サイバーセキュリティ業界の市場規模・主要企業・動向
日本のサイバーセキュリティ市場は1兆円規模へ拡大し、能動的サイバー防御の法制化と業界再編が同時に進む転換期にあります
サイバーセキュリティ業界とは、企業や政府の情報システムを脅威から守る製品・サービスを提供する産業です。国内のネットワークセキュリティ市場は サービスと製品の合計で約1兆円規模 へ拡大し、富士キメラ総研の予測では2030年度にサービスが7,715億円、製品が2,461億円へ伸びる見通しです。警察庁の令和7年上半期のランサムウェア被害報告は116件 で半期最多と並び、不正アクセスの認知件数も5年で約4.7倍に増えています。政策面では令和7年12月にNCOのサイバーセキュリティ戦略が改定され、能動的サイバー防御 の法的根拠も整備されました。業界構造は、主要専業の事業者・大手SIer系の子会社・親会社による統合が同時に進む再編期にあります。本ページでは、日本のサイバーセキュリティ業界を、市場規模、業界構造と再編、脅威と対策、国家政策、世界市場の5軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
サイバーセキュリティ業界とは、企業や政府の情報システムを脅威から守る製品・サービスを提供する産業です。ネットワークセキュリティ市場は約1兆円規模 へ達し、ゼロトラストやクラウド保護、Webアプリケーション脆弱性検査の伸長が続いています。主要専業の事業者・大手SIer系の子会社・海外専業の国内シェア拡大に加え、親会社による統合が同時に進む再編期にあり、NCO戦略の改定と能動的サイバー防御の法制化が政策面の転換をもたらしています。
- ネットワークセキュリティ市場は2030年度に約1兆円規模へ拡大が見込まれます。富士キメラ総研の予測でサービスが7,715億円、製品が2,461億円となり、ゼロトラスト関連が需要を牽引します
- 脅威が深刻化しています。ランサムウェアの被害報告は令和7年上半期に116件と半期最多に並び、不正アクセスの認知件数も5年で約4.7倍に増えています
- 業界構造は再編期にあります。グローバル本社専業・国内主要専業・大手SIer系・親会社統合・海外専業の5カテゴリが並列し、市場拡大と業界再編、政策転換が同時に進行しています
市場動向
市場は ゼロトラストへの継続投資と生成AI・クラウド環境への新規投資 を背景に、当面の2桁成長が続く見通しです。一方で警察庁の脅威統計は不正アクセス・ランサムウェアとも増加が続き、政策面ではNCO戦略の改定と能動的サイバー防御の法制化が制度的な転換点になっています。中小企業の対策実施率の向上とサプライチェーン対策の需要が、需要の裾野を広げています。
- ネットワークセキュリティサービスは2024年度から2030年度に58.9%拡大が見込まれます。Webアプリケーション脆弱性検査ツールも67億円から128億円へ約2.4倍に伸び、中小企業の内製化が進んでいます
- ランサムウェアの被害が中小企業に広がっています。令和7年上半期の被害報告116件のうち中小企業が77件と約3分の2を占め、過去最多を更新しました
- 不正アクセスの認知件数が増え続けています。令和3年の1,516件から令和7年に7,190件へ5年で約4.7倍となり、銀行や証券をかたる手口が中心です
競争環境
日本のサイバーセキュリティ業界のプレイヤーは、5つのカテゴリ に整理できます。グローバル本社専業、国内主要専業、大手SIer系の子会社、親会社に統合された事業者、海外専業の国内法人です。トレンドマイクロは東京本社のグローバル専業で、マクニカホールディングスやデジタルアーツなど国内主要専業7社が専門領域に特化しています。NRIセキュアテクノロジーズが大手SIer系の代表例で、富士通・NEC・日立・NTTデータのセキュリティ事業も同じカテゴリです。SCSK・ラック・ネットワンの親会社統合と海外専業の国内シェア拡大が同時に進み、業界は再編期にあります。
- 専業の事業者が領域特化で競っています。グローバル本社のトレンドマイクロに加え、マクニカホールディングス・デジタルアーツ・サイバートラスト・GSX・FFRIセキュリティ・ソリトンシステムズ・サイバーセキュリティクラウドの国内主要専業7社が専門分野で差別化しています
- 大手SIer系も主要なプレイヤーです。NRIセキュアテクノロジーズが野村総合研究所の100%子会社として代表例で、Access Checkシリーズが10年連続シェア1位、富士通・NEC・日立・NTTデータもセキュリティ事業を抱えています
