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SaaS・業務ソフト業界の市場規模・主要企業・動向

日本のSaaS・業務ソフト市場は2029年度に3兆3,975億円へ拡大が見込まれ、企業のクラウド利用率も2024年に80.6%へ達し普及が加速しています

SaaS・業務ソフト業界とは、会計・人事・営業支援などの業務ソフトを、インターネット経由のサブスクリプションで提供する産業です。富士キメラ総研の予測では国内のSaaS/PaaS市場が2029年度に 3兆3,975億円 へ拡大し、ローコード開発も 2,166億円 に達する見通しで、企業のクラウドサービス利用率も2024年に 80.6% と過半を超えました。主要事業者は機能と業界軸を組み合わせた5区分で並び、国内上場事業者・未上場の急成長スタートアップ・グローバル大手が機能カテゴリを横断して競合しています。ガバメントクラウドやIT導入補助金が普及を後押しする一方、AIエージェントによるSaaS機能の代替議論と業界の再編 が、SaaSの価値の再定義を促しています。本ページでは、日本のSaaS業界を、市場規模と需要構造、主要事業者、製品カテゴリ、政策とAI統合、国際比較の5軸で整理します。

最終更新

業界サマリ

業界概要

SaaS・業務ソフト業界とは、会計・人事・営業支援などの業務ソフトを、インターネット経由のサブスクリプションで提供する産業です。SaaS/PaaS市場は2029年度に3兆3,975億円 へ拡大が見込まれ、企業のクラウド利用率も2024年に 80.6% と過半を超えました。主要事業者は機能と業界軸を組み合わせた5区分で並び、国内上場事業者・未上場の急成長スタートアップ・グローバル大手が機能カテゴリを横断して競合する転換期にあります。

  • 国内SaaS/PaaS市場は2029年度に3兆3,975億円へ拡大が見込まれます。2024年度比73.0%増の予測で、富士キメラ総研の企業向けソフトウェア53品目調査に基づきます
  • 企業のクラウド利用率は2024年に80.6%へ達しました。全社的な利用が53.1%、一部の事業所・部門での利用が27.6%で、2014年の38.7%から約2.08倍に拡大しています
  • 主要事業者は機能と業界軸の5区分で並んでいます。ホリゾンタル・バーティカル・エンタープライズ・コラボ・データ分析の区分で、1社が複数区分にまたがる事例もあります
基礎データ: 富士キメラ総研 ソフトウェアビジネス新市場2025年版 / 総務省 通信利用動向調査 令和6年実施分・情報通信白書 令和7年版 / 各社連結IR (有価証券報告書・決算短信) / EDINET

市場動向

市場は クラウド利用率の過半超えとAIの本格活用 を背景に、当面の2桁成長が続く見通しです。需要側ではバックオフィスからフロントオフィス、開発、社内連携まで幅広い業務で普及が進み、政策側ではガバメントクラウドの採択やIT導入補助金、デジタル社会重点計画が中小企業や自治体への普及を後押ししています。AI機能の拡充とSaaSの価値の再定義が並行する局面です。

  • SaaS/PaaS市場は2029年度に3兆3,975億円へ拡大が見込まれます。ローコード開発市場も2,166億円へ拡大する見通しで、DXの進展とIT人材の不足、AIによるコード生成の自動化が後押ししています
  • クラウド利用率は2014年の38.7%から2024年に80.6%へ上昇しました。10年で約2.08倍に拡大し、利用用途はファイル保管が71.0%で最も多くなっています
  • ガバメントクラウドやAI統合が需要を牽引しています。政府は5つのクラウド事業者を採択して自治体のSaaS移行を進め、AIエージェントの活用やバーティカルSaaSの拡大も成長の軸になっています
基礎データ: 富士キメラ総研2025年版 / 総務省 情報通信白書 令和7年版 図表I-1-1-12 (e-stat公表CSV) / デジタル庁 ガバメントクラウド・重点計画 / 経済産業省DX分析2025

競争環境

日本のSaaS・業務ソフト業界の主要事業者は、機能と業界軸を組み合わせた5区分(ホリゾンタル / バーティカル / エンタープライズ / コラボ / データ分析)で並列に整理できます。国内の上場主要事業者、未上場の急成長スタートアップ、グローバル大手が機能カテゴリを横断して競合し、大手SIerのSaaS事業もエンタープライズ領域で並走しています。1社が複数区分にまたがる事例は事実として許容され、サイボウズkintoneやSnowflakeなどが該当します。

