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STAT DETAIL · HOUSING LOAN

個人住宅ローン市場|民間銀行とフラット35の役割分担、変動・固定金利シェアと利用者属性【2026年版】

日本の住宅ローン市場は、民間銀行による民間融資の残高約230兆円と、住宅金融支援機構の35年全期間固定金利商品フラット35の買取型累計約14兆円という、2軸で構成されています。両者は集計概念が異なるため単純加算は不可で、別概念として整理が必要です。FY2024のフラット35利用は27,523件、平均所要資金669万円。家計の借入保有率はJ-FLEC新基準で2025年が18.7%、2021年の調査改定で旧基準との断絶があります。本ページでは市場規模・金利タイプ・業態別の構造を整理します。

民間住宅ローン残高
230兆円
FY2024概況、国交省 民住調 概況数値の公表値転記、業態別グラフは追加データ整備後に対応予定
出典: 国土交通省 民間住宅ローン実態調査FY2024概況
フラット35 FY2024利用
27,523
平均年齢44.5歳、家族数3.1人、所要資金669万円
出典: 住宅金融支援機構 フラット35利用者調査 (FY2024年度集計表)
平均所要資金
669万円
FY2024フラット35利用者の平均、マンション1039万、建売626万
出典: 住宅金融支援機構 フラット35利用者調査 (FY2024平均所要資金)
家計借入保有率2025
18.7%
二人以上世帯、新基準 (2021年以降)、旧基準1996年ピーク48%は2020-2021年に調査改定断絶あり
出典: J-FLEC家計の金融行動に関する世論調査2025 (二人以上世帯)

住宅ローン金利タイプ別3区分の特性と返済リスク

変動金利・固定期間選択・全期間固定 (フラット35等) の比較
区分名称時期ステージ定義
変動金利短プラ連動、最大シェア民間住宅ローンの約77%シェア (FY2024)民間銀行が提供する主流の住宅ローンです。銀行が最優良企業に貸し出す短期金利の指標である短期プライムレート連動で半年ごとに見直され、政策金利上昇局面で月返済額が逓増します。返済額は5年毎に再計算する5年ルールと、増加幅125%上限の125%ルールで急上昇を抑制する仕組みがあります。約77%の借入者が選択しています。
固定期間選択3-10年固定、中間選択肢民間住宅ローンの約14%シェア (FY2024)借入から3年・5年・10年等の固定期間を選び、期間終了後は変動または再固定を選択する商品です。固定期間中は金利上昇リスクから保護される反面、再選択時の金利が上昇していれば月返済額が増加します。約14%シェアで、3-10年スパンの金利見通しに自信がある借入者が選好します。
全期間固定 (フラット35等)最大35年固定、シェア約9%フラット35 FY2024利用27,523件、民間住宅ローンの約9%シェア住宅金融支援機構が民間金融機関と共同で提供する35年全期間固定金利住宅ローンであるフラット35が代表的です。借入時点の金利が満期まで固定で、政策金利上昇局面でも返済額が増えない安心感が魅力。一方、長期金利が低い局面でも借換以外では金利を下げられません。長期国債利回り連動の金利水準で、FY2024で月返済額8万円水準が典型例です。
読み解き

3区分のバランスは「金利環境への期待」で決まります。マイナス金利時代 (2016年から2024年3月) は変動金利が圧倒的優位で約80%のシェアを獲得し、固定金利選択は少数派でした。金利環境ページで詳述した政策金利上昇局面では固定金利選択が増加する局面が想定され、フラット35利用件数も中期的に微増トレンドが見込まれます。

返済方式の選択肢も重要で、毎月返済額 (元金+利息) を一定に保つ返済方式の元利均等 (家計運営しやすい) と、毎月返済元金を一定にして利息分が逓減する返済方式の元金均等 (総支払額は少なめだが初期返済額が大きい) の2方式があり、民間銀行・フラット35ともに元利均等が主流です。

フラット35 FY2024利用件数7融資種別

全国合計27,523件の融資種別内訳
単位: 6 カテゴリ・合計 27,523
02,0004,0006,0008,0006,364建売6,330土地付注文住宅5,639中古戸建3,932中古マンション3,272注文住宅1,986マンション
出典: 住宅金融支援機構 フラット35利用者調査 (FY2024年度集計表) 全国7融資種別
カテゴリ注文住宅土地付注文住宅建売マンション中古戸建中古マンション
3,2726,3306,3641,9865,6393,932
シェア11.9%23.0%23.1%7.2%20.5%14.3%
読み解き

