を施工する業種ですか?
通信工事の市場規模はどれくらいですか?
元請完成工事高と完成工事高(計)はどう違いますか?
通信工事の主要企業はどこですか?
大手3社の売上はすべて通信工事ですか?
通信工事業者は全国に何社ありますか?
通信工事の需要は何が牽引していますか?
通信工事の統計で「2020年度に方法が変わった」とはどういうことですか?
関連業界
建設 業界の他のカテゴリ
5 業界参考資料 / 一次ソース
- 1.
- 2.
- 3.
- 4.
- 5.