  • ホリゾンタルとバーティカルのSaaS が需要を広げています。業務横断のfreee・マネーフォワード・SmartHR・サイボウズ・Salesforceに対し、建設のANDPAD、医療のカケハシ、法務のLegalOnなど業界特化の急成長企業が伸びています
  • エンタープライズとデータ分析のSaaS は大企業の基幹業務を担います。名刺管理のSansan、Workday・Oracle・SAP・ServiceNowが基幹領域を、Snowflakeや国内のPLAIDがデータ分析・顧客分析を担っています
  • グローバル大手と業界再編 が競争を動かしています。Salesforce・Microsoft・Oracleなど世界10社が日本市場で展開する一方、ユーザベースのCarlyle TOBなど成長期事業者の再編も進んでいます
基礎データ: 国内上場主要事業者 有価証券報告書 (EDINET直接DL、連結損益計算書 直接読取) / グローバル大手10社 各社IR (10-K・20-F) / 未上場急成長4社のfunding rounds公表値・会社概要 / ユーザベースCarlyle TOB Press

市場規模推移

2029-2029 · 国内SaaS/PaaS・ローコード市場2029年度予測 (富士キメラ)
単位: 億円
SaaS/PaaS市場 (53品目)ローコード開発市場
010,00020,00030,00040,00036,14129
出典: 富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2025年版」企業向け53品目調査 (2029年度予測、2024年度実績の絶対値は調査の公表値に非開示のため増減率を基準)
年度2029
SaaS/PaaS市場 (53品目)億円33,975
ローコード開発市場億円2,166
合計(億円36,141
前年比
市場規模の読み解き
市場規模と需要構造

国内のSaaS・業務ソフト市場は拡大が続いています。富士キメラ総研の予測では、企業向けソフトウェア53品目のSaaS/PaaS市場が2029年度に 3兆3,975億円(2024年度比73.0%増)、ローコード開発市場が 2,166億円(85.3%増)に達する見通しです。2024年度実績の絶対値は調査の公表値に含まれないため、伸び率を基準として把握します。

需要側では、総務省の通信利用動向調査で企業のクラウドサービス利用率が2024年に 80.6% へ達し、2014年の38.7%から10年で約2.08倍に拡大しました。利用用途は ファイル保管が71.0% で最も多く、業務効率化からデータ基盤まで幅広く普及しています。AIインフラへの投資も並行して拡大しています。

⇒市場規模の推移を詳しく見る

国際比較とベンチマーク指標

グローバルのSaaSベンチマークでは、Bessemer Cloud 100(2025年版)の集計で上位100社の合計評価額が 1兆1,170億ドル に達し、上位10社で約54%を占めます。年間経常収益が1億ドルへ到達するまでの期間は平均7.5年で、AI関連では5.7年に短縮しています。

日本でも未上場の急成長企業の資金調達が拡大しており、SmartHR・ANDPAD・カケハシ・LegalOn の4社が累計で数百億円規模を調達しています。業界再編も進み、ユーザベースはCarlyle GroupのTOB約6,141億円(買付プレミアム74.6%)で2023年に上場廃止しました。成長期のSaaS事業者が投資ファンドやグローバル企業による再編に組み込まれる動きが見られます。

⇒SaaS事業モデルとベンチマーク指標を詳しく見る

政策・規制とAI×SaaS統合動向

政策面では、デジタル庁のガバメントクラウドが2025年時点で 5つのクラウド事業者 を採択し、政府機関と地方公共団体の情報システム標準化を進めています。デジタル社会重点計画でも自治体のSaaS移行が優先施策に位置づけられ、中小企業向けにはIT導入補助金が普及を後押ししています。

技術面では、AIとSaaSの統合 が加速しています。freee AI・Salesforce Einstein・Microsoft Copilotなどの機能拡充が各社で進み、LegalOnは2025年にOpenAIとの戦略提携を発表しました。一方で AIエージェントがSaaS機能を代替する との見方も業界で浮上し、SaaSの価値の再定義が中長期の論点になっています。

