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STRUCTURE · PLANT ENGINEERING

プラントエンジニアリング(御三家・海外EPC)|受注動向と各社の明暗【2026年版】

石油化学・LNG・発電などの産業プラントを設計から施工まで一括で請け負うのがプラントエンジニアリング(EPC)です。日揮ホールディングス・千代田化工建設・東洋エンジニアリングの「御三家」などが担い、海外案件が中心です。令和7年度(2026年3月期)は、日揮が受注9,845億円(海外比率86.5%)で営業黒字に回復した一方、東洋エンジは採算悪化で純損失に転じるなど、各社の明暗が分かれました。国内で施工された工事を集計する建設の完成工事高には表れにくい、別の見方が必要な分野です。

御三家の事業領域と直近の受注動向

日揮・千代田・東洋エンジの得意領域・海外の位置づけ・直近の状況を、売上や利益の一覧比較ではなく受注動向から整理

御三家は、それぞれ得意とするプラント領域と地域を持ちます。共通するのは海外案件の比率が高いことですが、令和7年度(2026年3月期)の業績は明暗が分かれました。ここでは財務の一覧比較ではなく、各社の受注動向と直近の状況から整理します。

主な事業領域
LNG・石油化学・医薬・再エネ(総合エンジ最大手)
海外の位置づけ
受注高の海外比率86.5%
直近(FY2026/3)の状況
受注9,845億円、営業黒字に回復(V字回復)
主な事業領域
LNG・ガス関連に強み
海外の位置づけ
受注残の海外約68%(LNG主体)
直近(FY2026/3)の状況
受注2,980億円、大幅増益だが財務再建の途上
主な事業領域
石油化学・肥料・医薬・環境
海外の位置づけ
受注高の海外比率73.1%
直近(FY2026/3)の状況
受注は前期比減も一定規模を確保、採算悪化で純損失△149億円

日揮ホールディングス — 総合エンジ最大手、V字回復

日揮ホールディングスは、LNG・石油化学・医薬・再生可能エネルギーなどを手がける総合エンジニアリングの最大手です。令和7年度(2026年3月期)の受注高は9,845億円で、うち海外が86.5%を占めました。連結売上高は7,453億円で、前期比では△13.1%と減収でした。

一方で損益は、前期の営業損失(約115億円)から営業利益354億円へと黒字転換し、純利益は418億円とV字回復しました。減収のなかでも、大型プロジェクトの採算改善が利益を押し上げています。受注残高(次期以降に繰り越す工事量)は約1.4兆円規模とされ、海外LNGなどの案件を抱えています。

千代田化工建設 — LNGに強み、増益だが再建途上

千代田化工建設は、LNG・ガス関連プラントに強みを持ちます。令和7年度(2026年3月期)の受注高は2,980億円、受注残高は6,131億円(2026年3月末)で、受注残の地域別では海外が約68%(中近東・アフリカなどが中心)を占めます。純利益は847億円と大幅な増益で、金額だけ見れば日揮を上回ります。

ただし、この高い利益は、過去の大型損失で痛んだ財務からの回復局面による面が大きく、そのまま続く実力とは読みにくい数字です。同社は2019年に大型LNG案件の損失で財務が悪化し、優先株式(普通株より配当などで優遇する代わりに議決権を制限した株式で、出資を集めて自己資本を厚くする)の発行などで再建を進めてきました。令和7年度も自己資本比率は22.2%(製造業では40%前後が一つの目安)と低く、普通配当は無配が続くなど、財務の立て直しは途上にあります。

東洋エンジニアリング — 受注は確保も純損失に転落

東洋エンジニアリングは、石油化学・肥料・医薬・環境分野のプラントを手がけます。令和7年度(2026年3月期)の受注高は1,759億円で、前期比では△26.1%と減少しました(受注残高も2,694億円へ縮小)。それでも一定の受注規模は確保しましたが、進行中の案件では採算が悪化しました。