- 業界再編と海外専業の拡大が競争を動かしています。SCSKが住友商事に、ラックがKDDIに完全子会社化され、ネットワンがSCSKと統合する一方、CrowdStrikeやPalo Alto Networksなど海外大手も国内シェアを拡大しています
市場規模推移
2024-2030 · 注目市場3系列 (ゼロトラスト・教育・Webアプリ脆弱性検査)| 年度 | 2024 | 2030 |
|---|---|---|
| ゼロトラスト関連(億円) | 1,740 | 2,899 |
| セキュリティ教育・トレーニング(億円) | 235 | 370 |
| Webアプリケーション脆弱性検査ツール(億円) | 67 | 128 |
| 合計(億円) | 2,042 | 3,397 |
| 前年比 | — | +66.4% |
国内のネットワークセキュリティ市場は拡大が続いています。富士キメラ総研の予測では、サービスが2030年度に 7,715億円(2024年度比58.9%増)、製品が 2,461億円(9.5%増)に達し、合計で約1兆円規模の2桁成長が続く見通しです。
需要を牽引するのは ゼロトラスト関連 で、2024年度の1,740億円から2030年度に2,899億円へ拡大が見込まれ、SASEやクラウド保護、エンドポイントセキュリティを含みます。Webアプリケーション脆弱性検査ツールは67億円から128億円へ約2.4倍に拡大し、セキュリティ教育・トレーニングも伸びる見通しで、中小企業の意識向上とサプライチェーン対策が背景にあります。
脅威は深刻化しています。警察庁の令和7年上半期の情勢では、ランサムウェアの被害報告が116件 と半期最多に並び、中小企業が77件と約3分の2を占めて過去最多を更新しました。攻撃をサービスとして提供する仕組みの広がりが、対策の手薄な中小企業の被害増につながっています。
IPAの情報セキュリティ10大脅威2026では、組織編3位に AIの利用をめぐるサイバーリスク が初めて選ばれ、生成AIの悪用などの新しい類型が表面化しています。対策技術ではEDRやSIEM、SOC、ゼロトラスト、CSIRTの運用が広がり、生成AIを活用した防御の自動化が論点になっています。
政策面では地殻変動が進みました。国家サイバー統括室は令和7年12月にサイバーセキュリティ戦略を改定し、防御・抑止、社会全体のレジリエンス、対応能力の基盤の3軸を示しました。能動的サイバー防御 は令和7年法律第42号で法的根拠が整備され、経済産業省は国内産業の売上を9,000億円から10年以内に3兆円規模へ拡大する目標を掲げています。
世界市場では、Gartnerの予測でITセキュリティ支出が2025年の 2,130億ドル から2026年に2,400億ドルへ2桁成長する見通しで、クラウドセキュリティとAI防御が成長を牽引しています。約1兆円規模の日本市場のシェアは限定的で、CrowdStrikeやPalo Alto Networksなど海外大手の国内シェア拡大も続いています。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要日本のサイバーセキュリティ業界は、主要専業の事業者・大手SIer系の子会社・親会社に統合された事業者・海外専業大手・政策と規制機関 の5カテゴリの担い手が、防御技術・運用・コンサル・教育の領域で並列して競合します。主要専業は8社で、グローバル本社のトレンドマイクロを除く7社が国内主要専業として領域特化を進めています。
大手SIer系では NRIセキュアテクノロジーズ が代表例で、富士通・NEC・日立・NTTデータなどのSIerもセキュリティ事業を抱えています。市場は約1兆円規模で、専業と総合系が補完しながら需要を支える構造です。
業界構造を最も大きく動かしているのは 業界再編 です。SCSKは住友商事のTOBにより2026年3月に上場廃止し、買付価格は1株5,700円でした。その過程でSCSK自身がネットワンシステムズを経営統合する2段階の再編が進んでいます。ラックもKDDIのTOBにより2025年2月に上場廃止し、TOB開始時点でKDDIは31.59%を保有していました。
通信のKDDIや商社の住友商事が 業種を越えてセキュリティ事業を取り込む動き が同時に起き、海外専業のCrowdStrikeやPalo Alto Networks、Fortinetなどの国内シェア拡大も並走しています。
