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旅行会社の主要プレイヤー|取扱額の規模と業態別の構図【2026年版】

主要旅行業者の旅行取扱額は、2024年度に3兆6,768億円(43社・グループ計)でした。最大手のJTB(7社計)が1兆3,121億円で突出していますが、業界には大手のほか鉄道・航空系、オンライン専業、業務渡航など多数のプレイヤーがあり、特定の数社が市場を占める寡占ではありません。部門別では国内旅行が2兆1,652億円、海外旅行が1兆2,959億円、外国人旅行(訪日手配)が2,156億円で、取扱額全体はコロナ禍前の2019年度比81.0%とまだ戻りきっていません。主要旅行会社の取扱額・業態別のプレイヤー・業態転換の動きを整理します。

主要旅行会社の取扱額と業態別プレイヤー

旅行取扱額の上位10社・グループ(2024年度、観光庁公表値)。「(N社計)」はグループ集計単位。部門別は四捨五入のため内訳の和が計と一致しない場合があります

数値は観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況」(2024年度 年度総計)に基づく取扱額です。最大手のJTB(7社計)の取扱額1兆3,121億円は2位以下を大きく引き離しており、規模で突出しています。一方、各社の部門構成は大きく異なります。エイチ・アイ・エスは海外旅行の比重が高く、日本旅行・KNT-CTホールディングスは国内旅行が中心、阪急交通社は国内と海外のバランスが取れているといった違いがあり、取扱額の総額だけでなく、どの部門に強みを持つかでプレイヤーの性格が分かれます。なお「(N社計)」はグループ会社を合算した観光庁の集計単位で、単体の会社とは集計範囲が異なります。

JTB(7社計)
取扱額計
13,121
うち国内
8,675
うち海外
3,438
うち訪日
1,008
2019年度比
83.2
日本旅行(4社計)
取扱額計
3,606
うち国内
2,329
うち海外
806
うち訪日
472
2019年度比
84.9
取扱額計
3,596
うち国内
575
うち海外
2,877
うち訪日
144
2019年度比
79.4
阪急交通社(2社計)
取扱額計
3,340
うち国内
1,610
うち海外
1,660
うち訪日
70
2019年度比
99.5
取扱額計
3,339
うち国内
2,146
うち海外
928
うち訪日
265
2019年度比
72.8
東武トップツアーズ
取扱額計
1,202
うち国内
887
うち海外
265
うち訪日
50
2019年度比
96.5
ジャルパック
取扱額計
1,186
うち国内
1,010
うち海外
174
うち訪日
2
2019年度比
66.5
名鉄観光サービス
取扱額計
762
うち国内
625
うち海外
116
うち訪日
21
2019年度比
89.4
JR東海ツアーズ
取扱額計
670
うち国内
656
うち海外
2
うち訪日
12
2019年度比
82.2
ANA X
取扱額計
630
うち国内
538
うち海外
93
うち訪日
0
2019年度比
36.2

総合旅行会社(大手) — JTB・日本旅行・エイチ・アイ・エス・阪急交通社・KNT-CT

JTBは、国内・海外・訪日のすべてと、個人・法人・団体の各分野を幅広く扱う国内最大の総合旅行会社です。グループ7社計の取扱額は1兆3,121億円で、うち国内旅行が8,675億円と最大の柱です。近年は店舗網を縮小しつつ、自治体や企業向けの業務受託(BPO)、地域の観光振興を支援する「地域交流ビジネス」など、旅行販売以外の領域へ事業を広げています。非上場で、グループ再編を通じて事業構成の組み替えを進めてきました。

日本旅行(JR西日本グループ、4社計3,606億円)とKNT-CTホールディングス(近鉄グループ、4社計3,339億円)は、いずれも国内旅行・団体旅行に強みを持ちます。KNT-CTは近畿日本ツーリストに加え、シニア層向けの趣味・体験型旅行を得意とするクラブツーリズムを抱えるのが特徴です。両社とも国内中心ゆえ、海外旅行の落ち込みの影響は相対的に小さい一方、2019年度比では日本旅行84.9%・KNT-CT72.8%と、団体旅行の戻りの遅れもうかがえます。

エイチ・アイ・エス(6社計3,596億円)は海外旅行に強く、取扱額の大半を海外旅行(2,877億円)が占めるため、コロナ禍の海外渡航停止で最も大きな打撃を受け、2019年度比は79.4%にとどまります。阪急交通社(阪急阪神ホールディングスグループ、2社計3,340億円)は、新聞広告などで集客するメディア募集型のパッケージツアーを得意とし、国内と海外のバランスがよく、2019年度比99.5%とほぼコロナ前の水準まで回復しているのが目立ちます。JTB・日本旅行・阪急交通社は非上場で、エイチ・アイ・エス・KNT-CTは上場しています。