FY2024フラット35利用27,523件のうち、建売・土地付注文住宅・中古戸建の3種類で約67%を占有しています。中古住宅 (中古戸建5,639件+中古マンション3,932件=9,571件) が全体の約35%で、中古住宅市場の拡大が住宅ローン市場の構造変化を示しています。

融資種別ごとの平均所要資金は、マンション1039万円が最大、中古戸建544万円が最小と、約1.9倍の幅があります。平均年齢は土地付注文住宅41.6歳が最若年、注文住宅48.9歳とマンション48.4歳が高齢層で、ライフステージと住宅選択の関連を示しています。

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二人以上世帯 借入保有率 新基準推移 (2021-2025、J-FLEC改定後)

J-FLEC家計の金融行動に関する世論調査、2021年調査改定後の5年推移
単位: %
0.06.312.518.825.022.02120.42219.42319.52418.725
出典: J-FLEC家計の金融行動に関する世論調査2025 (二人以上世帯 時系列、新基準2021-2025)
年度20212022202320242025
%2220.4019.4019.5018.70
前年比
読み解き

家計の借入保有率はJ-FLEC新基準 (2021年以降) で2021年の22.0%から2025年の18.7%へ緩やかな低下トレンドです。新基準では年率-1pt程度の低下で、住宅取得タイミング遅延・少子化・賃貸ライフスタイル拡大の構造変化が緩やかに進行しています。旧基準 (1967-2020年) では1996年ピーク48%から2020年42.9%への長期低下が観察されましたが、2020-2021年の調査改定 (標本サイズと集計方式の変更) で42.9%から22.0%への見かけ上の断絶が発生し、旧基準と新基準の単純比較は不可です。

新基準下の低下要因は4軸が複合します。①晩婚化・少子化による住宅取得タイミングの遅延、②都心部の住宅価格高騰による取得困難層の増加、③賃貸+投資のライフスタイル拡大、④親世代の住宅資産継承による新規借入需要の減少、です。中期的には新NISA+資産運用立国の文脈で「住宅取得から金融投資へ」の資金シフトも進むため、家計借入保有率は新基準下で15-18%レンジへ更に微低下する局面が想定されます。

業態別 個人住宅ローン残高 (民住調FY2024、10業態)

民間住宅ローン残高合計198.5兆円 (FY2024末)、フラット35 (買取型) は別系統
単位: 兆円10 カテゴリ・合計 198.5
0.0020.040.060.080.071.1都市銀行・信託銀行64.3地方銀行16.4信用金庫13.7労働金庫11.9第二地方銀行10.8農協 (JA バンク等)8.30モーゲージバンク等1.90信用組合0.10生命保険0.00損害保険
出典: 国土交通省 民間住宅ローンの実態に関する調査 令和6年度 (FY2024) 結果報告書 第2表 業態別残高
カテゴリ都市銀行・信託銀行地方銀行第二地方銀行信用金庫信用組合労働金庫農協 (JA バンク等)生命保険損害保険モーゲージバンク等
兆円71.1064.3011.9016.401.9013.7010.800.1008.30
シェア35.8%32.4%6.0%8.3%1.0%6.9%5.4%0.1%0.0%4.2%
読み解き

FY2024末の民間住宅ローン残高は10業態合計198.5兆円で、都市銀行・信託銀行71.1兆円が36%を占めるトップ、地方銀行64.3兆円が32%で続きます。第二地方銀行11.9兆円、信用金庫16.4兆円、労働金庫13.7兆円、農協 (JAバンク等) 10.8兆円が中位帯を構成、信用組合1.9兆円、モーゲージバンク等8.3兆円が下位に分布しています。

業態別シェアの読み方として、都銀+地銀+第二地銀+信託で74%と銀行業態が大半を占有しており、メガバンク3グループ含む大手銀行が住宅ローン市場の中核プレイヤーであることを示します。労働金庫13.7兆円は組合員向け住宅ローンとして固有の地位を確立、農協10.8兆円は地方圏の住宅ローン供給を支えています。フラット35 (買取型) 累計約14兆円は本表に含まれず別系統で、住宅金融支援機構が公表しています。

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主要論点

変動・固定比率と金利上昇リスクをどう判断するか?