⇒ガバメントクラウドとSaaS規制を詳しく見る

⇒AI×SaaS統合の進展を詳しく見る

主要トピック

業界トピック

業界構造

主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要
SaaS・業務ソフト業界の構造
主要プレイヤー (2026年5月時点)
01
ホリゾンタルSaaS (業務効率化、業界横断)
Horizontal SaaS — 業務カテゴリ (会計 / HR / CRM / コラボPaaS / BPaaS等) を業界横断で提供、tickerはdata識別子としてEAP-062維持
国内未上場 (急成長スタートアップ)
SmartHR
HR労務 / 労務管理、全規模、シェアNo.1、累計約358億調達 (Series E約214億 / Series D 156億 / Series C 61.5億)
グローバル大手 (CRM / MA)
Salesforce
NYSE:CRM
Customer 360 (CRM) / Marketing Cloud / Service Cloud、グローバル全規模、FY2026/1売上41,525百万米ドル
HubSpot
NYSE:HUBS
CRM / Marketing Hub / Sales Hub、中小・成長企業主体、FY2025/12売上3,131百万米ドル
02
バーティカルSaaS (業界特化)
Vertical SaaS — 特定業界の業務フローに最適化、未上場急成長スタートアップ中心 + 上場大手のvertical productを含む
建設業
ANDPAD
施工管理 + プロジェクト管理SaaS、156,000社超に導入、累計約209億調達 (Series D約122億 / Series C ext 20億) + M&A借入12億
医療 / 薬局
カケハシ
Musubi調剤薬局DX、約6万店対応可能規模、累計約289億調達 (Series D約140億 / Series C-final 94億 / Series C-first 76億 / Series B 26億)
法務
LegalOn Technologies
契約レビュー + AIカウンセル、累計$200M調達 (Series E $50M 2025年7月 + 累計$200M)、米英で事業4倍成長、OpenAI戦略提携 (2025年7月発表)
03
エンタープライズSaaS (大企業向け、基幹業務)
Enterprise SaaS — 大企業の基幹業務 (ERP / HCM / データ基盤 / ITSM) を担う、グローバル大手主体 + 国内上場 (Sansan 4443、区分B+Cにまたがる)
グローバル大手 (ERP / HCM / Data / ITSM)
Workday
NASDAQ:WDAY
HCM / Financial Management、FY2026/1売上9,552百万米ドル
Oracle
NYSE:ORCL
Fusion ERP / NetSuite / Cloud HCM、FY2025/5売上57,399百万米ドル
SAP
NYSE:SAP
S/4HANA Cloud / SuccessFactors、FY2025/12売上36,800百万米ドル
Snowflake
NYSE:SNOW
Data Cloud / Snowpark、FY2026/1売上4,683百万米ドル、区分C+Eにまたがる
ServiceNow
NYSE:NOW
ITSM / IT Operations / Workflow、FY2025/12売上13,278百万米ドル
04
コラボ・コミュニケーションSaaS (社内連携)
Collaboration & Communication SaaS — 社内コラボレーション + コミュニケーション基盤、国内 + グローバル大手並列
グローバル大手
Atlassian
NASDAQ:TEAM
Jira / Confluence / Bitbucket、開発collab + プロジェクト管理、FY2025/6売上5,215百万米ドル
Adobe
NASDAQ:ADBE
Experience Cloud / Creative Cloud、制作 + コラボ、FY2025/11売上23,769百万米ドル
Zoom
NASDAQ:ZM
Zoom Workplace / Phone / Contact Center、FY2026/1売上4,868百万米ドル
05
データ・分析・基盤SaaS (BI / data platform / CXM)
Data & Analytics SaaS — データ分析・可視化・データ基盤・CXM、複数区分にまたがる事例 含む (Snowflake C+E、PLAID A+E)
グローバル大手 (Data Platform + BI)
Snowflake
NYSE:SNOW
Data Cloud / Snowpark、大企業データ基盤 + データ分析、区分C+Eにまたがる (再掲、Cエントリ参照)
Salesforce Tableau
BI / data visualization、Salesforce (NYSE:CRM) 配下
Microsoft Power BI
BI、Microsoft (NASDAQ:MSFT) 配下、Azureデータ基盤と統合
Google Looker
BI / data exploration、Google (NASDAQ:GOOGL) 配下、Looker Studio含む
06
その他主要事業者 + 大手SIerのSaaS事業 + 業界M&A動向
Others — その他上場SaaS + 大手SIerのSaaS事業セグメント + 業界M&A動向
業界M&A動向 (ユーザベース 旧3966 + バーティカルSaaS funding)
ユーザベース (旧3966)
旧3966 → Carlyle TOB後 上場廃止 / 非公開化
2023-02-13米Carlyle GroupのTOB (買付価格1株1,500円・買付総額約6,141億円・premium 74.6%) で上場廃止、MBO非公開化、SPEEDA / NewsPicks / FORCAS等を運営。成長期SaaS事業者の業界再編 代表事例
LegalOn × OpenAI戦略提携
2025年7月、LegalOn Series E $50M (累計$200M、Goldman Sachsリード) と同時発表、AIネイティブ法務SaaSの展開
バーティカルSaaSのfunding加速
SmartHR (累計約358億) + ANDPAD (累計約209億 + M&A 12億) + カケハシ (累計約289億) の3社funding拡大が業界動向
07
基盤クラウド (CSP) + 規制 + ユーザー企業
Infrastructure CSP + Regulators + User Enterprises — SaaSの基盤を提供するクラウドサービス + 規制当局 + 業界導入企業
ガバメントクラウド 採択5 CSP (2025年時点)
Amazon Web Services (AWS)
グローバル最大規模のクラウド、ガバメントクラウド採択、Amazon (NASDAQ:AMZN) 配下
Microsoft Azure
Microsoft (NASDAQ:MSFT) のクラウド、ガバメントクラウド採択、Microsoft 365 + Dynamicsと統合
Google Cloud
Google (NASDAQ:GOOGL) のクラウド、ガバメントクラウド採択、Workspace + Lookerと統合
Oracle Cloud Infrastructure
Oracle (NYSE:ORCL) のクラウド、ガバメントクラウド採択
さくらインターネット
国内CSP初採択 (2024年)、ガバメントクラウド採択、国内データ主権重視
規制 + 政策当局
デジタル庁
ガバメントクラウド運営 + デジタル社会重点計画 (令和7年6月13日閣議決定)
公正取引委員会
クラウドサービス分野の取引実態調査 (令和4年6月公表、IaaS / PaaS主軸)
経済産業省 + IPA
DX分析2025 (DX銘柄ROE 5%以上比率 約9割) + デジタルガバナンス・コード3.0
個人情報保護委員会
SaaSにおける個人情報の取扱ガイダンス、3年ごと見直し
中小企業庁
IT導入補助金、SaaS普及を後押し
ユーザー企業 (需要側、クラウド利用率2024年80.6%)
全産業の企業ユーザー
総務省 通信利用動向調査 令和6年実施分で クラウド利用率80.6% (全社53.1% + 一部27.6%、2014年38.7%から10年で約2.08倍)
利用用途別top = ファイル保管71.0%
総務省r07白書 図表I-1-1-13、業務効率化 + データ共有 + 営業支援 等が後続
政府機関 + 地方公共団体
ガバメントクラウド経由でSaaS移行 + 標準化 + データ連携 (デジタル社会重点計画 優先施策)
業界構造の読み解き
業界の構造