サイバーセキュリティは 脅威の深刻化と政策の転換 が事業に直結します。警察庁の令和7年上半期の情勢ではランサムウェアの被害報告が116件と半期最多に並び、中小企業が約3分の2を占めました。不正アクセスの認知件数も5年で約4.7倍に増えています。
国家サイバー統括室は令和7年12月にサイバーセキュリティ戦略を改定し、能動的サイバー防御 が令和7年法律第42号で法制化されました。経済産業省や警察庁、個人情報保護委員会、JPCERT/CC、IPAなどが防御・抑止と監督を担っています。
業界の3大論点
2025年は政策面で大きな変化が同時に進みました。NCOのサイバーセキュリティ戦略が令和7年12月に改定され、防御・抑止、社会全体のレジリエンス、対応能力の基盤の3軸が示されました。能動的サイバー防御 は令和7年法律第42号で法的根拠が整備され、経済産業省は国内産業の売上を9,000億円から10年以内に3兆円規模へ拡大する目標を掲げています。
業界収益への影響は3つの経路で議論されます。第1は 重要インフラ事業者向けの制度対応需要 で、SOC運用や脅威情報、脆弱性管理、インシデント対応支援の継続契約が伸びる方向です。第2は サプライチェーンセキュリティの需要 で、2026年度に始まる予定のSCS評価制度への対応が、中堅・中小企業を含めた市場の裾野を広げます。
第3は 能動的サイバー防御の運用設計と人材 で、官民連携の体制づくりが新しい市場を形成します。一方で運用実務の標準化や法執行との連携の枠組みは段階的に整備される段階で、業界収益として表れるまでには中期的な視点が必要です。
直近1年で完全子会社化された3社が業界構造を大きく動かしています。SCSKは住友商事のTOBにより2026年3月に上場廃止し、買付価格は1株5,700円でした。その過程でSCSK自身がネットワンシステムズを経営統合する2段階の再編が進み、ラックもKDDIのTOBにより2025年2月に上場廃止しました。KDDIはTOB開始時点でラック株式の31.59%を保有していました。
業界構造への影響は3つに整理できます。第1は 業種をまたぐ統合の進展 で、通信のKDDIがラックを、商社の住友商事がSCSKを傘下に収めるなど、業界の境界を越えた統合が同時に起きました。第2は 大手SIer系セキュリティ事業の存在感の拡大 で、NRIセキュアテクノロジーズと並んで富士通・NEC・日立・NTTデータのセキュリティ事業の市場での位置づけが相対的に強まります。
第3は 専業の事業者の差別化軸の再定義 で、グローバル本社専業のトレンドマイクロと国内主要専業7社が、専門領域での技術の深さと顧客への密着度を改めて打ち出す必要が出てきます。業種をまたぐ再編が一巡した後の競争軸の再構築が、中期の論点になります。
日本市場での国内主要専業8社と海外専業の競争は、製品カテゴリと顧客セグメントの両面で進んでいます。グローバル本社の専業はトレンドマイクロで、国内主要専業7社はマクニカホールディングス・デジタルアーツ・サイバートラスト・GSX・FFRIセキュリティ・ソリトンシステムズ・サイバーセキュリティクラウドが専門領域に特化しています。海外専業のCrowdStrikeやPalo Alto Networks、SentinelOne、Cisco、Fortinetは日本市場でのシェアを拡大しています。
国内主要専業の差別化軸は3つに集約されます。第1は 専門領域の技術の深さ で、デジタルアーツのフィルタリング製品、FFRIセキュリティの純国産アンチウイルス、サイバートラストの電子認証などが代表例です。第2は 国内顧客への密着度 で、日本語サポートや国内法規制への対応、現場運用の最適化が継続的な競争力になります。
第3は 政府・重要インフラの調達における純国産の優位 で、能動的サイバー防御の運用設計やSCS評価制度への対応で国内主要専業の存在感が増しています。約1兆円規模の日本市場は世界全体では限定的なシェアですが、国内特性に根ざした事業モデルが当面の競争軸になります。
よくある質問 (FAQ)
日本のサイバーセキュリティ市場の規模はどれくらいですか
能動的サイバー防御とはいつから始まりますか
ランサムウェアの被害はどれくらい増えていますか
SCSKとラックはなぜ上場廃止になったのですか
主要なサイバーセキュリティ専業事業者はどこですか
関連業界
メディア・通信・IT 業界の他のカテゴリ
18 業界参考資料 / 一次ソース
- 1.
- 2.
- 3.
- 4.
- 5.
- 6.
- 7.
- 8.
- 9.
- 10.
- 11.