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教育出版の市場構造|検定教科書とデジタル教材をめぐる事業環境【2026年版】

教育出版は、検定教科書や学習参考書、副教材、通信教育、デジタル教材を手がける分野です。上場では学研ホールディングスと文渓堂が事業を続け、検定教科書は文部科学省の検定制度のもとで限られた発行者が担います。GIGAスクール構想によるデジタル教材化が進むなか、主要プレイヤーの業績と教育出版の構造を順に整理します。

教育出版の4類型

上場の教育系複合・学校教材専業・検定教科書出版社・通信教育/学習塾の、性格の異なる主要プレイヤー

教育出版には、性格の異なる4つの担い手がいます。上場の学研ホールディングスは教育と医療福祉の複合企業、文渓堂は学校教材専業、検定教科書出版社は文科省の検定制度のもとで各教科を発行、通信教育・学習塾は家庭学習を担います。検定教科書出版社や通信教育の多くは非上場で公開財務が乏しく、本ページでは上場2社を業績の軸に、それ以外は事業内容で整理します。

上場の教育系複合
代表プレイヤー
学研ホールディングス
事業の軸
教育(出版・塾・園)と医療福祉の2分野を展開
上場・財務開示
東証プライム上場、9月決算
学校教材専業
代表プレイヤー
文渓堂
事業の軸
小学校向け副教材・ドリル・テスト、デジタル教材
上場・財務開示
名証メイン上場、3月決算
検定教科書出版社
代表プレイヤー
東京書籍・光村図書・教育出版・帝国書院 ほか
事業の軸
文科省の検定制度のもとで各教科の教科書を発行
上場・財務開示
多くが非上場、公開財務は乏しい
通信教育・学習塾
代表プレイヤー
ベネッセ(進研ゼミ) ほか
事業の軸
家庭向けの通信教育・学習塾、デジタル学習
上場・財務開示
ベネッセは2024年にMBOで非上場化

上場の教育系複合 — 学研ホールディングス

教育と医療福祉の2分野

学研ホールディングスは、教育と医療福祉の2分野を手がける複合企業です。FY2025/9の売上は教育分野が951億円(前年比+8.7%)、医療福祉分野が466億円(同+9.6%)でした。教育分野は出版に加えて学習塾や認定こども園などの教育サービスを含み、医療福祉分野はサービス付き高齢者向け住宅などを手がけています。

価格改定とデジタルで増収

教育分野は価格改定とコスト削減で営業利益42.75億円を確保し、少子化のなかでも増収を続けています。学研は紙の出版にとどまらず、塾や教育サービス、デジタル教材へ事業を広げることで、教育市場の縮小に対応しています。連結の売上合計は短信の本文で単一値を確認できなかったため、本ページでは2分野の公表値で示しています。

学校教材専業 — 文渓堂

小学校向け副教材の専業

文渓堂は、戦前から小学校向けの副教材・副読本・ドリル・テストを発行してきた学校教材専業の出版社です。第72期(FY2025/3)の連結売上は125億円、経常利益は9.34億円、当期純利益は6.02億円でした。名古屋証券取引所メイン市場に単独上場し、岐阜県羽島市に本社を置きます。

GIGAスクールへの対応

文渓堂は、GIGAスクール構想が「NEXT GIGA」と呼ばれる第2段階に入るなか、デジタル教材の拡充を進めています。紙のドリルやテストに加えて、児童・生徒1人1台の端末で使えるデジタル学習教材を整え、学校現場のデジタル化に対応しています。少子化で対象の児童数が減るなかで、デジタル対応が中期の成長を左右します。

検定教科書出版社 — 東京書籍・光村図書ほか

検定制度のもとで発行

小中高校で使う教科書は、文部科学省の検定制度のもとで発行されます。教科書会社が編集した教科書を国が検定し、合格したものの中から各教育委員会や学校が採択する仕組みです。東京書籍・光村図書・教育出版・帝国書院・三省堂・数研出版などが代表的な発行者で、教科ごとに限られた会社が担っています。

非上場が多く財務は乏しい

これらの教科書会社は多くが非上場で、公開された財務データが乏しいため、本ページでは事業の位置づけを中心に整理します。教科書は採択されれば数年単位で安定した需要が見込める一方、児童・生徒数の減少とデジタル教科書への移行が、各社の事業環境を変えつつあります。