日本のSaaS・業務ソフト業界には、ユーザー企業・SaaSベンダー・基盤クラウド・規制当局 が関わり、その間でクラウド経由のソフトウェアが流通します。富士キメラ総研の予測では国内SaaS/PaaS市場が2029年度に 3兆3,975億円 へ拡大し、企業のクラウド利用率も2024年に 80.6% と過半を超えました。

主要事業者は 機能と業界軸を組み合わせた5区分(ホリゾンタル / バーティカル / エンタープライズ / コラボ / データ分析)で並び、国内の上場事業者・未上場の急成長スタートアップ・グローバル大手・大手SIerのSaaS事業が機能カテゴリを横断して競合しています。固定的な階層では描けない構造です。

⇒国内SaaS主要事業者の事業構造を詳しく見る

主要プレイヤーと競争環境

業界では、業務横断の ホリゾンタルSaaS(freee・マネーフォワード・サイボウズ・Salesforce)、業界特化の バーティカルSaaS(建設ANDPAD・医療カケハシ・法務LegalOn)、大企業の基幹業務を担う エンタープライズSaaS(Sansan・Oracle・SAP・ServiceNow)、社内連携のコラボSaaS、データ分析のSaaS(Snowflake・PLAID)が並列しています。1社が複数区分にまたがる事例も事実として許容されます。