その結果、営業損益は約190億円の損失、純損益は149億円の純損失に転落しました(連結売上高も前期比で大幅減)。東洋エンジも過去の財務再建から優先株式を有します。受注残高を抱えていても、個別案件の採算次第で損益が大きく振れることを示す例です。

プラント各社の数字の見方

受注高・売上高・受注残高は別の数字

プラント各社の規模を見るときは、受注高・売上高・受注残高の3つを区別することが大切です。受注高は、その期に新たに受注した工事の金額です。売上高は、その期に完成・計上した工事の金額です。受注残高は、受注済みでまだ完成していない、次期以降に繰り越す工事量(バックログ)です。プラントは工期が数年に及ぶため、ある期の受注高がそのまま同じ期の売上になるわけではなく、受注残高として積み上がり、数年かけて売上に変わっていきます。景気や損益を読むときは、この3つを混同しないことが重要です。

海外比率は「何に対する比率か」を確認する

御三家はいずれも海外案件の比率が高いのが特徴です。ただし、海外比率が受注高に対する比率か、受注残高に対する比率かで意味が異なります。日揮の海外比率86.5%や東洋エンジの73.1%はその期の受注高に占める海外の割合で、千代田の約68%は期末の受注残高に占める海外の割合です。基準が異なるため、単純に横並びで比較はできませんが、いずれも事業の中心が海外にあることを示しています。連結の業績には海外プラントが大きく含まれるため、国内のプラント工事の規模とは切り分けて見る必要があります。

規模は各社の受注高・受注残高で見る

国内で施工されたプラント工事だけを切り出した市場統計は乏しく、御三家の規模も連結(海外を含む)の受注高・受注残高・売上高で見るのが一般的です。各社の受注高(令和7年度は日揮9,845億円・千代田2,980億円・東洋エンジ1,759億円)を横に並べれば規模のイメージはつかめますが、これは企業ごとの受注規模であって、単純に足して「プラント市場○兆円」とできる性質のものではありません(大半が海外案件で、各社の事業領域も国内市場という同じ土俵にあるわけではないためです)。エンジニアリング産業全体の受注高を集計した統計もありますが、重工業・情報システムなど幅広い領域を含む広い概念で、プラント工事の市場規模とは異なります。プラントは海外EPCを中心とする、建設の国内統計とは別の見方が必要な分野です。

主要論点

なぜ御三家の業績は明暗が分かれたのか?

令和7年度(2026年3月期)は、日揮が営業黒字に回復し純利益418億円を確保した一方、東洋エンジは純損失149億円に転落し、千代田は大幅増益でした。同じプラント御三家でも、業績の方向がそろわなかったのが特徴です。

背景には、プラント事業が大型案件の採算に業績を大きく左右される特性があります。プラントは1件が数百億〜数千億円規模で、工期も数年に及ぶため、資材費・人件費の高騰や工事の遅延が一つの案件で発生すると、損益が大きく振れます。日揮は過去の不採算案件を消化して採算が改善し、東洋エンジは逆に進行中の案件で採算が悪化しました。受注を確保できていても、それが利益になるかは案件の遂行力次第という、プラント特有のリスクが表れた1年でした。

海外案件が中心であることは、御三家に何をもたらすか?

御三家はいずれも受注の大半が海外案件です。日揮は受注の86.5%、東洋エンジは73.1%が海外で、千代田も受注残の約68%が海外です。これは、国内の建設投資が人口減少のもとで大きくは伸びにくいなか、世界のエネルギー・化学プラント需要という成長市場を取り込めることを意味します。

一方で、海外集中はリスクも伴います。案件が大型で工期も長いため、為替の変動、進出先の地政学リスク、資材・人件費の高騰が、一つの案件の採算を大きく左右します。日揮の利益回復も東洋エンジの損失も、こうした大型海外案件の採算の振れが表れたものです。海外の成長を取り込む力と、大型案件のリスクを管理する力の両方が、御三家の実力を分けます。なお、これらは各社が世界で受注した工事であって、国内のプラント市場の規模を示すものではありません。

受注残高は何を教えてくれるのか?