通信教育・学習塾 — ベネッセほか

家庭学習を担う

通信教育や学習塾は、学校の外で家庭学習を支える担い手です。進研ゼミ・こどもちゃれんじを手がけるベネッセが代表的で、通信教育から学習塾、デジタル学習まで幅広く展開しています。学研も学習塾を運営しており、出版社が塾・通信教育へ事業を広げる例があります。

ベネッセはMBOで非上場化

ベネッセホールディングスは2024年に経営陣による買収(MBO)で非上場化し、現在は上場していません。少子化で会員数の確保が課題となるなか、デジタル学習や高齢者向け事業など教育以外への展開も進めています。通信教育・塾の分野は、教育出版の各社にとって紙の教材を補う収益源として重なり合っています。

上場する教育出版社の事業規模(億円)

学研は2分野のセグメント売上、文渓堂は連結売上。決算期と利益指標が異なるため単純比較は不可
学研HD・教育分野
出版・塾・園を含む教育サービス
売上(億円)
951
利益
営業42.75億円
区分・決算期
セグメント売上(9月期)
学研HD・医療福祉分野
高齢者向け住宅など(教育外、参考)
売上(億円)
466
利益
営業24.33億円
区分・決算期
セグメント売上(9月期)
文渓堂(連結)
小学校向け副教材・ドリル専業
売上(億円)
125
利益
経常9.34億円
区分・決算期
連結売上(3月期)
読み解き

上場する教育出版社の事業規模は、学研ホールディングスの教育分野が951億円文渓堂の連結が125億円です。学研は教育に加えて医療福祉分野(466億円)を持つ複合企業で、教育分野には出版だけでなく学習塾や認定こども園などの教育サービスが含まれます。文渓堂は小学校向け副教材に特化した専業で、規模は学研の教育分野より小さくなっています。

この表は、基準と決算期が異なる点に注意が必要です。学研の数値は2分野のセグメント売上(連結合計は短信本文で確認できず非掲載)、文渓堂は連結売上です。利益も学研は営業利益、文渓堂は経常利益で指標が異なります。決算期は学研が9月期、文渓堂が3月期です。そのため両社の単純な比較はできませんが、上場する教育出版社のおおまかな事業規模の目安として読めます。検定教科書出版社や通信教育各社の多くは非上場で、公開された財務データが乏しいため本表には含めていません。

主要論点

少子化のなかで教育出版はどう成長を保つのか?

教育出版は、少子化で対象となる児童・生徒が減るという構造的な逆風のなかにあります。教科書や副教材、学習参考書の需要は子どもの数に連動するため、市場の縮小は避けられません。それでも学研の教育分野は価格改定とコスト削減で増収を保ち、文渓堂もデジタル教材で対応を進めています。

各社の成長の軸は、1人あたりの単価を上げることと、紙以外の領域へ広げることです。学研は出版にとどまらず学習塾や教育サービス、デジタル教材へ展開し、文渓堂はGIGAスクールに対応したデジタル学習教材を整えています。子どもの数が減っても、デジタル化や個別最適な学びへの需要を取り込むことで、1人あたりの提供価値を高める方向です。

中長期的には、紙の教材の縮小を、デジタル教材・教育サービス・通信教育でどこまで補えるかが各社の分かれ目です。教育出版は「紙の教科書や教材を売る事業」から「学びを支えるサービスを提供する事業」へと位置づけが変わりつつあります。

GIGAスクール構想は教育出版をどう変えるか?

GIGAスクール構想は、児童・生徒に1人1台の端末を配り、学校でのデジタル学習を進める文部科学省の政策です。端末の整備が一巡し、現在は教材やソフトの活用を深める「NEXT GIGA」と呼ばれる第2段階に入っています。これにより、紙の教材からデジタル教材への移行が教育出版に大きな影響をあたえています。

教育出版各社にとっては、紙のドリルや教科書をデジタルへ置き換える必要が生じる一方、デジタル教材という新しい市場が開けます。学習履歴をもとに個別最適な教材を提供したり、採点や復習を自動化したりと、紙ではできなかった付加価値を加えられます。文渓堂やデジタル教材を持つ各社は、この移行に対応を進めています。

もっとも、デジタル教科書の本格導入には制度や予算の議論も伴います。紙とデジタルのどちらを正式な教科書とするか、費用を誰が負担するかといった論点が残ります。中長期的には、GIGAスクールへの対応力が教育出版各社の競争力を左右します。

検定教科書の出版社が非上場中心なのはどう影響するか?