近年は AIとSaaSの統合と業界再編 が構図を動かしています。freee AIやSalesforce Einstein、Microsoft CopilotなどのAI機能拡充が進み、ユーザベースはCarlyle GroupのTOB約6,141億円 で2023年に上場廃止しました。LegalOnは2025年にOpenAIとの戦略提携を発表しています。

⇒世界主要SaaSベンダーの動向を詳しく見る

政策とAI・規制環境

SaaS業界では 政策と規制、AIとの統合 が事業展開に直接影響します。デジタル庁のガバメントクラウドは2025年時点で5つのクラウド事業者を採択し、政府機関と地方公共団体の標準化を進めています。中小企業向けにはIT導入補助金が普及を後押ししています。

公正取引委員会は2022年にクラウド取引の実態調査を公表し、個人情報保護委員会もSaaSでの個人情報の取扱指針を示しています。技術面では AIエージェントがSaaSの機能を代替する との議論も浮上し、SaaSの価値の再定義が中長期の論点になっています。

⇒ガバメントクラウドとSaaS規制を詳しく見る

⇒AI×SaaS統合の進展を詳しく見る

業界の3大論点

01

AIエージェントの台頭はSaaSの価値提案をどう変えるのか

富士キメラ総研の調査では、生成AIの本格活用に伴い AIエージェントがSaaSの機能を代替する との見方(「SaaSの死」)が広がり、SaaSが提供する価値の再定義が業界共通の課題になっていると整理されています。一方で2029年度の国内SaaS/PaaS市場予測は3兆3,975億円(2024年度比73.0%増)と高い成長見通しで、AI代替論と市場拡大予測が並存しています。

各社のAI戦略は3つの方向で進んでいます。第1は 既存SaaSへのAI機能の組み込み で、freee AI、Sansan Bill One AI、Salesforce Einstein、Microsoft Copilotが代表例です。第2は AIネイティブなSaaSの発展 で、LegalOnは2025年7月の資金調達(5,000万ドル、累計2億ドル)と同時にOpenAIとの戦略提携を発表し、契約レビュー領域でAIネイティブの事業モデルを進めています。

第3は AIエージェントによる代替議論への対応 です。業務の流れ全体をAIエージェントが束ねる将来像に対して、SaaSが「データと業務プロセスの記録基盤、そして操作画面」としてどう位置づけ直されるかが中長期の論点になります。高い成長見通しとAI代替論をどう両立させるかが、各社の戦略を規定します。

02

ガバメントクラウドとIT導入補助金で自治体・中小企業のSaaS移行はどこまで進むか

政策面では、デジタル庁のガバメントクラウドが2025年時点で 5つのクラウド事業者(AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructure、さくらインターネット)を採択し、政府機関と地方公共団体の情報システム標準化を進めています。さくらインターネットは2024年に国内事業者として初めて採択され、複数クラウドの体制が整いました。デジタル社会重点計画でも自治体のSaaS移行と標準化、データ連携が優先施策に位置づけられています。

中小企業向けには IT導入補助金 がSaaSの普及を後押ししており、経済産業省のDX調査2025ではDX銘柄に選ばれた企業のROE5%以上の比率が約9割と高水準でした。一方、公正取引委員会のクラウド取引実態調査(2022年公表)はIaaSとPaaSが中心で、AIとSaaSの統合動向はこの調査の時点では反映されていません。

中長期では、自治体のSaaS移行の実装フェーズの進展、地方部での普及、SaaS事業者と政府調達の関係の再構築 が観察軸になります。規制と競争政策の更新も、業界共通の論点として残ります。

03

日本のバーティカルSaaSはホリゾンタルSaaSと異なる成長モデルを成立させられるか

バーティカルSaaSは特定業界の業務フローに最適化されたSaaSで、日本では 建設・医療・法務・経理特化 の4領域で急成長スタートアップが事業を広げています。ANDPADは建設業向けの施工管理SaaSで156,000社超に導入され、カケハシは医療・薬局向けの調剤薬局DXで約6万店に対応可能な規模を持ちます。LegalOnは法務向けの契約レビューSaaSで、2025年にOpenAIとの戦略提携を発表しました。SansanのBill Oneは経理向けの請求書受領SaaSとして業界別に展開しています。