民間住宅ローンの変動金利シェアは約77%で、政策金利上昇局面で月返済額の増加リスクを抱える借入者が多数派です。一方で5年ルール (返済額再計算は5年毎) と125%ルール (増加幅125%上限) という保護機構があり、急激な月返済額増加は抑制されます。

判断軸は4つあります。①金利環境ページで詳述した通り0.75-1.0%で頭打ちの可能性があり、累積金利上昇幅は0.25-0.5pt程度に収まる見込みである政策金利の中期見通し、②30代以下の若年層は長期返済で固定金利の安心感が大きく、中高年層は残り返済期間短く変動でも影響限定となる借入者の年代、③借入額5,000万円以上の高額層は固定が合理的で、3,000万円以下は変動でも影響緩和となる借入額の大きさ、④公務員・大企業正社員は変動でも安心、自営業・派遣等は固定推奨となる収入の安定性、です。

業界戦略への示唆: メガバンク3グループ+地銀協は「金利上昇局面のシナリオ提示」を含めた個人融資コンサルティングで差別化、フラット35は固定金利商品のシェア拡大機会があります。既存ローンを他行またはフラット35に乗り換える住宅ローン借換市場も活性化する局面で、特に変動から固定への借換が中期需要として議論されます。

フラット35と民間住宅ローンの役割分担は今後どうなるか?

フラット35 (住宅金融支援機構が民間金融機関と共同で提供する35年全期間固定金利商品) のFY2024利用件数27,523件は、民間住宅ローンの年間新規貸出件数 (約60-70万件) に対し約4-5%のシェアです。役割分担としては「民間=変動主体、フラット35=全期間固定」の補完関係が明確で、競合より棲み分けの構図です。

論点は3つあります。①政策金利1.0%超えと変動金利月返済額+30%級の上昇局面で、フラット35利用件数が+50-100%拡大する可能性であるフラット35拡張シナリオ、②メガバンク3グループ+地銀協が10-15年固定の独自商品を強化しフラット35シェアを奪い返す動きである民間銀行の固定金利商品強化、③既存変動からフラット35への借換が中期需要の柱になる借換ボリューム、です。

業界戦略への示唆: フラット35は政策金利上昇局面で需要が増す商品設計で、住宅金融支援機構の中期計画ではFY2027までに利用件数+30%を目標としています。民間銀行は固定期間選択商品の競争力強化と、住宅ローン審査のWEB完結化で対抗します。中古住宅市場 (フラット35利用の中古関連9,571件で全体の約35%) の拡大が両者の競争領域となる見通しです。

中古住宅市場の拡大はどこまで進むか?

FY2024フラット35利用27,523件のうち中古住宅関連 (中古戸建+中古マンション) は約35%を占有しています (フラット35内訳ベースの比率で、日本全体の新築・中古取引比率とは別物、住宅着工統計と既存住宅市場流通量等の別ソースで要照合)。中古市場拡大の背景は4要因の複合です。①新築価格高騰で取得困難、②空き家ストック増加で中古供給増、③政府の中古住宅取引活性化政策、④フラット35の中古適用拡大、です。

中期論点は3つあります。①中古住宅の担保価値評価が銀行間で異なる課題である金融機関の中古担保評価、②フラット35リフォーム+民間ローン併用の新商品開発であるリフォーム+中古住宅ローン一体融資、③既存住宅状況調査の普及で中古取引の透明化が進むインスペクション制度、です。

業界戦略への示唆: メガバンク3グループ+地銀協は中古住宅専門の融資商品強化で個人融資シェアを取り、フラット35は中古適用条件の緩和とリフォーム一体融資商品で差別化します。中期で中古住宅向け融資ボリュームが新築並みの規模に拡大する可能性が指摘され、業界全体の住宅ローン市場構造が転換する局面です。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は政策金利0.5%を起点に追加利上げ議論が続く局面です。日銀の2026年中盤0.75%追加利上げ想定下で、変動金利住宅ローン借入者の月返済額が上昇する可能性があります (JHF / 住宅金融支援機構 試算参照) 。フラット35利用件数は固定金利志向の高まりでFY2024の27,523件からの微増見込み。借換市場 (変動から固定) も活性化し、メガバンク3グループ+地銀協の個人融資コンサルティング需要が拡大します。