鉄道・航空系 — ジャルパック・ANA X・JR東海ツアーズ・東武トップツアーズ

航空会社や鉄道会社のグループに属する旅行会社は、親会社の輸送サービスと組み合わせた旅行商品に強みがあります。ジャルパック(日本航空グループ、1,186億円)とANA X(ANAホールディングスグループ、630億円)は、自社グループの航空券に宿泊や現地手配を組み合わせたパッケージ旅行やマイル連動の旅行を展開します。ANA Xは2019年度比36.2%と、コロナ前からの事業再編の影響で水準が大きく下がっています。

鉄道系では、JR東海ツアーズ(東海道新幹線を軸にした国内パッケージが中心で、取扱額のほぼ全てが国内旅行)や、東武トップツアーズ(1,202億円、法人・団体・教育旅行や自治体からの業務受託に強い)、名鉄観光サービスなどが地域の旅客基盤と結びついて事業を展開しています。これらの会社は親会社の沿線・路線の利用促進と一体で、団体・教育・自治体向けなど特定の分野に強みを持つのが特徴です。

OTA・オンライン専業 — 予約のオンライン化を担うプレイヤー

インターネット専業で旅行や宿泊・航空券の予約を扱うオンライン旅行会社(OTA)は、店舗を持たずに価格比較や即時予約の利便性で利用を伸ばしてきました。上場企業では、航空券予約を起点に旅行事業を広げたエアトリや、旅行比較メディアを運営するオープンドア(トラベルコ)などがあります。

楽天トラベル・じゃらんなどの大手OTAを含むオンライン予約の流通や、宿泊施設との手数料・直販をめぐる競争は、観光庁の主要旅行業者の取扱状況には表れにくく、公式の統計が乏しい領域です。オンライン予約の比重は年々高まっており、店舗を持つ従来の旅行会社にとって、競争環境の変化の中心にあります。

業務渡航(BTM)・専門 — 法人出張に特化したプレイヤー

企業の出張手配に特化した業務渡航(BTM=ビジネス・トラベル・マネジメント)の専門会社も、旅行業の重要な一角です。IACEトラベル(215億円)、HTB-BCDトラベル(グローバルの出張管理会社と日本の旅行会社の合弁、2019年度比132.5%と高い回復)、エムオーツーリスト、郵船トラベルなどが、企業の出張の予約・経費管理・危機管理までを一括で請け負います。

業務渡航は、景気や企業活動に連動して安定した需要が見込めるうえ、出張の手配・管理を効率化するシステムやサービスで付加価値を高めやすい分野です。観光目的の旅行とは異なり、コストの最適化や出張規程への適合といった法人特有のニーズに応えることが競争力となります。コロナ後の出張回復を背景に、専門会社の取扱額は比較的堅調に推移しています。

主要論点

なぜJTBが突出して大きいのか?

JTB(7社計)の取扱額1兆3,121億円は、2位以下を大きく引き離しています。背景には、国内・海外・訪日のすべての分野と、個人・法人・団体の各市場を幅広くカバーする総合力があります。とくに国内旅行(8,675億円)では、長年培ってきた全国の店舗網・取引先・送客のネットワークが厚みを持ちます。

もっとも、この規模はグループ7社を合算した取扱額であり、単体の1社の数字ではありません。また取扱額は旅行会社が販売した旅行の取扱額であって、企業としての連結売上とは異なる指標です。

JTBが突出しているとはいえ、業界全体でみれば大手数社のほかに鉄道・航空系、オンライン専業、業務渡航の専門会社など多数のプレイヤーが各分野で競っており、1社が市場を支配しているわけではありません。

なぜ取扱額はコロナ前の水準に戻らないのか?

主要旅行業者の取扱額は、2024年度で2019年度比81.0%と、コロナ前を下回っています。最大の要因は、海外旅行の戻りの遅れ(同73.4%)です。円安や燃油サーチャージの高止まりで海外旅行の費用が上がり、需要の回復が国内旅行(同84.8%)より遅れています。

もう一つの構造的な要因が、予約のオンライン化です。旅行者が旅行会社の店舗やパッケージを通さず、OTAや宿泊施設・航空会社のサイトで直接予約する流れが進み、旅行会社を経由する取扱額の戻りを鈍らせています。旅行消費そのもの(需要側の消費額)は過去最高を更新する一方で、旅行会社経由の取扱額が伸び悩むのは、この流通の変化を反映しています。

つまり、取扱額の戻りの鈍さは「旅行需要が弱い」のではなく、海外旅行の回復の遅れと、旅行の買われ方の変化(直販シフト)が重なった結果といえます。

旅行会社は何で稼ぐ方向に転換しているのか?