バーティカルSaaSの差別化は3つに整理できます。第1は 業界特化機能と深い顧客サポート で、施工管理や調剤薬局DX、契約レビューなど専門領域固有の業務に最適化することで、高い継続利用率を生みます。第2は 業界規模の上限と海外展開の可能性 で、国内市場の天井に対し、LegalOnの米英事業の成長のように海外展開が次の成長段階になります。

第3は ホリゾンタルSaaSとの顧客獲得競争 です。freeeやSalesforceのような業界横断型との間で、業界別の深掘りと横断展開のトレードオフが各社の戦略を規定します。中長期では、バーティカルSaaSの新規上場、海外展開、AI機能の統合の3つが業界の主要論点になります。

よくある質問 (FAQ)

日本のSaaS・業務ソフト市場の規模はどれくらいですか
富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2025年版」の調査では、企業向けソフトウェア53品目の国内SaaS/PaaS市場は2029年度に3兆3,975億円(2024年度比73.0%増)、ローコード開発市場も2,166億円(85.3%増)に達する見通しです。総務省の通信利用動向調査でも企業のクラウドサービス利用率が2024年に80.6%(全社的な利用53.1%、一部の事業所・部門での利用27.6%)と過半を超え、2014年の38.7%から10年で約2.08倍に拡大しました。
国内のSaaS主要事業者はどのような企業がありますか
国内のSaaS業界は機能と業界軸を組み合わせた5区分で整理できます。ホリゾンタルSaaS(業務横断)はfreee・マネーフォワード・SmartHR・kubell・サイボウズ、バーティカルSaaS(業界特化)はANDPAD(建設)・カケハシ(医療)・LegalOn(法務)・Sansan Bill One(経理)、エンタープライズSaaSはSansan(名刺管理)・HENNGE(ID認証)、データ分析SaaSはPLAID(KARTE)です。ほかにラクス・うるる・ヤプリなどの上場事業者があり、Salesforce・Microsoft・Oracle・SAP・Adobe・Workday・ServiceNow・Atlassian・HubSpot・Snowflakeのグローバル大手10社も日本市場で展開しています。
ガバメントクラウドとは何ですか
ガバメントクラウドは、デジタル庁が運営する政府共通のクラウドサービス利用環境で、政府機関と地方公共団体の情報システム基盤として整備されています。2025年時点で5つのクラウド事業者が採択されています。Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructure、さくらインターネットで、さくらインターネットは2024年に国内事業者として初めて採択されました。デジタル社会重点計画でも自治体のSaaS移行と標準化、データ連携が優先施策に位置づけられています。
SaaSの経営指標ARRやRule of 40とは何ですか
ARR(年間経常収益) はSaaS企業が継続的に得る年間サブスクリプション収益で、月次の経常収益を12倍した指標です。Rule of 40 はSaaSの成長性と収益性のバランス指標で、年間売上成長率と営業利益率の合計が40%以上かどうかで評価します。NRR(純収益維持率) は既存顧客からの収益が前年比でどれだけ拡大したかを示し、120%以上が優良とされます。Bessemer Cloud 100(2025年版)では、上位100社の合計評価額が1兆1,170億ドル、平均評価額112億ドル、年間経常収益が1億ドルへ到達するまでの期間が平均7.5年(AI関連では5.7年)が指標になっています。
AIエージェントはSaaSをどう変えていますか
富士キメラ総研の調査では、AIエージェントの台頭によりSaaSの機能をAIエージェントが代替する見方(「SaaSの死」)が広がり、SaaSが提供する価値の再定義が求められていると整理されています。実際に主要なSaaS事業者はAI統合を加速しており、Salesforce Einstein・Microsoft Copilot・freee AI・Sansan Bill One AIなどの機能拡充が進んでいます。LegalOnは2025年7月の資金調達(5,000万ドル、累計2億ドル)と同時にOpenAIとの戦略提携を発表しました。AIを前提としたSaaSの作り替えと、データ分析SaaSの役割の再評価が業界中長期の主要論点になっています。

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参考資料 / 一次ソース

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    グローバルSaaS大手10社 連結IR (各社10-K / 20-F)
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    未上場急成長SaaSスタートアップ4社の資金調達ラウンド
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    ユーザベース (旧3966) Carlyle TOB上場廃止 関連Press (2023年2月13日)
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