中期3-5年

2028-2030年は金利環境正常化と中古住宅市場拡大が住宅ローン市場の構造を変える局面です。政策金利が0.75-1.0%で頭打ち、米国景気減速で海外金利反転、変動金利上昇圧力が緩和される一方、固定金利の参照である長期金利も低下しフラット35が魅力的になります。中古住宅向け融資が全融資の30-40%へ拡大し、リフォーム+中古住宅ローン一体融資の新商品が業界標準に。家計借入保有率は18.7%から微低下する見通しです (金融広報中央委員会 金融リテラシー調査の中長期推移参照) 。

長期5-10年

2030年以降は空き家ストック1,000万戸超と少子化進行で住宅ローン市場が新築依存から中古活用へ質的に転換する局面です。フラット35の累計実績30兆円超を背景に、住宅金融支援機構の機能拡張 (低所得層向け融資+災害復興融資) も議論されます。AI・DXによる審査自動化で住宅ローン審査時間が1週間から即日化し、メガバンク3グループ+ネット銀行+信金が個人融資のWEB競争で差別化を進めます。収益構造ページで詳述したバーゼルIII経済価値ベース評価の導入で住宅ローン担保価値の時価評価も精緻化し、銀行のリスク管理が高度化する局面です。

よくある質問

住宅ローンとは何ですか?
住宅ローンは、個人が住宅取得のために金融機関から借りる抵当付融資です。借入者の収入・年齢・住宅価格・LTV (Loan to Value、担保価値に対する借入比率) を審査し、住宅と土地に抵当権を設定して融資する仕組みです。借入期間は通常20-35年、月返済額+ボーナス併用が一般的です。民間銀行の変動金利 (約77%)、固定期間選択 (約14%)、全期間固定フラット35等 (約9%) の3タイプ、返済方式は元利均等 (主流) と元金均等の2方式から選択します。
変動金利と固定金利の違いは?
変動金利は短期プライムレート連動で半年ごとに見直され、政策金利上昇局面で月返済額が逓増します。一方、固定金利は借入時点の金利が固定期間 (3-10年) 中は変わらず、政策金利上昇リスクから保護されます。全期間固定 (フラット35等) は最大35年間金利固定で安心感が大きい商品です。金利環境ページで詳述した政策金利0.5%から0.75-1.0%への追加利上げ局面では、変動金利層の月返済額が+5-10%程度上昇するため、固定金利選択や借換需要が中期的に拡大する見通しです。
フラット35とは何ですか?
フラット35は、住宅金融支援機構が民間金融機関と共同で提供する35年全期間固定金利住宅ローンです。借入時点の金利が満期まで固定されるため、政策金利上昇局面でも月返済額が増えない安心感が魅力です。FY2024利用27,523件、平均所要資金669万円、平均年齢44.5歳。融資種別は注文住宅・土地付注文住宅・建売・マンション・中古戸建・中古マンションの6種類で、中古住宅利用が全体の約35%を占めるのが特徴です。
元利均等と元金均等の違いは?
元利均等は毎月返済額 (元金+利息) を一定に保つ返済方式で、毎月の家計運営しやすい代わりに総支払額がやや多くなります。元金均等は毎月返済元金を一定にし、利息分が逓減する返済方式で、初期返済額が大きく後期は減るため総支払額は元利均等より少なめです。民間銀行・フラット35ともに元利均等が主流ですが、収入に余裕がある借入者は元金均等を選び総支払額を抑える戦略もあります。返済方式の選択は借入額・収入見通し・住宅取得タイミングで判断します。
民間住宅ローンとフラット35の使い分けは?
民間住宅ローン (残高約230兆円) とフラット35 (買取型累計約14兆円) は集計概念が異なるため、両者の規模を単純な%割合で並べることはできません (§1で詳述した二重計上リスク)。役割分担としては、民間銀行は変動金利を主軸とした幅広い借入者層、フラット35は35年全期間固定で長期固定志向層を獲得という補完関係です。使い分けの基準は4つあります。①変動志向は民間、長期固定志向はフラット35となる金利志向、②収入安定性が高い層は変動許容、低い層は固定志向となる借入者の収入安定性、③高額層は固定が合理的となる借入額の大きさ、④20年以内は民間、25-35年はフラット35となる借入期間、です。中期的には政策金利上昇局面でフラット35利用件数が拡大し、両者の補完関係はより明確になる見通しです。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
  2. 2.
  3. 3.
  4. 4.
    総務省 家計調査
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