受注残高(バックログ)は、受注済みでまだ完成していない工事量で、将来の売上の裏づけになります。千代田の受注残高は6,131億円、東洋エンジは2,694億円、日揮は約1.4兆円規模とされ、数年分の工事量を抱えています。

プラントは工期が長いため、受注残高が厚いほど、当面の売上の見通しは立ちやすくなります。ただし、受注残高は「売上の予約」であって「利益の予約」ではありません。抱えている案件の採算が悪化すれば、東洋エンジのように受注残があっても損失になります。受注残高の厚みと、それを利益に変える遂行力の両方を見ることが、プラント各社を読むうえで大切です。

中期見通し

近未来1-2年

世界的なLNG需要やエネルギー安全保障を背景に、大型のLNG・ガスプラントの引き合いは底堅く、御三家の受注環境は当面堅調とみられます。一方で、資材費・人件費の高騰や工期の長期化が、個別案件の採算を圧迫するリスクは残ります。厚い受注残高を、いかに採算を確保しながら遂行するかが当面の焦点です。

中期3-5年

エネルギー転換の進展で、従来の石油・ガスプラントに加え、水素・アンモニア・CO2回収(CCS)・持続可能な航空燃料(SAF)など、脱炭素関連プラントの引き合いが増える見通しです。御三家はこうした新領域のEPCに事業を広げようとしています。ただし、新技術のプラントは実績が乏しく、採算やリスクの見極めが課題となります。

長期5-10年

世界のエネルギー需要と脱炭素の動向が、プラント各社の事業機会を左右します。化石燃料関連の需要が長期でどう変化するか、脱炭素プラントがどこまで実装のフェーズに入るかが、御三家の事業構成を大きく変える可能性があります。設計から遂行までの総合力を持つ企業が、大型・高難度の案件を確保していく展開が見込まれます。

よくある質問

プラントエンジニアリングの「御三家」とは?
石油化学・LNG・発電などの産業プラントを設計から施工まで一括で請け負う(EPC)代表的な3社、日揮ホールディングス・千代田化工建設・東洋エンジニアリングを指す慣用的な呼び方です。このほかにJFEエンジニアリングやIHIなども関連分野を手がけます。いずれも海外案件の比率が高いのが特徴です。
プラント業界の市場規模はどれくらいですか?
国内で施工されたプラント工事だけを切り出した単一の市場統計は乏しいのが実態です。御三家の規模は、各社の連結の受注高・売上高・受注残高で見るのが一般的で、その大半は海外のプラント案件です。エンジニアリング産業全体を集計した統計もありますが、重工業・情報システムなど幅広い領域を含む広い概念で、プラント工事の市場規模とは異なります。
受注高・売上高・受注残高はどう違いますか?
受注高はその期に新たに受注した工事の金額、売上高はその期に完成・計上した工事の金額、受注残高は受注済みで未完成の(次期以降に繰り越す)工事量です。プラントは工期が数年に及ぶため、受注高がそのまま同じ期の売上になるわけではなく、受注残高として積み上がって数年かけて売上に変わります。3つは別の数字として区別することが大切です。
御三家の令和7年度(2026年3月期)の業績はどうでしたか?
各社で明暗が分かれました。日揮は受注9,845億円(海外86.5%)で営業黒字に回復し純利益418億円、千代田は大幅増益ながら自己資本比率22.2%と財務再建の途上、東洋エンジは受注は確保したものの採算悪化で純損失149億円に転落しました。プラント事業は大型案件の採算で損益が振れる特性があります。
なぜプラントは損益が大きく振れるのですか?
プラントは1件が数百億〜数千億円規模で、工期も数年に及びます。このため、資材費・人件費の高騰や工事の遅延が一つの大型案件で発生すると、損益が大きく振れます。受注を確保していても、それが利益になるかは案件の遂行力次第です。受注残高の厚みだけでなく、それを採算を保って遂行できるかを併せて見る必要があります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    御三家(日揮ホールディングス・千代田化工建設・東洋エンジニアリング)の2026年3月期 決算短信・決算概要
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