旅行のオンライン直販が進むなか、旅行会社は従来の店舗でのパッケージ販売に依存しない事業へと軸足を移しています。一つは、地域・自治体向けの事業です。観光地の振興支援、ふるさと納税や地域イベントの運営受託、自治体業務の受託(BPO)など、旅行販売以外の収益源を広げています。

二つめが、業務渡航(BTM)と法人向けサービスです。企業の出張手配・経費管理・危機管理を一括で請け負う分野は、景気に連動した安定需要が見込め、システムによる効率化で付加価値を高めやすい領域です。三つめが、インバウンド(訪日)の手配で、訪日旅行の地上手配やランドオペレーター業務は、訪日需要の拡大とともに伸びています。

これらに加え、オンライン予約への対応(自社サイトの強化やOTAとの連携)も進んでいます。旅行会社の競争は、店舗網の規模から、地域・法人・訪日・デジタルといった分野ごとの強みへと軸を移しつつあります。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、海外旅行の回復が取扱額を押し上げるかが焦点です。海外旅行はコロナ前の水準をなお下回っており、円安や費用の高止まりが和らげば、海外に強い旅行会社の取扱額が伸びる余地があります。一方、国内旅行は単価上昇が取扱額を支える構図が続きます。

中期3-5年

中期では、業態転換の進み具合が各社の明暗を分けます。地域・自治体向けの業務受託、法人向けの業務渡航、訪日の地上手配といった分野で強みを築けるか、オンライン直販の流れにどう対応するかが問われます。店舗網の効率化と、分野特化による付加価値づくりが並行して進む見通しです。

長期

長期では、旅行のオンライン直販がさらに進むなかで、旅行会社の役割の再定義が課題となります。単純な予約代行の価値が低下する一方、複雑な手配を要する団体・法人・訪日や、地域の観光をつくる事業など、人の専門性が活きる領域に重心が移ると考えられます。人口減少を背景とした国内市場の成熟も、各社の事業構成の見直しを促します。

よくある質問

取扱額が最も大きい旅行会社はどこですか?
観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況」(2024年度)によると、最大手はJTBで、グループ7社計の取扱額は約1兆3,121億円です。続いて日本旅行(4社計 約3,606億円)、エイチ・アイ・エス(6社計 約3,596億円)、阪急交通社(2社計 約3,340億円)、KNT-CTホールディングス(4社計 約3,339億円)が上位に並びます。いずれもグループ会社を合算した集計です。
旅行取扱額と旅行・観光消費額は何が違いますか?
旅行取扱額(2024年度で3兆6,768億円)は、旅行会社が販売した旅行の取扱額(供給側)です。一方、旅行・観光消費額(2025年で37.6兆円)は、旅行者が国内で支払った旅行消費の総額(需要側)です。旅行者が旅行会社を通さずに直接予約・手配した分は取扱額に含まれないため、集計の対象が異なり、単純に比較したり合算したりはできません。
旅行会社の取扱額は部門別にどうなっていますか?
2024年度の主要旅行業者の取扱額は、国内旅行が2兆1,652億円、海外旅行が1兆2,959億円、外国人旅行(旅行会社が扱う訪日手配)が2,156億円です。コロナ前の2019年度と比べると、外国人旅行が96.8%、国内旅行が84.8%とおおむね回復している一方、海外旅行は73.4%と戻りが遅れています。
上場している旅行会社はどこですか?
主要な旅行会社のうち、エイチ・アイ・エス、KNT-CTホールディングス、オンライン専業のエアトリ、旅行比較メディアのオープンドアなどが上場しています。一方、JTB・日本旅行・阪急交通社・ジャルパック・ANA Xなどは非上場、またはグループ各社として親会社の連結に含まれます。なお、旅行取扱額は旅行会社が販売した旅行の取扱額で、上場各社の連結売上・利益とは別の指標です。
旅行会社のデータの出典は何ですか?
旅行取扱額は観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況」(2024年度 年度総計、43社・グループ)が出典です。各社の取扱額は速報値で、各社の決算報告とは異なる場合があります。部門別の取扱額は四捨五入のため、内訳の合計が取扱額計と一致しない場合があります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況」(2024年度 年度総計、43社・グループ)
  2. 2.
    観光庁「旅行・観光消費動向調査」(2025年 確報)
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