小中高校の教科書を発行する東京書籍・光村図書・教育出版・帝国書院などの教科書会社は、多くが非上場です。教科書は文部科学省の検定制度のもとで発行され、採択されれば数年単位で安定した需要が見込めますが、各社の詳細な財務データは公開されていません。

そのため、検定教科書の市場規模や各社の業績は外から把握しにくく、本ページでも事業の位置づけを中心に整理しています。教科書は教科ごとに限られた会社が担う構造で、新規参入は容易ではありません。一方で、児童・生徒数の減少とデジタル教科書への移行という共通の課題に各社が直面しています。

中長期的には、デジタル教科書の制度設計や、紙とデジタルの併用がどう進むかが、教科書会社の事業環境を左右します。非上場で開示が限られるぶん、業界全体の動向は文部科学省の政策や採択の動きから読み取ることになります。

中期見通し

近未来1-2年

教育出版は、少子化の逆風のなかでデジタル教材への移行が進みます。学研は教育サービスとデジタルで増収を保ち、文渓堂はNEXT GIGAに対応した教材を拡充します。検定教科書出版社は、デジタル教科書の制度議論をにらみながら紙とデジタルの両対応を進めます。

中期3-5年

中期では、1人あたりの単価向上とサービス化が各社の鍵になります。紙の教材の縮小を、デジタル教材・学習塾・通信教育・教育サービスでどこまで補えるかが業績を左右します。学習履歴を活かした個別最適な学びへの需要が、教育出版の新しい収益源になります。

長期

長期では、教育出版は「紙の教科書や教材を売る事業」から「学びを支えるサービスを提供する事業」へと位置づけが変わります。デジタル教科書の本格導入や、子どもの数の減少という構造変化のなかで、各社は紙にとどまらない学習サービスへの転換を進めることになります。

よくある質問

教育出版にはどんな会社がありますか?
上場では教育と医療福祉を手がける学研ホールディングス、小学校向け副教材専業の文渓堂があります。検定教科書は東京書籍・光村図書・教育出版・帝国書院などが発行し、通信教育では進研ゼミのベネッセが知られます。教科書会社や通信教育の多くは非上場です。
学研ホールディングスの教育分野の売上はどれくらいですか?
学研ホールディングスのFY2025/9の教育分野の売上は951億円(前年比+8.7%)です。出版に加えて学習塾や認定こども園などの教育サービスを含みます。医療福祉分野は466億円で、教育と医療福祉の2分野を手がける複合企業です。
文渓堂はどんな会社ですか?
文渓堂は、小学校向けの副教材・ドリル・テストを中心とする学校教材専業の出版社です。第72期(FY2025/3)の連結売上は125億円でした。名古屋証券取引所メイン市場に単独上場し、GIGAスクールに対応したデジタル教材も拡充しています。
検定教科書はどのように発行されるのですか?
検定教科書は、教科書会社が編集した教科書を文部科学省が検定し、合格したものの中から各教育委員会や学校が採択する仕組みで発行されます。東京書籍・光村図書・教育出版・帝国書院などが代表的な発行者で、教科ごとに限られた会社が担っています。
GIGAスクール構想は教育出版にどう影響しますか?
GIGAスクール構想で児童・生徒に1人1台の端末が配られ、紙の教材からデジタル教材への移行が進んでいます。教育出版各社は紙の教材をデジタル化する必要がある一方、学習履歴を活かした個別最適な教材という新しい市場が開けます。現在は活用を深める「NEXT GIGA」の段階に入っています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    学研ホールディングス2025年9月期決算短信
  2. 2.
    文渓堂 第72期(2025年3月期)報告書
  3. 3.
    文部科学省GIGAスクール構想 / 検定教科書制度
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